身に覚えのないあざを、自分の介助ミスのせいだと感じていませんか?
どれほど丁寧に触れても、翌日には身に覚えのないあざができていることがある。自分の手が凶器のように思えて介助が怖くなる、そんな現場の葛藤は非常に切実だと感じられます。
全ての事故を防ぐのは難しくても、医学的な理由を知れば対策は変わり得ます。自分と利用者を守るための、現実的な着地点を一緒に見つけましょう。
この記事を読むと分かること
- 防げないあざの医学的背景
- 副作用による出血のサイン
- 自分を守る記録と報告術
一つでも当てはまったら、この記事が参考になります
結論:身に覚えのないあざ(皮下出血)は誰のせい?介護職が知っておきたい「防げない事故」の事実

「安全第一という建前はわかっているけれど、この人員配置でこれ以上どう気をつければいいの?」
現場では、そんな声にならない悲鳴が日々上がっているようにも見えます。
一生経命に介助した翌日、利用者の腕に身に覚えのないあざを見つけて、「自分の力が強すぎたのか」とひそかに落ち込む介護職員は少なくないようです。
しかし、そのあざは本当にあなたの技術不足が原因なのでしょうか。
国のガイドラインを紐解くと、現場の努力だけでは防ぎきれない医学的な側面が見えてくるように思われます。
努力しても「防ぐことが難しい事故」は存在する
介護の現場では、事故をゼロにすることが求められがちです。
電力、ガイドラインでは事故を以下の2つに分けています。
- 対策を取り得る事故
- 防ぐことが難しい事故
いくら職員が注意深く手順通りに介助を行っても、防ぎきれない事象は存在し得ます。
「あざができた=自分の介助が悪い」と責める前に、まずはこの点を知ることが大切です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省 老健局介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/001569590.pdf
事故には、「対策を取り得る事故」と「防ぐことが難しい事故」がある。
重度化による皮膚の脆弱化(弱くなること)と内出血
現場で増えている内出血や皮膚剥離の背景には、利用者の重度化があると考えられます。
高齢になり介護度が上がると、以下のような日常ケアでも事故が起こりやすくなることがあります。
- 通常のケアに伴う内出血
- わずかな摩擦での皮膚剥離(皮膚がはがれること)
これは、高齢者の特性による事故傾向として示されています。
「自分が傷つけた」と抱え込まず、状態の変化としてチームで共有しましょう。
出典元の要点(要約)
厚生労働省 老健局介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/001569590.pdf
近年では介護度の高い高齢者が介護施設等で暮らすケースが増えており、転倒や転落による骨折だけでなく、高齢者の特性から、ケアにともなう内出血や皮膚剥離、体位交換に伴う骨折なども見られるようになってきた。
あざはあなたの介助ミスとは限らず、事故には「防ぐことが難しい事故」があるとされています。自分を責めすぎずに状況を客観的に捉え、状態の変化として組織で共有することが、一つの対応になり得ます。
現場で起きている「原因不明の皮下出血」の典型パターン

「もっと気をつけて」と言われても、これ以上どうすればいいのか。
現場では、少ない人員で時間内にケアを終えなければならないという、現実的な壁があります。
そんなギリギリの状況で「原因不明のあざ」を見つけると、どうしても自分を責めてしまいがちです。
ここでは、現場でよくある3つの場面と、知っておきたい点を整理します。
移乗や更衣介助のあと、気づいたら内出血ができていた
| 状況 | 丁寧に移乗や着替えの介助を行ったはずなのに、翌日になって利用者の腕に内出血や皮膚がはがれた跡(皮膚剥離)が見つかった。 |
|---|---|
| 困りごと | 「私のやり方が乱暴だったのか」と自信を失い、介助に入るのが怖くなる。 |
| よくある誤解 | 正しい手順で介助をしていれば、内出血は起きないという思い込み。 |
| 視点 | 高齢で重度化が進むと、日常のケアに伴う内出血が見られるという点を知る。 |
出典元の要点(要約)
厚生労働省特別養護老人ホームにおける介護事故予防ガイドライン
https://pubpjt.mri.co.jp/pjt_related/roujinhoken/jql43u00000001m5-att/h24_05c.pdf
特別養護老人ホームでは、利用者の高齢化に伴い寝たきり等の状態が重度化する利用者が増加している。事故の傾向も変化し、以前は大半を占めていた転倒・転落による骨折に加え、近年は日常のケアに伴う内出血や皮膚剥離が増加している。
利用者の体に「点状のあざ」や「鼻血」が頻発する
| 状況 | どこかにぶつけた記憶もないのに、利用者の手足に小さな点のようなあざが増えたり、歯みがき時の出血や鼻血が続いている。 |
|---|---|
| 困りごと | 「加齢で皮膚や粘膜が弱くなっているだけだろう」と自分に言い聞かせ、報告をためらってしまう。 |
| よくある誤解 | 小さなあざや鼻血くらいなら、しばらく様子を見ても命に関わることはないという誤解。 |
| 視点 | それらは薬の副作用(出血傾向)のサインかもしれないため、速やかに医療職へ連絡する。 |
出典元の要点(要約)
厚生労働省重篤副作用疾患別対応マニュアル 出血傾向
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1f09.pdf
「手足に点状出血」、「あおあざができやすい」、「皮下出血」、「鼻血」、「過多月経」、「歯ぐきの出血」などの症状が見られた場合、医薬品による出血傾向の可能性があるため、放置せずにただちに医師・薬剤師に連絡する必要がある。
家族から「このあざは何?」と疑いの目を向けられる
| 状況 | 面会に来たご家族が利用者のあざを見つけ、「叩いたのではないか」「ちゃんと見ていないのか」と詰め寄ってくる。 |
|---|---|
| 困りごと | 医学的な理由をうまく説明できず、その場を収めるために「すみません」と謝罪し、スタッフ個人のミスとして処理されてしまう。 |
| よくある誤解 | 事故が起きてしまってから、釈明と謝罪をするのが誠意ある対応だという誤解。 |
| 視点 | 事故が起きる前に、皮膚の弱さや薬の影響といった予見されるリスクを、あらかじめ家族に説明しておく。 |
出典元の要点(要約)
厚生労働省特別養護老人ホームにおける介護事故予防ガイドライン
https://pubpjt.mri.co.jp/pjt_related/roujinhoken/jql43u00000001m5-att/h24_05c.pdf
施設は、個別ケアの際にその人が持つリスクを予見し、必要な対策について利用者・家族に対して十分な説明を行う必要がある。
現場で見られる原因不明のあざは、介助の失敗だけが理由とは限りません。重度化による皮膚の変化や薬の副作用といった情報を事前に共有し、家族にも伝えておくことが、必要とされています。
なぜ「身に覚えのないあざ」が頻発するのか?現場を苦しめる3つの原因

「一人ひとりに時間をかけて丁寧に介助すれば事故は防げる」
現場では、そんな建前と限られた人員体制という現実のギャップに、日々苦しめられているようにも見えます。
なぜ、どれだけ気をつけても「身に覚えのないあざ」ができてしまうのでしょうか。
エビデンスを紐解くと、現場の努力だけでは解決しきれない構造的・医学的な要因が浮かび上がってくるように見えます.
気をつけていても皮膚が傷つく「利用者の重度化」
| 建前(理想) | 介護職が介助技術を磨けば、利用者の皮膚を守りやすくなる。 |
|---|---|
| 現実(現場) | 利用者の重度化により、日常のケアや体位交換に伴い内出血や皮膚がはがれる(皮膚剥離)が見られることがある。 |
現場では、教科書通りの丁寧な介助をしていても、利用者の皮膚を守りきれない場面が見られます。これは個人の技術不足だけが原因とは限りません。
高齢になり介護度が上がると、皮膚そのものが弱くなり、日常のケアそのものがリスクになり得るという側面があります。
「自分が力を強すぎたのか」と過度に自分を責めるのではなく、加齢による身体の変化としてチーム全体で認識することが重要だと考えられます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省 老健局介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/001569590.pdf
近年では介護度の高い高齢者が介護施設等で暮らすケースが増えており、転倒や転落による骨折だけでなく、高齢者の特性から、ケアにともなう内出血や皮膚剥離、体位交換に伴う骨折なども見られるようになってきた。
内側からあざを作る「抗凝固薬(血をサラサラにする薬)の副作用」
| 建前(理想) | あざができるのは、どこかにぶつけるなどの外的な衝撃があったからだ。 |
|---|---|
| 現実(現場) | ワルファリンなどの薬の影響で、衝撃がなくても内側から皮下出血(あざ)ができてしまう。 |
身に覚えのないあざを見つけたとき、「どこかにぶつけたはずだ」と原因を探し回って疲弊していませんか。
実は、心疾患などで抗凝固薬(血をサラサラにして血栓を防ぐ薬)を飲んでいると、薬が効きすぎることで出血しやすくなる副作用があります。この場合、介護職の介助や外からの衝撃がなくても、体の内側からの影響であざ(皮下出血斑)ができてしまいます。
外的な要因ばかりを疑うと、現場のスタッフが責任を感じやすくなる要因となり得ます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省重篤副作用疾患別対応マニュアル 出血傾向
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1f09.pdf
医薬品服用後に皮下出血斑、鼻血、口腔内出血などの症状がある場合は副作用を疑う。特にワルファリンは抗凝固作用が過剰発現して出血傾向を来す場合があるが、患者判断による休薬は血栓症のリスクがある。
すべてを防げると誤認する「対策可能な事故」という組織の思い込み
| 建前(理想) | マニュアルを徹底し対策を行えば、施設内の事故は減らせる。 |
|---|---|
| 現実(現場) | 高齢者の身体的な特性から、どれほど注意しても「防ぐことが難しい事故」が存在し得る。 |
「あざができたのは、誰かの注意が足りなかったからだ」という前提で事故報告が扱われると、現場は息苦しくなります。
組織全体が「事故はすべて防げる」と思い込んでいると、防ぎきれない事象に対しても犯人探しが始まってしまいます。
しかしガイドラインが示す通り、施設での事故には防ぐことが難しい事故が存在します。
この仕分けができていない組織の構造が、介護職を心理的に追い詰める要因になり得ます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省 老健局介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/001569590.pdf
事故には、「対策を取り得る事故」と「防ぐことが難しい事故」がある。
身に覚えのないあざは個人の怠慢とは限らず、利用者の重度化や薬の副作用、および「事故はすべて防げる」という組織の誤解が複雑に絡み合って起きている可能性があります。要因を知ることが、過度な自責を減らす手がかりになり得ます。
皮下出血・あざに関する現場の小さな迷いへの回答
現場で迷いや不安を感じたとき、忙しい先輩や上司には聞きづらく、一人で抱え込んでいませんか。
ここでは、あざや出血に関するよくある疑問について、公的なエビデンスに基づき回答します。
- Q薬の影響であざができやすいなら、服薬を一時的にやめて様子を見てもいいですか?
- A自己判断でお薬の減量や中止をするのは、避けてください。 ワルファリンなどの薬が効きすぎて出血しやすくなることはありますが、勝手にやめると血栓症のリスクを伴います。 不安な症状が見られた場合は、主治医や薬剤師に相談してください。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
重篤副作用疾患別対応マニュアル 出血傾向
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1f09.pdf
ワルファリン服用者は効き過ぎにより出血傾向を起こすことがあるため、勝手に減量や中止をせず主治医に相談する必要がある。
- Q小さな「点のようなあざ」と、「大きなあざ」では、観察する意味が違いますか?
- Aはい、あざ(紫斑)の大きさは、身体の状態を知るための手がかりとして区別されています。 医学的には、3mm未満を点状出血、2cmまでを斑状出血、それ以上を溢血斑と呼びます。 どのような大きさのあざができているかを記録することは、医療的判断の参考になり得る観察情報です。
出典元の要点(要約)
日本内科学会
出血傾向の鑑別診断
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/7/109_1340/_pdf/-char/ja
紫斑は大きさにより3mm未満を点状出血、2cmまでを斑状出血、それ以上を溢血斑と呼び、透明なスライドガラスで圧迫しても色が消褪しない点で紅斑や毛細血管拡張と区別される。
- Qあざの報告を書くと「反省文」のようで辛いです。報告にはどんな意味があるのでしょうか?
- A報告書は、施設全体で振り返り活動を行うためのものと考えられます。 介護の現場では、隠れたリスクを蓄積し、施設全体で振り返り活動を行うことが目的とされています。 あなたが見つけた小さな気づきが、将来の事故予防のためのデータになり得ます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省 老健局
介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/001569590.pdf
介護の現場では、大きな事故を防ぐために、「ヒヤリ」とする問題や、「ハット」危ないと感じたことを蓄積し、施設全体で振り返り活動を行うことが重要である。
薬の影響や身体の変化など、正しい知識を持つことで現場の迷いは減り得ます。報告は個人を責めるものではなく、チーム全体でリスクを振り返るためのステップであると認識しましょう。
まとめ:「防げないあざ」を知ることが、あなたと利用者を守る一歩です
「あざを作らない」という理想と、現実の人員体制や利用者の身体状況。その板挟みで、自分を責め続けてしまうのはあまりに過酷なことです。
今日お伝えした通り、医学的な背景やガイドラインの定義を知ることで、あざは「自分のミス」から「観察すべき事実」へと捉え方が変わり得ます。
明日からは、報告書に「原因不明」と書く代わりに、「皮膚の脆弱性や内服の影響を考慮」という言葉を添えてみてください。
その一文があなたの専門性を示し、チーム全体でリスクを分かち合うきっかけになり得ます。全部を一人で背負う必要はないと考えられます。
日々の献身的なケアに、心から敬意を表します。
最後までご覧いただきありがとうございました。この記事がお役に立てれば幸いです。
関連コンテンツ
更新履歴
- 2026年2月28日:新規投稿







