認知症利用者のレク拒否は、「参加させる力」だけで考えると、本人にも介護士にも負担が大きくなります。
現場では、準備して声をかけたのに「やらない」「帰る」と返される場面があります。さらに、本人の意思を尊重したはずなのに、参加できなかった結果だけを見て職員が責められることもあります。
こうした場面では、全員を最後まで座らせるより、本人が不安を強めずに過ごせる参加形態を考えることが現実的です。見るだけ、途中離席、役割参加、別席での見学を選択肢にすると、本人の意思も現場の説明もしやすくなります。
この記事を読むと分かること
- レク拒否の見方
- 参加形態の分け方
- 声かけの工夫
- 記録の残し方
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
認知症利用者のレク拒否は「全員参加」より参加形態を分けて考える

レク拒否では、最後まで座らせるより、本人の意思と状態に合わせた参加形態へ変えることが大切です。
現場では、本人が「やらない」と言っているのに、職員側には「もっと誘導できたのでは」と責任が乗ることがあります。こうした場面では、本人の拒否を無視して戻すほど不穏が強まり、介護士も追い詰められやすくなります。この記事では、レク参加を本人の意思決定支援として捉え、現場で説明しやすい対応へ整理します。
準備したレクを拒否されると、善意まで否定されたように感じることがあります。さらに、参加しない本人ではなく、参加させられなかった職員だけが責められると、怒りや疲れが強くなります。全員を座らせることを目標にするほど、本人の不安と職員の焦りがぶつかりやすくなります。そこで、参加そのものを一つに固定せず、見るだけ・途中離席・役割参加・別席見学に分けて考えることが現実的です。
参加しない意思も本人の意思として扱う
現場では、「参加しない」と言われた瞬間に、説得するか諦めるかの二択になりがちです。しかし、レクへの参加も日常生活の選択の一つとして捉えると、拒否は単なるわがままではなく、本人の意思を確認する入口になります。
本人の意思を尊重するとは、何でも本人任せにすることではありません。本人が分かりやすい説明を受け、選べる形で関われるようにすることです。だからこそ、「参加しましょう」だけで押すより、「見ていても大丈夫です」「これだけ持ってもらえますか」と、断れる余地を残した声かけが必要になります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第 2 版)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001484891.pdf
認知症の人への支援は、本人の意思を尊重するために行う。したがって、本人の意思を尊重するために、本人の認知能力に応じて理解しやすいように説明しなければならない。
見るだけ・途中離席も参加の形にする
レク中に座っていないと、現場では「参加できていない」と見なされやすいです。けれど、本人にとっては、人の多さや音、何をするか分からない不安が強く、その場にいるだけで精一杯の場合があります。
見るだけ、拍手だけ、道具を配るだけ、途中で抜けることも、本人の状態に合えば参加の形になります。大切なのは、全員を同じ輪の中に置くことではなく、本人が不安を強めずに関われる形を探すことです。これにより、職員も「参加させられなかった」ではなく、本人に合う形へ調整したと説明しやすくなります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第 2 版)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001484891.pdf
日常生活の意思決定支援としては、例えば、食事・入浴・衣服の好み、外出、排せつ、整容などの基本的生活習慣や、日常のプログラムへの参加を決める場合などが挙げられる。
介護士個人の責任にせず標準対応を持つ
現場では、同じ利用者でも職員によって戻す、見守る、別席にするなど対応が分かれます。すると、拒否が起きた時に「誰の声かけが悪かったのか」という話になりやすくなります。
対応を個人技にしないためには、拒否が強い時は見学対応、立ち上がりが続く時は別席対応、不穏が増す時は無理に戻さないなど、チームで説明できる基準が必要です。記録にも「拒否」だけでなく、本人の反応と代替対応を残すことで、本人の意思を無視しない対応として共有できます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第 2 版)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001484891.pdf
本人の語りや表情なども含め、できる限り具体的な記録を残しておくと良い。
レク拒否は、職員の誘導不足だけで見ないことが大切です。本人の意思と状態に合わせ、参加形態を分けて記録することで、本人にも職員にも無理の少ない対応になります。
レク中に落ち着かない認知症利用者でよくある事例

現場では、レクが始まった途端に立つ、帰ると言う、周囲がざわつくという流れが繰り返されることがあります。止めても荒れ、放っておいても不安になるため、介護士は板挟みになりやすいです。
全員参加を目指しすぎると、拒否している本人を何度も輪に戻そうとして、かえって表情が硬くなることがあります。うまくいった場面では、本人を輪の中心に戻すのではなく、端の席や見学席、道具を持つだけの役割に変えたことで、場が崩れにくくなりました。大切なのは、参加させることだけを成功にしないことです。
声かけを重ねるほど表情が硬くなる
レク前に「今日は歌ですよ」「一緒にやりましょう」と何度も声をかけるほど、本人の返事が荒くなることがあります。職員は丁寧に誘っているつもりでも、本人には断りにくい圧として伝わる場合があります。
状況としては、本人がまだ内容を理解できていない、疲れている、何を求められるか不安なまま誘われていることがあります。困りごとは、職員が声かけを増やすほど拒否が強まることです。よくある誤解は「もっと明るく誘えば入れるはず」と考えることです。押さえるべき視点は、本人が何を望むかを開かれた形で聞き、無理に結論を急がないことです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第 2 版)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001484891.pdf
本人が何を望むかを、開かれた質問で聞くことが重要である。
立ち上がりを戻そうとして不穏が強まる
レク中に立ち上がった利用者を、すぐ席へ戻そうとして腕を引いたり、前に立って止めたりすると、余計に怒りが強くなることがあります。転倒が心配なため止めたい気持ちは自然ですが、止め方によっては本人の不安を増やします。
状況としては、本人が歩きたい、場所を離れたい、座位がつらいなどの理由を言葉にできていないことがあります。困りごとは、戻そうとするほど声が大きくなり、周囲の利用者も落ち着かなくなることです。よくある誤解は「歩くならすぐ止めるしかない」と考えることです。押さえるべき視点は、無理に止める前に、本人の認識できる位置から声をかけ、別席や見守りに切り替えることです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
身体拘束廃止・防止の手引き
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001248430.pdf
本人が歩いている場合に無理に止めないこと、本人の認識できる位置から話しかけること、本人が座ろうとしている際の介助の方法について話し合い、職員間で対応方法を統一した。
音や人の動きでその場にいづらくなる
大人数レクでは、拍手、歌声、椅子の音、他利用者の動きが一気に増えます。本人が「うるさい」「帰る」と言う時、レクの内容そのものより、その場の刺激が負担になっている場合があります。
状況としては、周囲の人の動きや音、距離の近さが本人の不安を強めていることがあります。困りごとは、職員が楽しませようとするほど声量や動きが増え、本人には逃げ場がなくなることです。よくある誤解は「レクが嫌いな人」と決めつけることです。押さえるべき視点は、席を端にする、出入口に近づける、見学席を作るなど、環境の刺激を下げることです。
出典元の要点(要約)
国立長寿医療研究センター
認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
生活環境のポイント ①空間の広さや狭さを確認する(声の大きさや反響に関係) ②対人距離に留意する ③温度や明るさ、騒音などに留意する
「拒否」だけ記録して対応が伝わらない
記録に「レク参加拒否」とだけ残ると、本人が何に反応したのか、職員がどの代替対応をしたのかが見えません。結果だけが残るため、次の職員も同じ誘い方をして、同じように拒否されることがあります。
状況としては、声かけ後に表情が硬くなった、途中離席後は別席で落ち着いた、道具を持つ役割なら関われた、という情報が大切です。困りごとは、対応の工夫が記録されないと、職員個人の誘導不足に見えやすいことです。よくある誤解は「拒否した事実だけ書けばよい」とすることです。押さえるべき視点は、本人の反応と選んだ代替対応を残すことです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
身体拘束廃止・防止の手引き
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001248430.pdf
記録はアセスメントからはじまる。まずはアセスメントを行った内容を記録したうえで、日々の心身の状態等の観察、拘束の必要性や方法にかかわる再検討を行うごとに逐次その記録を加える。
よくある失敗は、拒否を見てすぐ「戻す」「説得する」に寄せることです。本人の反応、環境、代替対応を分けて見ると、現場の説明もしやすくなります。
なぜ認知症利用者はレク中に落ち着かなくなるのか

現場では、同じレクでも落ち着いて見られる日と、すぐ立ち上がる日があります。この違いの背景には、本人の意思、体調、環境、声かけ、職員側の焦りが重なっています。ここでは、レク中の落ち着かなさが起きる理由を整理します。
何度も席へ戻そうとして失敗した場面では、本人が楽しみたくないのではなく、その場にいること自体が負担になっていることがありました。音、人の多さ、座っているつらさ、不安を言葉にできないまま「帰る」と出ることがあります。そこで、理由を本人の性格だけにせず、身体・環境・心理・個人的要因に分けて見ることが必要です。
本人の意思は環境や関係性に影響される
大勢の前で「参加しますか」と聞かれると、本人が本音を出せないことがあります。職員は確認したつもりでも、本人には緊張や遠慮があり、返事がその時の環境に左右される場合があります。
なぜ起きるのかというと、意思表明は本人の認知機能だけでなく、周囲の人数、場所、関係性、安心感の影響を受けるからです。建前では「本人の意思を尊重する」と言います。現実には、レクが始まってから大勢の前で返事を求めることが多く、本人が落ち着いて選びにくい状況があります。そのズレが、拒否や沈黙、急な離席として見えることがあります。押さえるべき視点は、始まる前や別席など、本人が表明しやすい場面で確認することです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第 2 版)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001484891.pdf
本人は、大勢の人に囲まれると圧倒されてしまい、安心して意思決定ができなくなる場合があることに注意すべきである。
行動には身体・環境・心理・個人的要因がある
「また立った」と見える場面でも、本人の中では眠気、空腹、痛み、トイレ、不安、音の不快感が重なっている場合があります。言葉で説明できないため、行動だけが先に出ることがあります。
なぜ起きるのかは、行動が一つの原因だけで決まるわけではないためです。建前では「落ち着いて参加してほしい」と考えます。現実には、座位の苦痛や騒音、人の動きなどが重なると、本人はその場から離れることで調整しようとすることがあります。そのズレが、介護士には「レク拒否」と見えます。押さえるべき視点は、レク前に体調と環境を確認し、始まってから説得だけで対応しないことです。
| 見る視点 | 確認する内容 |
|---|---|
| 身体 | 眠気、空腹、痛み、トイレ、喉の渇きなど |
| 環境 | 音、明るさ、広さ、人の動き、席の位置など |
| 心理 | 不安、困惑、焦り、寂しさ、怒りなど |
| 個人 | 生活歴、好み、こだわり、習慣など |
出典元の要点(要約)
国立長寿医療研究センター
認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
人の行動を左右する4つの要因 身体的要因 例)頭痛・発熱・脱水・便秘/下痢・空腹/満腹・眠気・痛み・かゆみ・しびれ・喉の渇き・老眼・難聴・薬の作用/副作用 など
強い声かけは意思表明を狭めやすい
「参加しましょう」「座ってください」と続けて言うほど、本人が拒否しか返せなくなることがあります。職員の声かけが悪いというより、本人が選べる余地を感じにくくなることがあります。
なぜ起きるのかというと、認知症の人には短く分かりやすい表現や、一つひとつの動作への声かけが必要になる場合があるからです。建前では、声をかけるほど丁寧に見えます。現実には、言葉が多いほど何を求められているか分からず、拒否が強くなることがあります。そのズレが、職員の焦りと本人の不安を大きくします。押さえるべき視点は、命令形ではなく、本人が選べる短い声かけにすることです。
出典元の要点(要約)
国立長寿医療研究センター
認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
認知症の人とのかかわり方のポイント ①名前を呼んでから話しかける ②短文でわかりやすい表現を使う ③一つひとつの動作に対して声かけをする
職員の精神的負担が個人対応に偏りやすい
拒否されるたびに、介護士は「また自分の誘導不足と言われる」と感じやすくなります。本人に腹が立っているように見えても、実際には責任だけが職員に戻ってくる構造に疲れていることがあります。
なぜ起きるのかは、認知症ケアでは意思疎通の難しさ、拒否、BPSD対応の疲弊、理想的なケアとのジレンマが重なりやすいためです。建前では「本人に寄り添う」ことが求められます。現実には、進行、見守り、転倒リスク、他利用者対応が同時に乗ります。そのズレが、怒りや諦めにつながることがあります。押さえるべき視点は、職員の感情を個人の冷たさにせず、標準対応と記録で支えることです。
出典元の要点(要約)
日本看護科学学会
介護施設における認知症ケア実践者の精神的負担の概念分析
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/45/0/45_214/_pdf/-char/ja
理想的なケアができていないと考えジレンマに陥ってしまう可能性がある。また、認知症の人への関わり方を学んでいるがゆえに良いケアをしたいともがく姿が見受けられた。
落ち着かなさは、本人の性格や職員の声かけ不足だけでは説明しきれません。身体、環境、心理、意思、職員負担を分けて見ると、無理の少ない対応を選びやすくなります。
認知症利用者のレク拒否対応で迷いやすいこと
現場では、本人の意思を尊重したい気持ちと、フロアをまとめなければならない責任がぶつかります。ここでは、レク拒否の場面で判断に迷いやすい点を、根拠の範囲で整理します。
- Q見ているだけでも参加と考えてよいですか?
- A
本人が無理なくその場にいられるなら、見るだけの参加として扱う考え方は現実的です。日常のプログラムへの参加も意思決定支援の場面に含まれるため、本人の意思や好みに合わせ、関わり方を一つに固定しないことが大切です。現場では「輪に入らないと未参加」と見られやすいですが、本人の反応を見て形を調整します。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第 2 版)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001484891.pdf
日常生活の意思決定支援としては、例えば、食事・入浴・衣服の好み、外出、排せつ、整容などの基本的生活習慣や、日常のプログラムへの参加を決める場合などが挙げられる。
- Q立ち上がったらすぐ席へ戻すべきですか?
- A
転倒などのリスクには注意しながらも、無理に止めることだけを対応にしないほうがよい場面があります。本人の認識できる位置から声をかけ、歩きたい理由や離れたい理由を見ながら、別席や見守りへ切り替えることを検討します。現場では焦りやすいですが、戻す前に不穏が増えていないかを見ます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
身体拘束廃止・防止の手引き
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001248430.pdf
本人が歩いている場合に無理に止めないこと、本人の認識できる位置から話しかけること、本人が座ろうとしている際の介助の方法について話し合い、職員間で対応方法を統一した。
- Q声かけはどんな言い方がよいですか?
- A
短く分かりやすく、本人が選べる言い方にします。「参加しましょう」と決めつけるより、「ここで見ますか」「少しこちらで休みますか」のように、本人の反応を確認できる形が使いやすいです。現場では何度も説明したくなりますが、言葉を増やすより、本人の表情や動きを見ることが大切です。
出典元の要点(要約)
国立長寿医療研究センター
認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
利用者の言葉や行動だけに反応しない(本当は何を望んでいるのか等、本音・真意を酌み取る) ⑥利用者のシグナルを見逃さない
- Q記録には何を書けばよいですか?
- A
「拒否」だけで終わらせず、声かけへの反応、表情、離席後の様子、選んだ代替対応を書きます。たとえば、再声かけで表情が硬くなった、別席では落ち着いた、道具を持つ役割なら可能だった、という情報です。現場では忙しいですが、次の職員が同じ失敗を繰り返さないための材料になります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
身体拘束廃止・防止の手引き
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001248430.pdf
記録はアセスメントからはじまる。まずはアセスメントを行った内容を記録したうえで、日々の心身の状態等の観察、拘束の必要性や方法にかかわる再検討を行うごとに逐次その記録を加える。
レク拒否への対応は、参加か不参加かで二分しないことが大切です。本人の反応を見て、参加形態、環境、声かけ、記録を組み合わせます。
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レク拒否は参加形態を分けるところから始める
現場では、本人の意思を尊重したいのに、参加できなかった結果だけで職員が責められることがあります。そのしんどさは、介護士の努力不足だけではありません。
レク拒否や落ち着かなさを見た時は、まず全員を最後まで座らせるという目標を少しゆるめてみます。見るだけ、途中離席、役割参加、別席見学のどれなら本人が不安を強めずに過ごせるかを選びます。
明日からの一歩は、対応を増やすことではありません。次のレクで、本人に合う参加形態を一つ選び、反応と代替対応を記録に残すことです。
最後までご覧いただきありがとうございます。
更新履歴
- 2025年12月3日:新規投稿
- 2026年3月10日:最新情報に基づき加筆・修正
- 2026年5月8日:内容を全面的にリライト







