理想のケアを掲げても、現実はナースコールと記録に追われる毎日になりがちです。人手不足による多忙さから、利用者と向き合う時間が削られることに葛藤する方も多いでしょう。
全てを完璧にするのは困難ですが、論理的な視点で業務を整理すれば道が見えやすくなると考えられます。自分たちを守りつつ質を保つための、現実的な一歩を解説します。
この記事を読むと分かること
- 忙しさの正体を可視化する方法
- 現場の3Mを削減する視点
- 直接ケアの時間を増やす工夫
- PDCAを現場で回すコツ
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
結論:介護現場で「終わらない忙しさ」を改善する現実的な答えとは?

現場では、「利用者一人ひとりにしっかり寄り添いたい」という想いを持つ方がほとんどです。しかし、日々の業務に追われる中で、「建前ではわかっているけど、実際の人員配置だと難しい」と葛藤を抱えていませんか。
次から次へと鳴るナースコールや、終わらない記録作業。理想と現実の狭間で、もどかしさを感じる日もあるでしょう。
ですが、全ての業務を完璧にするのは困難です。論理的な視点で業務を整理すれば道が見えやすくなると考えられます。今の「終わらない忙しさ」を少しでも和らげるための、現実的な業務改善の着地点を解説します。
日常業務に潜む「3M」を見つけ出す
現場を苦しめている要因の一つは、目に見えにくい小さな負担の積み重ねだと考えられます。まずは、日々の動きの中に潜む「3M」に気づくことから始めるとよいでしょう。
| 分類 | 内容(具体例) |
|---|---|
| ムリ | 特定の職員に負担が集中するなどの過度な負担 |
| ムダ | 付加価値を生んでいない作業(探し物など) |
| ムラ | 人によってやり方が違う手順のばらつき |
気合で乗り切るのではなく、これらの「3M」を客観的に特定することが重要だと考えられます。無理な業務を整理し、少しずつ削減していくことが重要であるとされています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
現場の課題を解決するためには、日常業務に潜む「ムリ(過度な負担)」「ムダ(付加価値を生んでいない作業)」「ムラ(手順のばらつき)」の3Mを特定し、削減していくことが重要である。
付随利業務を減らし「直接ケア」の時間を守る
「本当はもっと利用者の話を聞きたいのに、記録に時間を取られてしまう」と悩む声を現場では耳にすることがあります。そんな時は、業務を分類して考えることが有効だと考えられます。
特に注目すべきは、バイタル記録の度重なる転記といった「付随的業務」です。これらは工夫次第で省力化できる可能性がある部分です。
| 項目 | 改善の方向性 |
|---|---|
| 記録 | 二度手間や転記のムダをなくす |
| 準備 | 作業時間を減らしスムーズにする |
こうした付随制業務を論理的に削減することで、本来やりたかった「直接的なケア」の時間を確保しやすくなると考えられます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
バイタル等の記録の転記といった付随制業務を削減し、直接的なケアの時間を確保する。
終わらない忙しさを和らげる答えは、気合や根性ではありません。「3M」を特定して付随的業務を削減し、直接ケアの時間を確保すること。削減していくことが重要であるとされています。
現場で起きている「業務効率化が進まない」典型パターンと改善の視点
現場では、「もっと効率よく動きたいけれど、目の前の対応で手一杯だ」という声が絶えません。「建前ではわかっているけど、実際の人員配置だと難しい」と、諦めを感じている方も多いでしょう。
誰もが一生懸命に働いているのに、なぜか業務が停滞してしまう。ここでは、多くの介護現場で見られる典型的なパターンと、そこから抜け出すための客観的な視点を整理します。
記録の転記に追われ、本来のケアが終わらないパターン
良かれと思って行っている丁寧な記録作業が、結果的に負担になっているケースもあります。
| 状況 | 手書きメモを日誌に写し、PCにも入力している |
|---|---|
| 困りごと | 残業が増え、ケアの時間が物理的に削られる |
| よくある誤解 | 丁寧に何度も書くことが「良い介護」と感じる |
| 改善視点 | 付随的業務を削減し直接ケアの時間を確保する |
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
バイタル等の記録の転記といった付随的業務を削減し、直接的なケアの時間を確保する。
スタッフによって手順が違い、その都度確認が発生するパターン
ベテランと新人でやり方が違い、「誰の指示に従えばいいの?」と現場が混乱するケースもあります。
| 状況 | 介助方法やルールが個人の経験則に依存している |
|---|---|
| 困りごと | 教育の負担が増え、新人も混乱してミスが出る |
| よくある誤解 | 個別ケア=「スタッフ独自のやり方」を許容する |
| 改善視点 | ムラを解消し、業務を標準化して質を安定させる |
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
手順が人によって異なる(ムラ)状態を解消し、業務を標準化することで、ケアの質の安定と効率化を図る。
何度も同じ場所を往復し、移動だけで時間が過ぎるパターン
「忙しいのは人が足りないからだ」と思いがちですが、環境に要因があるケースもあります。
| 状況 | 備品の配置が悪く、フロアを何度も往復している |
|---|---|
| 困りごと | 体力的に疲弊し、ケアの中断が頻繁に起きる |
| よくある誤解 | 回らないのは「マンパワー不足」だけが原因だ |
| 改善視点 | 5Sの徹底により、業務のムダを省き環境を整える |
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底により、業務のムダを省き、職場環境を整えることで、生産性の向上を目指す。
業務が滞る要因として、「転記のムダ」「手順のムラ」「環境の不備」が挙げられます。これらを客観的に見直し、標準化と5Sを徹底することが、生産性の向上を目指すためのステップです。
なぜ「頑張っているのに」介護現場は忙しすぎるのか?構造的な理由

現場では、「人員不足だから仕方ない」「とにかく目の前のことを終わらせるしかない」と、日々の業務をなんとか回すことに必死です。「建前では余裕を持ったケアが理想だとわかっていても、実際の人員配置では難しい」と感じる方が大半でしょう。
なぜ、誰もがこれほどまでに頑張っているのに、現場は一向に楽にならないのでしょうか。そこには、個人の努力だけでは解決しにくい構造的な原因が隠れています。
「付随的な業務」がケアの中に埋もれ、可視化されていないから
建前(理想)は「すべての時間をケアに注ぐ」ことですが、現実(現場)は「記録のための移動」や「探し物」といった付随的な業務に多くの時間を奪われがちです。
| 分類 | 具体例 |
|---|---|
| 直接ケア | 食事介助、入浴介助、排泄介助など |
| 付随業務 | 記録の転記、備品の準備、探し物など |
これらが混ざった状態では、どこを削ればいいのかが見えにくくなります。業務内容をしっかりと分類し、それぞれの時間の割合を可視化することが、終わらない忙しさを見直す第一歩になると考えられます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
業務内容を「直接的なケア」「付随的な業務」「それ以外の業務」に分類・可視化し、それぞれの時間の割合を把握することが改善の第一歩となる。
理念や方針が、具体的な「現場の判断基準」に落ちていないから
建前(理想)は「チーム一丸となった統一されたケア」ですが、現実(現場)は「その場の状況判断」で個人がバラバラに動いてしまっています。
| 現在の状態 | 発生する問題 |
|---|---|
| 理念が標語止まり | スタッフがどう動くべきか毎回迷う |
| 判断基準が曖昧 | 確認の手間や手順のムラが生じる |
組織の理念や行動指針が、日々の業務フローに紐付いていない場合、迷いが生じるたびに個人の思考コストを消費しやすいと考えられます。この「迷う時間」が、忙しさをさらに増やす一因になると考えられます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
理念や行動指針を日々の業務フローや判断基準に落とし込み、職員が日常的に実践できるようにする必要がある。
「なんとなく大変」で済ませ、振り返るサイクルがないから
建前(理想)は「効率的な人員配置による計画的な運営」ですが、現実(現場)は「今日も忙しかった」という感覚だけで一日が終わり、十分な振り返りが行われにくい状況もあります。
| 欠けている視点 | 改善へのハードル |
|---|---|
| 客観的な評価 | 感覚だけで対処し、改善ポイントが不明 |
| 可視化された計画 | 数値に基づかないため、次に繋がらない |
課題を数値化せず、感覚だけで対処していると、次に何を改善すべきかがわかりにくくなります。計画を立てて実行し、成果や学びを可視化して振り返るサイクルを積み重ねることが、日頃の経営改善に役立つとされます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省PDCAサイクルを実践して生産性を高めよう
https://www.mhlw.go.jp/content/000812225.pdf
計画を立てて実行し、成果や学びを可視化して振り返るサイクルを積み重ねることが、日頃の経営改善に役立つとされる。
終わらない忙しさの根本要因は、個人の能力不足ではなく、業務の混同や判断基準の曖昧さ、振り返り不足といった「仕組みの欠如」にあると考えられます。これらを可視化し、組織のルールとして整えることが現状を見直す鍵になると考えられます。
介護の業務効率化・改善に関する現場のよくある疑問

「効率化」や「改善」という言葉を聞くと、「これ以上何を求められるのか」「利用者をないがしろにするのでは」と不安を感じる方も多いでしょう。
ここでは、新しい取り組みに対して現場が抱きやすい小さな迷いや疑問について、客観的な指針に基づきお答えします。
- Q効率化を進めると、流れ作業のようになって利用者に寂しい思いをさせませんか?
- A
業務の効率化は、利用者へのケアを手抜きすることではありません。
生産性向上の目的は、介護の価値を高めることだとされています。ムダな付随的業務を省くことで、職員が安全にやりがいを持って働ける職場環境をつくり、利用者の満足度を高めることを目指しています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
介護サービスにおける生産性向上とは、介護の価値を高めることである 。具体的には、職員が安全にやりがいを持って働ける職場環境をつくり、利用者の満足度を高めることを目指す 。
- QPDCAサイクルを取り入れたいですが、日々の業務に追われていて何から始めればいいかわかりません。
- A
最初から大がかりな計画を立てる必要はありません。
PDCAサイクルとは、計画・実行・評価・改善という一連のプロセスを繰り返す手法です。まずは「探し物を減らす」といった小さな改善から始め、その循環を続けることで、組織や個人の継続的なレベルアップを図ることが大切です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
PDCAサイクルを実践して生産性を高めよう
https://www.mhlw.go.jp/content/000812225.pdf
PDCAサイクルとは、計画、実行、評価、改善の一連のプロセスを繰り返し行う手法である。この循環を繰り返す目的は、組織や個人の継続的なレベルアップを図ることである。
- QLIFEのデータを入力してフィードバックを受け取っていますが、それをどうケアに活かせばいいか悩んでいます。
- A
フィードバックのデータは、一人で抱え込まずにチームで活用するプロセスが解説されています。
受け取ったフィードバック票を複数人で共有し、なぜそのような結果になったのか要因を検討し、ケアの質を上げるための次の目標設定(Plan)へ繋げていくプロセスが解説されている。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
ケアの質の向上に向けた 科学的介護情報システム(LIFE) 利活用の手引き 付録 令和6年度 事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/12301000/001470381.pdf
フィードバック票を複数人で共有して要因を検討し、次の目標設定(Plan)へ繋げるプロセスが解説されている。
業務改善やデータ活用は、現場を縛るものではなく、介護の価値を高め職員のやりがいを守るためのツールになりえると考えられます。小さなステップからチームで共有・改善を繰り返すことが、安心と質の向上に繋がりやすくなると考えられます。
まとめ:理想のケアをあきらめないために、今できる「無理のない一歩」
日々、目の前の利用者のために懸命に動いている皆さんにとって、今の多忙さは皆さんの努力不足だけが理由ではありません。
今回お伝えした「3Mの特定」や「付随制業務の整理」といった論理的な視点は、皆さん自身が迷いにくく、少しでも楽に働けるようにするためのサポーターになりえます。
明日からの勤務で、まずは一つだけ「ムダだと感じる作業」を意識してメモしてみるとよいでしょう。その小さな気づきが、自分と利用者を守る変化に繋がる可能性があります。
最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。
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更新履歴
- 2025年9月7日:新規公開
- 2025年10月21日:一部レイアウト修正
- 2025年11月3日:エビデンスのリンクの見直し(修正)
- 2025年12月21日:より詳細なエビデンス(根拠)に基づき解説を充実させるとともに、最新のサイト基準に合わせて構成・レイアウトを見やすく刷新しました。
- 2026年2月23日:最新のサイト基準に合わせて構成・レイアウトを見やすく刷新。









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