低栄養状態で足がむくむメカニズム|体重数値に現れる水分の影響

血液データは悪いのに体重計の数字は増えている。そんな矛盾を前に、家族へどう説明すべきか言葉に詰まる場面が介護現場ではよくあります。「元気になった」という誤解を解くのは、心理的な負担が大きいものです。

医学的な講義をする時間はありませんが、「水が漏れている」というイメージさえ掴めれば、納得感のある説明は可能です。低栄養むくみをつなぐ要点だけを、現場目線で解説します。

この記事を読むと分かること

  • 低栄養で太る医学的理由
  • 脂肪と水分の見分け方
  • 10秒でできる確認法
  • 全身状態の観察点
  • 家族への説明ヒント

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • 食事減でも体重が増えた
  • アルブミン値が低い
  • 足を押すと戻らない
  • 短期間で急激に太った
  • 家族が体重増を誤解

結論:体重増加の正体は「栄養」ではなく「水分」かもしれない

高齢者男性

現場では、「利用者の食事量が減っているのに、なぜか体重計の数字は増えている」という不思議な現象に直面することがあります。ご家族から「元気になったのでしょうか」と期待を込めて聞かれると、専門職として否定しづらい空気を感じることもあるでしょう。

限られた訪問時間やケアの合間で、複雑な病態生理を説明するのは容易ではありません。しかし、この体重増加を手放しで喜んでしまうと、背後にある低栄養のリスクを見落とすことになりかねません。まずは「食べていないのに増える」現象の医学的な背景を整理します。

低栄養(低アルブミン血症)とむくみの関係

ガイドラインでは、下肢浮腫(足のむくみ)は低アルブミン血症と有意に関連していることが示されています。アルブミンは血液中の栄養状態を示す指標ですが、これが低下している状態、つまり低栄養であっても、むくみによって体重が増加するケースがあるのです。

本来、栄養改善によって体重が増えるのが理想ですが、血液データ上の数値が悪いにもかかわらず体重が増えている場合は、栄養が身についたのではなく、血管内の水分バランスが崩れてむくみが生じている可能性を考慮する必要があります。

出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)

要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017

https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf

「CQ6 体重の増加とむくみの判別はどのようにすればよいですか?」では「体重の変化と全身状態を合わせて観察する必要がある。」とし,浮腫による体重増加は急激であることが多いことや,高齢者総合的機能評価(以下,CGA)における栄養評価(体重・下腿周囲長)への影響に注意が必要であること,ならびに下肢浮腫は「糖尿病・下肢静脈瘤・日中活動性が低いこと・低アルブミン血症」と有意に関連していた旨が記載されている。

「脂肪」と「むくみ」を現場で見分ける

体重計の数値が増えているとき、それが脂肪(肥満)によるものか、水分(むくみ)によるものかを区別することは重要です。ガイドラインの解説では、むくみ(浮腫)は体の水分が異常に増加した状態であり、肥満とは脂肪分が増えることであると定義されています。

現場で簡易に判別する方法として、むくんでいると思われる部分を10秒以上強く指で押し付ける方法が挙げられています。指を離した後に凹みが出来れば「むくみ」であり、肥満の場合には凹みはできません。このひと手間で、体重増加の質を見極めることができます。

出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)

要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017

https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf

「【解説】」では「むくみ(浮腫)は体の水分が異常に増加した状態」で「肥満とは脂肪分が増えること」とし,「むくんでいると思われる部分 10 秒以上強く指で押し付つけ凹みが出来れば,むくみ」で「肥満の場合には凹みはできない」と記載されている。

「急激な増加」は要注意サイン

日々のモニタリングにおいて、体重の変化スピードも重要な判断材料になります。ガイドラインでは、浮腫による体重増加は急激であることが多いとされています。

脂肪や筋肉がつくにはある程度の期間が必要ですが、水分貯留による変化は短期間で現れる傾向があります。そのため、体重の変化だけでなく全身状態を合わせて観察することが求められます。また、高齢者総合的機能評価(CGA)を行う際も、体重や下腿周囲長の数値が浮腫の影響を受けていないか注意が必要です。

出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)

要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017

https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf

「CQ6 体重の増加とむくみの判別はどのようにすればよいですか?」では「体重の変化と全身状態を合わせて観察する必要がある。」とし,浮腫による体重増加は急激であることが多いことや,高齢者総合的機能評価(以下,CGA)における栄養評価(体重・下腿周囲長)への影響に注意が必要であること,ならびに下肢浮腫は「糖尿病・下肢静脈瘤・日中活動性が低いこと・低アルブミン血症」と有意に関連していた旨が記載されている。

体重の増加が必ずしも栄養状態の改善を意味しないことを理解し、数値の裏にある水分貯留のリスクを疑う視点が重要です。血液データと身体所見をセットで確認することが、適切なアセスメントへの第一歩となります。


よくある事例:その体重増加は「回復」か「リスク」か

女性の介護職員の画像

現場では、ご家族から「最近ふっくらしてきて安心しました」と声をかけられると、たとえ医学的な違和感を持っていても、その場の空気を壊さないように話を合わせてしまうことがあります。

しかし、明らかに食事量が減っているのに体重が増えている場合、そこには生理学的な矛盾が生じています。ここでは、ケアマネジャーや看護師が現場で遭遇しやすい、判断に迷う3つのケースを紹介します。

事例1:食欲がないのに体重が増えている

食事量が減り、摂取カロリーが足りていないはずの利用者の体重が増加傾向にあるケースです。ご家族は「少ない量でも効率よく身になっている」とポジティブに捉えがちですが、低栄養状態で体重が増えることにはリスクが潜んでいます。

ガイドラインでは、下肢の浮腫(むくみ)低アルブミン血症(栄養状態の低下)と有意に関連しているとされています。つまり、栄養が足りて脂肪がついたのではなく、低栄養が原因で水分が溜まり、それが見かけ上の体重増加として表れている可能性があるのです。

出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)

要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017

https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf

「CQ6 体重の増加とむくみの判別はどのようにすればよいですか?」では「体重の変化と全身状態を合わせて観察する必要がある。」とし,浮腫による体重増加は急激であることが多いことや,高齢者総合的機能評価(以下,CGA)における栄養評価(体重・下腿周囲長)への影響に注意が必要であること,ならびに下肢浮腫は「糖尿病・下肢静脈瘤・日中活動性が低いこと・低アルブミン血症」と有意に関連していた旨が記載されている。

事例2:血液データと「見た目」が矛盾している

血液検査で低アルブミン血症を指摘されているにもかかわらず、足や顔がふっくらとして見えるケースです。「データは悪いが見た目は元気そう」と判断を保留にしがちですが、この「ふっくら」が脂肪なのかむくみなのかを見極める必要があります。

ガイドラインの解説によれば、むくんでいると思われる部分を10秒以上強く指で押し、凹みができれば「むくみ」、できなければ「肥満」であると定義されています。データ上の低栄養と見た目の乖離がある場合、この確認を行うことで、それが水分貯留によるものか判断がつきます。

出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)

要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017

https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf

「【解説】」では「むくみ(浮腫)は体の水分が異常に増加した状態」で「肥満とは脂肪分が増えること」とし,「むくんでいると思われる部分 10 秒以上強く指で押し付つけ凹みが出来れば,むくみ」で「肥満の場合には凹みはできない」と記載されている。

事例3:短期間で急激に体重が変動した

月1回のモニタリングや訪問時に、前回と比べて体重が大きく増えているケースです。「最近よく食べているから」と結論づけてしまいそうになりますが、脂肪や筋肉は短期間で急に増えることは稀です。

ガイドラインには、浮腫による体重増加は急激であることが多いと記載されています。緩やかな増加ではなく、グラフが跳ね上がるような急な変化が見られた場合は、栄養改善よりもむくみによる水分の増加を疑い、全身状態の確認を行う視点が必要です。

出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)

要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017

https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf

「CQ6 体重の増加とむくみの判別はどのようにすればよいですか?」では「体重の変化と全身状態を合わせて観察する必要がある。」とし,浮腫による体重増加は急激であることが多いことや,高齢者総合的機能評価(以下,CGA)における栄養評価(体重・下腿周囲長)への影響に注意が必要であること,ならびに下肢浮腫は「糖尿病・下肢静脈瘤・日中活動性が低いこと・低アルブミン血症」と有意に関連していた旨が記載されている。

これらの事例のように、「食べていないのに増える」「データは悪いのに見た目は良い」「急に増える」といった現象の裏には、低栄養に起因するむくみが隠れている可能性があります。数値の変化だけで安心せず、その背景にあるリスクを読み解くことが大切です。


理由:栄養不足が招く「水分のパラドックス」

現場の感覚としては、「食べていなければ痩せる」「栄養状態が悪ければ体重は減る」と考えるのが自然です。そのため、血液検査で低栄養を指摘されている利用者の体重が増えていると、「測定ミスではないか」「隠れて食べているのでは」と疑いたくなることもあるでしょう。

しかし、高齢者の体では「栄養が足りないからこそ、体重(水分)が増える」というパラドックス(逆説)が起こり得ます。なぜそのような現象が起きるのか、そのメカニズムと背景にある高齢者特有の事情を解説します。

栄養が足りないと「水」を留めておけない

私たちの血管の中には、水分を保持するための成分(アルブミンなど)が存在します。しかし、栄養状態が悪化して血液中のアルブミンが不足すると、血管の中に水分を留めておく力が弱まり、水分が血管の外(組織)へと漏れ出してしまいます。

これがむくみ(浮腫)の正体の一つです。ガイドラインでは、下肢の浮腫は低アルブミン血症と有意に関連していると明記されています。つまり、体重が増えたのは「身になった(栄養改善)」からではなく、漏れ出した水分が体内に溜まっているからに過ぎない可能性があるのです。

出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)

要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017

https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf

「CQ6 体重の増加とむくみの判別はどのようにすればよいですか?」では、下肢浮腫は「糖尿病・下肢静脈瘤・日中活動性が低いこと・低アルブミン血症」と有意に関連していた旨が記載されている。

高齢者の体はそもそも「むくみ」やすい

「若い頃はこんなにむくまなかったのに」という家族の声を聞くことがありますが、それは高齢者の体が構造的に変化しているためです。

加齢に伴い、腎臓の機能(糸球体機能や尿細管機能など)や、体液のバランスを調整するホルモン(レニン活性)の働きが低下します。これにより、余分な水分を体外に排出する能力が弱まり、少しのバランスの崩れでも容易に浮腫を起こしやすい状態になっています。

出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)

要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017

https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf

また高齢期では「糸球体機能低下,尿細管機能低下,腎の内分泌機能としてのレニン活性低下」等が認められ浮腫を起こしやすい状態にある旨が記載されている。

「動かない」こともリスクを高める

施設や在宅での生活において、日中の多くを椅子や車椅子に座って過ごす利用者も少なくありません。活動量の低下もまた、むくみの要因となります。

ガイドラインでは、下肢浮腫と関連する要因として「日中活動性が低いこと」が挙げられています。ふくらはぎの筋肉などはポンプの役割をして血液や水分を循環させますが、動かないことでその機能が働かず、重力に従って足に水分が溜まりやすくなります。

出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)

要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017

https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf

「CQ6 体重の増加とむくみの判別はどのようにすればよいですか?」では、下肢浮腫は「糖尿病・下肢静脈瘤・日中活動性が低いこと・低アルブミン血症」と有意に関連していた旨が記載されている。

このように、「低栄養による水分の漏出」「腎機能の低下」「活動不足」といった要因が重なることで、食べていないのに体重が増える(むくむ)という現象が引き起こされます。数値の増加を見たときは、単純なカロリーオーバーではなく、こうした体の変化を疑う必要があります。


よくある質問:低栄養と体重増加のパラドックス

Q
低栄養(低アルブミン血症)なのになぜ体重が増えるのですか?
A

低アルブミン血症により血管内の水分を保持する力が弱まり、血管の外へ水分が漏れ出して「むくみ(浮腫)」が生じるためです。この溜まった水分の重さが体重として現れるため、栄養状態が悪くても体重が増加することがあります。

出典元の要点(要約)

一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)

要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017

https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf

「CQ6 体重の増加とむくみの判別はどのようにすればよいですか?」では、下肢浮腫は「低アルブミン血症」と有意に関連していた旨が記載されている。

Q
「むくみ」による体重増加の特徴はありますか?
A

脂肪や筋肉による体重増加と異なり、「急激であること」が多いのが特徴です。短期間で体重が大きく変動した場合は、栄養改善ではなく水分貯留(浮腫)を疑う必要があります。

出典元の要点(要約)

一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)

要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017

https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf

「CQ6 体重の増加とむくみの判別はどのようにすればよいですか?」では、浮腫による体重増加は急激であることが多いと記載されている。

Q
むくみかどうか、道具を使わずに確認する方法はありますか?
A

むくんでいると思われる部分(足のすねなど)を、指で「10秒以上」強く押し付けてください。指を離した後に「凹み」が残れば「むくみ(浮腫)」であり、戻れば(凹まなければ)肥満と判断できます。

出典元の要点(要約)

一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)

要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017

https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf

「【解説】」では、「むくんでいると思われる部分 10 秒以上強く指で押し付つけ凹みが出来れば,むくみ」で「肥満の場合には凹みはできない」と記載されている。


まとめ:数値の裏にある「水分」のリスクを見極める

高齢者の体重増加は、必ずしも栄養状態の好転を意味しません。特に食事量が少ない、あるいは血液検査で低栄養(低アルブミン血症)と指摘されている中での体重増加は、血管から漏れ出した水分による「むくみ(浮腫)」である可能性が高いと言えます。

数値の変化だけに捉われず、足のすねを10秒間指で押して凹みを確認することや、体重の増え方が急激ではないかを確認することが、正しいアセスメントへの第一歩です 。ご家族が「太った」と喜ばれている時こそ、専門職として冷静に全身状態を観察し、必要な医療連携につなげることが重要です。

最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。



更新履歴

  • 2025年12月14日:新規投稿

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