介護現場では、利用者の体重減少には敏感でも、増加するとつい「しっかり食べてくれた」と安心してしまいがちです。しかし、忙しさの中で見過ごされやすいその変化が、実はケアの質に関わる重要なサインかもしれません。
理想的な全身観察が難しくても、入浴時などの「ついで」にできる確認方法があります。現場の負担を増やさず、数値の裏側にあるリスクを見極めるための、最低限押さえておきたいポイントを解説します。
この記事を読むと分かること
- むくみと肥満の明確な違い
- 10秒で終わる確認手順
- 体重増でも低栄養な理由
- 見逃せない病気のサイン
- 根拠のある報告のポイント
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
結論:体重増加は「全身状態」とセットで判断する

現場では「一人ひとりの足をじっくり観察する時間なんてない」「入浴介助中は転倒事故を防ぐのに必死で、皮膚の状態まで見る余裕がない」というのが本音ではないでしょうか。
人員配置が厳しい中で、全員を毎日細かくチェックするのは現実的に困難です。だからこそ、「ここだけ見ればリスクを拾える」という最低限のポイントに絞って、効率的に観察することが重要になります。
体重の変化だけで判断せず「全身」を見る
体重が増えたとき、それが栄養状態の改善によるものなのか、あるいは病的なむくみ(浮腫)によるものなのかを数値だけで見分けることはできません。
ガイドラインでは、体重の変化と全身状態を合わせて観察する必要があるとしています。特に、浮腫による体重増加は急激であることが多いという特徴があります。
また、高齢者総合的機能評価(CGA)における栄養評価(体重・下腿周囲長)を行う際も、浮腫の影響に注意が必要であるとされています。体重計の数字が増えていても、それが水分貯留によるものであれば、栄養状態が改善したとは言えない可能性があるためです。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017
https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf
「CQ6 体重の増加とむくみの判別はどのようにすればよいですか?」では「体重の変化と全身状態を合わせて観察する必要がある。」とし,浮腫による体重増加は急激であることが多いことや,高齢者総合的機能評価(以下,CGA)における栄養評価(体重・下腿周囲長)への影響に注意が必要であること,ならびに下肢浮腫は「糖尿病・下肢静脈瘤・日中活動性が低いこと・低アルブミン血症」と有意に関連していた旨が記載されている。
「10秒」の圧迫でむくみを判別する
むくみ(浮腫)と肥満(脂肪)を見分ける具体的な方法として、ガイドラインでは指を使った圧迫による確認が示されています。
むくんでいると思われる部分を10秒以上強く指で押し付け、凹みができれば「むくみ」と判断します。一方で、肥満の場合には凹みはできません。
高齢期では腎臓の機能(糸球体機能や尿細管機能など)が低下していることがあり、そもそも浮腫を起こしやすい状態にあります。そのため、単に「太った」と自己判断せず、この10秒間のチェックを行うことが推奨されます。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017
https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf
「【解説】」では「むくみ(浮腫)は体の水分が異常に増加した状態」で「肥満とは脂肪分が増えること」とし,「むくんでいると思われる部分 10 秒以上強く指で押し付つけ凹みが出来れば,むくみ」で「肥満の場合には凹みはできない」と記載されている。また高齢期では「糸球体機能低下,尿細管機能低下,腎の内分泌機能としてのレニン活性低下」等が認められ浮腫を起こしやすい状態にある旨が記載されている。
忙しい業務の中でも、体重が急激に増加したときや、足の見た目に違和感があるときは、まず10秒間指で押してみてください。そのひと手間で、単なる体重増加なのか、医療的な対応が必要なむくみなのかを見極めるきっかけになります。
よくある事例:「太った」と喜ぶその前に

現場では、体重が減り続けている利用者の対応に追われることが多く、逆に体重が増えている利用者については「問題なしリスト」に入れてしまいがちです。
「食べてくれているなら安心」「元気になった証拠」とポジティブに捉えがちですが、後になって「実は病気のサインだった」と判明してヒヤリとするケースも少なくありません。ここでは、現場でよく見られる判断に迷う3つのケースを紹介します。
事例1:短期間で「急に」体重が増えた
低栄養のリスクがある利用者に対し、食事形態の工夫や栄養補助食品の導入など、チームで栄養改善に取り組んだ直後のケースです。
これまでの減少傾向が止まり、短期間で体重がプラスに転じると、つい「ケアの効果が出た」と喜びたくなります。しかし、脂肪や筋肉は数日で急激に増えることは稀です。
ガイドラインでは、浮腫(むくみ)による体重増加は「急激であることが多い」と指摘されています。単に増えたことだけを見るのではなく、そのスピードに注目し、急激な変化であれば水分貯留を疑う視点が必要です。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017
https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf
「CQ6 体重の増加とむくみの判別はどのようにすればよいですか?」では「体重の変化と全身状態を合わせて観察する必要がある。」とし,浮腫による体重増加は急激であることが多いことや,高齢者総合的機能評価(以下,CGA)における栄養評価(体重・下腿周囲長)への影響に注意が必要であること,ならびに下肢浮腫は「糖尿病・下肢静脈瘤・日中活動性が低いこと・低アルブミン血症」と有意に関連していた旨が記載されている。
事例2:足が太くなったが「脂肪」か「むくみ」か迷う
入浴介助中などに利用者の足を見て、「以前より太くなった気がする」と感じる場面です。本人の食欲もあり元気そうだと、「最近よく食べているから太った(肥満)のかな」と自己完結してしまいがちです。
しかし、見た目だけで脂肪かむくみかを判断するのは困難です。ガイドラインでは、むくんでいると思われる部分を10秒以上強く指で押し、凹みができれば「むくみ」、できなければ「肥満」であると明確に定義されています。
「太っただけだろう」という推測で終わらせず、必ず指で押して確認することが、見落としを防ぐカギとなります。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017
https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf
「【解説】」では「むくみ(浮腫)は体の水分が異常に増加した状態」で「肥満とは脂肪分が増えること」とし,「むくんでいると思われる部分 10 秒以上強く指で押し付つけ凹みが出来れば,むくみ」で「肥満の場合には凹みはできない」と記載されている。また高齢期では「糸球体機能低下,尿細管機能低下,腎の内分泌機能としてのレニン活性低下」等が認められ浮腫を起こしやすい状態にある旨が記載されている。
事例3:低栄養の指摘があるのに体重は減らない
血液検査で低アルブミン血症(栄養状態の低下)を指摘されているにもかかわらず、体重測定の結果は横ばい、あるいは微増しているケースです。
「食べていないのに体重が減らないのはおかしい」「測定ミスではないか」と混乱しやすい状況ですが、ここにもむくみのリスクが隠れています。
ガイドラインには、下肢浮腫は低アルブミン血症と有意に関連していると記載されています。つまり、栄養状態が悪化して血管内の水分を保てなくなり、漏れ出した水分で体がむくみ、結果として体重が見かけ上維持されている可能性があるのです。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017
https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf
「CQ6 体重の増加とむくみの判別はどのようにすればよいですか?」では「体重の変化と全身状態を合わせて観察する必要がある。」とし,浮腫による体重増加は急激であることが多いことや,高齢者総合的機能評価(以下,CGA)における栄養評価(体重・下腿周囲長)への影響に注意が必要であること,ならびに下肢浮腫は「糖尿病・下肢静脈瘤・日中活動性が低いこと・低アルブミン血症」と有意に関連していた旨が記載されている。
どの事例も、体重の数値やパッと見の印象だけで判断すると、背後にあるリスクを見落としてしまいます。「急激な変化ではないか」「押して凹むか」「血液データとの矛盾はないか」という視点を持つことで、より確実なケアにつながります。
理由:なぜ「ただの体重増」と見間違えてしまうのか
現場では、毎月の体重測定が「記録のためのルーチンワーク」になってしまいがちです。「先月より1kg増えました」と報告すれば、「よかった、安定しているね」で会話が終わることも多いでしょう。
忙しい業務の中で、増えた1kgの内訳まで考える余裕がないのが現実かもしれません。しかし、なぜ高齢者の場合、この「1kgの増加」が危険なサインになり得るのでしょうか。その背景には、高齢者特有の体の仕組みと、数値だけでは見えない水分の問題があります。
体重計は「中身」まで教えてくれない
私たちが普段使っている体重計は、体の総重量を測るものであり、増えたのが「脂肪(栄養)」なのか「水分(むくみ)」なのかを区別することはできません。
ガイドラインの解説では、以下のように明確に定義されています。
- むくみ(浮腫):体の水分が異常に増加した状態
- 肥満:脂肪分が増えること
つまり、見た目でふっくらしたように見えても、それが栄養状態の改善によるものなのか、単に水分が溜まっているだけなのかは、数値だけでは判断できないのです。特にむくみの場合は、体に余分な水分が溜まっているだけであり、本来目指すべき「筋肉や脂肪がついた状態」とは根本的に異なります。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017
https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf
「【解説】」では「むくみ(浮腫)は体の水分が異常に増加した状態」で「肥満とは脂肪分が増えること」とし,「むくんでいると思われる部分 10 秒以上強く指で押し付つけ凹みが出来れば,むくみ」で「肥満の場合には凹みはできない」と記載されている。
高齢者の体は「むくみ」のハードルが下がっている
若い頃と同じ感覚で「昨日は塩分を摂りすぎたかな?」と考えるだけでは不十分です。高齢者の体は、加齢に伴う生理的な変化により、そもそもむくみを起こしやすい状態に変化しています。
ガイドラインでは、高齢期に見られる具体的な機能低下として以下が挙げられています。
- 糸球体(しきゅうたい)機能低下:腎臓で血液をろ過する働きの低下
- 尿細管(にょうさいかん)機能低下:尿を作る過程での再吸収・分泌機能の低下
- レニン活性低下:血圧や体液バランスを調整するホルモン(レニン)の働きの低下
これらの機能が低下しているため、少しの水分バランスの崩れでも、容易にむくみとして体に現れやすくなっています。「いつも通り生活しているはずなのに」という場合でも、体の内側では水分調整が難しくなっている可能性があるのです。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017
https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf
また高齢期では「糸球体機能低下,尿細管機能低下,腎の内分泌機能としてのレニン活性低下」等が認められ浮腫を起こしやすい状態にある旨が記載されている。
「動かないこと」や「病気」が数値を押し上げる
体重増加の背景には、単なる加齢だけでなく、隠れた病気や生活習慣が関わっていることもあります。
現場でよく見かける「日中ずっと椅子に座ったまま過ごしている」という状況も、実はむくみのリスク要因です。ガイドラインでは、下肢の浮腫と有意に関連している項目として、以下が挙げられています。
- 糖尿病
- 下肢静脈瘤
- 日中活動性が低いこと
- 低アルブミン血症(栄養状態の低下)
特に注意したいのが低アルブミン血症です。栄養状態が悪い(低栄養)にもかかわらず、それが原因でむくみが生じ、結果として体重が増えてしまうというパラドックス(逆説)が起こり得ます。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017
https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf
「CQ6 体重の増加とむくみの判別はどのようにすればよいですか?」では「体重の変化と全身状態を合わせて観察する必要がある。」とし,浮腫による体重増加は急激であることが多いことや,高齢者総合的機能評価(以下,CGA)における栄養評価(体重・下腿周囲長)への影響に注意が必要であること,ならびに下肢浮腫は「糖尿病・下肢静脈瘤・日中活動性が低いこと・低アルブミン血症」と有意に関連していた旨が記載されている。
体重が増えたという事実の裏には、こうした「体の機能低下」や「病気のリスク」が潜んでいる可能性があります。だからこそ、数値だけを見て安心するのではなく、「中身は何か?」を疑う視点が必要になるのです。
よくある質問:現場で迷う「体重とむくみ」の判断
- Q足が太くなった気がしますが、むくみか肥満(脂肪)かを見分ける方法はありますか?
- A
むくんでいると思われる部分を指で「10秒以上」強く押し付けてください。指を離した後に「凹み」ができれば「むくみ(浮腫)」であり、凹みができなければ「肥満」と判断します。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)
要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017
https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf
「【解説】」では「むくみ(浮腫)は体の水分が異常に増加した状態」で「肥満とは脂肪分が増えること」とし,「むくんでいると思われる部分 10 秒以上強く指で押し付つけ凹みが出来れば,むくみ」で「肥満の場合には凹みはできない」と記載されている。
- Q食べていないのに体重が増えています。栄養状態が悪い(低栄養)ことと関係ありますか?
- A
関係があります。栄養状態が悪く「低アルブミン血症」になっている場合、むくみが生じやすくなります。そのため、体重が増えていても栄養状態は悪いままである可能性があります。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)
要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017
https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf
「CQ6 体重の増加とむくみの判別はどのようにすればよいですか?」では、下肢浮腫は「糖尿病・下肢静脈瘤・日中活動性が低いこと・低アルブミン血症」と有意に関連していた旨が記載されている。
- Q高齢者は若い人に比べてむくみやすいのでしょうか?
- A
はい、むくみやすい状態にあります。高齢期では腎臓の機能(糸球体機能や尿細管機能など)や、体液調整に関わるホルモン(レニン活性)の働きが低下していることが多く、浮腫を起こしやすいとされています。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本老年歯科医学会(共同:一般社団法人 日本在宅栄養管理学会)
要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン 2017
https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf
高齢期では「糸球体機能低下,尿細管機能低下,腎の内分泌機能としてのレニン活性低下」等が認められ浮腫を起こしやすい状態にある旨が記載されている。
まとめ:体重増加は「中身」を疑うことから
高齢者の体重増加は、必ずしも栄養状態の改善を意味するわけではありません。見た目にふっくらとしたとしても、その中身が「脂肪(栄養)」なのか、病的な「水分(むくみ)」なのかを見極める冷静な視点が必要です。
現場で迷ったときは、まず足のすねなどを10秒間指で押してみてください。凹んで戻らなければ、それは単なる肥満ではなく、むくみ(浮腫)の可能性が高いサインです。高齢者は腎機能の低下などにより、生理的にもむくみを起こしやすい状態にあります。
「食べていないのに体重が増えた」「急激に増えた」という違和感を放置せず、客観的なチェックを行うことで、隠れた病気や低栄養のリスクに気づくことができます。まずは次回のケアの際、少しだけ時間をとって確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。
更新履歴
- 2025年12月21日:新規投稿


