高齢者「熱はないけど元気がない」時の対応|受診の目安と観察すべきポイント

「熱はないけれど、なんとなくいつもと違う」。この違和感を報告しても、「バイタルは正常だから」と様子見になり、もどかしさを感じることはありませんか。数値だけでは判断しきれないのが、高齢者ケアの難しさです。

人員が限られる中、全ての変化を追い続けるのは困難です。しかし、急変を防ぐために最低限見るべきポイントと、医師や看護師に伝わる報告の基準を知ることで、現場での迷いを減らすことができます。

この記事を読むと分かること

  • 熱以外の重要な観察ポイント
  • 高齢者特有の発熱の定義
  • 「いつもと違う」の言語化
  • 受診や報告が必要な目安

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • 熱はないが元気がなく心配
  • 平熱が低く発熱か迷う
  • 報告しても様子見と言われる
  • 急変に気づけるか不安だ

数値よりも「違和感」を信じる!高齢者の異変は「熱」以外に出る

現場では「バイタルに異常がなければ様子見」と指示されることが多く、「なんとなく元気がない」と感じても、数値的な根拠がないため報告を躊躇してしまうことがあるのではないでしょうか。忙しい業務の中で全ての入所者の細かな変化を追い続けるのは困難ですが、実際には数値化しにくい「違和感」こそが、急変を防ぐ重要なサインであることも少なくありません。

高齢者は「熱が出にくい」ことを前提にする

高齢者は身体機能の低下により、感染症にかかっていても発熱などの典型的な症状が出にくい傾向があります。そのため、体温計の数値が正常範囲内であっても、「感染症ではない」と断定して安心することはできません。熱がない場合でも、意識レベルの低下や食欲不振、嘔吐、下痢といった、他の症状が現れていないかを確認する必要があります。

出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局

介護現場における感染対策の手引き 第3版

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf

利用者の健康状態を観察し、意識レベルの低下、呼吸数の増加、発熱、嘔吐、下痢等の症状が見られた場合は、直ちに看護職員や医師に報告し記録します。

厚生労働省

高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版

https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf

入所者の健康状態を常に観察し、発熱(おおむね38℃以上もしくは平熱より1℃以上の上昇)、嘔吐、下痢、呼吸器症状等が認められた場合は直ちに看護職員か医師に報告し記録する。高齢者では発熱が顕著でない場合もあるため注意が必要である。

「平熱プラス1℃」は立派な発熱サイン

一般的に発熱といえば37.5℃以上を指すことが多いですが、高齢者の場合は「平熱より1℃以上の上昇」も発熱と捉えるという基準があります。普段の平熱が低い方であれば、たとえ37.0℃程度であっても、平熱より1℃高ければそれは異常のサインである可能性があります。日頃から利用者一人ひとりの平熱を把握しておくことが、適切な判断につながります。

出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局

介護現場における感染対策の手引き 第3版

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf

発熱については、おおむね38℃以上もしくは平熱より1℃以上の上昇を発熱ととらえます。

厚生労働省

高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版

https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf

発熱については、おおむね38℃以上の発熱もしくは平熱より1℃以上の体温上昇を発熱ととらえる。ただし、高齢者はインフルエンザ等でも発熱が顕著でない場合があるため、全身状態や他の症状の有無も確認する。

観察すべきは「食事・顔色・反応」の変化

数値に出ない異変を見つけるには、「普段の様子と違うかどうか」が最も重要な判断材料になります。具体的には、以下のようなポイントを確認します。

  • 食事:食欲はあるか、水分は摂れているか
  • 顔色:顔色は悪くないか、唇の色はどうか、目は充血していないか
  • 反応:呼びかけに対する反応(意識レベル)がいつもより鈍くないか

高齢者は痰を出す力が弱くなっていることや、症状を自覚しにくいことがあるため、介護職が日常の微細な変化を早期に発見することが大切です。

出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局

介護現場における感染対策の手引き 第3版

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf

利用者の健康状態を把握するためには、栄養状態の把握や食事摂取状況、定期的な体重測定、バイタルサイン(体温、脈拍、血圧等)測定等が有効です。高齢者は痰の排出(喀出)能力が低下していることや、症状が出にくいことがあるため、「普段の反応と違う」といった日常の変化を早期に把握することが大切です。
厚生労働省

高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版

https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf

健康状態の把握には、食事摂取状況、定期的な体重測定、体温・脈拍・血圧等のバイタルサイン測定が有効である。高齢者は喀出能力や反応が低下していることがあるため、数値だけでなく「普段の反応と違う」といった変化を早期に把握することが大切である。

高齢者の感染症対応では、体温計の数字だけに頼るのはリスクがあります。「平熱+1℃」の基準を持ちつつ、食欲や顔色といった「いつもと違う」変化を見逃さないことが、利用者の命を守るカギとなります。


現場でありがちな「判断ミス」と「報告の悩み」

男性入居者と女性介護職員

日々の業務に追われていると、どうしても「バイタル測定」というタスクをこなすことが目的になってしまいがちです。「熱がないなら大丈夫」と自分を納得させたり、違和感はあるもののうまく言葉にできず、「変なんです」と伝えて看護師や医師を困らせてしまったりした経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。ここでは、現場で頻発する判断の迷いや失敗例を通して、押さえておくべき視点を確認します。

事例1:「微熱だから大丈夫」の落とし穴

  • 状況
    • 体温が37.2℃だった。「少し高めだが37.5℃以下なので発熱ではない」と判断し、特記せず様子観察とした。
  • 困りごと
    • 夜間帯に38℃台まで上昇し、翌朝肺炎と診断された。「もっと早く報告があれば」と言われてしまった。
  • よくある誤解
    • 「37.5℃を超えなければ発熱ではない」という一律の基準で判断してしまう。
  • 押さえるべき視点
    • 高齢者は体温調節機能が低下しており、感染症にかかっていても高熱が出ないことがよくあります。重要なのは絶対値ではなく「平熱との差」です。平熱が36.0℃の方であれば、37.0℃を超えた時点で「プラス1℃」の異常事態と捉え、注意深く観察する必要があります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局

介護現場における感染対策の手引き 第3版

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf

発熱については、おおむね38℃以上もしくは平熱より1℃以上の上昇を発熱ととらえます。

厚生労働省

高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版

https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf

高齢者では発熱が顕著でない場合もあるため注意が必要です。

事例2:「ただの食欲不振」と見過ごす

  • 状況
    • 熱はないが、朝食を半分残し、水分もあまり摂りたがらない。「お腹が空いていないのかな」と思い、無理強いせず下膳した。
  • 困りごと
    • 昼食も食べず、午後になってぐったりし始めた。実は誤嚥性肺炎を起こしていたが、発見が遅れ脱水も併発してしまった。
  • よくある誤解
    • 「熱や咳がなければ、風邪や肺炎ではない」と思い込む。
  • 押さえるべき視点
    • 高齢者の感染症では、発熱よりも先に「食欲不振」「なんとなく元気がない(活気の低下)」といった症状が現れることが多々あります。食事摂取量の低下は、それ自体が体調不良の重要なサインです。摂取量が減っているときは、バイタルが正常でも「異常あり」として警戒レベルを上げましょう。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局

介護現場における感染対策の手引き 第3版

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf

利用者の健康状態を把握するためには、栄養状態の把握や食事摂取状況、定期的な体重測定等が有効です。高齢者は症状が出にくいことがあるため、「普段の反応と違う」といった日常の変化を早期に把握することが大切です。

厚生労働省老健局

介護現場における感染対策の手引き 第3版

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf

高齢者の結核における非典型的な症状(微熱、食欲低下等)にも注意が必要です。

事例3:「様子が変です」としか報告できない

  • 状況
    • 利用者の様子がいつもと違うと感じ、看護師に「なんとなく変です」と伝えた。
  • 困りごと
    • 「バイタルは?具体的にどう変なの?」と聞かれ、答えに詰まってしまった。「数値に異常がないなら様子を見て」と言われ、受診の判断が遅れた。
  • よくある誤解
    • 「自分の感覚(違和感)だけでは報告してはいけない」と遠慮してしまう。
  • 押さえるべき視点
    • 違和感は正しいのですが、それを伝えるには具体的な観察項目が必要です。「名前を呼んでも目を開けるのが遅い(意識レベル)」「呼吸がいつもより速い(呼吸数)」など、具体的な事実を添えることで、医師や看護師も緊急度を判断しやすくなります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局

介護現場における感染対策の手引き 第3版

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf

異常の兆候(意識レベル低下、発熱、嘔吐、下痢、呼吸器症状等)が見られた場合は、直ちに看護職員や医師に報告し記録します。

厚生労働省

高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版

https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf

意識レベルの低下、咳・喀痰の増加、発熱、嘔吐、下痢、頻脈等の症状が認められた場合は、直ちに看護職員か医師に報告し記録する。

「熱がないから大丈夫」という思い込みは、高齢者ケアにおいて最も避けるべき落とし穴です。体温計の数値はあくまで一つの目安に過ぎません。「平熱との差」や「食事量」「反応」といった変化を捉え、それを具体的な言葉にしてつなぐことが、介護職に求められる専門性といえます。


なぜ高齢者は「熱が出ない」のに重症化するのか

現場では「熱さえなければ、とりあえず緊急性はない」と考えがちです。しかし、高齢者のケアにおいて、その常識は通用しないことが多々あります。「元気だったのに急に亡くなった」「朝は平熱だったのに夕方には肺炎になっていた」というケースが後を絶たないのは、高齢者の体が若年者とは異なる反応を示すからです。ここでは、なぜ高齢者は熱が出にくいのか、そのメカニズムと観察の根拠を整理します。

加齢による「免疫反応」の鈍化が原因

私たちが風邪を引いて熱が出るのは、体に侵入したウイルスや細菌と戦うために、免疫機能が活発に働いている証拠です。しかし、高齢者は加齢に伴い、この免疫機能や身体の予備能力が低下しています。

その結果、病原体が体に入っても体が十分に反応できず、発熱といった防御反応(典型的な症状)が現れにくくなります。つまり、「熱がない」ことは「体が戦っていない(ウイルスがいない)」ことと同義ではなく、むしろ「戦う力が弱まっており、静かに進行している」可能性があるのです。

出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局

介護現場における感染対策の手引き 第3版

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf

介護保険のサービス利用者は、高齢者や基礎疾患がある等により感染への抵抗力が低下していることや、認知機能の低下により感染対策への協力が難しい場合が多いです。高齢者は発熱を伴わない非典型的な症状を呈することがあり注意が必要です。
厚生労働省

高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版

https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf

高齢者介護施設には、加齢により感染への抵抗力が低下している入所者や、認知機能の低下により対策への協力が難しい入所者が生活している。高齢者では発熱が顕著でない場合もあるため注意が必要である。

熱の代わりに現れる「非定型的症状」

高齢者の感染症では、発熱などの分かりやすい症状の代わりに、一見すると感染症とは関係なさそうな症状が現れることがよくあります。これを「非定型的症状」と呼びます。

具体的には、以下のような変化がサインとなります。

  • 食欲不振:急に食事を残すようになった、水分を摂りたがらない
  • 意識障害:ぼんやりしている、呼びかけへの反応が鈍い、つじつまが合わない
  • 全身倦怠感:ぐったりして起き上がれない、活気がない

例えば、肺炎であっても咳や熱が出ず、「食欲がない」ことだけが唯一の症状である場合もあります。また、結核においても微熱や食欲低下といった目立たない症状で経過することがあるため、注意深い観察が求められます。

出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局

介護現場における感染対策の手引き 第3版

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf

高齢者は症状が出にくいことがあるため、日常の変化を早期に把握することが大切です。異常の兆候(意識レベル低下、発熱、嘔吐、下痢、呼吸器症状等)が見られた場合は、直ちに看護職員や医師に報告し記録します。

厚生労働省

高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版

https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf

結核は高齢者や免疫低下状態で発症しやすく、咳が2週間以上続く場合は要注意である。高齢者では全身の衰弱や食欲不振が主症状となることもある。

「いつもと違う」に気づけるのは現場の介護職だけ

医師や看護師は医学的な診断を行いますが、24時間寄り添って生活を支えているのは介護職員です。利用者の「平熱」や「いつもの食事量」、「普段の表情や口数」を最もよく知っているのは、現場の皆さんです。

数値には表れない「普段の反応と違う」という微細な変化に気づけるかどうかが、感染症の早期発見を左右します。「なんとなく変」という感覚は、決して気のせいではなく、長年のケアで培われた重要な観察眼によるものです。

出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局

介護現場における感染対策の手引き 第3版

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf

高齢者は喀出能力や反応が低下していることがあるため、数値だけでなく「普段の反応と違う」といった変化を早期に把握することが大切である。
厚生労働省

高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版

https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf

バイタルサイン測定や食事摂取状況の把握に加え、「普段の反応と違う」といった日常の微細な変化を早期に発見することが重要である。

高齢者の体は「熱が出ないから大丈夫」という単純なものではありません。免疫機能の低下により、SOSサインが食欲活気の変化として現れている可能性があります。バイタル数値だけでなく、全身の状態をトータルで見る視点を持つことが重要です。


よくある疑問(FAQ)

現場で判断に迷うことが多いポイントについて、基準を整理しました。

Q
結局、体温何度から「発熱」と判断すればいいですか?
A

一般的な「37.5℃以上」に加え、高齢者の場合は「平熱より1℃以上の上昇」も見逃してはいけない発熱の基準です。平熱が36.0℃の方なら、37.0℃でも発熱とみなして対応する必要があります。

出典元の要点(要約)
厚生労働省

高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版

https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf

発熱については、おおむね38℃以上の発熱もしくは平熱より1℃以上の体温上昇を発熱ととらえる。

厚生労働省老健局

介護現場における感染対策の手引き 第3版

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf

発熱については、おおむね38℃以上もしくは平熱より1℃以上の上昇を発熱ととらえます。

Q
熱はないけど、誤嚥性肺炎の可能性はありますか?
A

はい、あります。高齢者の肺炎では、熱や咳といった典型的な症状が出ず、「食欲がない」「なんとなく元気がない」といった症状だけが現れることが少なくありません。熱がなくても、食事量が減っている場合は注意が必要です。

出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局

介護現場における感染対策の手引き 第3版

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf

高齢者では発熱を伴わない非典型的な症状を呈することがあり注意が必要です。呼吸器症状では医療・介護関連肺炎(NHCAP)、誤嚥性肺炎、結核等の疑いが挙げられます。

Q
すぐに受診や救急搬送を検討すべき「急変」のサインは?
A

「意識レベルの低下(呼びかけへの反応が鈍い、視線が合わない)」や「呼吸状態の悪化(呼吸数が早い、肩で息をしている)」が見られる場合は、緊急性が高い状態です。熱の有無に関わらず、直ちに医師や看護師へ報告、または救急対応を検討してください。

出典元の要点(要約)
厚生労働省

高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版

https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf

意識レベルの低下、咳・喀痰の増加、発熱、嘔吐、下痢、頻脈等の症状が認められた場合は、直ちに看護職員か医師に報告し記録する。


まとめ:体温計の数字だけでなく、「いつもの様子」との違いを信じる

高齢者の体調変化において、「熱がないから大丈夫」という判断はリスクを伴います。加齢により免疫反応が変化しているため、熱が出ないまま重症化してしまうケースがあることを、常に意識しておく必要があります。

現場での判断に迷った際は、以下のポイントを振り返ってみてください。

  • 基準の見直し:「37.5℃」だけでなく、「平熱+1℃」も発熱のサインとして捉える。
  • 観察の視点:数値に表れない「食欲」「顔色」「反応(意識レベル)」の変化を重視する。
  • 報告の具体化:「なんとなく変」と感じたら、具体的な観察事実(食事量、返答の速さなど)を添えて報告する。

毎日ケアに当たっている皆様が感じる「いつもと違う」という違和感は、医療機器以上に敏感な、入所者を守るための重要なセンサーです。数値的な根拠がなくても、その違和感を信じて報告・相談につなげることが、早期発見への第一歩となります。

最後までご覧いただきありがとうございます。この記事が、日々の観察における不安を解消し、自信を持ってケアに当たる一助となれば幸いです。



タイトルとURLをコピーしました