夕方、人手が減る時間帯に繰り返される「帰宅願望」への対応は、現場の大きな負担になりやすいです。理想と業務に追われる現実の間で、孤独を感じる場面もあるかもしれません。
「全部を完璧に」ではなく、ポイントを絞った環境調整が自分と利用者を守る助けになります。エビデンスに基づく現実的な着地点を知り、明日の現場を少し楽にしましょう。
この記事を読むと分かること
- 夕方の不穏が起きる医学的理由
- 照明を明るくするなどの環境調整
- 自尊心を尊重する声かけのコツ
- 薬の前に試したい優先順位
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
結論:否定しない声かけと環境調整を「第一選択」にする考え方

「薬で落ち着いてもらえれば、他の利用者さんの対応ができるのに」。夕方の戦場のようなフロアで、そう考えてしまうのも無理もないかもしれません。
しかし、薬には副作用のリスクもあります。「傾聴する時間はない」という現実的な制約の中で、私たちが最初に検討したいのは、薬ではなく環境と関わり方の微調整です。
まずは「不快でない環境」を作る
不穏の背景には、本人の心理的特徴があるかもしれません。精神保健福祉士においても、療養環境に関する情報提供や提言は支援の一つとされています。
まずは物理的な刺激を減らしてみましょう。また、職員が近づきすぎないよう、不快でない距離や目線の高さに留意することも、環境調整の一つです。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
精神保健福祉士は、入院前の療養環境に関する情報提供、退院後の療養環境に関する情報提供・提言、社会的資源の利用や退院を見据えた調整の要点に関する提言、経済的状況のアセスメント情報提供を行う。
厚生労働省
認知症ケア法―認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
心理的特徴に応じたかかわり方として、価値観や考え方、習慣を受容する、幼児語を使わず自尊心を尊重する、不快でない距離や目線の高さに留意する、相手の表情を確認しながら話しかける、相手のペースに合わせ気持ちを汲み取る、家族とだけ話したりせず相手を置き去りにしないといったポイントがある。
「説得」ではなく「受容」が近道になりやすい
「家に帰る」という訴えに対し、事実で説得しようとすると話がこじれ、かえって時間がかかってしまうことがあります。
効率を求めるならばこそ、本人の価値観や考え方、習慣を否定せずに受容することがポイントです。相手のペースに合わせ、その時の気持ちを汲み取ることがポイントです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症ケア法―認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
心理的特徴に応じたかかわり方として、価値観や考え方、習慣を受容する、幼児語を使わず自尊心を尊重する、不快でない距離や目線の高さに留意する、相手の表情を確認しながら話しかける、相手のペースに合わせ気持ちを汲み取る、家族とだけ話したりせず相手を置き去りにしないといったポイントがある。
自尊心を守る「大人への対応」
忙しさや親しさから、つい「〜ちゃん、だめよ」といった言葉遣いになっていませんか?
どれほど認知機能が低下しても、感情は残ります。幼児語を使わず、人生の先輩として自尊心を尊重した態度で接することがポイントです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症ケア法―認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
心理的特徴に応じたかかわり方として、価値観や考え方、習慣を受容する、幼児語を使わず自尊心を尊重する、不快でない距離や目線の高さに留意する、相手の表情を確認しながら話しかける、相手のペースに合わせ気持ちを汲み取る、家族とだけ話したりせず相手を置き去りにしないといったポイントがある。
夕方の「困った」をどう乗り切るか?

「また始まった…」。夕方4時を過ぎると胃が痛くなるような思いをしている方も多いでしょう。ここでは、現場でよく見られる3つの事例について、エビデンスに基づいた現実的な切り返しを見ていきます。
事例①:「家に帰らせていただきます」と玄関に向かう
| 状況 | 夕食前に「子供が待っているから」「仕事に行かなきゃ」と荷物をまとめて玄関へ向かう。 |
|---|---|
| 困りごと | 「ここは施設ですよ」と事実を伝えても、「私を閉じ込める気か!」と余計に興奮してしまう。 |
| 現場の視点 | 否定も説得もしません。「お子さんが心配なんですね」と気持ちを汲み取り、その価値観を受容します。可能であれば環境面にも留意します。 |
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症ケア法―認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
心理的特徴に応じたかかわり方として、価値観や考え方、習慣を受容する、幼児語を使わず自尊心を尊重する、不快でない距離や目線の高さに留意する、相手の表情を確認しながら話しかける、相手のペースに合わせ気持ちを汲み取る、家族とだけ話したりせず相手を置き去りにしないといったポイントがある。
事例②:「お風呂に入りたくない」と拒否される
| 状況 | 入浴の声かけをした途端、「入らない!」「触るな!」と強い拒否や暴力が出る。 |
|---|---|
| 困りごと | 「わがまま」「性格が悪い」と捉えられがちだが、無理に入れようとするとお互いに怪我のリスクがある。 |
| 現場の視点 | それは「わがまま」ではなく、本人の気持ちかもしれません。幼児語は使わず、一人の大人として自尊心を尊重し、「まずは脱衣所まで」と相手のペースに合わせます。 |
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症ケア法―認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
心理的特徴に応じたかかわり方として、価値観や考え方、習慣を受容する、幼児語を使わず自尊心を尊重する、不快でない距離や目線の高さに留意する、相手の表情を確認しながら話しかける、相手のペースに合わせ気持ちを汲み取る、家族とだけ話したりせず相手を置き去りにしないといったポイントがある。
事例③:「私の財布がない」と職員を疑う
| 状況 | 「あなたが盗ったんでしょ」と詰め寄られ、他の業務が手につかない。 |
|---|---|
| 困りごと | 身の潔白を証明しようと「盗っていません」と反論すると、不信感が増してトラブルが長引く。 |
| 現場の視点 | 「ない」という事実と不安を受容します。「それは困りましたね、一緒に探しましょう」と相手のペースに合わせることで、敵対関係ではなく協力関係を目指します。 |
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症ケア法―認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
心理的特徴に応じたかかわり方として、価値観や考え方、習慣を受容する、幼児語を使わず自尊心を尊重する、不快でない距離や目線の高さに留意する、相手の表情を確認しながら話しかける、相手のペースに合わせ気持ちを汲み取る、家族とだけ話したりせず相手を置き去りにしないといったポイントがある。
なぜ「説明」しても伝わらないのか?

「さっき説明したばかりなのに…」。何度も同じ質問をされ、こちらの言葉が届かないもどかしさを感じることはありませんか?
実は、利用者は「分かってくれない」のではなく、脳の仕組み上、情報を「受け取れない」状態にあるのかもしれません。
脳の障害で「直前のこと」が消えてしまう
建前では「丁寧に説明すれば納得してくれるはず」と考えがちです。しかし、認知症は器質的な脳の障害により、知能が継続的に低下している状態です。
そのため、直前に聞いた説明や事実を記憶し続けることが困難な場合があります。論理的な説得よりも、「今この瞬間」の安心感を作ることが重要になることがあります。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
認知症とは,一旦正常に発達した知能が後天的に器質的な脳の障害によって広汎に継続的に低下し,日常的な生活を営めない程度にまで衰退した状態と定義されている。
環境の「不快」が不安を増幅させる
「静かに過ごしてほしい」と願っても、現場の環境自体が本人を追い詰めていることがあります。
療養環境について、情報提供や提言が行われることがあります。環境を見直すこともあります。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
精神保健福祉士は、入院前の療養環境に関する情報提供、退院後の療養環境に関する情報提供・提言、社会的資源の利用や退院を見据えた調整の要点に関する提言、経済的状況のアセスメント情報提供を行う。
言葉だけの情報は処理しきれない
「言葉で伝えれば分かる」というのは、健常者の感覚だと考えられます。
認知機能が低下している方には、言葉だけの情報はうまく伝わりにくいことがあります。身振りや手振りを交える、相手が認識しやすい立ち位置をとるといったポイントがあります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症ケア法―認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
身体的特徴に応じたかかわり方として、相手が認識しやすい立ち位置をとる、麻痺や筋力低下時は座ってもらうなど安定した体勢を確保する、はっきりとした声で聞こえやすい大きさで話す、苦痛がないか確認しつつ表情に留意する、声の調子に気をつけてゆっくり話す、身振りや手振りを行き交ぜながら話すといったポイントがある。
「伝わらない」原因は、本人の性格ではなく、脳の障害や環境のミスマッチにあると考えられます。言葉に頼らず、環境や非言語コミュニケーションを工夫することが、互いのストレスを減らす鍵になると考えられます。
現場の「小さな迷い」への回答
「理屈は分かったけれど、実際にはどうなの?」という現場の具体的な迷いについて、エビデンスに基づいてお答えします。
- Q忙しくて時間が取れない時、最低限何に気をつければ良い?
- A長い傾聴ができなくても、不快でない距離を保ち、相手が認識しやすい立ち位置から接することがポイントです。目線の高さを合わせることや、穏やかな声でゆっくり話すといった「関わり方の工夫」を意識してみてください。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
認知症ケア法―認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
心理的特徴に応じたかかわり方として、価値観や考え方、習慣を受容する、幼児語を使わず自尊心を尊重する、不快でない距離や目線の高さに留意する、相手の表情を確認しながら話しかける、相手のペースに合わせ気持ちを汲み取る、家族とだけ話したりせず相手を置き去りにしないといったポイントがある。
厚生労働省
認知症ケア法―認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
身体的特徴に応じたかかわり方として、相手が認識しやすい立ち位置をとる、麻痺や筋力低下時は座ってもらうなど安定した体勢を確保する、はっきりとした声で聞こえやすい大きさで話す、苦痛がないか確認しつつ表情に留意する、声の調子に気をつけてゆっくり話す、身振りや手振りを織り交ぜながら話すといったポイントがある。
- Q本人の希望と安全(転倒防止など)が対立した場合は?
- A安全のためでも本人の意思を尊重することが求められます。本人の意思を尊重することは職務上の義務とされており、心身の状態や生活状況に配慮した支援が求められます。意思を尊重できるよう、療養環境の調整などを検討することもあります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
民法858条に基づき、心身の状態や生活状況に配慮しつつ本人の意思を尊重することは職務上の義務である。
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
精神保健福祉士は、入院前の療養環境に関する情報提供、退院後の療養環境に関する情報提供・提言、社会的資源の利用や退院を見据えた調整の要点に関する提言、経済的状況のアセスメント情報提供を行う。
- Q現場での環境改善に、専門職の助言をもらうことはできる?
- A精神保健福祉士などの専門職には、療養環境や社会的資源について提言を行う役割が含まれています。例えば精神保健福祉士などは、療養環境に関する提言や、社会的資源の利用に向けた調整などの支援を行うことがあります。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
精神保健福祉士は, 入院前の療養環境に関する情報提供、退院後の療養環境に関する情報提供・提言、社会的資源の利用や退院を見据えた調整の要点に関する提言、経済的状況のアセスメント情報提供を行う。
短時間の関わりでもポイントを押さえ、専門チームの知恵も借りながら、本人の権利と現場の安全の両立を目指していきましょう。
まとめ:認知症の夕方の不穏に悩むあなたへ|無理のない「明日の一歩」
忙しい夕方、「帰りたい」という言葉に振り回され、心が折れそうになるのは、あなたが真面目に現場と向き合っている証拠かもしれません。
すべての要望を完璧に叶えようとしなくて大丈夫です。まずは、ご本人の不安な気持ちを受容することから始めてみませんか。
環境の調整や、自尊心を尊重した言葉遣いは、結果として不穏を和らげ、あなた自身の負担を減らすことにつながることがあります。
そんな小さな積み重ねが、認知症の方の安心感を作る大切な支援の一つになります。
最後までご覧いただきありがとうございます。この記事が、明日からのあなたの現場を少しでも穏やかにするヒントになれば幸いです。
関連コンテンツ
更新履歴
- 2025年9月21日:新規公開
- 2025年10月21日:一部レイアウト修正
- 2026年2月18日:より詳細なエビデンス(根拠)に基づき解説を充実させるとともに、最新のサイト基準に合わせて構成・レイアウトを見やすく刷新。








