「申し訳ありません、今は人が空いていなくて…」
今日もまた、新規の依頼を断ってしまったと肩を落としていませんか?
利用者を支えたい気持ちはあるのに、現場には人がいない。
その板挟みで、罪悪感だけが募っていく毎日。
本当は一人ひとりに向き合いたいのに、
現実はサ責自身が現場を走り回り、事務作業は深夜に及ぶ綱渡りの日々。
「全部完璧にこなす」のは、もう限界かもしれません。
まずは自分と現場を守るために、今知っておくべき事実があります。
この記事を読むと分かること
- 断る罪悪感が減る「83.4%」の根拠
- 「人がいない」を家族へ説明するコツ
- 2040年を見据えた現場の守り方
- サ責が潰れないための意識改革
- 定着率を上げる「休暇」の重要性
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
結論:「断る」のは怠慢ではない。データが示す「構造的な限界」

「なんとか調整します」と電話口で答えながら、内心ではシフト表の空白を探して頭を抱える。
現場では「プロなら断らずに受けるべき」という責任感と、「これ以上入れたら現場が崩壊する」という物理的な限界の間で、多くの職員が押しつぶされそうになっています。
しかし、どうか自分を責めないでください。今起きていることは、個人の努力でカバーできる範囲を遥かに超えた日本の構造的な危機なのです。
訪問介護の8割以上が「不足」を感じている異常事態
あなたが依頼を断らざるを得ないのは、事業所の調整力不足ではありません。
最新の調査データにおいて、訪問介護事業所の83.4%が「大いに不足」「不足」「やや不足」を感じていると回答しました。
これは他の職種と比較しても突出して高い数値であり、もはや地域全体で「受け皿が存在しない」状態が常態化しています。
「うちだけが断っている」のではなく、業界全体が「受けたくても受けられない」限界点に達しているのです。
出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター令和6年度「介護労働実態調査」 結果の概要について
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf
職種別の過不足状況をみると、訪問介護員は「大いに不足」「不足」「やや不足」の合計が 83.4%となっており、不足感が依然として高い状況にある。
2040年にはさらに69万人の職員が必要になる現実
「今は忙しいけれど、いつか人が来てくれるはず」という期待は、残念ながらデータ上では裏切られる可能性が高いと言わざるを得ません。
高齢化のピークを迎える2040年度には、介護職員が約280万人必要になると推計されています。
これは2019年度と比較して約69万人もの追加確保が必要であることを意味します。
現役世代の人口が急激に減少していく中で、これだけの人材を確保することは極めて困難であり、人手不足は一時的な波ではなく、避けられない課題と予測されています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省介護人材の処遇改善等 (介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001144293.pdf
2040年度には約280万人の介護職員が必要(2019年度(約211万人)+約69万人)
「離職」よりも「採用できない」ことが深刻化している
現場が回らない最大の要因は、人が辞めること以上に「新しい人が入ってこない」ことにあります。
調査によると、介護職員の離職率は12.4%まで低下し、定着への努力は実を結びつつあります。
しかし、それ以上に採用率が14.3%へと大きく落ち込んでしまいました。
採用率の低下幅が離職率の改善幅を上回っており、結果として労働者数の増加ペースが鈍化しています。
「募集を出しても応募がない」のは、地域性や求人票の問題だけではなく、入り口そのものが狭まっている現状を示唆しています。
出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター令和6年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_roudousya_honpen1.pdf
訪問介護員と介護職員を合わせた2職種の離職率は12.4%で2年連続の低下となった一方、採用率は14.3%と3年ぶりの低下となりました。採用率の低下幅(2.6ポイント)は離職率の低下幅(0.7ポイント)を上回り、増減率は1.9%と3年ぶりに低下しました。
「断る」という行為は、決して事業所の怠慢ではありません。データが示す通り、訪問介護の不足は8割を超える事業所が直面する構造的な危機であり、将来的な改善も容易ではない現実があります。無理な引き受けで現場を疲弊させるのではなく、この「限界」を正しく認識し、今いる職員を守ることが最優先の責務となります。
現場で頻発する「負のループ」の正体

「新人が育つ前に辞めていく」「サ責が現場に出すぎて管理業務が回らない」
こうした悩みは、特定の事業所だけでなく、多くの現場で共通して聞かれる悲鳴です。
ここでは、データに基づいた「よくある事例」を通して、なぜその問題が起きるのかを紐解きます。
「うちだけじゃないんだ」と知ることが、解決への第一歩です。
事例A:サ責が現場を埋めるほど、ヘルパーが離れていく
「人が足りないから」とサ責が朝から晩まで訪問に回る。一見、責任感が強く見えますが、実は危険な兆候です。
データによると、ヘルパーの離職率が低い事業所ほど、サ責が担当ヘルパーの相談・指導を十分に行えていると回答する割合が高くなっています。
逆に言えば、サ責が現場業務に忙殺され、マネジメント(相談対応)がおろそかになると、チーム全体の定着率が下がり、さらなる人手不足を招くという悪循環に陥るリスクがあります。
出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター令和6年度「介護労働実態調査」 結果の概要について
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf
担当する訪問介護員の離職率別にサービス提供責任者の意識をみると、離職率が「0%」の層では、「担当する訪問介護員の相談、指導等」ができていると回答した割合が高くなっている。
事例B:退職理由のホンネは「給料」ではなく「上司」
「給料が安いから辞めたんだろう」と思っていませんか? 確かに給与の問題はありますが、介護関係職種からの転職者が挙げた前職の退職理由トップは「職場の人間関係」です。
さらにその内訳を見ると、約半数が「上司・施設長・先輩」との関係(厳しい指導やパワハラ等)を挙げています。
忙しさのあまり、新人への指導がついキツくなってしまう。その「空気」こそが、人を遠ざける真の要因かもしれません。
出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター令和6年度「介護労働実態調査」 結果の概要について
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf
前職を辞めた理由の1位は「職場の人間関係に問題があったため」(23.2%)。その内訳をみると、「上司・施設長・先輩の指導・言動・パワーハラスメント」が49.1%と約半数を占めている。
事例C:「高い保険料を払っているのに」という家族の誤解
利用者や家族から「なぜヘルパーが来ないのか」と責められることがあります。しかし、これは事業所の努力不足というより、他産業との構造的な格差が影響しています。
介護職員の処遇改善は進んでいますが、全産業平均(役職者除く)と比較すると、依然として賃金差が存在します。
この「他より条件が良くない」現実が、採用率の低下(入り口の狭さ)に影響していると考えられ、個別の事業所努力だけでは埋めにくいギャップを生んでいます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省介護人材の処遇改善等 (介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001144293.pdf
処遇改善加算等の取得促進により、介護職員の給与は全産業平均に近づきつつあるが、役職者を除いた全産業平均と比較すると、依然として差が存在する状況にある。
これらの事例は、個人の能力不足ではなく、構造的な要因が複雑に絡み合って発生しています。サ責の業務過多も、人間関係の悪化も、元を辿れば「余裕のなさ」に行き着きます。この負の連鎖を断ち切るには、精神論ではなく、物理的な業務の見直しが必要です。
なぜここまで人がいない? 3つの構造的要因

「求人を出しても電話すら鳴らない」「やっと入った新人が定着しない」
現場では、まるで底の抜けたバケツに水を注いでいるような徒労感が蔓延しています。
なぜ、これほどまでに人が集まらないのか。そこには、現場の努力ではどうにもならない3つの構造的要因が存在します。
原因1:離職率以上に深刻な「採用率」の急落
「辞める人が多いから人がいない」と思われがちですが、実は状況が変わってきています。
最新のデータでは、訪問介護員と介護職員の離職率は12.4%まで低下しており、定着の努力は実を結びつつあります。
しかし問題なのは、採用率が14.3%へと大きく落ち込んでいる点です。
採用率の低下幅が離職率の改善幅を上回っているため、結果として働く人の総数が思うように増えず、入り口が狭まっていることが人手不足の大きな要因となっていると考えられます。
出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター令和6年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_roudousya_honpen1.pdf
訪問介護員と介護職員を合わせた2職種の離職率は12.4%で2年連続の低下となった一方、採用率は14.3%と3年ぶりの低下となりました。採用率の低下幅(2.6ポイント)は離職率の低下幅(0.7ポイント)を上回り、増減率は1.9%と3年ぶりに低下しました。
原因2:全産業平均との間に横たわる「埋まらない溝」
介護職の給料は上がっていますが、他産業との競争には依然として苦戦しています。
国の施策により処遇改善は進んでいますが、役職者を除いた全産業平均と比較すると、まだ明確な差が存在します。
求職者は介護業界の中だけで仕事を探しているわけではありません。
他産業と比較された際に、賃金面での差が課題となり、人材確保の難しさに影響していると考えられます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省介護人材の処遇改善等 (介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001144293.pdf
処遇改善加算等の取得促進により、介護職員の給与は全産業平均に近づきつつあるが、役職者を除いた全産業平均と比較すると、依然として差が存在する状況にある。
原因3:現場を蝕む「上司・先輩」との人間関係
せっかく入職しても、現場の空気に耐えられずに去っていく人が後を絶ちません。
退職理由のトップは「職場の人間関係」ですが、その中身を見ると「上司・施設長・先輩」の指導や言動、パワハラが約半数を占めています。
人手不足で余裕がないため、指導がつい感情的になり、新人が萎縮して辞めてしまう。
同僚同士のトラブル以上に、縦の関係によるストレスが、貴重な人材の流出につながっている側面があります。
出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター令和6年度「介護労働実態調査」 結果の概要について
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf
前職を辞めた理由の1位は「職場の人間関係に問題があったため」(23.2%)。その内訳をみると、「上司・施設長・先輩の指導・言動・パワーハラスメント」が49.1%と約半数を占めている。
人が集まらない背景には、採用の入り口が狭まり、他産業との競争に負け、入っても人間関係で消耗するという三重苦があります。これは現場の努力不足というより、構造的な課題です。だからこそ、今いるスタッフを人間関係のストレスから守ることが、有効な対策の一つと考えられます。
現場の「モヤモヤ」をデータで解消 Q&A
「給料は本当に上がっているの?」「どうすれば人は定着するの?」
現場で働きながら感じる素朴な疑問や不安。
ここでは、厚生労働省や介護労働安定センターの最新データをもとに、客観的な事実をお答えします。
- Qニュースで「介護職の給料が上がった」と聞きますが、実感があまりありません。実際はどうなのですか?
- Aデータ上では上昇傾向にあります。最新の調査によると、月給者の平均給与は248,884円で、前年に比べて3.1%(7,568円)増加しました。これは5年連続の増加トレンドです。もし実感がない場合は、事業所ごとの配分状況による差の可能性があります。
出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター
令和6年度「介護労働実態調査」 結果の概要について
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf
月給の者の平均所定内賃金は、248,884円(前年度比較 7,568円増、3.1%増)となり、前年度より増加した。
- Q結局、人が辞めない職場にするには何が一番効果的なのでしょうか?
- A「賃金」も重要ですが、実は「休みやすさ」も大きな要素です。調査において、職場定着に効果があった施策として最も多くの事業所が挙げたのは「有給休暇等の取りやすさ」でした。
出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター
令和6年度「介護労働実態調査」 結果の概要について
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf
労働条件等の悩みについて「人手不足」が一番多いが、職場定着に効果があった施策では「有給休暇等の取得促進」が最も多く挙げられている。
- Q外国人スタッフを受け入れれば、この人手不足はすぐに解決しますか?
- A即効性のある解決策とは言い切れません。現在、外国籍労働者を受け入れている事業所は全体の15.8%に留まっています。また、受け入れの最大の課題として「日本語能力等のコミュニケーション」が挙げられており、受け入れ体制の整備には時間と労力が必要です。
出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター
令和6年度「介護労働実態調査」 結果の概要について
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf
外国籍労働者を受け入れている事業所は全体の15.8%となっている。また、雇用の課題として「日本語能力等のコミュニケーション能力に不安がある」が最も多い。
データを見ると、現場の感覚と少し違う「希望」や「現実」が見えてきます。給料は徐々に上がり、定着には「お金」以上に「休める環境」が効く. これを知るだけでも、明日からの現場作りや、上司への提案の仕方が少し変わってくるはずです。
「今いる人」を守ることが、最大の地域貢献になる
新規の依頼を断ることは、決して逃げではありません。
それは、今あなたの事業所で働いているスタッフと、今サービスを受けている利用者を守るための勇気ある決断です。
「2040年問題」として国が警鐘を鳴らすほどの構造的な人手不足の中で、一事業所の努力だけで全てを受け入れることは、極めて困難と言わざるを得ません。「採用」よりも「定着」へ、明日からできること
「新しい人が来ない」と嘆く前に、視点を「今いる人が辞めない職場」に変えてみましょう。
データが教えてくれた通り、定着のカギは「賃金」以上に「休暇の取りやすさ」と「人間関係」にあります。
給料を一気に上げることは難しくても、有給休暇を取りやすい雰囲気を作ることや、新人への指導の言葉遣いを見直すことは、明日からでも始められます。ICT活用で「心の余裕」を作る
人間関係が悪化する背景の一つとして、忙しさによる心の余裕のなさが挙げられます。
見守りセンサーや記録ソフトなどのICT機器を導入した事業所の多くが、業務負担の軽減や効率化を実感しています。
テクノロジーの力を借りて少しでも業務をスリム化し、そこで生まれた時間をスタッフ同士のコミュニケーションや休息に充てる。
それが結果として、長く働き続けられる職場づくりにつながります。出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター令和6年度「介護労働実態調査」 結果の概要について
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf
介護ロボット・ICT機器の導入効果として、「夜間の見守り業務の負担が軽減した」「昼間の見守り業務の負担が軽減した」「情報共有がしやすくなった」など、業務負担の軽減や効率化を挙げる事業所が多い。
日々の業務、本当にお疲れ様です。
あなたの献身的なケアが、多くの利用者の生活を支えています。
この記事が、少しでも現場の負担を軽くするヒントになれば幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございます。
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更新履歴
- 2026年2月18日:新規投稿








