冬場の換気は、利用者からの「寒い」という訴えと感染対策の板挟みになり、現場の介護職員にとって大きなストレスです。「窓を全開にしたいけれど、クレームが怖くてできない」「CO2モニターが赤くても見て見ぬふりをしてしまう」といった現場のジレンマは少なくありません。
しかし、換気の目的は「室温を下げること」ではなく「空気を入れ替えること」です。完璧な常時開放は難しくても、効率的な換気のタイミングと空気の通り道さえ押さえれば、寒さを最小限に抑えつつ感染リスクを下げることができます。
この記事を読むと分かること
- 「全開」でなくても効果がある理由
- CO2濃度を活用した換気タイミング
- 見落としがちな「清掃後」の換気
- 寒さを抑える効率的な換気方法
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
結論:寒さと換気、どちらを優先?目指すは「全開」ではなく「よどみ解消」

冬場の介護現場では、「換気をしたいけれど、窓を開けると利用者から『寒い』と苦情が来てしまう」という板挟みに悩まされることが少なくありません。また、せっかく暖めた室温が一気に下がることで、ヒートショックのリスクを心配する声も聞かれます。現場では「マニュアル通りに窓を全開にするのは現実的ではない」と感じる場面も多いでしょう。しかし、換気の本来の目的は「部屋を寒くすること」ではなく、「空気のよどみを防ぐこと」にあります。無理のない範囲で、効果的に空気を入れ替えるための現実的な基準を押さえておきましょう。
換気の目的は「病原体」を外に出すこと
介護現場における感染対策の基本は、感染源となる病原体を施設内に「持ち込まない」「持ち出さない」「拡げない」ことです。特に空気感染やエアロゾル感染を防ぐためには、適切な換気によって室内の空気を入れ替え、空気中に漂う病原体(ウイルスや細菌等)を建物の外へ排出することが重要となります。窓を少し開けるだけでも空気の通り道ができれば、よどみを防ぐ効果が期待できます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
適切な換気を確保することで、空気感染やエアロゾル感染を予防することができます。
厚生労働省老健局
介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
空気のよどみを防ぎ、室内に溜まった病原体を外に出すことにより、呼吸器感染症等の予防に役立ちます。
「CO2濃度」を目安に換気のタイミングを計る
常時窓を開けておくことが難しい冬場は、室内の二酸化炭素(CO2)濃度を換気の目安にすることが推奨されています。人の呼気によって上昇するCO2濃度を測定することで、その空間の換気状態を客観的に把握できます。モニターの数値を確認し、基準を超えたタイミングや人が密集する時間帯に限定して換気を行うことで、室温の低下を最小限に抑えつつ、必要な空気の入れ替えを行うことが可能になります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
定期的な換気を行う際に、二酸化炭素濃度を参考にすることも有用です。
「清掃後」は見落としがちな換気ポイント
居室や共用部の清掃を行う際、埃が舞い上がるのを嫌って窓を閉め切ってしまうことがありますが、これは逆効果となる場合があります。清掃作業によって床などに落下していた埃や微生物が再び空気中に舞い上がる(再浮遊する)可能性があるためです。そのため、掃除機をかけたりモップ掛けを行ったりした後は、意識的に十分な換気を行い、舞い上がった汚れを屋外へ排出する必要があります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
清掃により舞い上がった埃などが乾燥すると、そこに付着した微生物が再浮遊するため、清掃後は十分に換気を行います。
冬場の換気対策は、「常に窓を開け続けること」だけが正解ではありません。CO2濃度モニターを活用して必要なタイミングを見極めたり、清掃後の換気を徹底したりすることで、寒さによる利用者への負担を減らしながら、効果的に空気のよどみを解消していきましょう。
よくある失敗:「極端な対策」が招く現場の混乱とリスク

現場では、「感染対策マニュアル」と「利用者の快適さ」の板挟みになり、どうすれば正解なのか分からなくなる瞬間が多々あります。「窓を開けなきゃ」という責任感と、「寒がらせてはいけない」という優しさの間で揺れ動き、結果として極端な対応に走ってしまったり、逆効果な行動をとってしまったりすることも少なくありません。ここでは、多くの施設で陥りがちな失敗パターンと、そこから脱却するための視点を解説します。
事例1:「窓全開」でクレームになり、結局「閉め切り」になってしまう
「換気=窓を全開にする」と思い込み、真冬でもマニュアル通りに窓を大きく開けて換気を行った結果、利用者から「寒い!」「風邪をひかせる気か」と強いお叱りを受けてしまうケースです。この経験がトラウマとなり、「利用者を怒らせるくらいなら」と、その後は一日中窓を閉め切ってしまうという本末転倒な事態に陥ることがあります。換気は重要ですが、利用者の生活環境としての「居心地の良さ」を無視しては継続できません。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
見た目に清潔な状態を保てるように清掃を行います。消毒薬による消毒も大事ですが、目に見える埃や汚れを除去し、居心地の良い、住みやすい環境づくりを優先します。
空気のよどみを防ぎ、室内に溜まった病原体を外に出すことにより、呼吸器感染症等の予防に役立ちます。
事例2:「空気清浄機」があるから換気は不要だと思い込む
「高性能な空気清浄機を入れたから、窓を開けなくても大丈夫」と過信し、CO2モニターの数値が上昇しても換気を行わないケースが見受けられます。空気清浄機は補助的な役割を果たしますが、感染対策における換気の主目的は、室内の空気そのものを外気と入れ替えることにあります。どんなに空気をろ過しても、新鮮な外気を取り入れなければ、室内の二酸化炭素濃度は下がらず、エアロゾル感染のリスクを十分に下げることはできません。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
適切な換気を確保することで、空気感染やエアロゾル感染を予防することができます。
定期的な換気を行う際に、二酸化炭素濃度を参考にすることも有用です。
事例3:「埃が舞う」のを嫌って、清掃時に窓を閉め切る
掃除機をかけたりモップ掛けをしたりする際、「埃が舞い上がって利用者が吸い込むといけない」という配慮から、あえて窓を閉め切って清掃を行うことがあります。しかし、床に落ちていた埃や微生物は、清掃作業によって空中に再浮遊します。閉め切った状態でこれらが漂い続けることは、かえって感染リスクを高める結果となります。清掃中、あるいは清掃が終わった直後こそ、積極的に換気を行い、舞い上がった汚れを屋外へ追い出す必要があります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
清掃により舞い上がった埃などが乾燥すると、そこに付着した微生物が再浮遊するため、清掃後は十分に換気を行います。
現場での失敗の多くは、「感染対策をしなければ」という真面目な思い込みや、断片的な知識によって引き起こされています。「全開か、閉め切りか」の二者択一ではなく、空気のよどみを防ぐための「適度な通り道」を作ること、そして清掃後などの「タイミング」を押さえることが、無理なく続けられる換気の正解です。
なぜ「空気の通り道」が必要なのか?換気のメカニズム

「寒いから少しだけ開けよう」と思っても、どこをどう開ければ効果的なのか分からず、結局なんとなく窓を開けていることはないでしょうか。換気は、単に外の空気を入れるだけでなく、室内の空気を動かして「よどみ」を解消することが重要です。なぜ換気が必要なのか、その医学的な理由とメカニズムを知ることで、効率的で納得感のある対策が可能になります。
「よどみ」が招くエアロゾル感染のリスク
換気が不十分な室内では、空気が滞留し「よどみ」が発生します。このよどんだ空気の中には、咳やくしゃみだけでなく、会話などでも発生する目に見えない微細な飛沫(エアロゾル)が長時間漂い続ける可能性があります。もし感染者がいた場合、そのエアロゾルを他の人が吸い込むことで感染が広がるリスクが高まります。そのため、換気によって常に新しい空気を取り入れ、病原体を含んだ空気を薄め、外へ押し出すことが不可欠なのです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
換気が不十分…感染が拡大する危険性が高くなります。
適切な換気を確保することで、空気感染やエアロゾル感染を予防することができます。
空気のよどみを防ぎ、室内に溜まった病原体を外に出すことにより、呼吸器感染症等の予防に役立ちます。
「外に出す」ことの重要性
私たちの生活環境には、目に見えない様々な微生物が存在しています。換気の最大の役割は、これらを物理的に建物の「外に出す」ことにあります。高性能な空気清浄機も有用ですが、それだけでは室内の二酸化炭素濃度を下げることはできず、新鮮な酸素を取り入れることもできません。窓を開けて外気を取り入れることは、病原体の排出だけでなく、室内の環境をリセットし、利用者や職員の健康を守るための基本的な環境整備と言えます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
環境の中には様々な微生物がいます。
空気のよどみを防ぎ、室内に溜まった病原体を外に出すことにより、呼吸器感染症等の予防に役立ちます。
「CO2濃度」が教えてくれること
二酸化炭素(CO2)濃度は、その空間に人の呼気がどれだけ溜まっているかを示すバロメーターです。CO2濃度が高いということは、それだけ換気が不十分で、他者の呼気(エアロゾルを含む可能性がある)を吸い込むリスクが高い状態であることを意味します。逆に言えば、CO2濃度が基準値以下であれば、ある程度の換気ができていると判断できます。これを指標にすることで、「なんとなく」ではなく根拠に基づいた効率的な換気管理が可能になります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
定期的な換気を行う際に、二酸化炭素濃度を参考にすることも有用です。
適切な換気を確保することで、空気感染やエアロゾル感染を予防することができます。
換気は「寒くすること」ではなく、「見えない汚れを追い出すこと」です。空気の通り道を意識し、よどみを作らない工夫をすることで、室温低下を最小限に抑えつつ、感染リスクを効果的に下げることができます。
現場で迷いやすい換気のQ&A
- Q換気は1時間に何回すればいいですか?
- A
回数の一律な決まりはありませんが、空気がよどまないよう定期的に行います。「二酸化炭素(CO2)濃度」を参考にタイミングを計ることも有効です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
定期的な換気を行う際に、二酸化炭素濃度を参考にすることも有用です。
- Q送迎車の換気はどうすればいいですか?
- A
可能な限り窓を開けて換気を行い、空気の通り道を作ります。利用者や運転手はマスク着用や手指消毒も合わせて行います。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
可能な限り送迎者の窓を開けて換気を行いましょう。
- Q掃除の時の換気タイミングは?
- A
掃除機やモップ掛けで埃(微生物)が舞い上がるため、特に「清掃後」に十分な換気を行って乾燥させます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
清掃により舞い上がった埃などが乾燥すると、そこに付着した微生物が再浮遊するため、清掃後は十分に換気を行います。
- Q換気扇や空気清浄機があれば窓を開けなくてもいいですか?
- A
換気扇や空気清浄機は補助的なものと考え、窓を開けて外気を取り入れることで「空気のよどみ」を防ぎ、病原体を外に出すことが重要です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
空気のよどみを防ぎ、室内に溜まった病原体を外に出すことにより、呼吸器感染症等の予防に役立ちます。
- Q結核などの疑いがある場合の換気はどうすればいいですか?
- A
十分な換気を行いつつ、廊下への空気流出を防ぐために「居室の廊下側ドアは閉じる」対応をとります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
十分な換気を行う(感染者や疑いのある者の居室の廊下側ドアは閉じる)
まとめ:寒さと感染対策を両立する「スマートな換気」を目指して
冬場の換気対策は、利用者の体調管理と感染予防のバランスを取る必要があり、多くの介護職員にとって悩ましい課題です。しかし、「全開か閉め切りか」の二択ではなく、根拠に基づいた効率的な方法を選ぶことで、リスクと負担を大きく減らすことができます。
本記事でご紹介した重要なポイントを振り返ります。
- 目的の再確認:換気は「室温を下げる」ためではなく、「空気のよどみ」を防ぎ、病原体を外に出すために行います。
- CO2濃度の活用:「なんとなく」ではなく、CO2モニターの数値を基準にすることで、必要なタイミングで効率よく換気ができます。
- 清掃後の徹底:掃除機やモップ掛けの後は埃とともにウイルスが舞い上がるため、意識して十分な換気を行います。
- 空気の通り道:窓を全開にしなくても、対角線上の窓を少し開けるなどして空気の流れを作れば、換気効果は得られます。
まずは、現場にあるCO2モニターの数値を確認し、「1000ppmを超えたら5分だけ窓を開けよう」といった無理のないルールをチームで共有することから始めてみてはいかがでしょうか。
最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。
関連記事
更新履歴
- 2025年12月20日:新規投稿


