「否定してはいけない」と頭ではわかっていても、夜勤中に何度も「知らない人がいる」と訴えられると、つい「誰もいません」と遮ってしまう。そんな経験はありませんか?
理想のケアを教わっても、人手不足の現場で難しいと感じることがあります。自分を責める必要はないと考えられます。全部を完璧にするのではなく、「ここだけ押さえれば大丈夫」という現実的な急所だけを整理しました。
この記事を読むと分かること
- 否定も肯定もしない返し方
- 急かすと転倒が増えやすい理由
- 薬に頼らない環境調整のコツ
- 夜間の大声への安全対策
- 介護士の精神的負担の軽減
一つでも当てはまったら、この記事が参考になります
結論:「正しい」ケアよりも「本人に届く」ケアを優先しよう
現場では「幻視を否定してはいけない」と頭ではわかっていても、他の業務が山積みのなかで何度も同じ訴えを繰り返されると、つい「誰もいませんよ!」と声を荒らげてしまうリアルな葛藤があります。
理想のケアを追い求めすぎて介護士自身が追い詰められてしまうのも、また現場の切実な現実です。全部を完璧にする無理があるからこそ、まずは最低限のポイントに絞った、現実的な関わり方を見つけ出すことが解決の手がかりになると考えられます。
薬よりも「環境」と「人との関わり」を意識する
レビー小体型認知症(DLB)の方は、一般的な認知症薬や精神科の薬に対して体が過敏に反応し、副作用が出やすいという特徴があります。
そのため、薬で症状を抑え込もうとするよりも、身の回りの環境を整えたり、その人らしさを尊重するパーソンセンタードケア(※1)を基本とした関わりを優先することが推奨されることがあります。
日常生活に支障がない範囲であれば、まずは見守りと環境整備に重点を置くことが、本人にとってにとっても介護士にとって不穏への配慮としての選択肢となると考えられます。
(※1)パーソンセンタードケア:本人の視点や立場に立って理解しようとするケアの考え方。
出典元の要点(要約)
日本神経学会認知症疾患治療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf
審査情報提供委員会により、器質的疾患に伴うせん妄や易怒性に対し、クエチアピン、ハロペリドール、ペロスピロン、リスペリドンを処方した事例を審査上認める取り扱いが出されている。ただし、ハロペリドールはParkinson病に対して使用禁忌であり、DLBに対しても原則使用を控えるべきである 。
日本神経学会
認知症疾患治療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf
DLBに対する抗精神病薬の使用については、抗精神病薬に対する過敏性(重篤な副作用発現)のエビデンスがある。
日本神経学会、日本認知症学会
認知症疾患診療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_03.pdf
BPSDに対する治療の原則は非薬物療法であり、薬物療法は非薬物療法で効果が不十分な場合に検討される 。
日本神経学会、日本認知症学会
認知症疾患診療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_03.pdf
パーソンセンタードケア person-centered care や、認知症ケアマッピング dementia care mapping (DCM) を用いたケアは、BPSD(特に興奮・攻撃性)に対して有効である。
幻視や不穏の背景にある「不安」を減らすことを第一に考える
「虫がいる」「知らない人がいる」といった本人の訴えは、脳の病的な変化によって起きている可能性がある現象です。これを理屈で否定すると、本人は「誰も信じてくれない」という恐怖や孤独感を深め、さらなる興奮や攻撃性を招く可能性があります。
現場の忙しい時間帯であっても、まずは本人が何に怯えているのか、痛いところはないかといった要因を評価することが大切だと考えられます。
幻覚などの症状をゼロにしようとするのではなく、社会的交流や適切な刺激を通じて、本人が安心感を持てる環境を作ることが、不穏(※2)を鎮める助けになることがあります。
(※2)不穏:落ち着きがなく、興奮したり騒いだりしている状態。
出典元の要点(要約)
日本神経学会認知症疾患治療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf
DLBの幻視は、人物や小動物などが具体的かつ詳細に出現し、繰り返し現れる特徴がある。
日本神経学会、日本認知症学会
認知症疾患診療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_03.pdf
診断や治療効果の判定には、身体的・環境的・心理的要因の影響を受けて出現するBPSDを見逃さないための評価尺度の選択・実施が有用である。
日本神経学会、日本認知症学会
認知症疾患診療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_03.pdf
BPSDの発現要因には身体的要因(痛み、便秘など)、環境的要因(ケアの適切さ、刺激の量など)、心理的要因(不安、孤独など)が含まれる。
現場の限界があるなかで「理想のケア」をすべてこなすのは困難です。しかし、DLB特有の過敏性や不安の強さを理解し、否定も肯定もしずに受容的・共感的な態度で接するという視点を持つだけで、トラブルの発生をぐっと抑えられます。まずは以下の2点を意識してみませんか。
- 「安全の確保」を第一に考える
- 本人の世界を否定せず「安心感の提供」に努める
現場でよく遭遇する「レビー小体型認知症」の代表的な3つの事例
日々の業務に追われるなか、レビー小体型認知症(DLB)の方が見せる「不可解な言動」に、どう対応していいか分からず立ち尽くしてしまうことはありませんか。
現場では、研修で学んだ知識をそのまま実践する余裕がないことも多いものです。ここでは、多くの介護士が実際に直面している3つの典型的なパターンを整理しました。
【幻視】「虫がいる」の否定が招くパニック
床を指さして「虫が這っている」と怯える利用者に、忙しさからつい「そんなものいません!」と正論で否定してしまうことがあります。
しかし、本人にはその光景が「本物」のようにありありと見えています。頭ごなしの否定は「嘘つき扱いされた」という不信感を生み、余計に興奮させる要因となると考えられます。
嘘をついて話を合わせる必要はありませんが、否定もせず「そう見えて怖いのですね」と感情を受け止めることが、パニックを鎮める第一歩になると考えられます。
出典元の要点(要約)
日本神経学会認知症疾患治療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf
DLBの幻視は、人物や小動物などが具体的かつ詳細に出現し、繰り返し現れる特徴がある。
日本神経学会、日本認知症学会
認知症疾患診療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_03.pdf
パーソンセンタードケア person-centered care や、認知症ケアマッピング dementia care mapping (DCM) を用いたケアは、BPSD(特に興奮・攻撃性)に対して有効である。
【動作】良かれと思った「急かし」と転倒
食事や歩行が極端に遅くなった時、「ほら、早くして」と背中を押したり、強い口調で促したりしていませんか?
これは「やる気がない」のではなく、パーキンソニズムによる身体の強張りや、認知機能の変動が要因と考えられます。
焦らせるような声かけは、本人の緊張を高めて体をさらに動かなくさせる(すくみ)だけでなく、転倒リスクが高まることがあります。
出典元の要点(要約)
日本神経学会認知症疾患治療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf
病初期には記憶障害が目立たない場合があり、記憶以外の認知機能(注意、遂行機能、視空間認知など)の障害や、レム期睡眠行動異常症、パーキンソニズム、自律神経症状、嗅覚障害、うつ症状などの有無に留意することが早期診断のポイントとなる。
日本神経学会、日本認知症学会
認知症疾患診療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_03.pdf
BPSDの発現要因には身体的要因(痛み、便秘など)、環境的要因(ケアの適切さ、刺激の量など)、心理的要因(不安、孤独など)が含まれる。
【薬】「とりあえず薬」が生む過鎮静
夜間の不穏や興奮に対して、すぐに抗精神病薬(頓服など)を使用して対応しようとすることがあります。
しかし、DLBの方は「薬剤過敏性」が高く、薬が効きすぎて長時間起きられなくなったり(過鎮静)、飲み込みが悪くなったりする副作用が出やすい傾向があります。
特にハロペリドールなどの強い薬は、原則として使用を控えるべきとされており、安易な使用は控えるべきとされることがあります。
出典元の要点(要約)
日本神経学会認知症疾患治療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf
審査情報提供委員会により、器質的疾患に伴うせん妄や易怒性に対し、クエチアピン、ハロペリドール、ペロスピロン、リスペリドンを処方した事例を審査上認める取り扱いが出されている。ただし、ハロペリドールはParkinson病に対して使用禁忌であり、DLBに対しても原則使用を控えるべきである 。
日本神経学会
認知症疾患治療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf
DLBに対する抗精神病薬の使用については、抗精神病薬に対する過敏性(重篤な副作用発現)のエビデンスがある。
現場で起きる困りごとの中には、本人の性格ではなく「病気の症状」と考えられます。これらを「わざとやっている」と誤解せず、脳の仕組みによる現象だと捉え直すことで、スタッフ側のイライラや心理的な負担の軽減につながることがあります。
なぜ、レビー小体型認知症の介助は「難しい」と感じるのか
現場では、「さっきは自分で歩けたのに、今は一歩も出ない」「普通に話していたのに、急に話が通じなくなる」といった姿を見て、介助への協力的ではない態度だと感じてしまうことがあります。
この「できる・できない」の激しいギャップが、私たちの混乱とイライラを招く大きな要因となっていると考えられます。
しかし、その背景には本人の努力や性格ではどうにもならない、脳と体の仕組みによる構造的な理由が隠されています。
本人にはありありと見える「高画質な幻視」
幻視は単なる「見間違い」ではありません。DLBの幻視は、人物や小動物などが具体的かつ詳細に、繰り返し出現するという特徴があります。
本人には非常にリアルな「現実」として見えているため、否定されることは「事実を信じてもらえない」という強い恐怖やストレスにつながります。
この脳の誤作動による「見えている現実のズレ」が、現場でのコミュニケーションを難しくさせている一因と考えられます。
出典元の要点(要約)
日本神経学会認知症疾患治療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf
DLBの幻視は、人物や小動物などが具体的かつ詳細に出現し、繰り返し現れる特徴がある。
命令が体に届かない「パーキンソン症状」
足がすくんだり、筋肉がこわばったりするパーキンソニズムにより、脳からの「動け」という指令が体に届かない状態が生じることがあります。
現場の忙しさから無理に急かすと、本人はさらに緊張して体が固まり、バランスを崩して転倒するリスクが高まることがあります。
こうした身体症状に加え、自律神経症状なども合併しやすいため、本人の意思とは無関係に「動けない」状況が生まれていると考えられます。
出典元の要点(要約)
日本神経学会認知症疾患治療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf
病初期には記憶障害が目立たない場合があり、記憶以外の認知機能(注意、遂行機能、視空間認知など)の障害や、レム期睡眠行動異常症、パーキンソニズム、自律神経症状、嗅覚障害、うつ症状などの有無に留意することが早期診断のポイントとなる。
薬が効きすぎる「薬剤過敏性」という体質
「少し落ち着いてほしい」と使った薬が、DLBの方にとっては強すぎることがあります。
DLBは抗精神病薬に対する過敏性があり、重篤な副作用出やすいという医学的なエビデンス(証拠)があります。
一般的な認知症の方なら問題ない量でも、DLBの方には過鎮静や身体機能の悪化を招く恐れがあるため、「薬に弱い体質」であることを理解しておく必要があると考えられます。
出典元の要点(要約)
日本神経学会認知症疾患治療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf
DLBに対する抗精神病薬の使用については、抗精神病薬に対する過敏性(重篤な副作用発現)のエビデンスがある。
理由を知ることは、私たちのイライラを「病気の観察」に変える一歩になると考えられます。これらはすべて脳と身体の仕組みによる避けにくい変化であり、介護士のスキルだけの問題ではないと考えられます。そう理解するだけで、現場の負担も少しずつ軽くなることがあります。
現場の「困った」を解決する!レビー小体型認知症FAQ
多忙な業務のなかで、利用者さんの不思議な言動に「自分の対応は間違っていないか」と不安になるのは、あなたが真摯に向き合っている表れです。
現場でよくある疑問について、医学的な根拠に基づいた解決のヒントをまとめました。
- Q幻視に対して「否定してはいけない」と言われますが、話を合わせすぎると症状がひどくなりませんか?
- A本人の不安を和らげることが最優先ですが、対応として肯定(同意)する必要はありません。ケアの考え方では、本人の訴えを否定も肯定もせずに「受容的・共感的態度」で接し、安心感を与えることが重要とされることがあります。
出典元の要点(要約)
日本神経学会、日本認知症学会
認知症疾患診療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_03.pdf
パーソンセンタードケア person-centered care や、認知症ケアマッピング dementia care mapping (DCM) を用いたケアは、BPSD(特に興奮・攻撃性)に対して有効である。
日本神経学会
認知症疾患治療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf
DLBの幻視は、人物や小動物などが具体的かつ詳細に出現し、繰り返し現れる特徴がある。
- Q薬を服用してから、急に足元がふらついたり、意識がぼんやりしたりすることが増えた気がします。
- Aレビー小体型認知症の方は薬剤に対して非常に敏感で、副作用が現れやすいという特徴があります。特にハロペリドールなどの強力な薬剤は、運動症状を悪化させる恐れがあるため、原則として使用を控えるべきとされることがあります。服用後の変化が著しい場合は、早めに医師に相談することが大切だと考えられます。
出典元の要点(要約)
日本神経学会
認知症疾患治療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf
審査情報提供委員会により、器質的疾患に伴うせん妄や易怒性に対し、クエチアピン、ハロペリドール、ペロスピロン、リスペリドンを処方した事例を審査上認める取り扱いが出されている。ただし、ハロペリドールはParkinson病に対して使用禁忌であり、DLBに対しても原則使用を控えるべきである 。
日本神経学会
認知症疾患治療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf
DLBに対する抗精神病薬の使用については、抗精神病薬に対する過敏性(重篤な副作用発現)のエビデンスがある。
- Q夜中に大声を出して暴れたり、隣の利用者を殴るような動作をするのはなぜですか?
- Aこれは性格の変化ではなく「レム期睡眠行動異常症」という病気の症状である可能性があります。眠っている間に夢の内容に合わせて体が動いてしまう現象で、重要な特徴の一つです。本人は無意識であり、攻撃的な意図はないことを理解しておくことが重要だと考えられます。
出典元の要点(要約)
日本神経学会
認知症疾患治療ガイドライン2017
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf
病初期には記憶障害が目立たない場合があり、記憶以外の認知機能(注意、遂行機能、視空間認知など)の障害や、レム期睡眠行動異常症、パーキンソニズム、自律神経症状、嗅覚障害、うつ症状などの有無に留意することが早期診断のポイントとなる。
介護現場は毎日が試行錯誤の連続ですが、病気の特徴を「知識のお守り」にすることで、対応の迷いが少しずつ減っていくと考えられます。すべてを完璧にする必要はないと考えられます。まずは安全を第一に、利用者さんとあなた自身の双方が穏やかに過ごせる方法を、チームで探していきましょう。
まとめ:レビー小体型認知症の方と穏やかに過ごすために
レビー小体型認知症(DLB)は、認知機能の低下だけでなく、身体の動きや自律神経など、全身に多様な症状が現れる疾患です。
現場で直面する「介助の難しさ」は、本人の性格によるものではなく、脳の病的な変化が引き起こしていることを理解しておくことが大切だと考えられます。
4つの中核的特徴(認知の変動、具体的で繰り返される幻視、レム期睡眠行動異常症、パーキンソニズム)を正しく把握し、日々の変化を観察しましょう。
BPSD(行動・心理症状)に対しては、安易に薬に頼らず、環境整備やパーソンセンタードケアを優先することが原則とされています。
幻視や妄望を否定せず、受容的・共感的態度で接することで、本人の不安や恐怖を和らげ、不穏の悪化を防ぐ助けになることがあります。
便秘や排尿障害などの自律神経症状、および転倒や誤嚥性肺炎といった合併症のリスクを常に意識し、安全の確保に努めましょう。
まずは「否定しない一言」から始めてみませんか
人員配置の厳しい現場で、理想のケアをすべて完璧にこなすことは困難です。
しかし、本人の訴えを否定も肯定もせず、「そう見えていて不安なのですね」と本人の感情を受容するだけで、不穏の連鎖を抑えられる場合があります。
全部を一度に変えようとせず、できる範囲の安心感の提供から始めてみることが、結果として介助の負担が減ることにつながる場合があります。
一つひとつの小さな工夫が、本人と介護士双方の穏やかな生活を支える土台になると考えられます。
最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。
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更新履歴
- 2025年9月14日:新規公開
- 2025年10月21日:一部レイアウト修正
- 2025年12月19日:より詳細なエビデンス(根拠)に基づき解説を充実させるとともに、最新のサイト基準に合わせて構成・レイアウトを見やすく刷新しました。
- 2026年1月29日:内容をリライト







