それは「指導」か「パワハラ」か? 介護現場の人間関係に悩む人が知るべき法的境界線

介護現場で日々業務にあたる中で、「これは指導だから」と我慢しているその厳しい言動は、本当に「適正な指導」でしょうか? それとも、あなたの心身を害する「パワーハラスメント」でしょうか?

人手不足が続く(出典:介護労働安定センター)介護の現場では、その「法的境界線」が曖昧なまま、個人の我慢によって見過ごされがちです。

あなたの心とキャリアが壊れてしまう前に、厚生労働省などが示す「法的根拠」を知り、自分を守る術を身につけることが重要です。

一つでも当てはまったら、この記事がきっと役に立ちます。

  • 上司や先輩から、大声や威圧的な態度で叱責され、恐怖を感じる。
  • ミスを指摘されるだけでなく、「使えない」「向いてない」など人格を否定する言葉を言われる。
  • 自分のミスではないのに、「あなたのせいだ」と責任を転嫁(他責)される。
  • 「指導の一環だ」と言われ、辛さを相談しても「我慢が足りない」と取り合ってもらえない。
  • 特定の人とシフトが一緒だと、出勤前に動悸がしたり、胃が痛くなったりする。

この記事を知っていると

  • あなたが受けている言動が「適正な指導」か「パワハラ」か、厚生労働省の定義に基づく「法的境界線」を客観的に判断できます。
  • そのストレスが「月70時間のサービス残業」に匹敵する深刻な健康被害(出典:労働安全衛生総合研究所)に繋がり得ることをデータで理解できます。
  • 我慢して心身を壊す前に、自分を守るために今すぐ何をすべきか(法的根拠に基づく具体的な行動)がわかります。

この記事が、あなたが「自分は悪くない」と確信し、ご自身の尊厳とキャリアを守るための具体的な行動を起こす、最初の一歩となることを願っています。


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結論:その言動は「指導」ではなく「ハラスメント」の可能性が高いです

介護現場で人間関係に悩むあなたに、まず知っておいてほしい「結論」からお伝えします。我慢を続けることは、あなたの心身を壊すことにつながりかねません。その言動は「指導」ではなく、法的に対処すべき「問題」である可能性が極めて高いです。

男性介護職員と女性介護職員

「人格否定」は「適正な指導」の範囲を超えている

業務上の指導において、最も重要な境界線は「人格を否定するかどうか」です。厚生労働省のパンフレットでは、「人格を否定するような言動等業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動がなされれば、当然、職場におけるパワーハラスメントに当たり得ます。」と明確に記されています。
「使えない」「頭が悪い」といった発言は、業務上の指導ではなく、許されない言動です。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

職場におけるハラスメント対策パンフレット

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001338359.pdf

「人格を否定する」言動は、必要性・相当性の範囲を明らかに逸脱しており、パワーハラスメントに当たり得ると明記される。威圧的な理詰め・面前での人格攻撃・侮辱などは、当該事実と態様の総合評価により該当性が判断される。

記事では、タイプ別対応の根拠として、“人格否定の回避”“事実の限定”“感情的反応を避ける”という基本姿勢の理由付けに使える。

「威圧的な叱責」も「精神的な攻撃」に該当し得る

「指導」であれば、どのような方法でも許されるわけではありません。厚生労働省は、パワハラスメントの類型である「精神的な攻撃」の例として、「大声での威圧的な叱責」や「長時間にわたる厳しい叱責」を挙げています。たとえ内容が正当な指導であっても、その「態様(やり方)」が他者の面前であったり、威圧的であったりすれば、それは「適正な指導」の範囲を超えたと判断される可能性があります。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

リーフレット「2020年(令和2年)6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!」

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000683138.pdf

「精神的な攻撃」の該当例として、人格否定、長時間叱責、面前での威圧的叱責等が明示。該当する言動の具体像をタイプ別に照合し、速やかに遮断・記録・エスカレーションする運用が求められる。

我慢は「月70時間の残業」に匹敵する健康被害に繋がる

「指導だから」と我慢を続けると、心身に深刻な影響が出ることがあります。ある実証分析(労働安全衛生総合研究所)では、職場のハラスメントがメンタルヘルスを悪化させる影響は、「月あたり約70時間に相当する」サービス残業がメンタルヘルスを悪化させる効果に匹敵するという結果が報告されています。 これは「気のせい」や「甘え」ではなく、客観的な健康被害であり、労働者の離職意向を高めることも示唆されています。

出典元の要点(要約)

労働安全衛生総合研究所

職場のハラスメントがメンタルヘルスや組織に与える影響-中小企業従業者パネルデータを用いた実証分析-

https://www.jstage.jst.go.jp/article/josh/advpub/0/advpub_JOSH-2021-0021-GE/_pdf

ハラスメントの影響を長時間労働に換算した比較では「月あたり約70時間に相当」とされ、負の影響が極めて大きい。現場では、威圧・長時間詰問・人格攻撃などの抑制が、長時間労働是正と同等以上の健康投資であることを示す根拠となる。

労働安全衛生総合研究所

職場のハラスメントがメンタルヘルスや組織に与える影響-中小企業従業者パネルデータを用いた実証分析-

https://www.jstage.jst.go.jp/article/josh/advpub/0/advpub_JOSH-2021-0021-GE/_pdf

ハラスメントは健康影響だけでなく「離職意向」を高める。人員が薄い介護現場では、威圧的・非傾聴・過大要求などの行動パターンを早期に是正しないと、離職や欠員の連鎖を招く。制度的対応(相談・記録・措置・再発防止)が離職抑制に直結する。

対策は「会社の義務」であり、相談は「あなたの権利」である

もし今、あなたが「相談しても無駄だ」「かえって不利になる」と不安に思っていても、法律は労働者を守るように定められています。 厚生労働省の指針にもある通り、パワハラ防止措置を講じることは「全ての事業主の義務」です。また、あなたが相談したことを理由に解雇や降格などの「不利益な取扱い」をすることも法律で厳しく禁止されています。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

リーフレット「2020年(令和2年)6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!」

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000683138.pdf

法改正でパワハラ防止措置が義務化。タイプ別対応は“任意のマナー”ではなく、制度に基づく運用(相談・事実確認・措置・再発防止)として設計すべきことを示す。

厚生労働省

職場におけるハラスメント対策パンフレット(総合版)

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

防止措置の義務化と、相談・協力を理由とする「不利益取扱いの禁止」を明記。相談を安全に促す仕組み(守秘・二重窓口・報復防止)を、現場運用の前提に据える。

このように、あなたが受けている苦痛は、個人の我慢で解決すべき問題ではなく、「法的根拠」をもって対処すべき問題です。自分を責める必要は一切ありません。まずは正しい知識を持つことが、あなた自身を守る第一歩です。


よくある事例:その言動は「法的境界線」を超えていませんか?

導入でお聞きした「よくある悩み」が、なぜ「適正な指導」の境界線を超える可能性があるのか。厚生労働省のガイドラインに基づき、介護現場の具体的な事例を見ていきましょう。

男性介護職員と女性介護職員

事例1:「指導」を名目にした「人格否定」

「こんなこともできないの?」「本当に使えない」「介護職に向いてない」 このような人格を否定するような言動は、厚生労働省のパンフレットでも「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」であり、「当然、職場におけるパワーハラスメントに当たり得ます。」と明確に記されています。これは業務上のミスを指摘する「指導」とは異なり、個人の尊厳を傷つける「精神的な攻撃」に該当し得るものです。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

職場におけるハラスメント対策パンフレット

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001338359.pdf

「人格を否定する」言動は、必要性・相当性の範囲を明らかに逸脱しており、パワーハラスメントに当たり得ると明記される。威圧的な理詰め・面前での人格攻撃・侮辱などは、当該事実と態様の総合評価により該当性が判断される。記事では、タイプ別対応の根拠として、“人格否定の回避”“事実の限定”“感情的反応を避ける”という基本姿勢の理由付けに使える。

事例2:他の職員の前での「公開処刑(威圧的な叱責)」

他の職員が見ている前で、大声で威圧的に叱責されたり、長時間にわたり理詰めで詰問されたりするケースです。 たとえ指導目的であったとしても、その「態様(やり方)」が社会通念に照らして相当性を欠いています。厚生労働省は、パワハラスメントの類型である「精神的な攻撃」の例として、「他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責」や「長時間にわたり厳しい叱責」を挙げています。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

リーフレット「2020年(令和2年)6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!」

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000683138.pdf

「精神的な攻撃」の該当例として、人格否定、長時間叱責、面前での威圧的叱責等が明示。該当する言動の具体像をタイプ別に照合し、速やかに遮断・記録・エスカレーションする運用が求められる。

事例3:「あなたのせい」という責任転嫁(過大な要求)

「あなたのせいでフロアが回らない」「あの利用者の対応は全部あなたがやって」など、特定の職員にだけ業務を押し付けたり、本人の能力や経験をはるかに超える業務を強制するケースです。 厚生労働省は、パワハラの類型の一つとして「過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)」を挙げています。責任転嫁もこれに含まれ、これも「適正な指導」の範囲を超えた言動と判断され得ます。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

職場におけるハラスメント対策パンフレット

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001338359.pdf

本パンフレットは、パワーハラスメントの定義を「職場において行われる」「優越的な関係」「相当な範囲を超える」「就業環境が害される」の三要素で示し、判断の骨格を明確化している。定義を前提に、職場での言動の線引きと、相談・事実確認・事後対応・再発防止までの流れを組織的に整備することを要請している。これにより、威圧的・独善的・無視・過大要求等の具体的言動が、何をもって該当するかを実務で運用できる構成になっている。

これらの事例のように、指導の名目であっても「人格を否定する」「態様が威圧的である」「過大な要求である」場合は、その言動は「適正な指導」の法的境界線を超えている可能性が非常に高いです。


なぜ、その言動は「問題」となり、会社は「対応義務」を負うのか?

なぜ「威圧的な叱責」や「人格否定」が個人の我慢の問題ではなく、「法的問題」として扱われるのでしょうか。それには「法律による定義」と「会社の責任」という明確な理由が存在します。

女性の介護職員の画像

法律が「パワーハラスメント」を定義している

まず、何がパワーハラスメントに該当するかは、厚生労働省によって明確に定義されています。 それは、「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの」という3つの要素を全て満たすもの、とされています。 あなたが受けている「人格否定」や「威圧的な叱責」が、この3要素を満たしているかどうかが法的な判断基準となります。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

職場におけるハラスメント対策パンフレット

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001338359.pdf

本パンフレットは、パワーハラスメントの定義を「職場において行われる」「優越的な関係」「相当な範囲を超える」「就業環境が害される」の三要素で示し、判断の骨格を明確化している。定義を前提に、職場での言動の線引きと、相談・事実確認・事後対応・再発防止までの流れを組織的に整備することを要請している。これにより、威圧的・独善的・無視・過大要求等の具体的言動が、何をもって該当するかを実務で運用できる構成になっている。

ハラスメント対策は「会社の義務」である

パワーハラスメントへの対策は、会社の「努力目標」ではありません。労働施策総合推進法(パワハラ防止法)により、「全ての事業主がパワーハラスメントの防止措置義務の対象」となっています。 会社(事業主)は、相談体制を整備し、ハラスメントが発生した場合は迅速かつ適切に対応するなど、「雇用管理上必要な措置」を講じなければならない法的な義務を負っています。

出典元の要点(要約)

厚生労働省 雇用環境・均等局

職場のハラスメントに関する実態調査 結果概要(令和5年度)

https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001259093.pdf

完全施行後は「全ての事業主」が義務対象。記事では、各タイプ別対応(威圧・非傾聴・他責)を、義務に基づく運用(相談体制・評価・再発防止)に接続して提示する。

介護現場こそ「人間関係」が離職の主因である

特に介護現場において、この問題は深刻です。公益財団法人 介護労働安定センターの「介護労働実態調査」では、「前職を辞めた理由は収入よりも人間関係」が上位にあることが示されています。 つまり、介護職員が職場を去る大きな引き金が、職場の人間関係にあるのです。

出典元の要点(要約)

公益財団法人 介護労働安定センター

令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要

https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/2022r01_chousa_kekka_gaiyou_0822.pdf

前職退職理由では「人間関係」が収入を上回る。介護現場におけるタイプ別対応(威圧・非傾聴・他責・孤立化の防止など)の制度化は、採用コスト抑制と定着率改善の観点からも経営上の重要施策となる。

人材不足の現場では、問題の放置が経営リスクになる

さらに、同じく介護労働安定センターの調査では、「介護事業所全体の人材不足感は、60%台で推移」しているという実態も報告されています。 ただでさえ人材が不足している状況で、ハラスメントという「人間関係の問題」を放置することは、さらなる離職を招き、残った職員の負担を増やし、結果として介護サービスの質を低下させることにも繋がります。

出典元の要点(要約)

公益財団法人 介護労働安定センター

令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要

https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/2022r01_chousa_kekka_gaiyou_0822.pdf

介護事業所全体で人材不足感が高位で推移している。対人トラブルが固定化すると欠員の連鎖を招きやすいため、威圧・非傾聴・他責などの態度パターンに即した早期介入と再発防止のプロトコル化が、人員確保の土台となる。

このように、パワハラは法律で定義された「問題」であり、会社には「対策義務」があります。そして「人間関係」が離職の主因となる介護現場では、この問題を放置することが経営上の重大なリスクとなるため、必ず対処しなくてはならないのです。


よくある質問(FAQ):法的根拠に基づく対処法

実際に「おかしい」と感じたとき、何から手をつければよいか、不安になりますよね。ここでは、多くの方が抱く具体的な疑問に、厚生労働省のガイドラインなど法的根拠に基づきお答えします。

女性の介護職員の画像
Q
どこからが「指導」で、どこからが「パワハラ」ですか?
A

最も重要な境界線は、その言動が「業務上必要かつ相当な範囲」を超えているかどうかです。 厚生労働省のガイドラインでは、客観的にみて「適正な業務指示や指導」はパワハラに該当しません。しかし、たとえ指導が目的でも、「人格を否定するような言動」や「大声での威圧的な叱責」は、その「必要性」や「態様(やり方)」が相当な範囲を超えていると判断され、「精神的な攻撃」としてパワハラに当たり得ます。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

職場におけるハラスメント対策パンフレット

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001338359.pdf

定義の注記として、適正な指導・業務指示はパワーハラスメントには該当しないと明記され、指導とハラスメントの境界が示される。線引きは“社会通念”“必要性と相当性”による。これにより、現場での叱責や注意が直ちに該当とならぬこと、また必要性を欠く言動や、態様・反復・手段が許容範囲を超えた場合に該当し得ることが実務基準として整理される。

厚生労働省

リーフレット「2020年(令和2年)6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!」

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000683138.pdf

「精神的な攻撃」の該当例として、人格否定、長時間叱責、面前での威圧的叱責等が明示。該当する言動の具体像をタイプ別に照合し、速やかに遮断・記録・エスカレーションする運用が求められる。

Q
相談したら「チクった」と思われて、かえって状況が悪化しませんか?
A

その不安こそが、ハラスメント問題を深刻化させる要因の一つです。 法律(労働施策総合推進法)では、労働者がハラスメントの相談をしたことや、事実確認に協力したことなどを理由として、解雇や降格、その他「不利益な取扱いをしてはならない」と厳しく禁止されています。これは会社が守るべき義務であり、あなたは労働者として守られる権利を持っています。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

職場におけるハラスメント対策パンフレット(総合版)

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

相談・協力を理由とする解雇や降格等の「不利益な取扱い」は禁止。安全に相談できる導線(守秘、報復防止、二重窓口、記録)を制度として明文化する必要がある。

Q
何を「証拠」として残せばいいですか?
A

パワハラの該当性は、一つの言動だけではなく「総合的に考慮」して判断されます。そのため、客観的な事実を記録しておくことが、あなたを守る最大の武器になります。 感情的な記述(例:「ひどいと思った」)よりも、以下の5W1Hの事実を、時系列でメモに残すことを推奨します。

  • いつ(日時)
  • どこで(場所。例:スタッフルーム、利用者の居室前など)
  • 誰から(相手の氏名・役職)
  • 何を(言われた、または、されたこと。人格否定や威圧的な言葉は具体的にそのまま
  • 誰が(他に聞いていた人、目撃者)
  • どうなったか(言われた後のあなたの行動や、業務への支障)
出典元の要点(要約)

厚生労働省

職場におけるハラスメント対策パンフレット

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001338359.pdf

個別事案は「総合的に考慮」して判断する。記事では、威圧・非傾聴・他責など、同じ“態度”でも状況により該当性が異なる点を強調し、記録・複数視点・第三者確認の重要性を明記する。

このように、法的な知識を持つことは、不必要な我慢からあなた自身を解放し、冷静に行動するための土台となります。不安や恐怖を感じている状況で行動を起こすのは勇気がいりますが、まずは「事実を記録する」ことから始めてみてください。


まとめ:あなたの心とキャリアを守るために

最後に、あなたの心とキャリアを守るために、この記事でお伝えした最も重要なことを振り返ります。あなたが「指導かもしれない」と我慢しているその苦痛は、決してあなた一人の問題ではありません。

「指導」と「パワハラ」の法的境界線を認識する

まず、「適正な指導」と「パワーハラスメント」は異なります。厚生労働省のガイドラインでは、「人格を否定するような言動」や「大声での威圧的な叱責」は、業務上必要かつ相当な範囲を超えた「精神的な攻撃」として、パワハラに当たり得ると明確に示されています。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

職場におけるハラスメント対策パンフレット

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001338359.pdf

「人格を否定する」言動は、必要性・相当性の範囲を明らかに逸脱しており、パワーハラスメントに当たり得ると明記される。威圧的な理詰め・面前での人格攻撃・侮辱などは、当該事実と態様の総合評価により該当性が判断される。記事では、タイプ別対応の根拠として、“人格否定の回避”“事実の限定”“感情的反応を避ける”という基本姿勢の理由付けに使える。

あなたの辛さは「客観的な健康被害」である

そのストレスを「我慢が足りない」と自分を責めないでください。職場のハラスメントがメンタルヘルスに与える影響は、ある研究(労働安全衛生総合研究所)によれば「月あたり約70時間に相当する」サービス残業の悪影響に匹敵すると報告されています。これは「甘え」ではなく、客観的な健康被害です。

出典元の要点(要約)

労働安全衛生総合研究所

職場のハラスメントがメンタルヘルスや組織に与える影響-中小企業従業者パネルデータを用いた実証分析-

https://www.jstage.jst.go.jp/article/josh/advpub/0/advpub_JOSH-2021-0021-GE/_pdf

ハラスメントの影響を長時間労働に換算した比較では「月あたり約70時間に相当」とされ、負の影響が極めて大きい。現場では、威圧・長時間詰問・人格攻撃などの抑制が、長時間労働是正と同等以上の健康投資であることを示す根拠となる。

「記録」と「相談」はあなたの権利である

パワハラ対策は「全ての事業主の義務」です。そして、あなたが相談したことを理由に会社が「不利益な取扱い」をすることは、法律で固く禁止されています。 自分の身を守るために「いつ、どこで、何を言われたか」を客観的に記録すること、そしてそれを基に然るべき窓口に相談することは、あなたに認められた正当な「権利」です。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

職場におけるハラスメント対策パンフレット(総合版)

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

防止措置の義務化と、相談・協力を理由とする「不利益取扱いの禁止」を明記。相談を安全に促す仕組み(守秘・二重窓口・報復防止)を、現場運用の前提に据える。

我慢は、決して解決策になりません。正しい知識を持ち、冷静に「事実を記録する」ことから始めてください。この記事が、あなたがご自身の尊厳を取り戻し、安全な環境で働き続けるための一助となれば幸いです。



更新履歴

  • 2025年11月14日:新規投稿

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