【介護】認知症「同じ話ばかり」に疲れたあなたへ。無視はNG、医学的正解は?

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さっき言ったのに…終わりのない繰り返しに疲れたら

夕飯時、「ご飯はまだ?」の繰り返しに、頭では病気と理解してもつい強い口調で返してしまう。直後に訪れる自己経験に、心をすり減らしていませんか。

すべてを完璧にこなす必要はありません。脳の記憶機能の障害という事実を知ることで、対策は変わります。言葉での説得をやめ、環境で解決するという一つの選択肢です。

この記事を読むと分かること

  • 忘れるのは脳の機能障害とされる
  • 怒ってしまう医学的な理由
  • 言葉を使わない対応手順

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • 「さっき言った」と毎日言う
  • 親がわざと困らせている気がする
  • 説明すれば分かると信じている

結論:脳の「録音ボタン」が働きにくいことがあるため、言葉での説得は機能しにくくなります

男性入居者と女性介護職員の画像

「傾聴が大事」「怒ってはいけない」。そんな建前は、現場の誰もが痛いほど理解しています。しかし、夜勤明けの疲労や人手不足の中で、同じ質問を数十回繰り返されれば、理性は吹き飛びます。

あなたが悪いわけではないと考えられます。相手の「脳の機能」が器質的に障害されている状態で、言葉だけで戦おうとすると辛いのです。ここでは、根性論ではない医学的な事実を確認します。

性格ややる気の問題ではなく、脳の「器質的」な障害とされています

認知症による物忘れを、「年のせい」や「嫌がらせ」と感じてしまうことがあります。しかし、医学的な定義は一般に明確です。

認知症とは、後天的な器質的な脳の障害によって、知能が継続的に低下した状態を指します。

つまり、本人の性格ややる気の問題ではなく、脳という臓器(ハードウェア)そのものに器質的な障害があるとされています。壊れた回路に「気合で思い出して」と願っても、機能しないことがあります。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

認知症とは,一旦正常に発達した知能が後天的に器質的な脳の障害によって広汎に継続的に低下し,日常的な生活を営めない程度にまで衰退した状態と定義されている。

HDS-Rが示す「直近の記憶」の低下

診断に使われるHDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)は、なぜあのような質問をするのでしょうか。

この検査は30点満点中20点以下で疑いありとされ、特に記憶力に関する項目が中心です。

つまり、認知症の疑いがある時点で、「記憶に関する機能」が低下している可能性が示されています。

あなたの説明を聞いていないのではありません。脳の録音ボタンが機能しにくく、情報は右から左へ抜けやすいのです。この事実に抗おうとすると、介護者が疲弊しやすいと考えられます。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

HDS-R は,30 点満点中 20 点以下で認知症の疑いがあるとされる。記憶力に関する項目が中心であるため,記憶障害の変動を捉えるのに適している。

「言えばわかる」という期待は、医学的に叶いにくいことがあります。相手は器質的な脳の障害を抱えており、記憶機能が低下していることがあります。言葉での説得にこだわらず、別の手段に切り替えることも、一つの道と考えられます。


「さっき言った」が通用しない…現場で起きている「無限ループ」の典型パターン

男性入居者の画像

頭では病気と分かっていても、忙しい業務や家事の最中に同じことを繰り返されると、つい感情的になってしまいます。現場で多くの人が経験する「無限ループ」の構造を整理し、どこでボタンを掛け違えているかを確認しましょう。

夕方に繰り返される「ご飯はまだ?」への対応

  • 状況
    • 夕方、空腹や不安から数分おきに催促される。
  • 困りごと
    • 家事の手が止まり、何度答えてもリセットされる。
  • よくある誤解
    • 「さっき食べた」と事実を伝えれば納得する。
  • 押さえるべき視点
    • 体験の全体が抜け落ちている。

「食べたこと」自体を忘れている場合があるため、事実の指摘は「嘘をつかれた」という不信感を生むことがあります。加齢による物忘れとは異なり、体験の全体が抜け落ちるのが特徴です。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

加齢によるもの忘れは,体験したことの一部を忘れる,進行しない,日常生活に支障がないといった特徴があるのに対し,認知症によるもの忘れは,体験したことの全体を忘れる,進行性である,日常生活に支障があるといった特徴がある。

「財布がない」と騒ぎ出す「物盗られ妄想」

  • 状況
    • 自分で仕舞った場所を忘れ、「盗まれた」と疑う。
  • 困りごと
    • 否定すると「お前が犯人だ」と興奮する。
  • よくある誤解
    • 一緒に探して証明すれば疑いは晴れる。
  • 押さえるべき視点
    • 事実ではないことを事実として話す症状(作話)。

これは嘘をついているのではなく、作話妄想という症状です。本人にとってはそれが「真実」になってしまうことがあります。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

認知症ケア法―認知症の理解

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

財布や通帳などを「盗まれた」と訴える(もの盗られ妄想),事実ではないことをあたかも事実のように話す(作話)などがみられる。

デイサービス当日の「行きたくない」という拒否

  • 状況
    • 出発直前になって「聞いていない」と拒否する。
  • 困りごと
    • 説得しようとして大喧嘩になり、疲弊する。
  • よくある誤解
    • 前日から約束しておけば安心してくれる。
  • 押さえるべき視点
    • 環境や関わり方が影響するBPSDである。

直前の記憶がないため、急な外出への不安が拒否として現れます。これは性格の問題ではなく、環境や人間関係が絡み合って起きるBPSDであり、適切なケアで治まることがあります。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

認知症ケア法―認知症の理解

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

BPSD(行動・心理症状)は,中核症状の結果として生じるが,本人の性格,環境,人間関係などが絡み合って起きる症状であり,適切なケアを行うことで症状が治まった­り,なくなったりするのが特徴である。

どの事例も、介護者の説明不足ではなく、体験全体の消失作話といった症状が原因と考えられます。まともに言葉で説得しようとすると泥沼にはまることがありますが、これらは環境調整で緩和できるBPSDの側面もあるとされています。


なぜ「わかってくれない」のか? 記憶障害の医学的・心理的理由

女性の介護職員の画像

「大切な家族の言葉なら、覚えていてほしい」。そんな願いも虚しく、なぜ記憶は定着しないのでしょうか。ここでは精神論ではなく、医学的・心理的な構造からその理由を整理します。

【原因1】HDS-Rが示す「遅延再生」の機能低下

  • 建前(理想):しっかり目を見て話せば伝わるはず。
  • 現実(現場):少し前のことを思い出す機能が低下している。

認知症のスクリーニング検査であるHDS-R(長谷川式)では、記憶力に関する項目が重視されます。記憶力に関する項目が中心であるため、あなたの話を聞いていないのではなく、脳の記憶力が低下している可能性があります。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

HDS-R は,30 点満点中 20 点以下で認知症の疑いがあるとされる。記憶力に関する項目が中心であるため,記憶障害の変動を捉えるのに適している。

【原因2】「体験の全体」が抜け落ちる病気の特性

  • 建前(理想):ヒントを出せば「ああ、そうだった」となるはず。
  • 現実(現場):出来事そのものが消えており、指摘は「言いがかり」に聞こえる。

生理的な加齢による物忘れは「体験の一部」を忘れるだけですが、認知症は体験の全体を忘れることがあります。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

加齢によるもの忘れは,体験したことの一部を忘れる,進行しない,日常生活に支障がないといった特徴があるのに対し,認知症によるもの忘れは,体験したことの全体を忘れる,進行性である,日常生活に支障があるといった特徴がある。

【原因3】情報収集ではなく「安心」を求める確認行動

  • 建前(理想):正解(時間や場所)を教えれば納得するはず。
  • 現実(現場):常に「置き去りにされた」ような不安の中にいる。

記憶が定着しないため、本人は孤独や不安を感じることがあります。繰り返す質問は、情報が欲しいのではなく、誰かと繋がっていたいという確認行動かもしれません。心理的なかかわりとして、相手を置き去りにしない姿勢が重要とされています。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

認知症ケア法―認知症の理解

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

心理的特徴に応じたかかわり方として、価値観や考え方、習慣を受容する、幼児語を使わず自尊心を尊重する、不快でない距離や目線の高さに留意する、相手の表情を確認しながら話しかける、相手のペースに合わせ気持ちを汲み取る、家族とだけ話したりせず相手を置き去りにしないといったポイントがある。

わかってくれないのは、記憶障害体験全体の消失という脳の機能不全に加え、心理的な特徴が関わることがあります。これらは本人の努力だけの問題ではないと考えられます。

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「無視していい?」「薬で治る?」現場の小さな迷いへの回答

毎日同じ質問を繰り返されると、つい「聞こえないふり」をしたくなったり、「薬でなんとかならないか」と願ったりしてしまうものです。しかし、誤った対応は症状を悪化させる可能性があります。現場で抱きがちな迷いに、医学的な視点からお答えします。

Q
あまりにしつこい時、無視してもいいですか?
A
無視は推奨されにくいです。言葉の内容は忘れても、無視されたという不快な感情は残り、不安につながることがあります。心理的特徴に応じたかかわりとして、自尊心を尊重し、相手を置き去りにしない姿勢が、大切とされています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省

認知症ケア法―認知症の理解

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

心理的特徴に応じたかかわり方として、価値観や考え方、習慣を受容する、幼児語を使わず自尊心を尊重する、不快でない距離や目線の高さに留意する、相手の表情を確認しながら話しかける、相手のペースに合わせ気持ちを汲み取る、家族とだけ話したりせず相手を置き去りにしないといったポイントがある。

Q
昔の自慢話は何度もするのに、なぜ今のことは忘れるのですか?
A
アルツハイマー型認知症(AD)は、初期症状として記憶障害がみられるためです。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

アルツハイマー型認知症(AD),前頭側頭型認知症(FTD) – 要約文(文字数に制限はありません。): 認知症の主な四病型には,初期症状として記憶障害や実行機能障害がみられるアルツハイマー型認知症(AD),転倒傾向・尿失禁が初期症状として現れる血管性認知症(VaD),幻視やパーキンソン症状が特徴のレビー小体型認知症(DLB),脱抑制や人格変化が初期症状となる前頭側頭型認知症(FTD)がある。

Q
薬でこの「繰り返し」を止めることはできますか?
A
薬物療法は第一選択にならないことがあります。認知症の治療はQOL向上を目的とし,非薬物療法と薬物療法を組み合わせて行う。原則として非薬物療法を優先し,抗精神病薬を含む向精神薬の投与が必要な場合は,転倒・骨折や死亡リスク上昇等の不利益および適応外使用であることを説明し,同意を得る必要がある。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

認知症の治療はQOL向上を目的とし,非薬物療法と薬物療法を組み合わせて行う。原則として非薬物療法を優先し,抗精神病薬を含む向精神薬の投与が必要な場合は,転倒・骨折や死亡リスク上昇等の不利益および適応外使用であることを説明し,同意を得る必要がある。

「無視」や「安易な投薬」は、一時的な逃げ道に見えても、結果として本人の不安につながるおそれがあります。自尊心の尊重非薬物療法の優先という原則に立ち返ることが、大切とされています。

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言葉での説得を「諦める」判断が、必要になることがあります

「何度言えばわかるの」と喉まで出かかったら、一度深呼吸をしてください。

それはあなたの説明が下手だからではなく、相手の記憶機能が低下していることが要因と考えられます。

真正面から言葉で戦うことは、医学的に見て難しい戦いと考えられます。負けを認めるのではなく、戦う土俵を変える「戦略的撤退」を選びましょう。

明日から、一つだけ試してみてください。言葉で繰り返す代わりに、身振り手振りを大きくしてみる。あるいは、目に見える環境を整えてみる。

言葉以外の環境調整が、記憶を補う可能性があります。完璧なケアを目指さず、まずはご自身の心を一番に守ってください。

最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。


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更新履歴

  • 2025年9月29日:新規投稿
  • 2026年2月15日:より詳細なエビデンス(根拠)に基づき解説を充実させるとともに、最新のサイト基準に合わせて構成・レイアウトを見やすく刷新。

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