1.塗り絵の説明
縁側に月見団子とすすきを飾り、山の向こうに昇る大きな月を眺める場面です。月・団子・花器・縁側を大きく描いているため、細かい作業が苦手な人も色を選びやすい構成になっています。
十五夜は旧暦8月15日の月を愛でる行事で、現在の暦では9月になる年も10月になる年もあります。「9月だから必ず十五夜」と決めつけず、その年の日付を確認して使うと、季節の話題にもつなげやすくなります。
介護施設やデイサービスでは、月見団子を作った経験、すすきを取りに行った場所、縁側から見た月など、その人の暮らしに沿った会話を始めるきっかけになります。思い出が出なくても、月や夜空の色を一緒に選ぶだけで十分です。
2.画像


色見本と同じ色に塗る必要はありません。本人が選んだ色や好きな色を大切にしてください。
3.塗り絵を始めるときの声かけ
- 「今日は、お月見の絵があります。少し眺めてみませんか?」
- 「月と団子では、どちらから色をつけてみたいですか?」
- 「夜空は青だけでなく、紫や灰色でもきれいになりそうですね」
- 「すすきの穂に合いそうな色を、一緒に探してみましょうか?」
- 「塗らずに絵を見ながらお話しするだけでも大丈夫ですよ」
4.塗り絵中の声かけ
- 「今夜の空にするとしたら、どんな色が合いそうですか?」
- 「このお団子は、白いままにしますか。それとも好きな色を少し入れますか?」
- 「縁側がある家では、どんなふうに過ごしていましたか?」
- 「月を見た場所は、家の近くでしたか。それとも田畑や外出先でしたか?」
- 「お月見のときに、団子以外のものを供えた地域もありますね。何か身近なものはありましたか?」
- 「秋の夜に聞こえていた音は、虫の声、風の音、それとも別の音でしたか?」
- 利用者さん:「すすきは川のそばにたくさんあったよ」
介護士:「川まで取りに行かれたのですね」
さらに:「一緒に行った人や、帰り道の景色はどんな様子でしたか?」 - 利用者さん:「団子は母が作っていた」
介護士:「お母さまが作っていた団子なのですね」
さらに:「丸めるのを手伝ったことや、味について覚えていることはありますか?」
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5.介護士が知っておきたいポイント
月や空を何色に塗っても、職員の知っている色へ直す必要はありません。色の正しさより、本人が選んだ理由や塗っている時間を大切にします。
- 完成を急がせず、途中で終えてもよいことを伝える
- 「お月見を覚えていますか?」を繰り返さない
- 月見の習慣は地域や家庭で異なるため、職員側の経験を正解にしない
- 戦中・戦後の食糧事情や家族との別れに話が及ぶ場合は、無理に聞き続けない
- 手や肩が疲れていないか、色鉛筆を持ちにくそうではないかを見る
- 月や細いすすきの線が見えにくそうなら、明るさや眼鏡、太めの画材を確認する
- 塗り絵が進まず会話だけになっても、その時間を失敗と捉えない
6.お月見にまつわる年代別の出来事・暮らし
昭和10年代(1935〜1944年)
農作物の収穫と月を結びつける習慣は、地域ごとにさまざまな形で続いていました。一方、戦時下では食べ物や暮らしに余裕がなく、毎年同じように団子や供え物を用意できたとは限りません。
昭和20年代(1945〜1954年)
戦後の物不足が残るなか、手に入る米や粉、芋などを使って季節の行事を行った家庭もありました。「何を供えたか」には地域差だけでなく、その年の暮らし向きによる違いもあります。
昭和30年代(1955〜1964年)
家庭の暮らしが少しずつ安定し、団子を手作りしたり、子どもと月を眺めたりする時間を持てる家庭が増えていきました。縁側、庭先、田畑のあぜなど、月を見る場所も暮らしによって異なりました。
昭和40年代(1965〜1974年)
住宅や生活様式が変化し、行事を簡略に楽しむ家庭も増えました。市販の菓子を添えたり、テレビの季節番組を見ながら月を意識したりするなど、過ごし方は多様になっていきました。
昭和50年代(1975〜1984年)
都市部ではすすきを探しにくくなる一方、花店や商店で季節の飾りを用意することもありました。学校や地域行事を通して、子どもが家庭へお月見の話題を持ち帰った経験も会話のきっかけになります。
