介護職のための「せん妄」判断ガイド|認知症との決定的な違い

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昨日までは穏やかだったのに、急に変化する利用者。
「私の介助が悪かった?」「また進行した?」と自分を責めていませんか。
人手不足で余裕がない現場では、この急な変化が大きな負担になることがあります。

もしこの変化が認知症の進行ではなく、急性に発症する「せん妄」だとしたら。
完璧なケアは難しくても、見分けるポイントを押さえることが状況の変化につながる可能性があります。
あなたの不安を判断材料に変え、適切な医療連携へつなげる準備をするとよいでしょう。

この記事を読むと分かること

  • 認知症とせん妄の決定的な違い
  • 急な変化を見分ける5つの視点
  • 医師に正しく伝える記録のコツ

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • 夕方になると別人のように荒れる
  • 昨日まで普通だったのにと戸惑う
  • 進行だから仕方ないと諦めている
  • 医師に年のせいだと流された

結論:認知症とせん妄の決定的な違い

男性入居者の画像

「理想的なケアが必要なのはわかるけど、人員不足でそこまで手が回らない」
「夜勤のワンオペ中に急変されると、とにかく落ち着かせることで精一杯」

現場からは、そんな切実な声が聞かれることがあります。
全部を完璧に見る必要はないと考えられます。
ここだけ押さえれば、迷いは減る可能性があります。

1. 発症の速さと経過の違い

最大の違いは、症状が出るスピードです。
現場で観察する際は、以下の違いに注目してください。

比較項目認知症せん妄
発症の速さ広汎に継続的に低下(ゆっくり)急性に発症(急激)
経過変化はあまりない症状の変動がある(波)

「昨日までは普通だったのに」という場合は、認知症の進行ではなくせん妄の可能性があると考えられます。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

認知症とは,一旦正常に発達した知能が後天的に器質的な脳の障害によって広汎に継続的に低下し,日常的な生活を営めない程度にまで衰退した状態と定義されている。

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

せん妄の特徴としては,急性に発症し(発症の急性),1日の中で症状の変動がみられ(症状の変動),身体的,精神的苦痛を伴うことである。

2. 意識と注意のレベル

話しかけても反応が鈍い時は確認してください。

比較項目認知症せん妄
意識の状態多くははっきりしている(清明)意識がボーッとしている(混濁)
注意のレベル状況をある程度把握できる注意散漫で集中できない

外からの刺激を適切に処理できない状態とされます。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

意識障害がないこと(診断基準)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

せん妄とは,軽度の意識混濁に加えて,注意の集中・維持・転換の障害により,外からの刺激を適切に処理できない状態

3. 直接的な原因(直接因子)

直接的な原因が関与するかどうかも違いの一つです。

認知症は脳の障害により機能が継続的に低下していくとされます。
対してせん妄は、身体疾患や薬剤などが直接的な原因として働くことがあります。

「治らない」と決めつけずに、原因を探すことが重要だと考えられます。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

身体疾患,薬剤などが直接因子として働き,準備因子を持つ患者に発症する

認知症は「継続的な低下」で意識は清明ですが、せん妄は「急性の発症」で意識・注意が障害され、1日の中で変動します。この違いを見極めることが、区別の手がかりとなる可能性があります。

よくある事例:現場で「認知症悪化」と誤解される3つの場面

男性入居者の画像

「マニュアルが必要なのは分かるけど、ワンオペ夜勤の最中に教科書なんて開いていられない」
「家族に『なんで急に悪くなったの』と責められると、つい『進行ですね』と答えてしまいたくなる」

現場では、そんな葛藤が起こりやすいと考えられます。
しかし、以下の3つの場面は、認知症の進行ではなく「せん妄」である可能性があるケースです。
ここだけ押さえれば、対応の迷いは減らせる可能性があります。

1. 「夕方になると人が変わる」夕暮れ時の豹変

状況日中は穏やかなのに、夕方になると「帰る!」と叫び出す。
困りごと多忙な時間帯に重なり、つい強い口調で制止して自己嫌悪に。
誤解認知症が進んで、ワガママになった。
視点1日の中で症状が揺れる(日内変動)はせん妄のサインかもしれません。
出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

1日の中で症状の変動がみられ(症状の変動)

2. 「入院したら急にボケた」環境変化後の混乱

状況入院や施設入所した直後から、辻褄の合わないことを言い出す。
困りごと家族から「預けたせいでボケた」と責められる。
誤解環境の変化で一気に認知症になった。
視点環境変化やストレスは誘発因子です。一時的な意識の曇りの可能性があります。
出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

環境の変化,心理的ストレス,睡眠剥奪,身体拘束などが誘発因子となる

3. 「話が全然通じない」注意力の散漫

状況話しかけても視線が定まらず、すぐに別のことに気が取られる。
困りごと食事や着替えの介助が進まず、業務が押してしまう。
誤解理解力が落ちてしまった。
視点せん妄による「注意の障害」が起きている可能性があります。
出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

注意の集中・維持・転換の障害により,外からの刺激を適切に処理できない状態

夕方の急変、環境変化後の混乱、注意力の散漫。これらは認知症の悪化とは限らず、せん妄のサインかもしれません。この視点を持つことで、不必要な「諦め」を防ぐことにつながる可能性があります。


なぜ「せん妄」は見過ごされ、悪化してしまうのか?

女性の介護職員の画像

「利用者のために良かれと思って薬を調整したのに、逆に暴れ出してしまった」
安心安全な環境を作っているつもりなのに、なぜか落ち着かない」

現場では、そんな矛盾に苦しむことがあると考えられます。
なぜ、せん妄は見過ごされ、時にはケアしているつもりで悪化してしまうのでしょうか。
そこには、現場の努力だけではどうにならない構造的な原因があると考えられます。

1. 認知症とせん妄は「セット」で現れやすい

現場を悩ませるのは、「認知症の人は、せん妄になりやすい」という点だと考えられます。

建前認知症とせん妄は別物なので、明確に区別して対応する。
現実認知症そのものが準備因子(土台)となり、発症しやすい状態を作ることがある。

そのため、認知症はせん妄を発症しやすい状態を作ることがあります。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

高齢,認知症,脳卒中の既往などは準備因子となり,せん妄を発症しやすい状態を作る

2. 「良かれと思った薬」や「体調不良」が引き金になる

きっかけ(直接因子)が、目に見えにくいことも見逃される理由の一つです。

建前薬は症状を良くするために使うもの。
現実身体疾患や薬剤などが直接因子として働き、引き金となることがある。

「薬を変えたから安心」ではなく、「薬を変えた後は注意」という視点が必要だと考えられます。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

身体疾患,薬剤などが直接因子として働き,準備因子を持つ患者に発症する

3. 「忙しさ」が生む心理的ストレス

心理的な配慮が追いつかない現場の状況も、症状を複雑にする可能性があります。

建前常に受容的な態度で、自尊心を尊重して関わる。
現実業務に追われ、早口やペースを待てない介助が心理的負荷になる。

心理的特徴に応じたかかわり方としてのポイントが示されています。

こうした日常の関わりについてのポイントが示されています。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

認知症ケア法ー認知症の理解

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

心理的特徴に応じたかかわり方として、価値観や考え方、習慣を受容する、幼児語を使わず自尊心を尊重する、不快でない距離や目線の高さに留意する、相手の表情を確認しながら話しかける、相手のペースに合わせ気持ちを汲み取る、家族とだけ話したりせず相手を置き去りにしないといったポイントがある。

厚生労働省

認知症ケア法ー認知症の理解

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

身体的なかかわり方として、相手が認識しやすい立ち位置をとる、麻痺や筋力低下時は座ってもらうなど安定した体勢を確保する、はっきりとした声で聞こえやすい大きさで話す、苦痛がないか確認しつつ表情に留意する、声の調子に気をつけてゆっくり話す、身振りや手振りを織り交ぜながら話すといったポイントがある。

認知症は準備因子となり、身体疾患や薬剤などが直接因子として働くことがあります。


現場の「これってどっち?」に答える FAQ

「認知症だから仕方ない」と割り切れない、現場の小さな迷いにエビデンスをもとにお答えできればと思います。

Q
せん妄は、適切な対応で元に戻る可能性はありますか?
A
せん妄は、急性に発症し、1日の中で症状の変動がみられることがあります。また、身体疾患や薬剤などの直接的な原因が関与することがあります。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

身体疾患,薬剤などが直接因子として働き,準備因子を持つ患者に発症する

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

せん妄の特徴としては,急性に発症し(発症の急性),1日の中で症状の変動がみられ(症状の変動),身体的,精神的苦痛を伴うことである。

Q
急に暴れ出したり混乱したりした時、まず何を確認すべきですか?
A
まずは身体の異変を確認してください。身体疾患や薬剤などが「直接的な原因」として働くことがあるからです。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

身体疾患,薬剤などが直接因子として働き,準備因子を持つ患者に発症する

Q
現場の対応だけでは限界を感じる場合、どのような連携ができますか?
A
専門の多職種チームによるサポートを受けられる場合があると考えられます。病院などでは「認知症・せん妄サポートチーム(D2ST)」のようなチームが組織されており、多職種が協働して適切なケアにあたり、ケアの質の向上や早期退院を目指す専門チームであるとされています。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

認知症・せん妄サポートチーム(Dementia & Delirium Support Team:D2ST)は,身体疾患で入院している認知症患者やせん妄を呈する患者に対し,多職種が協働して適切なケアにあたり,ケアの質の向上や早期退院を目指す専門チームである。

Q
急変に驚いている家族には、どのように説明すればよいでしょうか?
A
入院前後の療養環境に関する情報提供などが行われることがあります。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

精神保健福祉士は,入院前の療養環境に関する情報提供、退院後の療養環境に関する情報提供・提言、社会的資源の利用や退院を見据えた調整の要点に関する提言、経済的状況のアセスメントに関する情報提供を行う。(※多職種連携による家族支援の文脈より)

「認知症の悪化」と決めつけず、まずは身体や薬の影響による「せん妄」を疑ってみるとよいでしょう。身体疾患や薬剤などが直接因子として働くことがあり、専門の多職種チームによるサポートを受けられる場合があります。


まとめ:認知症とせん妄を見分け、現場の諦めを安心に変えるために

「認知症だから仕方ない」と割り切ることで、なんとか自分を保っている現場の忙しさは分かります。
目の前の混乱に、一人で立ち向かうのは本当に孤独な戦いだと感じられることがあります。

しかし、この記事で見てきたように、認知症は広汎かつ継続的な低下であるのに対し、せん妄は急性の発症と変動が特徴です。
この違いを知ることは、利用者の回復のチャンスを守ることにつながる可能性があり、あなた自身の心の余裕にも繋がる可能性があります。

明日からの無理のない一歩として、記録の書き方を変えてみるのも一つの方法です。
単に「不穏」とまとめるのではなく、「いつから始まったか」「状態に波があるか」をメモするだけです。
その小さな事実の積み重ねが、医師や多職種チームを動かす根拠になる可能性があります。

完璧を目指す必要はありません。
まずは「認知症とは違うかもしれない」と疑う目を持つことから始めてみるとよいでしょう。
最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。



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更新履歴

  • 2025年9月25日:新規公開
  • 2026年2月18日:より詳細なエビデンス(根拠)に基づき解説を充実させるとともに、最新のサイト基準に合わせて構成・レイアウトを見やすく刷新。

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