今年10月の消費税増税はほぼ決定的。
10月からの新しい処遇改善加算への関心は、今後ますます高まることでしょう。
では、巷でよく言われるように、介護福祉士10年で月に8万円UPするというのは本当なのでしょうか?
介護福祉士10年で8万円UPが独り歩き
結論から言いますと、それはある意味都市伝説の類です。
全くの誤解といえるでしょう。
なぜそんな言説が広まったのかというと、平成29年12月8日に閣議決定された「新しい経済政策パッケージについて」によります。
【「新しい経済政策パッケージについて」第2章から抜粋】
- 介護人材を確保するため、2017年度予算においては、介護職員について、経験などに応じて昇給する仕組みを創り、月額平均1万円相当の処遇改善を行うなど、これまで自公政権で月額4万7000円の改善を実現してきたが、介護人材確保のための取組をより一層進めるため、経験・技能のある職員に重点化を図りながら、介護職員の更なる処遇改善を進める。
- 具体的には、他の介護職員などの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認めることを前提に、介護サービス事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に、公費1000億円程度を投じ、処遇改善を行う。
ここから、「介護サービス事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行うこと」だけが注目されてしまったのです。
新しい処遇改善加算の目的を知る
今回の処遇改善加算は、正確には「介護職員等特定処遇改善加算」といいます。
「介護職員等」とありますから、介護職員以外に配分してもOKです。
また、「特定」とあるのは、目的が特定されているということ、具体的には「年収440万円以上or月額8万円UPする介護職員が1人以上いること」です。
さて、新しい処遇改善加算が設けられた意味を確認しておきましょう。
「2019年度介護報酬改定に関する審議報告 社会保障審議会介護給付費分科会 2018年12月26日」をみてみます。
【同報告より抜粋】
- 現行の介護職員処遇改善加算に加えて、介護職員の更なる処遇改善を行うこととし、具体的には、リーダー級の介護職員について他産業と遜色ない賃金水準を目指し、経験・技能のある介護職員に重点化しつつ、介護職員の更なる処遇改善を行うことが適当である。
- 新しい経済政策パッケージにおいて、「他の介護職員などの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認めることを前提」とされていることを踏まえ、介護職員の更なる処遇改善という趣旨を損なわない程度において、介護職員以外の職種にも一定程度処遇改善を行う柔軟な運用を認めることが適当である。
ポイントは3つ。
1つ目のポイントが「現行の介護職員処遇改善加算に加えて、介護職員の更なる処遇改善を行うこと」です。
つまり、今までの処遇改善加算はそのままで継続し、新たに別建ての処遇改善加算ができるということです。
これらは、目的が異なります。
従来の処遇改善加算 → 職員の確保
新しい処遇改善加算 → 職員の定着
となります。
2つ目のポイントが「リーダー級の介護職員について他産業と遜色ない賃金水準を目指し」ということ。
つまり、ただ単に10年以上勤続していることを求めているのではなく、介護職員のリーダーとして活躍していることが求められているのです。
そうしたリーダーであれば、他の産業におけるリーダーと変わらない賃金水準を目指すということであり、具体的には年収440万円(or月額8万円UP)ということです。
3つ目のポイントが「介護職員以外の職種にも一定程度処遇改善を行う柔軟な運用を認めることが適当」ということ。
つまり、介護職員以外にも事務職やドライバーなどにも、処遇改善加算を配分できるということです。ただし、配分については複雑なルールがありますから注意が必要です。
まとめると、
- 処遇改善加算が2本立てになる
- 介護職のリーダーであれば年収440万円に
- 介護職以外への配分も可能に
ということです。
「10年以上の介護福祉士は月8万円UP」と単純に理解している職員が多い事業所はトラブルになりかねません。
しっかりと新しい加算について説明しておくことが求められます。