【施設介護】忙しい夕食後の帰宅願望に2〜3分で返す方法

※本ページはプロモーションが含まれています

夕食後の「帰りたい」に毎回長く寄り添えないことは、現場の冷たさではありません。

夕食後は、ナイトケア、排泄介助、コール対応、記録、転倒リスクの見守りが重なります。その中で認知症の利用者が玄関へ向かい、「帰ります」と繰り返すと、職員も追い詰められやすいです。

こうした場面では、長い傾聴を前提にしすぎると現場がもちません。この記事では、受け止める、保留する、切り替えるという2〜3分の声かけを軸に、本人の不安を強めにくく、職員も抱え込みすぎない対応を整理します。

この記事を読むと分かること

  • 帰宅願望の見方
  • 否定しない言葉
  • 保留の使い方
  • 切り替え例
  • 記録の残し方

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • 夕食後に帰ると言う
  • 玄関へ向かう
  • 説明が長引く
  • 声かけがばらつく
  • 対応を抱える

認知症の帰宅願望には「受け止める→保留する→切り替える」

介護施設の廊下で、女性介護職員が車椅子に座る高齢男性を優しく見守りながら移動をサポートしている様子。利用者と笑顔で会話を交わしながら、安全に配慮して日常生活の移動支援を行っている介護現場の場面。

夕食後の帰宅願望では、否定せず受け止め、すぐ帰る議論を保留し、お茶や小さな役割へ切り替えます。

現場では、食事が終わった直後に「家に帰ります」と立ち上がる場面があります。職員は見守りたい一方で、ナイトケアや排泄介助、ほかのコールにも動かなければなりません。この記事を読むと、帰宅願望を毎回消すのではなく、悪化させにくい短い対応の型が整理できます。

正論で説得しようとすると、本人にも職員にも負担が残りやすいです。「帰れません」と言うほど押し問答になり、説明した直後にまた同じ訴えが出ることもあります。だからこそ、最初から長く抱え込むのではなく、短く安心を渡し、帰るか帰らないかの議論をいったん横に置きます。

最初の一言は「帰りたくなりますよね」と受ける

玄関へ向かう姿を見ると、すぐ止めたくなります。けれど最初の一言で否定されると、本人には「分かってもらえない」という不安が残る場合があります。この項目では、帰宅願望をまず気持ちとして受ける意味を確認します。

「帰れません」と止める前に、帰りたくなる気持ちを一度受けます。これは帰宅を約束することではありません。本人の言葉や表情を、意思や不安の表れとして扱う入口です。現場では時間がなくても、一言目だけはそろえられます。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第 2 版)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001484891.pdf

認知症になっても、その有する能力を最大限活かして、日常生活や社会生活に関し て自らの意思に基づいた生活を送ることができるようにするために行う、意思決定 支援者による支援をいう。そして、支援する側の視点ではなく、本人の視点に立っ て行われるものである。日常生活については、これまで本人が過ごしてきた生活やできること・やりたいこ とを尊重することが原則である。本人の意思や好みを理解するためには、まずは本人に聴き取りを行い、必要に応じ て、意思決定支援チームで、本人の自宅での日常の様子を確認したり、本人をよく 知る人に聞くなどして、本人の情報を集め、共有することが必要である。

「今日は暗いので少し休んでから」と保留する

忙しい時間ほど、「帰るのか、帰らないのか」をはっきりさせたくなります。ただ、その議論に入ると説明が長くなり、本人も職員も疲れます。この項目では、結論を急がず保留する声かけを整理します。

「今日はもう暗いので、少し休んでからにしましょう」と伝えると、帰宅の訴えを否定せず、今すぐの行動だけをいったん保留できます。ポイントは説得ではなく、安心できる言い換えです。「帰れません」を避け、ここで休んでよいと伝えます。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

コミュニケーションをとる上で,注意する言葉が 3 つある.それは,「命令する言葉」, 「子ども扱いする言葉」,「相手を否定する言葉(スピーチロック)」である.この 3 つの言 葉は,相手の自尊心を傷つけることになる.特に,相手を否定する言葉は,私たちは一瞬一 瞬で使用しているつもりでも,認知症患者が何度も同じ行動をとる場合は毎回否定される ことになり,気分の落ち込みや易怒性などに繋がることがある.そのため,安心できる言葉 がけや言い換えを使用する.例えば,「帰れません」は「ここにいて大丈夫ですよ」,「立た ないでください」は「座っていていいですよ」などである.

「お茶だけ」「これだけ手伝って」と小さく切り替える

帰宅願望が出たとき、長く話を聞けないことがあります。そこで何も言わず離れると、本人の不安が残りやすいです。この項目では、短く受けたあと、今できる小さな行動へ移す考え方を確認します。

「温かいお茶だけ飲みませんか」「タオルを一緒に畳んでもらえると助かります」といった声かけは、本人を言いくるめるためではありません。帰る行動へ向いた気持ちを、別の行動へ少し移すための入口です。落ち着くと断定せず、切り替えのきっかけとして使います。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症ケア法ー認知症の理解

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

人の行動を左右する4つの要因 身体的要因 例)頭痛・発熱・脱水・便秘 /下痢・空腹/満腹・眠気・痛み・ かゆみ・しびれ・喉の渇き・老眼・ 難聴・薬の作用/副作用 など 環境的要因 例)場所・明るさ・広さ・温度/湿 度・風通し・見える景色・音・ 周りにいる人・他人の動き・ 時間帯・不慣れな道具・色・ 肌触り など 心理的要因 例) 不安・心配・いら立ち・怒り・悲し み・寂しさ・困惑・焦り・孤独感・ 絶望感・虚無感・嬉しさ・喜び・ 感謝 など 個人的要因 例)生活歴(どこで、誰と、どの ような暮らしをしてきた か) ・好み・性格・生活習慣 (好 み、こだわりなど) ・問題への 対処方法など

離れるときは戻る予定を短く伝え、記録へ残す

どうしても別の介助に行かなければならない瞬間があります。そこで無言で離れると、本人には置いていかれたように感じられる場合があります。この項目では、完璧な付き添いではなく、最低限の安心を残す方法を考えます。

「今、別の方の介助に行きます。終わったら戻ってきます」と短く伝えます。そのうえで、何時ごろ、どんな言葉があり、どの声かけで少し座れたかを記録します。個人の頑張りで終わらせず、次の職員が同じ押し問答を繰り返しにくくします。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第 2 版)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001484891.pdf

意思決定支援に当たっては、本人の意思を踏まえて、本人及び身近な信頼できる家 族・親族、福祉・医療・地域近隣の関係者と成年後見人等がチームとなって日常的 に見守り、本人の意思や状況を継続的に把握し必要な支援を行う体制(以下、 「意 思決定支援チーム」という)が必要である。本人のその後の生活に影響を与えるような意思決定支援を行った場合には、その都 度、記録を残しておくことが必要である。

夕食後の帰宅願望は、否定せず受け止め、今すぐの帰宅議論を保留し、小さな行動へ切り替えます。個人技にせず、記録と共有まで含めて対応します。


夕食後の帰宅願望でよくある事例

介護施設の廊下で顎に手を当てて考え込む若い女性介護職員。仕事の悩みや対応方法を考えている介護士のイメージ

夕食後の帰宅願望は、同じように見えても毎回少しずつ条件が違います。本人の言葉だけを追うと「帰る、帰れない」の押し問答になりやすく、職員の疲れも大きくなります。

現場では、食器を下げ、眠前の準備をし、排泄介助に入る時間に「家に帰らないと」と言われることがあります。長く付き添いたい気持ちはあっても、フロア全体を見なければならない。だからこそ、事例ごとに押さえる視点を持ち、短く同じ方向で関わることが大切です。

玄関へ向かう人に「帰れません」と言って押し問答になる

玄関方向へ歩き出すと、転倒や離設が心配で、職員は反射的に止めたくなります。「帰れません」「危ないです」と言うほど、本人の表情が硬くなる場面もあります。まず必要なのは、止める言葉を安心の言葉へ変えることです。

状況は、夕食後に本人が玄関へ向かう場面です。困りごとは、安全確認と他の介助が同時に迫ることです。よくある誤解は、強く制止すれば分かってもらえると考えることです。押さえるべき視点は、「ここにいて大丈夫ですよ」「少し休みましょう」と、否定ではなく安心に寄せることです。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

コミュニケーションをとる上で,注意する言葉が 3 つある.それは,「命令する言葉」, 「子ども扱いする言葉」,「相手を否定する言葉(スピーチロック)」である.この 3 つの言 葉は,相手の自尊心を傷つけることになる.特に,相手を否定する言葉は,私たちは一瞬一 瞬で使用しているつもりでも,認知症患者が何度も同じ行動をとる場合は毎回否定される ことになり,気分の落ち込みや易怒性などに繋がることがある.そのため,安心できる言葉 がけや言い換えを使用する.例えば,「帰れません」は「ここにいて大丈夫ですよ」,「立た ないでください」は「座っていていいですよ」などである.

「家が心配」と何度も聞かれ、説明が終わらない

「今日は泊まる日です」「家族さんも知っています」と説明しても、少し経つとまた「帰ります」と言われることがあります。職員側は何度も答えていますが、本人には初めての不安として出ている場合があります。説明を重ねるより、短く安心を返す方へ切り替えます。

状況は、同じ訴えが何度も出る場面です。困りごとは、説明が長引き、ほかのケアが遅れることです。よくある誤解は、本人がわざと困らせていると感じることです。押さえるべき視点は、本人に悪気があると決めつけず、毎回短い同じ返答で安心を渡すことです。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症ケア法ー認知症の理解

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

説明をいくらしても、本人には伝わらない。 なぜならば、本人に悪気はないし、 わざとしているわけではないからです。 どうして何回も尋ねてくるの? わざとやってるでしょう? 自責 抑うつ 無気力 自信の喪失 初めて聞いたのに、 どうしてそんなに 怒られなきゃいけないの・・ プライドが傷つく

お茶や休憩を拒否され、声かけの引き出しがなくなる

「お茶を飲みませんか」と言っても断られる日があります。そこで職員が焦ると、次の言葉が「座ってください」だけになりやすいです。切り替えが通らないときこそ、身体状態、環境、声かけの速さなど、条件を見直します。

状況は、代替行動を提案しても本人が乗らない場面です。困りごとは、職員の声かけが尽きて、見守りだけが長引くことです。よくある誤解は、一つの声かけが通らなければ対応失敗だと考えることです。押さえるべき視点は、身体状態、ケア方法、環境を含めて見直すことです。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

BPSD 治療のフローチャートを図 4 に示す.BPSD に対しては, その原因となりうる身 体状態の変化の有無,ケア介入の方法や療養環境が適切かを評価し, 非薬物療法を優先的 に行う.また,薬物有害事象により BPSD が悪化している場合もしばしば認めるため, 処方内容の再評価を行い, ポリファーマシー対策も合わせて実施する.このように,原則 として,非薬物療法やポリファーマシー対策によって,BPSD を軽減させる十分な努力 を行った後にのみ,薬物療法を検討する

職員ごとに言うことが違い、本人が混乱しやすい

A職員は「明日帰りましょう」、B職員は「ここが家ですよ」、C職員は「家族に電話しましょう」と返す。どれもその場を収めようとした言葉でも、本人の中では話がつながりにくくなります。うまくいった一言を個人技で終わらせず、記録と申し送りに残します。

状況は、職員ごとに返答が変わる場面です。困りごとは、次の勤務者が同じ押し問答を繰り返すことです。よくある誤解は、対応はその場の職員のセンスでよいと考えることです。押さえるべき視点は、本人の意思や状況をチームで把握し、同じ一言目を共有することです。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第 2 版)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001484891.pdf

意思決定支援に当たっては、本人の意思を踏まえて、本人及び身近な信頼できる家 族・親族、福祉・医療・地域近隣の関係者と成年後見人等がチームとなって日常的 に見守り、本人の意思や状況を継続的に把握し必要な支援を行う体制(以下、 「意 思決定支援チーム」という)が必要である。本人のその後の生活に影響を与えるような意思決定支援を行った場合には、その都 度、記録を残しておくことが必要である。

夕食後の帰宅願望では、強い制止、長い説明、単発の声かけ、職員ごとのばらつきが負担になります。短い安心の言葉と記録共有で、同じ失敗を減らします。

広告

認知症の帰宅願望が夕食後に長引く理由

夕食後は、本人の訴えと職員の業務がぶつかりやすい時間です。「帰りたい」と言われるたびに説明しても進まず、現場では「どう返せばいいのか」と迷います。

このような状況が起きる背景には、説明の伝わりにくさ、環境や心理状態、否定的な言葉の受け取られ方、チームでの共有不足が関係する場合があります。ここでは、帰宅願望が長引く理由を、現場で見直せる範囲に絞って整理します。

夕食後は、フロアの音、照明、人の動き、職員の表情まで変わります。職員は急いでいるつもりがなくても、本人には急かされているように届くことがあります。理由を一つに決めつけず、悪化しやすい条件を減らす視点が必要です。

説明が本人の中でつながりにくいから

同じ説明を何度も繰り返すと、職員は「もう伝えた」と感じます。けれど本人には、その説明が残らず、また初めての不安として出ている場合があります。そこで怒らず、短く同じ形で返すことが、対応を長引かせない土台になります。

なぜ起きるのかは、説明しても本人に伝わりにくい場面があるためです。建前では、泊まる理由や家族への連絡状況を説明すれば納得してほしいと思います。現実には、本人の中で話がつながらず、職員だけが疲れていきます。そのズレが押し問答を生むため、押さえるべき視点は、説明量を増やすより安心の一言をそろえることです。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症ケア法ー認知症の理解

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

説明をいくらしても、本人には伝わらない。 なぜならば、本人に悪気はないし、 わざとしているわけではないからです。 どうして何回も尋ねてくるの? わざとやってるでしょう? 自責 抑うつ 無気力 自信の喪失 初めて聞いたのに、 どうしてそんなに 怒られなきゃいけないの・・ プライドが傷つく

夕食後の環境変化や不安が重なるから

夕食後は、テーブルが片づき、職員の動線が変わり、フロアの空気も昼間と違ってきます。本人の「帰りたい」は、家そのものだけでなく、不安や落ち着かなさの表現として見えることがあります。まずは時間帯、音、照明、周囲の動きを見直します。

なぜ起きるのかは、人の行動が身体、環境、心理、個人的要因の影響を受けるためです。建前では、本人の言葉どおり「家に帰りたい」とだけ見たくなります。現実には、眠気、不安、周囲の騒がしさ、生活歴などが重なる場合があります。押さえるべき視点は、帰宅願望を一つの原因に決めつけず、条件を分けて見ることです。

見る条件現場で確認すること
身体的要因眠気、痛み、便意、尿意、疲れがないかを見る
環境的要因音、明るさ、人の動き、座る場所を確認する
心理的要因不安、心配、寂しさ、焦りが出ていないか見る
個人的要因生活歴、好み、こだわり、普段の過ごし方を見る
出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症ケア法ー認知症の理解

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

人の行動を左右する4つの要因 身体的要因 例)頭痛・発熱・脱水・便秘 /下痢・空腹/満腹・眠気・痛み・ かゆみ・しびれ・喉の渇き・老眼・ 難聴・薬の作用/副作用 など 環境的要因 例)場所・明るさ・広さ・温度/湿 度・風通し・見える景色・音・ 周りにいる人・他人の動き・ 時間帯・不慣れな道具・色・ 肌触り など 心理的要因 例) 不安・心配・いら立ち・怒り・悲し み・寂しさ・困惑・焦り・孤独感・ 絶望感・虚無感・嬉しさ・喜び・ 感謝 など 個人的要因 例)生活歴(どこで、誰と、どの ような暮らしをしてきた か) ・好み・性格・生活習慣 (好 み、こだわりなど) ・問題への 対処方法など

否定や命令の言葉が不信感につながることがあるから

「危ないから座ってください」は、安全を守るための言葉です。それでも、本人には命令や否定として届くことがあります。職員の意図が正しくても、言葉の受け止められ方が違えば、本人の不安や怒りが強まる場合があります。

なぜ起きるのかは、命令する言葉や相手を否定する言葉が自尊心を傷つけるとされているためです。建前では、危険を防ぐために正確に止める必要があります。現実には、否定が続くと本人は毎回否定されたように受け取ることがあります。押さえるべき視点は、「だめです」ではなく「ここで休みましょう」と安心に言い換えることです。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

コミュニケーションをとる上で,注意する言葉が 3 つある.それは,「命令する言葉」, 「子ども扱いする言葉」,「相手を否定する言葉(スピーチロック)」である.この 3 つの言 葉は,相手の自尊心を傷つけることになる.特に,相手を否定する言葉は,私たちは一瞬一 瞬で使用しているつもりでも,認知症患者が何度も同じ行動をとる場合は毎回否定される ことになり,気分の落ち込みや易怒性などに繋がることがある.そのため,安心できる言葉 がけや言い換えを使用する.例えば,「帰れません」は「ここにいて大丈夫ですよ」,「立た ないでください」は「座っていていいですよ」などである.

本人の意思をチームで見続ける仕組みが必要だから

帰宅願望への対応が職員の個人技になると、うまくいった声かけも次の勤務へ残りません。ある日はお茶が通り、別の日はタオル畳みが通る。こうした小さな情報を記録しないと、同じ説明や同じ失敗が繰り返されます。

なぜ起きるのかは、本人の意思や状況が時間や環境で変わり、支援も継続的に把握する必要があるためです。建前では、その場の職員が臨機応変に対応します。現実には、職員ごとの返答が違うほど本人も現場も混乱しやすいです。押さえるべき視点は、定型文と記録で対応の土台をそろえることです。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第 2 版)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001484891.pdf

意思決定支援に当たっては、本人の意思を踏まえて、本人及び身近な信頼できる家 族・親族、福祉・医療・地域近隣の関係者と成年後見人等がチームとなって日常的 に見守り、本人の意思や状況を継続的に把握し必要な支援を行う体制(以下、 「意 思決定支援チーム」という)が必要である。本人のその後の生活に影響を与えるような意思決定支援を行った場合には、その都 度、記録を残しておくことが必要である。

帰宅願望が長引く背景は一つではありません。説明の伝わりにくさ、不安、環境、否定語、共有不足を分けて見直すと、2〜3分の対応も組み立てやすくなります。

広告

認知症の帰宅願望対応で迷いやすい質問

現場では、帰宅願望に対して「何が正解か」を一瞬で判断しなければならない場面があります。長く寄り添えないことへの罪悪感と、安全を守る責任の間で迷いやすいです。

Q
夕食後に「帰りたい」と言われたら最初に何と言えばいいですか?
A
まずは「帰りたくなりますよね」「お家のこと、気になりますよね」と、気持ちを受ける一言から入ります。帰宅を約束するのではなく、本人の訴えを意思や不安の表れとして扱うためです。現場では、その一言目をフロアでそろえると、職員ごとのばらつきを減らしやすくなります。
出典元の要点(要約)

厚生労働省

認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第 2 版)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001484891.pdf

認知症になっても、その有する能力を最大限活かして、日常生活や社会生活に関し て自らの意思に基づいた生活を送ることができるようにするために行う、意思決定 支援者による支援をいう。そして、支援する側の視点ではなく、本人の視点に立っ て行われるものである。日常生活については、これまで本人が過ごしてきた生活やできること・やりたいこ とを尊重することが原則である。本人の意思や好みを理解するためには、まずは本人に聴き取りを行い、必要に応じ て、意思決定支援チームで、本人の自宅での日常の様子を確認したり、本人をよく 知る人に聞くなどして、本人の情報を集め、共有することが必要である。

Q
「帰れません」は言わない方がいいですか?
A
安全上止める必要がある場面でも、「帰れません」だけで押すと否定として届く場合があります。「ここにいて大丈夫ですよ」「少し休みましょう」のように、安心できる言葉へ言い換えます。現場では、正論を消すのではなく、本人が受け取りやすい言葉に変える感覚です。
出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

コミュニケーションをとる上で,注意する言葉が 3 つある.それは,「命令する言葉」, 「子ども扱いする言葉」,「相手を否定する言葉(スピーチロック)」である.この 3 つの言 葉は,相手の自尊心を傷つけることになる.特に,相手を否定する言葉は,私たちは一瞬一 瞬で使用しているつもりでも,認知症患者が何度も同じ行動をとる場合は毎回否定される ことになり,気分の落ち込みや易怒性などに繋がることがある.そのため,安心できる言葉 がけや言い換えを使用する.例えば,「帰れません」は「ここにいて大丈夫ですよ」,「立た ないでください」は「座っていていいですよ」などである.

Q
2〜3分しか対応できないときはどうしますか?
A
長く説明せず、受け止め、保留し、小さな選択肢へ切り替えます。「少し休んでからにしましょう」「お茶だけ飲みませんか」のように、今できる行動に落とします。現場では、全部を納得してもらうより、押し問答を広げないことを優先する場面があります。
出典元の要点(要約)

厚生労働省

認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第 2 版)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001484891.pdf

本人が理解できるよう、分かりやすい言葉や文字に変えて、ゆっくりと説明して いるか。本人が理解していることと、意思決定支援者らの理解に相違はないか。本人が自発的に意思を形成するのに障害となる環境等はないか。本人は説明された内容を忘れてしまうこともあり、その都度、丁寧に説明することが必要である。本人が何を望むかを、開かれた質問で聞くことが重要である。選択肢を示す場合には、可能な限り複数の選択肢を示し、比較のポイントや重要なポイントが何かを分かりやすく示したり、話して説明するだけではなく、文字にして確認できるようにしたり、図や表、ホワイトボードなどを活用することが有効な場合がある。

Q
職員ごとに声かけを統一する意味はありますか?
A
あります。本人の訴えや反応をチームで継続的に把握し、通った声かけや悪化した声かけを共有することで、次の職員が同じ押し問答を繰り返しにくくなります。現場では、難しい仕組みより先に「一言目だけそろえる」ことから始められます。
出典元の要点(要約)

厚生労働省

認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第 2 版)

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001484891.pdf

意思決定支援に当たっては、本人の意思を踏まえて、本人及び身近な信頼できる家 族・親族、福祉・医療・地域近隣の関係者と成年後見人等がチームとなって日常的 に見守り、本人の意思や状況を継続的に把握し必要な支援を行う体制(以下、 「意 思決定支援チーム」という)が必要である。本人のその後の生活に影響を与えるような意思決定支援を行った場合には、その都 度、記録を残しておくことが必要である。

迷ったときは、否定で止める前に、気持ちを受け、保留し、小さな行動へ切り替えます。職員ごとの対応をそろえることも、本人と現場の負担を減らす入口です。


あなたの負担を減らすおすすめ記事


帰宅願望の声かけは一言目をそろえることから始める

現場では、夕食後の「帰りたい」に毎回十分な時間を使えないことがあります。ほかの介助へ行かなければならず、申し訳なさだけが残る日もあります。

それでも、最初の一言はそろえられます。

「帰りたくなりますよね」と受け止め、「今日は暗いので少し休んでからにしましょう」と保留し、「お茶だけ飲みませんか」「これだけ手伝ってもらえますか」と小さな行動へ切り替える。この流れをフロアで共有しておくことが、明日からできる一歩です。

帰宅願望対応は、職員一人の優しさだけで抱えるものではありません。本人の不安を強めにくくし、職員の負担も少し軽くするために、まずは一言目を統一することから始めてみてください。

最後までご覧いただきありがとうございます。


更新履歴

  • 2025年9月22日:新規公開
  • 2025年10月21日:最新情報に基づき加筆・修正
  • 2026年2月17日:最新情報に基づき加筆・修正
  • 2026年5月17日:内容を全面的にリライト

タイトルとURLをコピーしました