レビー小体型認知症の特徴と適切な声掛け【認知症声掛けシリーズ第2弾】

「否定厳禁」と解っていても、多忙な現場では「誰もいません」と遮りたくなる葛藤があります。さっきまでの穏やかな姿が急変する混乱に、戸惑う場面も多いはずです。

理想を追う余裕がない時は、全部を完璧にせず急所だけを意識してみませんか。自分の負担を減らす、現実的な向き合い方を整理します。

この記事を読むと分かること

  • 幻視への楽な返し方
  • 調子の波に合わせた介助
  • 現場で役立つ転倒予防策
  • 介護士の心理的負担の軽減
  • 声掛けを変える具体的なコツ

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • 幻視の対応に疲弊している
  • 日々の波への対応に迷う
  • 急かして不穏にさせてしまう
  • 夜間の大声に困っている
  • 理想のケアができず苦しい

結論:「正しい」ケアよりも「本人に届く」ケアを優先しよう

男性入居者と女性介護職員

現場では「幻視を否定してはいけない」と頭ではわかっていても、他の業務が山積みのなかで何度も同じ訴えを繰り返されると、つい「誰もいませんよ!」と声を荒らげてしまうリアルな葛藤があります。理想のケアを追い求めすぎて介護士自身が追い詰められてしまうのも、また現場の切実な現実です。全部を完璧にこなそうとするのは無理があるからこそ、まずは最低限のポイントに絞った、現実的な関わり方を見つけ出すことが解決への近道になります。

薬よりも「環境」と「人との関わり」をケアの主役にする

レビー小体型認知症(DLB)の方は、一般的な認知症薬や精神科の薬に対して体が過敏に反応し、強い副作用が出やすいという特徴があります。そのため、薬で症状を抑え込もうとするよりも、身の回りの環境を整えたり、その人らしさを尊重するパーソンセンタードケア(※1)を基本とした関わりを優先することが推奨されています。

日常生活に支障がない範囲であれば、まずは見守りと環境整備に重点を置くことが、本人にとっても介護士にとっても不穏を防ぐもっとも安全な選択となります。
(※1)パーソンセンタードケア:本人の視点や立場に立って理解しようとするケアの考え方。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

DLBの治療は、認知機能障害やBPSD、自律神経症状など多様な臨床症状に対する対症的治療を基本とする。DLBは薬物療法の有害事象が現れやすいため、環境整備やパーソンセンタードケアなどの非薬物療法が特に重要である。

日本神経学会

認知症疾患診療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_03.pdf

認知症の治療は認知機能の改善と生活の質 quality of life (QOL)向上を目的として、薬物療法と非薬物療法を組み合わせて行う。認知症の行動・心理症状 behavioral and psychological symptoms of dementia (BPSD)には非薬物療法を薬物療法より優先的に行うことを原則とする。向精神薬を使用する場合は、有害事象と投薬の必要性を継続的に評価する。

幻視や不穏の背景にある「不安」を減らすことを第一に考える

「虫がいる」「知らない人がいる」といった本人の訴えは、脳の病的な変化によって起きている現象です。これを理屈で否定すると、本人は「誰も信じてくれない」という恐怖や孤独感を深め、さらなる興奮や攻撃性を招くきっかけになります。

現場の忙しい時間帯であっても、まずは本人が何に怯えているのか、痛いところはないかといった要因を評価することが大切です。幻覚などの症状をゼロにしようとするのではなく、社会的交流や適切な刺激を通じて、本人が安心感を持てる環境を作ることが、不穏(※2)を鎮める鍵となります。
(※2)不穏:落ち着きがなく、興奮したり騒いだりしている状態。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

DLBにおいても適切なケアや環境整備などの非薬物的介入は重要であり、特にBPSDに対してはパーソンセンタードケアを基本としたアプローチが推奨される。認知障害や幻視は注意レベルの低下で悪化するため、社会的交流や環境刺激が効果を持つ可能性がある。

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

興興奮のきっかけとなる痛み、恐怖、幻覚、環境などの要因を除くことが推奨される。介護者への支援やストレスマネジメント法の習得がBPSD低減に寄与することが示されており、DLBに対しても有用な可能性がある。

現場の限界があるなかで「理想のケア」をすべてこなすのは困難です。しかし、DLB特有の過敏性や不安の強さを理解し、否定も肯定もせずに受容的・共感的な態度で接するという視点を持つだけで、トラブルの発生をぐっと抑えられます。まずは以下の2点を意識してみませんか。

  • 「安全の確保」を第一に考える
  • 本人の世界を否定せず「安心感の提供」に努める

こうした基本に立ち返り、無理のない範囲で寄り添うことが、結果として介護士自身の心の余裕にもつながります。


現場でよく遭遇する「レビー小体型認知症」の典型的な4つの事例

女性の介護職員の画像

日々の業務に追われるなか、レビー小体型認知症(DLB)の方が見せる「不可解な言動」に、どう対応していいか分からず立ち尽くしてしまうことはありませんか。現場では、研修で学んだ知識をそのまま実践する余裕がないことも多いものです。ここでは、多くの介護士が実際に直面している4つの典型的なパターンを整理し、忙しいなかでも外せない対応の視点をまとめました。

【幻視】そこにいない「虫」や「人」が見える訴えへの対応

状況床を指さして「虫が這っている」、壁を見て「知らない人が立っている」と怯えて訴える。
困りごと忙しい時に何度も言われると、つい否定したくなり、本人が興奮して収拾がつかなくなる。
よくある誤解「そんな人いませんよ」と事実を伝えれば納得してくれる、と説得しようとしてしまう。
押さえるべき視点本人には「本物」として見えているため、否定は逆効果です。まずは本人の訴えを否定も肯定もせず、受容的な態度で接して安心感を与えることを最優先します。
出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

幻覚・妄想に対しては受容的に接して不安を軽減させることを第一に考え、特定の人が対象の場合は時間的・物理的距離をとることを考える。改善しない場合はリスペリドン、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾールなどの非定型抗精神病薬を検討する。また、抑肝散も検討してよい。

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

幻覚・妄想への対応として、本人の訴えを否定も肯定もせずに受容的・共感的態度で接し安心感を与えることが重要である。家族内の特定の人が対象となる場合は介護サービス等を利用して距離をとる方法が有用である。抗認知症薬を含めた薬剤が関与している可能性も考慮する。

【認知の変動】さっきまでできていたことが急にできなくなる波

状況朝はご自身で更衣できたのに、午後になるとスタッフの指示が全く入らなくなり全介助になる。
困りごと「さっきはできたのに」と、スタッフ側が意図的な拒否なまけだと感じてイライラしてしまう。
よくある誤解能力が低下したまま固定されていると思い込み、常に全介助にして本人の力を奪ってしまう。
押さえるべき視点理解力や注意力が時間帯で激しく変わるのは病気の特徴です。今の「波」に合わせて、介助の量を柔軟に変える必要があります。
出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

2005年のDLB臨床診断基準において、診断に必須の中心的特徴は進行性の認知機能低下を意味する認知症である。中核的特徴には、認知の変動、具体的な繰り返される幻視、特発性のパーキンソニズムの3つが挙げられる。中核的特徴が2つあればprobable DLB、1つあればpossible DLBと診断される。

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

わが国で行われたランダム化比較試験において、ドネペジルの内服はMMSEスコアやNPI-2(幻覚と認知機能)を改善させた。また、下位項目である認知症症状の変動に有効であり、高用量(10mg)群では介護負担の改善も示された。

【睡眠障害】眠っている間の大声や激しい動きへの対応

状況夜中、寝ているはずなのに突然大声を出し、隣の利用者を殴るような仕草をしたり、ベッドから落ちそうになる。
困りごと他の利用者への迷惑や怪我を恐れてスタッフが焦り、「起きなさい!」と無理に制止してさらに混乱させる。
よくある誤解本人の攻撃的な性格や、一時的な「せん妄」(※3)だと決めつけて対応してしまう。
押さえるべき視点これは「レム期睡眠行動異常症」というDLB特有の症状です。本人は夢の内容に反応しているだけで、悪意はないことを理解しましょう。

(※3)せん妄:体調不良や環境の変化で一時的にパニックや意識の混乱が起きる状態。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

2017年の新診断基準では、レム期睡眠行動異常症が中核的特徴に昇格した。中核的臨床的特徴は、認知の変動、幻視、レム期睡眠行動異常症、およびパーキンソニズム(動作緩慢、寡動、静止時振戦、筋強剛のうち1つ以上)の4項目である。

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

2017年6月に発表された新診断基準では、認知の変動、幻視、レム期睡眠行動異常症、およびパーキンソニズムの4つが中核的特徴として位置づけられた。レム期睡眠行動異常症は、以前の基準では示唆的特徴であったが、この改訂により中核的特徴へと昇格した。

【運動障害】動作が遅くなり転倒しやすくなる状態への対応

状況歩行が非常にゆっくりになり、一歩目が出ない。少し前かがみの姿勢で、小刻みに歩くようになる。
困りごとフロアの移動などで時間がかかり、つい「早く歩いて」と背中を押したり、急かしたりしてしまう。
よくある誤解急かせば早く動けると思い込むが、実際にはバランスを崩しやすくなり、転倒のリスクだけが上がる。
押さえるべき視点パーキンソン症状による「動きにくさ」は本人の努力ではどうにもなりません。安全のため、時間に余裕を持ち、足元の安全を確認することが不可欠です。
出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

パーキンソニズムはDLBにおける転倒のリスク因子である。Parkinson病では歩行訓練リハビリなどが有用とされるが、DLBにおけるこれら非薬物的な介入のエビデンスは現時点で乏しい。

日本神経学会

認知症疾患診療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_03.pdf

病型による転倒リスクの順位は、認知症を伴う Parkinson 病 (PDD) が最も高く、次いで Lewy 小体型認知症 (DLB)、血管性認知症、Alzheimer 型認知症の順となっている。

このように、現場で起きる困りごとの多くは、レビー小体型認知症ならではの身体的・脳的な特徴が原因です。これらを「性格の問題」ではなく「病気の症状」として捉え直すことで、スタッフ側の心理的な負担も軽減されます。目の前の言動に翻弄されそうになったときは、まず以下のポイントを思い出してみましょう。

  • 本人の「見えている世界」を尊重する
  • 能力の波があることを前提にケアを組む
  • 事故防止を最優先に、焦らず対応する

現場の状況は刻一刻と変わりますが、これらの視点を持つことが、本人と介護士双方の安全を守る土台となります。


なぜ、レビー小体型認知症の介助は「難しい」と感じるのか

女性の介護職員の画像

現場では、「さっきは自分で歩けたのに、今は一歩も出ない」「普通に話していたのに、急に話が通じなくなる」といった姿を見て、介助への協力的でない態度だと感じてしまうことがあります。この「できる・できない」の激しいギャップが、私たちの混乱とイライラを招く大きな要因となっています。しかし、その背景には本人の努力や性格ではどうにもならない、脳と体の仕組みによる構造的な理由が隠されています。

さぼりではない、脳の「意識スイッチ」の変動

現場では「わざとやらないのでは」と誤解されがちですが、これは脳の注意や覚醒(※4)のレベルが波のように変化しているためです。意識がはっきりしている時と、ぼんやりして理解力が低下する時の差が激しいのは、病気による「認知の変動」という特徴です。本人もコントロールできない意識のスイッチがあることを理解することが、ケアのストレスを減らす第一歩となります。
(※4)覚醒:目が覚めていて、周囲の状況を認識できる状態。

出典元の要点(要約)
日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

2005年のDLB臨床診断基準において、診断に必須の中心的特徴は進行性の認知機能低下を意味する認知症である。中核的特徴には、認知の変動、具体的な繰り返される幻視、特発性のパーキンソニズムの3つが挙げられる。中核的特徴が2つあればprobable DLB、1つあればpossible DLBと診断される。

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

2017年の新診断基準では、レム期睡眠行動異常症が中核的特徴に昇格した。中核적臨床的特徴は、認知の変動、幻視、レム期睡眠行動異常症、およびパーキンソニズム(動作緩慢、寡動、静止時振戦、筋強剛のうち1つ以上)の4項目である。

本人にはありありと見える「高画質な幻視」

幻視は単なる「見間違い」ではなく、脳の後頭葉(※5)などの血流や代謝が低下し、実在しないものが鮮明に見える現象です。本人には高画質でリアルに見えているため、否定されると「信じてもらえない」という強い不安や恐怖を感じます。この脳の誤作動による「見えている現実」の差が、現場でのコミュニケーションを難しくさせている根本的な原因です。
(※5)後頭葉:脳の後ろ側にあり、視覚情報を処理する役割を担う部分。

出典元の要点(要約)
日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

2017年の新診断基準では、レム期睡眠行動異常症が中核的特徴に昇格した。中核的臨床的特徴は、認知の変動、幻視、レム期睡眠行動異常症、およびパーキンソニズム(動作緩慢、寡動、静止時振戦、筋強剛のうち1つ以上)の4項目である。

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

脳血流シンチグラフィでは、DLBにおいてAlzheimer 型認知症と比較し一次視覚野の血流・代謝低下が早期からみられることが特徴である。単一の検査で診断が難しい場合は、複数の検査を組み合わせることで精度向上が期待される。

命令が体に届かない「パーキンソン症状」

足がすくんだり、筋肉がこわばったりする身体的な症状により、思い通りに動けない状態が生じます。現場の忙しさから無理に急かすと、本人はさらに緊張して体が固まり、バランスを崩して転倒するリスクが高まります。こうした身体の「動きにくさ」は、転倒による骨折などの重大な事故を招きやすいため、もっとも安全管理に注意を払うべき理由の一つです。

出典元の要点(要約)
日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

DLBのパーキンソニズムはPDDと比較して安静時振戦や左右差が少ない。認知機能障害(視空間認知、遂行機能、注意機能など)はDLBの方がより大きいとされる。病理学的にはDLBの方がAlzheimer 病理の併存が多く、PDDでは黒質の神経細胞脱落がより高度である。

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

パーキンソニズムはDLBにおける転倒のリスク因子である。Parkinson病では歩行訓練リハビリなどが有用とされるが、DLBにおけるこれら非薬物的な介入のエビデンスは現時点で乏しい。

理由を知ることは、私たちのイライラを「病気の観察」に変える一歩になります。脳の仕組みによる避けられない変化だと理解すれば、現場の負担も少しずつ軽くなっていくはずです。


現場の「困った」を解決する!レビー小体型認知症FAQ

多忙な業務のなかで、利用者さんの不思議な言動に「自分の対応は間違っていないか」と不安になるのは、あなたが真摯に向き合っている証拠です。現場でよくある疑問について、医学的な根拠に基づいた解決のヒントをまとめました。

Q
幻視に対して「否定してはいけない」と言われますが、話を合わせすぎると症状がひどくなりませんか?
A

本人の不安を和らげることが最優先ですが、事実として肯定(同意)する必要はありません。ガイドラインでは、本人の訴えを否定も肯定もせずに「受容的・共感的態度」で接し、安心感を与えることが重要とされています。特定の人が対象となっている場合は、物理的な距離をとることも有効な手段となります。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患診療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_03.pdf

幻覚・妄想への対応として、本人の訴えを否定も肯定もせずに受容的・共感的態度で接し安心感を与えることが重要である。家族内の特定の人が対象となる場合は介護サービス等を利用して距離をとる方法が有用である。抗認知症薬を含めた薬剤が関与している可能性も考慮する。

Q
薬を服用してから、急に足元がふらついたり、意識がぼんやりしたりすることが増えた気がします。
A

レビー小体型認知症の方は薬剤に対して非常に敏感で、副作用が現れやすいという特徴があります。特にハロペリドールなどの強力な薬剤は、運動症状を悪化させる恐れがあるため、原則として使用を控えるべきとされています。服用後の変化が著しい場合は、早めに医師に相談することが大切です。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

DLBの治療は、認知機能障害やBPSD、自律神経症状など多様な臨床症状に対する対症的治療を基本とする。DLBは薬物療法の有害事象が現れやすいため、環境整備やパーソンセンタードケアなどの非薬物療法が特に重要である。

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

審査情報提供委員会により、器質的疾患に伴うせん妄や易怒性に対し、クエチアピン、ハロペリドール、ペロスピロン、リスペリドンを処方した事例を審査上認める取り扱いが出されている。ただし、ハロペリドールはParkinson病に対して使用禁忌であり、DLBに対しても原則使用を控えるべきである。

Q
夜中に大声を出して暴れたり、隣の利用者を殴るような動作をするのはなぜですか?
A

これは性格の変化ではなく「レム期睡眠行動異常症」という病気の症状である可能性が高いです。眠っている間に夢の内容に合わせて体が動いてしまう現象で、2017年の新基準ではこの疾患の重要な特徴の一つとして位置づけられています。本人は無意識であり、攻撃的な意図はないことを理解しておくことが重要です。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

2017年6月に発表された新診断基準では、認知の変動、幻視、レム期睡眠行動異常症、およびパーキンソニズムの4つが中核的特徴として位置づけられた。レム期睡眠行動異常症は、以前の基準では示唆的特徴であったが、この改訂により中核的特徴へと昇格した。

Q
「調子の波」が激しく、介助の手間に差が出るのですが、良い状態に合わせたプランを立てても良いでしょうか?
A

意識レベルが激しく変わるのがこの病気の特徴です。良い時に合わせすぎると、急に状態が悪くなった際に転倒などの事故につながる恐れがあります。内服薬でこの「変動」が改善することもありますが、現場では常に「今の状態」を観察し、安全を最優先にした介助を行うことが推奨されます。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

わが国で行われたランダム化比較試験において、ドネペジルの内服はMMSEスコアやNPI-2(幻覚と認知機能)を改善させた。また、下位項目である認知症症状の変動に有効であり、高用量(10mg)群では介護負担の改善も示された。

介護現場は毎日が試行錯誤の連続ですが、病気の特徴を「知識のお守り」にすることで、対応の迷いが少しずつ減っていくはずです。すべてを完璧にする必要はありません。まずは安全を第一に、利用者さんとあなた自身の双方が穏やかに過ごせる方法を、チームで探していきましょう。


まとめ:レビー小体型認知症の方と穏やかに過ごすために

レビー小体型認知症(DLB)は、認知機能の低下だけでなく、身体の動きや自律神経など、全身に多様な症状が現れる疾患です。現場で直面する「介助の難しさ」は、本人の性格によるものではなく、脳の病的な変化が引き起こしていることを理解しておくことが大切です。

  • 4つの中核的特徴(認知の変動、具体的で繰り返される幻視、レム期睡眠行動異常症、パーキンソニズム)を正しく把握し、日々の変化を観察しましょう。
  • BPSD(行動・心理症状)に対しては、安易に薬に頼らず、環境整備やパーソンセンタードケアを優先することが原則です。
  • 幻視や妄想を否定せず、受容的・共感的態度で接することで、本人の不安や恐怖を和らげ、不穏の悪化を防ぎます。
  • 便秘や排尿障害などの自律神経症状、および転倒や誤嚥性肺炎といった合併症のリスクを常に意識し、安全を確保しましょう。

まずは「否定しない一言」から始めてみませんか

人員配置の厳しい現場で、理想のケアをすべて完璧にこなすことは困難です。しかし、本人の訴えを否定も肯定もせず、「そう見えていて不安なのですね」と本人の感情を受容するだけで、不穏の連鎖を防げる場合があります。

全部を一度に変えようとせず、できる範囲の安心感の提供から始めてみることが、結果として介助の負担を減らすことにつながります。一つひとつの小さな工夫が、本人と介護士双方の穏やかな生活を支える土台となります。

最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。


更新履歴

  • 2525年9月14日:新規公開
  • 2025年10月21日:一部レイアウト修正
  • 2025年12月19日:より詳細なエビデンス(根拠)に基づき解説を充実させるとともに、最新のサイト基準に合わせて構成・レイアウトを見やすく刷新しました。

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