介護の採用難、給与競争の限界と「選ばれる環境」作りのポイント

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求人を出しても問い合わせすら来ず、人材紹介会社に頼っても早期離職が続く──。採用難の波に飲み込まれ、打つ手がないと感じている施設長や管理者は少なくありません。

現場からは「人が足りない」と悲鳴が上がり、理想のケアをしたいのに「業務を回すだけで精一杯」になってしまう葛藤。給与競争だけでは解決できない今、すべてを完璧にするのは無理でも、まずは定着する環境づくりから始めてみませんか。

この記事を読むと分かること

  • 給与以外で求職者が重視する「隠れた条件」
  • 「採用困難」を乗り越える現実的なアピール方法
  • 人が辞めにくい「富士山型」組織の作り方
  • お金をかけずに取り組める「定着率アップ」の具体策
  • 明日から使える可能性のある「求人票の見直しポイント」

一つでも当てはまったら、この記事が役に立つ可能性があります

  • 「給料が低いから人が来ない」と諦めている
  • 採用しても新人が1年以内に辞めてしまう
  • 「教育制度」について明確に説明できない
  • 現場が忙しく、見学者への対応がおろそかだ
  • 職員の「有給取得率」を把握していない

結論:採用難の時代に「給与」よりも「環境」が選ばれやすいと考えられる理由

女性の介護職員の画像

現場では「時給を数十円上げても反応がない」「面接に来ても条件を聞いて辞退される」といった声が聞かれます。

近隣施設との賃金競争に疲弊し、「これ以上はどうすればいいのか」と頭を抱えている施設長も多いのではないでしょうか。

しかし、国のデータを紐解くと、求職者が求めているのは必ずしも「高い給与」だけではないことが見えてくると考えられます。

1. 「人が来ない」大きな壁は“採用困難”

多くの事業所が人手不足に悩んでいますが、その原因は「職員が辞めていくこと」だけではありません。

データによると、不足の主な理由は「採用が困難である」ことであり、約9割の事業所がこの課題に直面しているとされています。

つまり、今いる職員を大切にするだけでは不十分で、「選ばれるための土台」がないと、スタートラインに立てないことがあります。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001144293.pdf

介護サービス事業所における人手不足の理由として、「採用が困難である」と回答した事業所の割合は88.5%(令和元年度)となっている。

2. 給与競争には限界がある現実

「給料さえ上げれば人は来る」と考えがちですが、現実には全産業平均との間に大きな差があります。

処遇改善加算などで改善は進んでいるものの、他業界と比較すると依然として約6.8万円の開きがあるのが実情です。

この差を埋めるために無理な賃上げを続けても、資金力のある大手法人や他産業には勝ちにくいです。だからこそ、「金額以外の勝負」にシフトする必要があると考えられます。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001144293.pdf

令和4年の給与額(賞与込み)を比較すると、全産業平均(役職者除く)が361,600円であるのに対し、介護職員(医療・福祉施設等)は293,000円であり、その差は約6.8万円となっている。

3. 定着のカギは「給与」よりも「休みやすさ」

では、何をアピールすればよいのでしょうか。答えの一つが「有給休暇」です。

職員の満足度を高める取り組みの中で、効果が高いとされているのが「有給休暇が取得しやすい環境の整備」です。

「給料はそこそこでも、休みがしっかり取れる」ことは、長く働きたい求職者にとって魅力になりやすいです。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001144293.pdf

介護職員の労働条件や仕事内容等に対する満足度を向上させるために効果がある取組として、「有給休暇が取得しやすい環境の整備」を挙げた割合が最も高くなっている。

給与競争で消耗するよりも、「休みやすさ」や「働きやすさ」を整える方が、満足度向上には効果的になりやすいと考えられます。まずは自施設の強みを「環境面」から再定義してみるとよいでしょう。


現場で起きがちな「採用・定着」の失敗パターン

「なぜか人が定着しない」「頑張っているのに空回る」──そんな現場には、共通する失敗パターンがあります。

忙しさに追われる中で、知らず知らずのうちに陥ってしまう「よくある事例」を見ていきましょう。

「あと10円高ければ…」隣の施設と時給競争をしてしまう

近隣に新しい施設ができると、つい「時給」を比べて焦ってしまうものです。

しかし、無理をして数十円上げても、全産業平均との大きな差がある中では、求職者への決定打になりにくいのが現実です。

わずかな金額差で競うよりも、エビデンスにあるように「休みやすさ」や「働きがい」を整備する方が、満足度向上に効果がある取組として挙げられています。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001144293.pdf

令和4年の給与額(賞与込み)を比較すると、全産業平均(役職者除く)が361,600円であるのに対し、介護職員(医療・福祉施設等)は293,000円であり、その差は約6.8万円となっている。

厚生労働省

介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001144293.pdf

介護職員の労働条件や仕事内容等に対する満足度を向上させるために効果がある取組として、「有給休暇が取得しやすい環境の整備」を挙げた割合が最も高くなっている。

「背中を見て覚えて」未経験者を放置して早期離職

「人手不足だから」と未経験者を即戦力扱いし、十分な教育なしに現場へ投入していませんか。

「見て覚えて」という指導法では、新人は不安を感じることがあります。

処遇改善加算の要件として、職位ごとの任用要件などを定めた「キャリアパス要件」の整備や、マニュアル・手順書の作成が重要と考えられます。これらは取組としても示されています。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001144293.pdf

処遇改善加算のキャリアパス要件Iでは、職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を整備することが求められている。

厚生労働省

介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)

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「因子得点1:情報共有・コミュニケーション・学びの機会、手順書・マニュアル作成」は、㉔ケアの好事例や謝意の共有、⑳業務手順書の作成、㉑ミーティング等による職場内コミュニケーション、㉓利用者本位のケア方針等を学ぶ機会、⑯事故・トラブル対応マニュアルの5項目を集約してスコア化したものである。

書類作成に追われ、見学者に「挨拶もできない」ピリピリした空気

見学者が来ても職員が顔を上げられず、挨拶もできないほど事務作業に追われている職場は、応募意欲を削ぐ可能性があります。

事務作業の煩雑さは、加算を取得していない理由として挙げられています。

見守り機器やインカム等のICT活用は、単なる効率化だけでなく、業務負担の軽減などを通じて職員の負担を減らす効果が期待できます。

出典元の要点(要約)

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介護職員等ベースアップ等支援加算を「取得していない(取得予定なし)」理由として、「事務作業が煩雑であるため」が40.0%で最も高くなっている。

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見守りセンサーやインカム等のICT機器導入の効果として、「夜勤職員の業務負担の軽減」や「利用者情報の共有円滑化」などが挙げられている。

これらの事例は、個人の努力不足だけではなく「仕組み」や「環境」の問題と考えられます。給与額にとらわれすぎず、教育体制業務負担の軽減に目を向けることが、採用成功への近道になりやすいと考えられます。


なぜ、今までの「採用活動」が通用しなくなったのか

女性の介護職員の画像

「数年前までは、求人を出せばそれなりに応募があったのに」「最近はどうして誰も来ないのか」──。

そう感じるのは、あなたの施設だけの問題ではないかもしれません。介護業界を取り巻く構造が、ここ数年で大きく変化していると考えられるからです。

気合いや根性論では埋めにくい、客観的な「3つの壁」について見ていきましょう。

2040年問題:待っていれば人が来る時代の終わり

日本の高齢者人口がピークを迎える2040年度には、約280万人の介護職員が必要とされています。

2019年度と比較して約69万人もの追加確保が必要となる計算であり、これは売り手市場が続く可能性を示します。

人材を確保しにくくなる可能性があります。選ばれるための努力をしない事業所は、物理的に人材を確保できなくなる可能性があります。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001144293.pdf

第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数は、2023年度には約233万人、2025年度には約243万人、2040年度には約280万人と推計されている。

厚生労働省

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2019年度(211万人)と比較して、2025年度には約32万人、2040年度には約69万人の介護職員を確保する必要がある。

求職者の価値観変化:給与から「QOL」へ

かつては「稼げるかどうか」が最優先される傾向にありましたが、現在は価値観が多様化しています。

給与の全産業平均との格差が依然として存在する中で、求職者は「給与以外のメリット」をシビアに見極めていると考えられます。

特に、前述の通り「有給休暇」や「柔軟な働き方」など、生活の質(QOL)を守れる職場かどうかが、入職の決め手として重みを増していると考えられます。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001144293.pdf

令和4年の給与額(賞与込み)を比較すると、全産業平均(役職者除く)が361,600円であるのに対し、介護職員(医療・福祉施設等)は293,000円であり、その差は約6.8万円となっている。

厚生労働省

介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001144293.pdf

介護職員の労働条件や仕事内容等に対する満足度を向上させるために効果がある取組として、「有給休暇が取得しやすい環境の整備」を挙げた割合が最も高くなっている。


「先が見えない」不安:キャリアパスの欠如

長く働きたいと考える人材ほど、その職場での将来像を気にします。

経験の浅い職員が多い「まんじゅう型」の組織構造のままでは、新人は「ここで頑張っても報われるのか」と不安を感じることがあります。

経験を積み、資格を取得することでキャリアアップできる「富士山型」の構造への転換を示せなければ、優秀な層から敬遠されることがあります。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

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「まんじゅう型」から「富士山型」の人材構造を目指し、認知症介護基礎研修の受講義務付けなど、資質の向上とキャリア形成支援が進められている。

人口減少と価値観の変化により、「ただ募集するだけ」の手法は限界を迎えています。この構造的な変化を受け入れ、「選ばれるための環境整備」に舵を切ることが、有力な選択肢です。

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現場の「迷い」に答えるQ&A

理屈はわかっても、現場には「そうは言っても先立つものがない」「教育に割く時間がない」という悩みがあるかもしれません。

そんな管理者の皆様が抱きがちな疑問に対し、国のデータや推奨事例に基づいて回答します。

Q
これ以上、給与を上げる原資がありません。どうすればいいですか?
A
賃上げ努力は大切ですが、資金には限界があります。しかし、職員の満足度向上には金銭以外の要素も大きく影響します。特に「有給休暇の取得しやすさ」は、満足度を高める取り組みとして効果が高いとされています。まずは「休みやすい環境づくり」から始めてみるとよいでしょう。
出典元の要点(要約)
厚生労働省

介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001144293.pdf

介護職員の労働条件や仕事内容等に対する満足度を向上させるために効果がある取組として、「有給休暇が取得しやすい環境の整備」を挙げた割合が最も高くなっている。

Q
未経験者を採用しても、教える余裕がなく定着しません。
A
専門職がすべてを教える必要はありません。清掃や配膳などの周辺業務を行う「介護助手」を活用したり、手順書・マニュアルを整備したりすることで、専門職の負担軽減や役割分担の明確化に寄与するとされています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省

介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001144293.pdf

介護助手等の周辺業務を担う人材の活用は、専門職の負担軽減や役割分担の明確化に寄与する。

厚生労働省

介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001144293.pdf

「因子得点1:情報共有・コミュニケーション・学びの機会、手順書・マニュアル作成」は、業務手順書の作成やマニュアル整備等を集約してスコア化したものである。

Q
「生産性向上」を進めると、現場から「手抜きだ」と反発されませんか?
A
国の推進する生産性向上は、人員削減や手抜きだけを目的とするものではありません。見守りセンサー等の活用で「業務負担を軽減」し、生まれた時間を「利用者へのケア」や「職員の休息」に充てることが目的の一つとされています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省

介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001144293.pdf

生産性向上の取組は、テクノロジーの活用や業務の明確化・役割分担などを通じて、業務負担の軽減やケアの質の向上を図るものである。

厚生労働省

介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001144293.pdf

介護サービス事業所における生産性向上に資するガイドラインでは、業務改善のPDCAサイクルを回すことが推奨されている。

変化には不安がつきものですが、データは「環境を整えること」が満足度向上にプラスに働くことを示しています。できる範囲から少しずつ、仕組みを見直してみるとよいでしょう。


まとめ:まずは「求人票」を見直すことから

人口減少が進む中、給与額だけの競争には限界があります。しかし、それは「打つ手がない」ことを意味しません。

国のデータが示す通り、「有給休暇が取得しやすい環境の整備」は満足度向上に効果がある取組として挙げられています。これらは、資金力だけでなく、現場の工夫と仕組みづくりで改善しやすい領域と考えられます。

まずは、自施設の求人票を見直してみるとよいでしょう。「給与」以外の欄に、具体的なアピールポイントは書かれているでしょうか。

  • 有給休暇の取得率や、休みやすい雰囲気
  • 未経験者を支えるマニュアルや研修制度
  • 経験に応じたキャリアパスの道筋

もし書けることが少なければ、現場の職員と「どうすればもっと休みやすくなるか」を話し合うことから始めてみましょう。その一歩が、前進につながると考えられます。

最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。


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  • 2026年2月28日:新規投稿

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