排泄拒否への対応をマニュアルに入れるとき、本部側は「本人の意思を尊重する」「無理強いしない」と書きたくなります。けれど現場では、拒否されたあとに漏れたら誰が対応するのか、夜勤で応援が呼べないときにどう切り替えるのかまで問われます。
大切なのは、理念を増やすことではありません。声かけ例、記録例、報告基準、カンファレンスへ上げる基準をそろえ、現場が一人で迷わず判断できる形に落とすことです。
この記事を読むと分かること
- 声かけ例
- 記録例
- 報告基準
- 判断の線引き
- 研修への入れ方
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
排泄拒否対応マニュアルは声かけ集ではなく判断支援ツールにする

排泄拒否が起きた場面では、職員は「今は引くべきか」「もう一度声をかけるべきか」「漏れたら責任を問われるのか」と迷います。この記事で扱う中心は、声かけの上手さではなく、現場が判断できる基準を本部がどう用意するかです。
排泄拒否対応は、声かけ例、記録例、報告先、再声かけの目安、カンファレンス移行基準まで含めてマニュアル化する必要があります。
現場では、パット交換を拒まれた直後に、別の利用者のナースコールが鳴ることがあります。そこで「本人の意思を尊重」とだけ書かれていても、職員は動けません。誰が再声かけをするのか、何を記録すればよいのか、どの状態ならリーダーや看護職へ報告するのかまで決めておくと、一度引く判断もしやすくなります。
- マニュアル化する前に、排泄拒否が起きる背景や声かけ・記録・申し送りの全体像を整理したい場合は、認知症の排泄拒否が起きる原因とは|介護現場で声かけ・記録・申し送りをそろえる方法で確認できます。
本人の意思を確認する手順を入れる
排泄介助を拒まれたとき、現場では「行きたくない」という言葉だけで終わらせるか、表情やしぐさまで見るかで対応が変わります。この項目で押さえたいのは、拒否を単なる拒否として処理せず、本人の意思を確認する手順にすることです。
マニュアルには、本人の言葉、表情、身振り、拒否の強さを確認する欄を入れます。声かけをした職員だけで判断せず、同じ状態が続く場合は、本人をよく知る職員や家族情報も含めて確認する流れにします。これにより、本部の「意思尊重」が、現場の記録と申し送りに接続されます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第 2 版).pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001484891.pdf
意思決定支援者は、 認知症の人が、 一見すると意思決定が困難と思われる場合であっ ても、意思決定しながら尊厳をもって暮らしていくことの重要性について認識する ことが必要である。 ○ 認知症の人への支援は、本人の意思を尊重するために行う。したがって、本人の意 思を尊重するために、本人の認知能力に応じて理解しやすいように説明しなければ ならない。 ○ 意思決定支援は、本人の意思 (脚注 v)の内容を支援者の視点で評価し、支援すべき だと判断した場合にだけ支援するのではなく、日々の暮らしの中で、本人自身がど のような意思をもっているのかについて、まずは本人の表明した意思選好を確認 し、本人の意思の確認がどうしても難しい場合には、推定意思 ・ 選好を確認する
声かけは「反応を待つ」前提で作る
現場では「トイレに行きましょう」と声をかけた瞬間に、怒りや拒否が強くなることがあります。ここで理解したいのは、声かけ例は言葉の一覧ではなく、本人の反応を待つ手順とセットで作る必要があることです。
本部がマニュアルを作るなら、「確認だけさせてください」「嫌なら一度やめます」「別の職員に代わります」などの表現だけでなく、反応を待つ、指示を一つずつ出す、否定しない言葉へ置き換えるという運用を入れます。避けたい言葉も併記すると、新人教育にも使いやすくなります。
- 声かけ例を新人に教えるだけでなく、反応を待つ判断や一度引く基準まで伝えたい場合は、排泄拒否への対応を新人に教える方法|見て覚えるOJTから脱却するチェック項目で、OJT項目への落とし込み方を確認できます。
出典元の要点(要約)
国立長寿医療研究センター認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版.pdf
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
指示を一つずつゆっくり出せば理解できるが, 多くの指示や次々と場面が変わる環境に戸惑い,混乱することも少なくない.そのため, 緊急時以外はいつもより指示を出すペースをゆっくりにする.患者の表情が曇っていな いか注意深く観察しながら,処置を行う必要がある. 一般的な声掛け 認知症に配慮した声掛け 「体温を測ります」(本人の反応を待たずに体 温計を腋に入れる) アイコンタクトをきちんと行い,認知症患者の 反応を待ってから測定する.
暴言・暴力がある場面は職員安全を先に置く
拒否に暴言や暴力が重なると、職員は「認知症だから仕方ない」と受け止めて抱え込みやすくなります。この項目で必要なのは、本人へのケアと職員安全を対立させず、報告と応援の基準をマニュアルに入れることです。
たとえば、叩く、蹴る、つねる、物を投げるなどが出た場合は、一人対応を続けない基準を置きます。職員の安全確保、上長への報告、対応者の交代、必要時の外部連携を初動フローにしておけば、現場の我慢に頼らない運用になります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省介護現場におけるハラスメント対策マニュアル.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947524.pdf
認知症等の病気または障害に起因する暴言・暴力であっても、職員の安全に配慮する必 要があることには変わりありませんから、ハラスメント対策とは別に、対応を検討する 必要があります。事前の情報収集等(医師の評価等)を行い、施設・事業所として、ケ アマネジャーや医師、行政等と連携する等による適切な体制で組織的に対応することが 必要です。そのため、暴言・暴力を受けた場合には、職員が一人で問題を抱え込まず、 上長や施設・事業所へ適切に報告・共有できるようにすることが大切 です。
無理強いに寄らない身体拘束防止の線引きを入れる
漏れや転倒が心配な場面ほど、現場は「少し強く促したほうがよいのか」と迷います。ここで大切なのは、事故予防を理由に、本人の行動の自由を制限する方向へ寄せない線引きを明文化することです。
排泄拒否対応マニュアルには、無理に立たせない、強い抵抗時は一度引く、環境や時間帯を見直す、代替策をカンファレンスで確認する、という段階を入れます。身体拘束防止を現場任せにせず、研修とマニュアルで同じ判断にできるようにします。
- 身体拘束防止や排泄拒否対応の研修内容を、施設内で管理しやすい形に整えたい場合は、リハ・ケア・ナースのeラーニングと研修管理を兼ね備えたシステム【はぐくも】
を確認しておくのも一つの方法です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省身体拘束廃止・防止の手引き.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001248430.pdf
身体拘束に該当する行為か判断する上でのポイントは、「本人の行動の自由を制限し ているかどうか」です。大切なのは、本人に向き合い、アセスメントを十分に行い、施設・ 事業所の組織および本人・関係者等で協議し、身体拘束廃止・防止に向けた取り組 みを定期的に見直し、改善していくことです。 「身体拘束ゼロへの手引き」(平成 13 年 3 月 厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」)より抜粋 身体拘束とは、「本人の行動の自由を制限すること」です。
排泄拒否対応マニュアルは、声かけを増やすだけでは足りません。本人意思、再声かけ、報告、職員安全、身体拘束防止を同じ判断表に入れることが要点です。
排泄拒否対応マニュアルでよくある事例と判断の分かれ目

排泄拒否は、きれいな手順どおりに起きるわけではありません。漏れ、夜勤、暴言、家族希望が重なると、現場は「正しいこと」は分かっていても、どこで切り替えるかに迷います。
たとえば、夜間にパット交換を拒まれた場面では、無理に入れば不適切ケアに近づき、引けば更衣やシーツ交換が増えるかもしれません。そこで必要なのは、現場職員の根性ではなく、拒否の強さ、再声かけ、交代、報告先を短く選べる形です。本部が事例ごとに判断の分かれ目を示すと、施設ごとのばらつきを減らしやすくなります。
パット交換を拒まれ、漏れと尊重の間で迷う
パット交換を拒まれた場面では、職員は「今は引くべきか」「このあと漏れたら責められるのか」と迷います。うまくいく現場ほど、拒否を尊重するだけでなく、次に何を見るかを短く決めています。
状況は、パット交換や陰部清拭の声かけに対して本人が強く拒む場面です。困りごとは、拒否を尊重した後の漏れや皮膚状態への不安です。よくある誤解は、「本人が嫌と言ったら記録だけで終わり」とすることです。押さえるべき視点は、本人の言葉、表情、身振りを記録し、再声かけの時刻と担当を決めることです。具体運用として、拒否時の短文記録欄に「本人の言葉」「表情」「再声かけ予定」「次の報告先」を入れます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第 2 版).pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001484891.pdf
本人が自ら意思決定できる早期の段階で、今後の生活等について、本人や家族、関 係者等の意思決定支援チームで話し合い、先を見通した意思決定の支援が繰り返し 行われることが重要であり、その際、本人の語りや表情なども含め、できる限り具 体的な記録を残しておくと良い。 ○ 意思決定支援チームは、本人の視点に立つことが重要であり、意思決定支援をチー ムで検討する場合にも、 本人が参画できるように配慮することが必要である。
夜間トイレ誘導を嫌がり、起こすか待つか迷う
夜間のトイレ誘導では、眠っている本人を起こすか、失禁リスクを見て待つかで迷います。失敗しやすいのは、時間だけを基準にして、本人の反応や環境を見落とすことです。
状況は、夜勤帯にトイレ誘導の時間になっても本人が拒否する場面です。困りごとは、誘導しない不安と、無理に起こすことで不穏になる不安が同時にあることです。よくある誤解は、定時誘導のルールだけで現場判断が足りると考えることです。押さえるべき視点は、本人の反応を待ち、ゆっくり伝え、音や明るさなどの環境も見ることです。具体運用として、夜間は再声かけまでの間隔、交代の条件、記録する反応をあらかじめ決めます。
出典元の要点(要約)
国立長寿医療研究センター認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版.pdf
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
認知症患者のコミュニケーションの特徴として,認知症の進行に伴ってコミュニケーショ ンの効力が,言語的コミュニケーションから非言語的コミュニケーションへ移行する(図 7). 認知症が重度になるほど,表情や身振りを使い,非言語メッセージを使うことが効果的であ る.そして,医療者・介護者が伝えたいことを優先してコミュニケーションをとるよりも, 本人の反応を一呼吸待ち,本人が何を行いたいか,本人の意思を読み取ることが大切である.
暴言・暴力が出て、一人で対応を続けてしまう
排泄介助中に叩かれる、蹴られる、怒鳴られる場面では、職員は「本人に悪意はない」と分かっていても傷つきます。ここでの気づきは、職員の我慢を対応力と見なさないことです。
状況は、拒否が強く、暴言や暴力が出る場面です。困りごとは、認知症症状としての理解と職員安全の確保をどう両立するかです。よくある誤解は、「病気による言動なら報告しにくい」とすることです。押さえるべき視点は、ハラスメント対策とは別にケアとして検討しつつ、職員が一人で抱えない報告フローを置くことです。具体運用として、身体接触を中止する基準、応援要請、上長報告、対応者交代を初動マニュアルに入れます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省介護現場におけるハラスメント対策マニュアル.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947524.pdf
問題が起こった際には、施設・事業所内で問題を共有する場を設け、対応方法を皆で議論する 場を設けること。 ⚫ ハラスメントを受けた職員や問題に気付いた職員が、一人で抱え込んでしまないようにするこ とはもちろん、相談や報告を受けた管理者等が一人で抱え込まないようにすることが大切で す。 ▶関連リンク:相談しやすい職場環境づくり、相談窓口の設置(p.15)
家族の「できるだけトイレで」と現場負担がぶつかる
家族希望を大切にしたい一方で、立位が不安定な方を少人数で支える場面では、現場の身体負担が大きくなります。ここで必要なのは、希望を否定せず、続ける条件を見える形にすることです。
状況は、本人や家族がトイレ排泄を望む一方で、拒否や転倒不安、職員の腰痛リスクがある場面です。困りごとは、尊厳を守る方針が現場の個人負担に置き換わることです。よくある誤解は、家族希望があれば同じ方法を続けるしかないと考えることです。押さえるべき視点は、本人の行動の自由を守りつつ、原因分析と代替策を協議することです。具体運用として、二人介助、時間帯変更、用具、パット変更、家族説明の基準をカンファレンス項目にします。
出典元の要点(要約)
厚生労働省身体拘束廃止・防止の手引き.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001248430.pdf
事故は防ぐ必要がある。しかし、その方法は身体拘束であってはならない。 まず第一は、転倒や転落を引き起こす原因を分析し 、それを未然に防止するように努めることである 。例えば、夜間 の一人歩きによる転倒の危険性がある場合には、適度な運動によって昼夜逆転の生活リズムを改善することで夜間の 一人歩きそのものが減少する場合も多い。 第二は、事故を防止する環境づくりである。
- 家族希望や転倒不安、職員負担が重なるケースを現場だけで抱えないためには、トイレ拒否が続く利用者へのカンファレンスの進め方|声かけだけで終わらせない検討項目で、会議に上げる項目を確認できます。
事例ごとに必要なのは、現場の根性ではなく切替基準です。拒否、再声かけ、交代、報告、カンファレンス移行を短く選べる形にします。
なぜ排泄拒否対応マニュアルは現場で使われなくなるのか

排泄拒否対応のマニュアルを作っても、現場で読まれない、使われない、施設ごとに判断が割れることがあります。この背景には、理念と現場判断の距離があります。ここでは、マニュアルが機能しなくなる理由を整理します。
本部側は、事故説明や標準化を見てマニュアルを作ります。一方で現場は、拒否された瞬間の表情、他利用者の対応、夜勤の人員、記録時間まで抱えています。両者の見ている単位が違うため、マニュアルには理念だけでなく、現場で選べる基準が必要です。
理念だけでは、その場の判断に届かないから
「本人の意思を尊重」と書かれていても、拒否された直後の職員は、どこまで説明し、いつ引くかで迷います。うまく使われるマニュアルは、理念をその場の行動に変換しています。
なぜ起きるのかというと、意思尊重には、説明、本人の反応、確認の繰り返し、環境への配慮が含まれるからです。理想は、本人が安心して意思を表明できることです。現実には、急いだ声かけや慣れない場所、疲れている時間帯で拒否が強まることがあります。そのズレを埋めるには、声かけ例だけでなく、本人の意思を確認する姿勢、時間帯、場所、関係性をマニュアルに入れます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第 2 版).pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001484891.pdf
意思決定支援者は、本人の意思を尊重する姿勢で接することが必要である。 ○ 意思決定支援者は、本人が自らの意思を表明しやすいよう、本人が安心できるよう な姿勢で接することが必要である。 ○ 意思決定支援者は、本人のこれまでの生活史について家族関係も含めて理解するこ とが必要である。 ○ 意思決定支援者は、支援の際は、その都度丁寧に本人の意思を確認する。
記録が責任追及に見えると、報告が細くなるから
現場では、拒否後に漏れや事故があると「なぜ対応しなかったのか」と問われる不安があります。記録が責める材料に見えると、必要な情報ほど残りにくくなります。
なぜ起きるのかというと、報告の目的が現場に伝わっていないからです。理想は、拒否場面を次のケア改善に使うことです。現実には、長文を書く時間がなく、事実と推測が混ざりやすくなります。そのズレが、申し送りの弱さや施設差を生みます。本部は、時系列、本人の反応、職員・環境要因を分けて書ける短い様式を用意し、責任追及ではなく改善のための記録だと示す必要があります。
- 拒否場面のメモを記録文に整えるときに、事実と推測が混ざりやすい場合は、介護記録をAIで整えるときの注意点|箇条書きメモを記録文にするプロンプト例で、記録文へ整理する考え方を確認できます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/001569590.pdf
ヒヤリ・ハット/事故報告の目的は、職員の責任追及ではなく利用者に対するケアの改善であり、仕 組みを構築する際には、報告を活性化するための工夫が重要です。 • また、報告をケアの質向上やその後の事故防止につなげるために、報告様式の整備が重要です。 発生状況をわかりやすく、時系列に沿って記載できることに加え、原因分析においては事実と推測 を明確にわけ、本人・職員・環境、それぞれの要因別に検討できるようにするなどが効果的です。
職員と管理者が一人で抱えると、対応が標準化しないから
暴言や暴力を伴う拒否では、職員だけでなく管理者も抱え込みやすくなります。対応を個人の経験に任せると、施設ごとに判断が変わります。
なぜ起きるのかというと、相談先、初動、法人本部の関与が曖昧なままになりやすいからです。理想は、誰が受けても同じ流れで相談できることです。現実には、職員が我慢し、管理者も外に出しにくいことがあります。そのズレが、離職不安や対応のばらつきにつながります。本部は、初動マニュアル、相談窓口、対応チーム、法人本部の関与を明文化します。
出典元の要点(要約)
厚生労働省介護現場におけるハラスメント対策マニュアル.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947524.pdf
職員の安全を確保した後、管理者等はハラスメントの状況を確認し、ハラスメントを受けた職 員への対応、行為者への対応等を指示します。必要に応じて外部の関係者、例えば、ケアマネ ジャーや地域包括支援センター、医師、行政、警察などに連絡・通報します。 (中略) 職員が一人で抱え込んでしまないようにすることはもちろん、相談や報告を受けた管理者等が 一人で抱え込まないよう、また、ハラスメント対応で過度の負担がかかることのないよう、各 事業を統括する法人の代表や法人本部が組織的に関与する体制を構築することが重要です。
事故予防と尊厳保持の板挟みを整理していないから
漏れや転倒を防ぎたい気持ちが強いほど、現場は「もう少し強く促すべきか」と迷います。ここで必要なのは、事故予防を身体拘束や無理強いに寄せない整理です。
なぜ起きるのかというと、事故予防と尊厳保持が別々のルールとして書かれているからです。理想は、事故を防ぎながら本人の行動の自由を守ることです。現実には、人員、時間、家族希望が重なり、個人判断に寄ります。そのズレを減らすには、原因分析、環境調整、代替策、報告基準を一つの判断表にし、委員会やカンファレンスで見直します。
出典元の要点(要約)
厚生労働省身体拘束廃止・防止の手引き.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001248430.pdf
本人には意思があり、意思決定能力を有するということを理解したうえで、本人に対してできる限り詳細に説明を 行っているか ✓ 認知症等の人の身振り手振り、表情の変化も意思表示として読み取る努力を最大限に行っているか ✓ 実際に身体拘束を行う時点で、個別に説明を行っているか ✓ 説明にあたり、本人を支援している家族の気持ちにも配慮しているか ✓ これらのポイントについて、マニュアルや研修等を通して事業所全体に浸透しているか
- 排泄拒否への記録様式や報告先、切替基準を、職員間で見やすい形に整理したい場合は、介護向け動画マニュアル管理【Carebase】
を確認しておくのも一つの方法です。
マニュアルが使われない理由は、現場の理解不足だけではありません。理念を、記録様式、報告先、切替基準、委員会での見直しに落とす必要があります。
排泄拒否対応マニュアルのFAQ
現場では、拒否された直後の小さな判断ほど迷いやすいものです。ここでは、マニュアルに入れると判断のばらつきを減らしやすい質問を整理します。
- Q拒否されたとき、記録には何を書けばよいですか?
- A
「拒否あり」だけで終わらせず、本人の言葉、表情や身振り、声かけ内容、再声かけの予定、交代や報告の有無を短く残します。現場では長文を書く時間が限られるため、チェック欄と短文例を組み合わせると、次の職員が動きやすくなります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/001569590.pdf
事故対応の前提として、利用者ごとにアセスメントを行い 、 個々のリスクを把握する。 • 看護職員と連携し、利用者の状況をできる限り早く、正確 に把握し、応急処置等を行う。 • 事故報告や原因分析に備え、可能な限り記録を取る。 • 事故の発見者を中心に 、多職種・多部門で事故の現場 を検証し、できる限り事実に基づき原因分析を行う。 • 根本原因分析(RCA)のための手法も活用する。 • 多職種・他部門で収集した情報や原因分析をとりまとめ 、 現場のリソースやコストも踏まえ再発防止策を検討する。
- Q暴言や暴力が認知症症状と思われる場合も報告が必要ですか?
- A
必要です。認知症等に起因する言動としてケアを検討する場合でも、職員の安全への配慮は別に必要です。現場では「仕方ない」と抱え込みやすいため、一人対応を続けない基準、上長報告、対応者交代をマニュアルに入れます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
介護現場におけるハラスメント対策マニュアル.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947524.pdf
認知症等の病気または障害に起因する暴言・暴力であっても、職員の安全に配慮する必 要があることには変わりありませんから、ハラスメント対策とは別に、対応を検討する 必要があります。事前の情報収集等(医師の評価等)を行い、施設・事業所として、ケ アマネジャーや医師、行政等と連携する等による適切な体制で組織的に対応することが 必要です。そのため、暴言・暴力を受けた場合には、職員が一人で問題を抱え込まず、 上長や施設・事業所へ適切に報告・共有できるようにすることが大切 です。
- Qカンファレンスに上げる目安はどこに置けばよいですか?
- A
同じ拒否が繰り返される、事故やヒヤリ・ハットにつながる、暴言・暴力で一人対応が難しい、本人・職員・環境の要因を分けて見直す必要がある場面を目安にします。現場では、個人の失敗ではなく、組織で再発防止を考える場として位置づけることが大切です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/001569590.pdf
事故の原因分析や再発防止策の検討は 、事故発見者や当事者 だけでなく 、施設管理者や委 員会メンバーを中心に 、組織全体で行いましょう 。組織全体で検討を進めることにより 、事故は職 員個人の問題ではなく、組織で再発防止に取り組むものといった文化の醸成につながります。 分析・検討にあたっては多職種・部門のメンバーの専門性を活用 • 組織全体で行う原因分析や再発防止策の検討は 、多職種・多部門のメンバーで行うことが重要 です。
- Q声かけ例だけを載せるのでは不十分ですか?
- A
不十分です。声かけは、本人の反応を待つ、指示を一つずつ出す、否定しない言葉に置き換える運用と一緒に使う必要があります。現場では言葉だけを覚えても、急いだ場面で使い方が崩れるため、再声かけや交代の基準も併記します。
出典元の要点(要約)
国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版.pdf
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
コミュニケーションをとる上で,注意する言葉が 3 つある.それは,「命令する言葉」, 「子ども扱いする言葉」,「相手を否定する言葉(スピーチロック)」である.この 3 つの言 葉は,相手の自尊心を傷つけることになる.特に,相手を否定する言葉は,私たちは一瞬一 瞬で使用しているつもりでも,認知症患者が何度も同じ行動をとる場合は毎回否定される ことになり,気分の落ち込みや易怒性などに繋がることがある.そのため,安心できる言葉 がけや言い換えを使用する.
FAQは、現場の小さな迷いを短くそろえる場所です。記録、報告、カンファレンス、声かけの基準を一問一答にして、夜勤でも確認できる形にします。
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排泄拒否対応マニュアルは最初に記録例から整える
現場では、拒否された後の対応が曖昧なほど、職員は「尊重しても責められる」「無理に入っても責められる」と感じやすくなります。だからこそ、最初の一歩は大きなマニュアル改定ではなく、拒否時の記録例を1枚そろえることです。
具体的には、声かけ内容、本人の言葉、表情や動作、再声かけ予定、交代の有無、報告先、次回申し送りを同じ順番で書ける形にします。全施設で完璧に始める必要はありません。まずは夜勤帯や拒否が続く利用者から試し、記録負担が重すぎる場合は項目を減らして見直します。
排泄拒否対応は、本人の尊厳だけでなく、現場職員の安全と納得感にも関わります。最後までご覧いただきありがとうございます。
更新履歴
- 2025年12月27日:新規投稿
- 2026年4月12日:内容を全面的にリライト
- 2026年6月23日:内容を全面的にリライト







