現場からは「緊急時や死後の対応は誰がするのか」と不安の声が上がり、管理者としてリスクを背負う怖さに板挟みになっていませんか。
行政は「断るな」と言うだけで、トラブルの尻拭いは現場任せ。全てのリスクは回避できなくても、法的に推奨される対応策は存在します。
この記事を読むと分かること
- 「正当な理由」の境界線
- 未払い・死後事務の回避策
- 空欄でも守れる契約実務
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
結論:「保証人不在」だけの拒否は、指導対象となる可能性があります。施設が守るべきは「保証人の確保」ではありません。

「何かあった時のために、必ず身元保証人をつけてください」
これを入居条件にすることは、長年の慣習として定着しています。しかし、現在の国の基準では、この対応は認められていません。
施設が本来守るべきは、「本人の居住権」と「施設のリスク管理体制」です。保証人という「人」に依存するのではなく、「仕組み」でリスクを回避する体制への転換が求められています。
「正当な理由」なく断ることは、基準省令で禁止されています
「身元保証人がいないこと」のみを理由に入居・入所を拒むことは、指定基準における「正当な理由のない提供拒否」に該当し、行政指導の対象となり得ます。
医療機関や介護施設は、正当な事由(満床や医療的対応困難など)がない限り、サービスの提供を拒んではならないという応招義務に類似した規定があるためです。
つまり、「保証人がいないから」という理由だけで断ることは、コンプライアンス違反のリスクを負うことになります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/000516181.pdf
身元保証人がいないことのみを理由に、医療機関が入院を拒否することや、介護施設が入所を拒否することは、医師法や基準省令等における「正当な理由」には該当しない。
保証人の代わりになるのは「制度」と「行政連携」です
では、未払いや緊急時の対応はどうすればよいのでしょうか。保証人がいなくても、以下の代替策を活用することでリスクの軽減につなげることができます。
金銭管理: 成年後見制度や日常生活自立支援事業を活用し、支払い能力を担保する。
緊急連絡: 行政の担当ケースワーカーや後見人、知人などを緊急連絡先として登録する。
死後事務: 葬祭扶助や行旅死亡人取扱法に基づき、自治体と連携して火葬・埋葬を行う。
これらを組み合わせることで、特定の個人(保証人)がいなくても、施設運営は可能です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
身元保証人がいない場合の対応として、成年後見制度や日常生活自立支援事業等の権利擁護事業の活用、行政機関との連携による緊急連絡先の確保等が挙げられる。
契約書の「署名欄」が空欄でも、法的に直ちに問題となるわけではありません
「契約書に保証人の署名がないと、契約自体が無効になるのでは?」と不安になる必要はありません。
入居契約は本人と施設との合意で成立するため、保証人は必須要件ではありません。署名欄が空欄であっても、その理由(身寄りがない等)を記録し、代替手段(緊急連絡先等)を講じていれば、契約は有効であり、実地指導等でも問題視されないと考えられます。
重要なのは「空欄を埋めること」ではなく、「本人の生活を支える体制を整えること」です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
入院・入所契約において、身元保証人がいない場合でも、本人の意思決定能力や支払い能力を確認し、適切な支援を行うことで契約は可能である。身元保証人の不在のみを理由に契約を拒むことは不適切である。
「保証人がいない=拒否」は明確なルール違反です。施設が抱えるべきリスクは、保証人という「個人」に押し付けるのではなく、成年後見制度や行政サービスという「社会的な仕組み」で分散させることが、これからの施設運営のスタンダードです。
現場で「断りたくなる」3つの場面:ガイドラインに基づく解決ルート

現場スタッフからは「死んだらどうする」「お金はどうする」という不安が次々と上がります。管理者として、その不安を無視して受け入れることはできません。
ここでは、現場で特によくある3つの「拒否したくなる理由」を、ガイドラインに沿った「受け入れプロセス」へと変換する方法を解説します。
事例1:特養で「死後の引き取り手がいない」ため入所を断った
独居で親族も疎遠な入所希望者。判定会議で現場から「亡くなった時に遺体を引き取る人がいないのは困る」と反対意見が出ました。施設には遺骨を保管し続ける場所も予算もありません。
| 状況 | 独居で親族も疎遠。死後の遺体引き取り手がいないため、入所を断ろうとしている。 |
|---|---|
| 困りごと | 施設で遺骨を永代供養する予算も場所もなく、引き取り拒否のリスクを負えない。 |
| よくある誤解 | 遺体の引き取り手がいない場合、施設が自腹で火葬・埋葬しなければならない。 |
| 押さえるべき視点 | 引き取り手がない遺体は、法律に基づき市町村長が火葬・埋葬を行う義務がある。 |
引き取り手がいない場合、「墓地、埋葬等に関する法律」や「行旅病人及行旅死亡人取扱法」に基づき、死亡地の市町村長が火葬や埋葬を行うことになっています。施設が最終的な責任を負う必要はないため、これを理由に入所を断ることは適切ではないとされています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/000516181.pdf
身寄りのない人が死亡し、遺体の引き取り手がいない場合は、墓地、埋葬等に関する法律第9条や行旅病人及行旅死亡人取扱法に基づき、死亡地の市町村長が火葬や埋葬を行うこととされている。
事例2:有料老人ホームで「支払い能力の担保がない」と懸念
生活保護受給者からの入居申し込みがありましたが、身元保証会社を利用できませんでした。管理者としては、家賃滞納が発生した際に回収する手立てがないことを懸念しています。
| 状況 | 生活保護受給者だが、身元保証会社を使えず、家賃滞納リスクがある。 |
|---|---|
| 困りごと | 保証人がいないと、未払い発生時に誰にも請求できず経営を圧迫する。 |
| よくある誤解 | 親族(連帯保証人)がいなければ、滞納分は回収不能になるしかない。 |
| 押さえるべき視点 | 「日常生活自立支援事業」等を活用し、第三者が金銭管理を行うことで未払いを防ぐ。 |
保証人に頼る代わりに、社会福祉協議会が実施する「日常生活自立支援事業」や、成年後見制度の活用を検討します。第三者が金銭管理を行い、利用料を円滑に支払う仕組みを作ることで、未払いリスクの軽減が期待できます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/000516181.pdf
判断能力が不十分な場合、成年後見制度や日常生活自立支援事業を活用し、金銭管理の支援を受けることが有効である。
厚生労働省
「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
日常生活自立支援事業との契約により、福祉サービスの利用手続きや金銭管理の援助を受けることができ、施設利用料の支払い等が円滑に行われる事例がある。
事例3:老健で「緊急連絡先がない」ため退所先が決まらない
病院から入所相談がありましたが、緊急時の連絡先が全くない状態です。何かあった時に連絡がつかないリスクを恐れ、在宅復帰も困難と判断して断ろうとしています。
| 状況 | 緊急時の連絡先が全くないため、安全配慮の観点から入所を断ろうとしている。 |
|---|---|
| 困りごと | 何かあった時の連絡先がないまま受け入れるのは、施設のリスク管理上怖い。 |
| よくある誤解 | 緊急連絡先は「親族」でなければならない。 |
| 押さえるべき視点 | 行政担当者や後見人、知人などを連絡先として設定し、多職種で連携体制を作る。 |
緊急連絡先は親族である必要はありません。成年後見人、行政のケースワーカー、知人などを連絡先として設定することが認められています。入所時に多職種でアセスメントを行い、誰にどのような連絡をするか取り決めておくことが重要です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/000516181.pdf
緊急連絡先については、親族に限らず、成年後見人等、行政機関の担当者、知人等を設定することが考えられる。
厚生労働省
「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
入院・入所時に緊急連絡先を確認する際、親族がいない場合は、本人の了解を得て、関係機関(市町村、社協等)の担当者を連絡先として共有する取り組みが行われている。
「死後」「金銭」「緊急時」の不安は、法律や制度を使うことで解消できます。施設だけで抱え込まず、行政や社協を巻き込んで「チーム」で対応体制を作ることが、リスク管理の正解です。
なぜ、「断りたくなる」のか。その背景にある構造的なジレンマ

現場が「身元保証人」に固執するのは、単なる慣習ではありません。そこには、制度の建前と現場の実態に大きな乖離があるからです。
なぜ行政は「断るな」と言い、現場は「無理だ」と言うのか。この構造を理解することが、解決への糸口になります。
「家族によるケア」を前提とした古いモデルが破綻している
介護保険制度や医療制度の多くは、いまだに「困った時は家族が何とかする」というモデルを前提に設計されています。
しかし、現実には単身世帯や老老介護が急増し、家族機能は弱体化しています。「家族」というセーフティネットが機能しなくなっているにもかかわらず、代替システムが十分に整備されていないため、しわ寄せが施設に押し寄せているのです。
この矛盾が、現場の「保証人がいないと無理」という悲鳴につながっています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/000516181.pdf
我が国では少子高齢化や単身世帯の増加が進んでおり、頼れる親族がいない人が増加している。医療機関等では従来、家族等が身元保証等の役割を果たすことを前提とした運用が行われてきたが、現状では困難になっている。
現場は「責任の所在」が曖昧になることを最も恐れている
「何かあった時、誰が責任を取るのか」。この不安が現場を萎縮させています。
緊急手術の同意、延命治療の判断、未払い費用の補填。これらを決める権限も資力も施設にはありません。
保証人がいない=責任者がいない、という図式が出来上がっているため、現場は「リスクそのもの」よりも「責任を押し付けられること」を恐れ、入所を拒否してしまうのです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/000516181.pdf
医療・介護現場では、家族等がいない場合、医療同意や費用の支払い等に関する意思決定者が不在となり、現場が法的責任を問われるリスクへの不安を抱えている現状がある。
「チームで支える」という新しい常識への転換期
このジレンマを解消するために国が示したのが、「一人の保証人に頼るのではなく、多職種チームと行政で支える」という新しい方針です。
施設単独でリスクを負う時代は終わりました。行政、社協、成年後見人、そして医療・ケアチーム。これらが連携し、それぞれの役割(金銭管理、意思決定支援、死後事務)を分担することで、保証人不在でも安心して暮らせる体制を作る。それが、これからの施設運営に求められる「新しい常識」です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
身寄りがない人の支援においては、施設単独ではなく、市町村、地域包括支援センター、社会福祉協議会、成年後見人等の関係機関が連携し、チームとして支える体制を構築することが重要である。
「断るな」という行政指導は、現場への丸投げではありません。「一人(保証人)に頼るのをやめて、チーム(地域・制度)で支えよう」という提案です。この視点の切り替えこそが、現場の不安を解消する最大のカギとなります。
よくある質問(FAQ):管理者が抱える「保証人」への疑問
「法律は分かったけれど、現場の実務ではどう判断すればいいの?」という疑問は尽きないはずです。ここでは、管理者が直面する具体的なケースについて、ガイドラインに基づいて回答します。
- QQ1. 契約書の「身元保証人」欄が空欄のまま契約してもいいのですか?
- AA1. 基本的には問題ありません。 身元保証人がいないことを理由に入居を拒否することはできません。空欄の理由(身寄りがない等)を記録し、緊急連絡先として行政担当者や後見人等を記載する対応が適切です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/000516181.pdf
身元保証人がいないことのみを理由に、介護施設が入所を拒否することは、基準省令等における「正当な理由」には該当しない。
厚生労働省
「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
身元保証人がいない場合でも、本人の意思決定能力や支払い能力を確認し、適切な支援を行うことで契約は可能である。
- QQ2. 入居中に費用が払えなくなったら、遠い親戚に請求してもいいですか?
- AA2. 原則として請求できません。 連帯保証人契約を結んでいない親族には支払い義務がありません。本人の資産状況を確認し、必要であれば生活保護の申請や成年後見制度の申立てを支援してください。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
民法上、夫婦以外の親族は、特別な事情(家庭裁判所の審判等)がない限り、扶養義務(金銭的援助)を負うものではない。未払いが生じた場合は、本人の資産活用や公的制度の利用を検討する。
- QQ3. 「保証人がいないなら入居させない」と言ったら、行政処分を受けますか?
- AA3. 指導是正の対象となり得ます。 指定基準における「正当な理由のない提供拒否」に該当するため、実地指導等で指摘される可能性が高いです。「保証人不在」以外の理由(満床、医療的対応困難など)がない限り、拒否は認められません。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/000516181.pdf
身元保証人がいないことのみを理由に入所を拒否することは、基準省令等における「正当な理由」には該当せず、指導是正の対象となる。
契約書や規定に「保証人必須」とあっても、法律の方が優先されます。空欄を恐れず、実態に即した支援(連絡先の確保など)を行っていれば、コンプライアンス上の問題はありません。
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「保証人がいないと不安だ」という現場の声はもっともです。しかし、その不安を解消する方法は「入居を断ること」だけではありません。
まずは、施設の入居規定や契約書を見直し、「保証人が必要」という絶対条件を少し緩和することから始めてみてはいかがでしょうか。例えば、「相談に応じる」という一文を加えるだけでも、門戸は開かれます。
施設だけで抱え込まず、市町村や社会福祉協議会と連携し、金銭管理や死後事務のルートを確保しておくこと。それが、利用者だけでなく、施設自身を守るための有効なリスク管理の一つとなります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
身寄りがない人の支援においては、施設単独ではなく、地域の関係機関と連携し、チームとして支える体制を構築することが重要である。
最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。
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更新履歴
- 2026年2月7日:新規投稿






