認知症の人に声かけが伝わらない時、つらいのは「言い方」だけの問題にされることです。
現場では、ベッド上でパット交換をしている最中に「あっち向いてください」が伝わらず、「帰ってください」と拒否され、さらに便を握られることがあります。次の人も待っていて、シーツ汚染も気になり、優しく説明する余裕が消えていきます。
こうした場面では、声かけで相手を説得しきるより、短い一動作に分け、手の行き場を作り、危なくなる前にいったん止めることが大切です。この記事では、介護士が一人で抱え込まないための中止・交代・共有の考え方を整理します。
この記事を読むと分かること
- 伝わらない理由
- 一動作の声かけ
- 拒否時の止め方
- 交代の考え方
- 共有すべき内容
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
認知症の声かけが伝わらない時は、説得で勝とうとしない

認知症の拒否には、短い一動作の声かけと、途中で引ける交代・共有の仕組みが必要です。
現場では、パット交換の途中で「あっち向いてください」と伝えても動いてもらえず、暴言や手払いが重なることがあります。そこへ便を触る行為まで重なると、介護士の怒りや焦りは一気に危険ラインへ近づきます。この記事を読むと、声かけで押し切るのではなく、本人と職員の両方を守る最低ラインが分かります。
こうした場面では、介護士の優しさを増やすだけでは足りません。本人が理解しやすい短い言葉に変えること、強い説得を避けること、危ない時は一度離れることが必要です。うまく通った対応は個人技で終わらせず、次に入る職員へ共有する形にします。
「あっち向いて」より「横向きます」と一動作にする
パット交換中の「あっち向いてください」は、介護士には簡単な指示でも、本人には何のために、どちらへ、どう動くのかがつながりにくいことがあります。この項目では、説明を長くするより、短く一つの動作に分ける意味を確認します。
現場では、急いでいるほど「ちょっと横向いて、こっちの手を上げて、動かないでください」と一度に言いがちです。けれど、認知症の人とのかかわり方では、短文でわかりやすい表現や、一つひとつの動作への声かけが示されています。まずは「横向きます」「手をここ」「すぐ終わります」のように、言葉を小さくします。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
身体的特徴に応じたかかわり方のポイント ① 相手が認識しやすい立ち位置 ② 安定した体勢(麻痺や筋力低下で立位が不安定な時には座ってもらうなどの配慮) ③ はっきりとした声、聞こえやすい大きさ ④ 表情に留意する(痛みなどの苦痛がないかを確認しながら) ⑤ 声の調子に気をつけてゆっくりと話す ⑥ 身振りや手振りも織り交ぜながら話す など ⑦ 心理的特徴に応じたかかわり方のポイント ①価値観や考え方習慣を受容する ②自尊心を尊重する(幼児語を使ったり、子ども扱いをしない) ③距離や目線の高さに留意する(不快でない高さや距離) ④相手の表情を確認しながら話しかける(不快に感じている表情でないかなど) ⑤相手のペースに合わせ、気持ちを汲み取る(表情やうなずきなど) ⑥相手を置き去りにしない(家族とだけ話をしたり、自分の業務に夢中になって利用者が目に入っていないなど) など 認知症の人とのかかわり方のポイント ①名前を呼んでから話しかける ②短文でわかりやすい表現を使う ③一つひとつの動作に対して声かけをする
便を触る場面は説得より被害最小化を優先する
ベッド上で便を握られると、介護士は一瞬で限界に近づきます。「汚いから触らないで」と言いたくなりますが、責める言葉が通らない時ほど、本人も職員も追い詰められます。この項目では、言い負かすより拡散と怒りを小さくする見方を置きます。
エビデンスは、便を握る行為への決まった手順を示すものではありません。ただ、コミュニケーション能力に合わせた声掛けや、患者の言葉を否定しないこと、強い説得を避けることは示されています。現場ではこの範囲を前提に、短い声かけで手を包む、体を覆う、清拭やタオルを持ってもらうなど、手の行き場を作る工夫を検討します。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
2)せん妄の予防ケア (1)認知機能低下に対する介入 ・見当識(場所・時間・人物)を保つような声掛けを積極的に行う. ・時計やカレンダーを置いて,視覚的情報による見当識の支援をする. ・眼鏡や補聴器などの補助具を普段通りに装着する. ・必要な情報を文字に書いて伝える. ・コミュニケーション能力に合わせた声掛けの工夫. ・患者の訴えを傾聴し対応する(患者の言葉を否定しない,強い説得を避ける).
怒りが危険ラインなら介助を続けず交代する
暴言や拒否が続き、「このまま触っていたら危ない」と感じることがあります。その時点で介護士が異常なのではなく、介助を続けるには危ないサインです。この項目では、離れることを逃げではなく安全行動として扱います。
BPSDとしての暴言や暴力は、ハラスメントとしてではなくケアとして考える必要があります。一方で、職員の安全に配慮する必要は変わりません。怒りを抱えたままパット交換を続けるより、手を止め、ナースコールやPHSで応援を呼び、交代を求めることが本人と職員を守る動きになります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
介護現場におけるハラスメント対策マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947524.pdf
認知症等の病気または障害の症状として現われた言動(BPSD※等)は、「ハラスメント」と してではなく、医療的なケアによってアプローチする必要があります。認知症がある場合、もしくは、認知症の診断を受けていないが認知機能が低下している場合などは、BPSDである可能性を前提にしたケアが必要です。認知症等の病気または障害に起因する暴言・暴力であっても、職員の安全に配慮する必 要があることには変わりありませんから、ハラスメント対策とは別に、対応を検討する 必要があります。
拒否が強い人は毎回の根性ではなく共有ルールにする
毎回同じ利用者で同じところが崩れるなら、その場の職員の根性だけで処理するには限界があります。誰が入るか、どこまでやったら止めるか、何を記録するかを決めておくと、個人の我慢からチームの対応に変わります。
事故対応の資料では、いざという時に迷わず動けるよう、報告ルートや対応手順をあらかじめ示すことが重要とされています。拒否が強い人も同じです。入りやすい時間、対応しやすい職員、二人介助に切り替える条件、中止基準、便を触る時の共有事項を記録し、次の勤務者が同じ危険に入らない形にします。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/001569590.pdf
事故発生時に職員が適切な行動がとれるよう 、基本的な対応手順はあ らかじめマニュアル等で示しておくことが重要です。いざというときに職員が迷わず適切な行動がとれるよう 、施設内での報告ルートや 、医療機関との 連携方法、利用者家族・行政への報告タイミングなど、基本的な対応手順をわかりやすいマニュア ルやフロー図で作成し、平時から職員に周知し、訓練しておくことが大切です。対応手順は個々の施設に合わせた内容とすることが必要で 、施設ごとに作成すると良いでしょう。
認知症の拒否に声かけで勝とうとすると、介護士が壊れます。短い一動作、手の行き場、中止、交代、共有を最低ラインにします。
認知症の声かけが伝わらない時によくある事例

現場では、同じ拒否でも「またこの場面か」と感じるほど繰り返されます。本人を責めたいわけではないのに、排泄物、暴言、時間の遅れが重なると、介護士の余裕は一気に削られます。
とくに排泄介助は、清潔保持だけでなく、羞恥心、身体接触、時間圧が重なる介助です。説明を丁寧にしようとしても、言葉が長くなるほど通りにくくなることがあります。ここでは、現場で起きやすい事例を、状況、困りごと、よくある誤解、押さえる視点に分けます。
パット交換中に「帰ってください」と拒否される
ベッド上でパットを替えようとした瞬間に「帰ってください」「触らないで」と言われることがあります。職員は清潔のために必要だと分かっていますが、本人から見れば、急に近づかれて身体を動かされる場面です。最初に名前を呼び、見える位置から短く一動作で入ることが入口になります。
状況は、排泄介助中に拒否や暴言が出る場面です。困りごとは、介助が止まり、汚染や次の業務に影響することです。よくある誤解は、拒否を「性格がきつい」「わざと困らせる」と固定してしまうことです。押さえるべき視点は、本人の自尊心、距離、表情、声の調子に配慮し、短い言葉で一つずつ進めることです。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
身体的特徴に応じたかかわり方のポイント ① 相手が認識しやすい立ち位置 ② 安定した体勢(麻痺や筋力低下で立位が不安定な時には座ってもらうなどの配慮) ③ はっきりとした声、聞こえやすい大きさ ④ 表情に留意する(痛みなどの苦痛がないかを確認しながら) ⑤ 声の調子に気をつけてゆっくりと話す ⑥ 身振りや手振りも織り交ぜながら話す など ⑦ 心理的特徴に応じたかかわり方のポイント ①価値観や考え方習慣を受容する ②自尊心を尊重する(幼児語を使ったり、子ども扱いをしない) ③距離や目線の高さに留意する(不快でない高さや距離) ④相手の表情を確認しながら話しかける(不快に感じている表情でないかなど) ⑤相手のペースに合わせ、気持ちを汲み取る(表情やうなずきなど) ⑥相手を置き去りにしない(家族とだけ話をしたり、自分の業務に夢中になって利用者が目に入っていないなど) など 認知症の人とのかかわり方のポイント ①名前を呼んでから話しかける ②短文でわかりやすい表現を使う ③一つひとつの動作に対して声かけをする
「あっち向いてください」が伝わらず動作が止まる
「あっち向いてください」と言っても、本人が正面を向いたまま固まることがあります。職員は簡単な指示のつもりでも、本人には「あっち」がどちらか、なぜ動くのか、どう動けばよいのかがつながらない場合があります。言葉を短くし、必要なら身振りや手順を分けます。
状況は、声かけの意味が本人の動作につながらない場面です。困りごとは、説明を重ねるほど職員の焦りが強くなることです。よくある誤解は、本人が聞いていないと決めることです。押さえるべき視点は、本人が理解できる言葉に変え、ゆっくり説明し、本人の理解と職員側の理解にズレがないか見ることです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第 2 版)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001484891.pdf
まずは、以下の点を確認する。本人が意思を形成するのに必要な情報について説明しているか。本人が理解できるよう、分かりやすい言葉や文字に変えて、ゆっくりと説明しているか。本人が理解していることと、意思決定支援者らの理解に相違はないか。本人が自発的に意思を形成するのに障害となる環境等はないか。本人は説明された内容を忘れてしまうこともあり、その都度、丁寧に説明することが必要である。
便を握られて怒りが爆発しそうになる
パット交換中に便を握られると、介護士は汚染の拡大、皮膚への付着、リネン交換、次の利用者対応まで一気に考えます。そこで「汚いから触らないで」と強く言うほど、本人の拒否も職員の怒りも強くなることがあります。まず拡散を小さくし、職員の危険ラインも見る場面です。
状況は、排泄物への接触が起きる場面です。困りごとは、衛生面の処理と怒りが同時に来ることです。よくある誤解は、本人を説得できれば止まると考えることです。押さえるべき視点は、決まった正解として断定せず、強い説得を避け、短い声かけと手の行き場づくりで被害を小さくすることです。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
2)せん妄の予防ケア (1)認知機能低下に対する介入 ・見当識(場所・時間・人物)を保つような声掛けを積極的に行う. ・時計やカレンダーを置いて,視覚的情報による見当識の支援をする. ・眼鏡や補聴器などの補助具を普段通りに装着する. ・必要な情報を文字に書いて伝える. ・コミュニケーション能力に合わせた声掛けの工夫. ・患者の訴えを傾聴し対応する(患者の言葉を否定しない,強い説得を避ける).
一人介助で暴言や手払いを受け続ける
排泄介助や更衣介助では、カーテン内や居室内で職員と本人が一対一になりやすいです。そこで暴言や手払いが続くと、職員は「ここで呼んだら迷惑かも」と抱え込みやすくなります。危険を感じた時に呼べる前提を作ることが、本人にも職員にも必要です。
状況は、拒否や暴言がある介助を一人で続ける場面です。困りごとは、誰にも見えない場所で感情が高まり、判断が狭くなることです。よくある誤解は、介護士なら最後まで一人で終わらせるべきという空気です。押さえるべき視点は、1対1場面のリスクを認め、職員安全と精神的負担の軽減を組織で考えることです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
介護現場におけるハラスメント対策マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947524.pdf
例えば、1 対 1 や 1 対多の関係や状況といった環境面のリスク要因に対し、訪問系サービス であれば、利用者や家族等の居住場所で 1 対 1 や1対多の状況にならないような職員の安全 確保、精神的負担の軽減のための対策を予め講じることが求められます。また、施設系サービ スや通所系サービスについても、ケアの内容、提供場所、時間帯によっては、1 対 1 や 1 対 多の関係や状況になる可能性があるため、そのようなリスク要因をできるだけ回避するための 環境整備や対策を講じることが求められます。
よくある事例に共通するのは、本人の拒否だけでなく、介護士が一人で処理する前提です。短く伝え、危ない時は止めて共有します。
なぜ認知症の人に声かけが伝わらないのか

現場では、何度も説明しているのに、本人には初めて聞いたように返されることがあります。このような状況が起きる背景には、本人の理解しやすさ、環境、声かけの量、支援する側の体制が関係します。ここでは、認知症の人に声かけが伝わらない理由を整理します。
パット交換中は、職員の手も気持ちも止めにくいものです。けれど、焦って説明を増やすほど、本人には圧として届くことがあります。理由を分けて見ると、声かけを「うまい言葉探し」ではなく、動きやすい条件づくりとして見直せます。
言葉の意味と動作が本人の中でつながりにくいことがある
「横を向く」「手を上げる」「少し待つ」は、職員には一連の介助手順です。けれど本人には、それぞれの意味や目的がつながらないことがあります。そこで必要なのは、理解できない本人を責めることではなく、言葉を小さくすることです。
なぜ起きるのかは、本人の意思決定能力や理解の状態が、その時々の心身状態や支援の仕方で変わるためです。建前では、一度説明すれば動いてもらえると思いたくなります。現実には、説明の意味が動作に結びつかず、拒否だけが見える場面があります。押さえるべき視点は、短文で一動作に分け、本人の反応を待つことです。
| 言い方 | 現場での使い方 |
|---|---|
| 横向きます | 体の向きを変える一動作だけを伝える |
| 手をここ | 手の置き場だけを示す |
| すぐ終わります | 不安を下げる短い見通しにする |
出典元の要点(要約)
厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第 2 版)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001484891.pdf
認知症の症状にかかわらず、本人には意思があり、意思決定能力を有するというこ とを前提にして、意思決定支援をする。本人のその時々の意思決定能力の状況に応じて支援する。本人の意思決定能力を固定的に考えずに、本人の保たれている認知能力等を引き出 す働きかけを行う。意思決定能力の評価は、本人の認知機能や身体及び精神の状態と本人の生活状況等 をその都度十分に把握したうえで、意思決定する行為内容に照らし合わせ、適切に 判断されることが必要である。本人の意思決定能力は本人の個別能力だけではなく、意思決定支援者の支援力に よって変化することに注意する。
介護士の焦りや近づき方も環境の一部になる
時間がない時ほど、声が強くなり、近づき方が急になり、表情にも焦りが出ます。本人は言葉だけでなく、距離、表情、動作の速さも受け取っています。職員自身も環境の一部だと考えると、見直せるところが増えます。
なぜ起きるのかは、認知症の人を取り巻く環境に、物理的な音や光だけでなく、関わる人との信頼関係も含まれるためです。建前では、正しい説明をすればよいと考えがちです。現実には、焦った近づき方が本人の不安や緊張につながる場合があります。押さえるべき視点は、声量、表情、距離、手順を整えることです。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
認知症患者を取り巻く環境は,物理的環境,社会的環境,運営的環境の 3 つの側面でとら えることができる.物理的環境では,光や音,におい,温度などが影響する.例えば,モニ ターやナースコール,同室者の声など,音刺激が過剰となる場合がある.認知症患者は, 刺 激を選択することが困難になりやすく,自分に関係ない音を聞き流すことができず,混乱に 繋がったりする.そのため,静かな環境になるよう調整が必要となる.社会的環境としては, 医療従事者も環境となる.
強い説得や否定は反応を強めることがある
「だめです」「触らないで」「早くしてください」と言いたくなる場面ほど、本人も職員も追い詰められています。危険や汚染を止めたい気持ちは自然ですが、否定や強い説得だけでは、本人の安心につながりにくいことがあります。
なぜ起きるのかは、本人の訴えを否定せず、強い説得を避けることが認知機能低下への介入として示されているためです。建前では、正しい理由を説明すれば分かってほしいところです。現実には、説明が長くなるほど怒りも増えます。押さえるべき視点は、正論を短い安心の言葉に変えることです。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
2)せん妄の予防ケア (1)認知機能低下に対する介入 ・見当識(場所・時間・人物)を保つような声掛けを積極的に行う. ・時計やカレンダーを置いて,視覚的情報による見当識の支援をする. ・眼鏡や補聴器などの補助具を普段通りに装着する. ・必要な情報を文字に書いて伝える. ・コミュニケーション能力に合わせた声掛けの工夫. ・患者の訴えを傾聴し対応する(患者の言葉を否定しない,強い説得を避ける).
一人で抱える設計が職員安全のリスクになる
声かけが伝わらない相手を一人で何とかする前提では、介護士の怒りも危険も表に出にくくなります。特に居室やカーテン内では、暴言や手払いがあっても周囲に気づかれにくいです。個人の我慢ではなく、体制で見る必要があります。
なぜ起きるのかは、1対1や1対多の状況がリスク要因になり得るためです。建前では、担当した職員が最後まで終わらせることが期待されがちです。現実には、ケア内容、場所、時間帯によって職員の安全確保や精神的負担の軽減が必要な場面があります。押さえるべき視点は、中止・交代・共有をルール化することです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
介護現場におけるハラスメント対策マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947524.pdf
例えば、1 対 1 や 1 対多の関係や状況といった環境面のリスク要因に対し、訪問系サービス であれば、利用者や家族等の居住場所で 1 対 1 や1対多の状況にならないような職員の安全 確保、精神的負担の軽減のための対策を予め講じることが求められます。また、施設系サービ スや通所系サービスについても、ケアの内容、提供場所、時間帯によっては、1 対 1 や 1 対 多の関係や状況になる可能性があるため、そのようなリスク要因をできるだけ回避するための 環境整備や対策を講じることが求められます。
声かけが伝わらない背景には、本人の理解しやすさ、環境、言葉の強さ、一人で抱える体制があります。言葉を短くし、仕組みで支えます。
認知症の拒否と声かけで迷う時のFAQ
現場では、排泄介助の途中で判断に迷うことが多くあります。押してよいのか、止めてよいのか、交代を頼んでよいのかが曖昧なままだと、介護士が一人で追い込まれます。
- Q何度説明しても伝わらない時は、どう言えばよいですか?
- A長く説明して納得させようとするより、短文で一つひとつの動作に分けます。たとえば「あっち向いてください」ではなく、「横向きます」「手をここ」「すぐ終わります」のようにします。現場では、説明が長くなるほど本人も職員も混乱しやすいため、まず一動作に下げることが大切です。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
身体的特徴に応じたかかわり方のポイント ① 相手が認識しやすい立ち位置 ② 安定した体勢(麻痺や筋力低下で立位が不安定な時には座ってもらうなどの配慮) ③ はっきりとした声、聞こえやすい大きさ ④ 表情に留意する(痛みなどの苦痛がないかを確認しながら) ⑤ 声の調子に気をつけてゆっくりと話す ⑥ 身振りや手振りも織り交ぜながら話す など ⑦ 心理的特徴に応じたかかわり方のポイント ①価値観や考え方習慣を受容する ②自尊心を尊重する(幼児語を使ったり、子ども扱いをしない) ③距離や目線の高さに留意する(不快でない高さや距離) ④相手の表情を確認しながら話しかける(不快に感じている表情でないかなど) ⑤相手のペースに合わせ、気持ちを汲み取る(表情やうなずきなど) ⑥相手を置き去りにしない(家族とだけ話をしたり、自分の業務に夢中になって利用者が目に入っていないなど) など 認知症の人とのかかわり方のポイント ①名前を呼んでから話しかける ②短文でわかりやすい表現を使う ③一つひとつの動作に対して声かけをする
- Q便を触る時に「触らないで」と言ってもよいですか?
- A危険や汚染を止めるために声をかける必要はあります。ただし、責める言葉や強い説得だけで止めようとすると、本人の拒否が強まる場合があります。現場では「触らないで」を繰り返すより、短く声をかけ、手を包む、清拭やタオルを持ってもらうなど、手の行き場を作る工夫を検討します。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
2)せん妄の予防ケア (1)認知機能低下に対する介入 ・見当識(場所・時間・人物)を保つような声掛けを積極的に行う. ・時計やカレンダーを置いて,視覚的情報による見当識の支援をする. ・眼鏡や補聴器などの補助具を普段通りに装着する. ・必要な情報を文字に書いて伝える. ・コミュニケーション能力に合わせた声掛けの工夫. ・患者の訴えを傾聴し対応する(患者の言葉を否定しない,強い説得を避ける).
- Q手が出そうなくらい怒った時は、介助を止めてもよいですか?
- A利用者の安全を確保しながら、可能な範囲で手を止め、応援や交代を求めます。BPSDとしての言動はケアとして考える必要がありますが、職員の安全への配慮も必要です。現場では「自分が我慢すればよい」と続けるより、危険ラインとして共有することが大切です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
介護現場におけるハラスメント対策マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947524.pdf
認知症等の病気または障害の症状として現われた言動(BPSD※等)は、「ハラスメント」と してではなく、医療的なケアによってアプローチする必要があります。認知症がある場合、もしくは、認知症の診断を受けていないが認知機能が低下している場合などは、BPSDである可能性を前提にしたケアが必要です。認知症等の病気または障害に起因する暴言・暴力であっても、職員の安全に配慮する必 要があることには変わりありませんから、ハラスメント対策とは別に、対応を検討する 必要があります。
- Q拒否が強い人の対応は、記録に何を残せばよいですか?
- A誰が悪いかではなく、次に同じ危険を作らないための情報を残します。時間帯、介助内容、声かけ、本人の反応、便を触った場面、止めた基準、交代できたか、共有先を記録します。現場では、通った職員や入りやすい時間も残すと、次の勤務者が同じ押し問答に入りにくくなります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第 2 版)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001484891.pdf
本人の意思決定能力の評価や、支援方法に困難や疑問を感じ、また、本人の意思を 日常・社会生活に反映した場合に、他者を害する恐れがあったり、本人にとって見 過ごすことのできない重大な影響が生ずる場合や本人のできること・やりたいこと の実現に向け、チームで情報を共有し、チームで検討する。この場合も、再度、適 切な意思決定支援のプロセスを踏まえて、本人の意思決定支援の方法について話し 合う。
迷った時は、押すか諦めるかの二択にしません。短く伝え、危ない時は止め、交代と記録で次の職員へつなげます。
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現場では、パット交換中に拒否や暴言が重なると、「今ここで終わらせなければ」と焦ります。けれど、その焦りのまま説明を重ねるほど、本人にも介護士にも負担が増えます。
この記事で整理したように、認知症の声かけが伝わらない時に必要なのは、うまい言葉で勝つことではありません。短い一動作、手の行き場、途中中止、交代、報告共有を組み合わせ、介護士を一人にしないことです。
明日からの一歩は、「あっち向いてください」を「横向きます」に変えることです。
拒否が強い人は、その場の職員だけで抱えず、どこまでやったら止めるか、誰に交代を頼むか、何を記録するかを決めます。本人の尊厳も、介護士の尊厳も、根性ではなく仕組みで守ります。
最後までご覧いただきありがとうございます。
更新履歴
- 2025年12月19日:新規投稿
- 2026年5月6日:内容を全面的にリライト









