毎日の頻回な手洗いやアルコール消毒で、 手荒れに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
「手袋をしていれば、手も荒れないし、汚れないから安心」 忙しい現場では、ついそう思って 着けたままにしてしまうことがあります。
しかし、その「着けっぱなしの手袋」が、 実は施設内にウイルスを広げる 原因になっている可能性があることをご存じでしょうか。
この記事では、厚生労働省の手引きに基づき、 意外と知らない「手袋の正しい扱い方」と 「交換の鉄則」について解説します。
この記事を読むと分かること
- 手袋が「感染源」になってしまうメカニズムと理由が分かります
- 「いつ交換すべきか」「いつ外すべきか」の迷いがなくなります
- 手袋を外した後の「手洗い」がなぜ必須なのか、根拠を持って理解できます
- 無意識の感染拡大を防ぎ、利用者様と自分自身を守れるようになります
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
手袋は「第二の皮膚」ではない！感染対策の鉄則
手袋を着用していれば、どんなものを触っても安全で、周りを汚すこともないと思っていませんか？ 実は、その油断こそが感染拡大の落とし穴です。手袋はあくまで一時的なバリアであり、使い方を間違えれば、逆にウイルスを運び広げる媒体になってしまいます。まずは手袋に関する正しい認識と、絶対に守るべき鉄則を確認しましょう。
手袋の表面は「汚染」されている
手袋はあなたの手を守るためのものですが、環境や利用者に触れた瞬間から、手袋の外側は汚染されている状態になります。「手袋＝清潔」ではありません。
厚生労働省の手引きでは、例えばテーブル清掃（環境整備）で使った手袋のまま、トイレ介助（身体介護）に入るような行為は、手袋についた環境の汚れを利用者に移してしまうことになると警告しています。手袋をしているからといって、どこでも自由に触っていいわけではないのです。
出典元の要点（要約）
厚生労働省老健局介護現場における感染対策の手引き 第３版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
本手引きは、実際の場面として「テーブル等の清掃をしている時」に呼び出されて「トイレの付き添い」を行うケースを挙げています。このとき「手袋を着けているため『清潔』だと思ってしまいます」が、「汚れたテーブルや手摺り等」を触っていた手袋の表面は汚染されており、そのまま利用者の陰部や口元に触れると病原体を運んでしまう危険性があります。そのため「必ず手袋を外し、手指衛生を行ってから、利用者のケアに移ることが大切です」とされており、手袋の「つけっぱなし」が逆にリスクになることを示す重要なエビデンスです。
鉄則は「1ケア・1交換」
感染予防の基本である「標準予防策（スタンダード・プリコーション）」において、手袋は「1ケアごとに交換」することが絶対のルールです。
- 利用者Aさんのケアが終わったら捨てる
- 同じ利用者さんでも、オムツ交換（汚染）から食事介助（清潔）に移る時は変える
「まだ破れていないから」「もったいないから」といって使い続けることは、感染対策の観点からは許されません。処置が終わるたびに、必ず新しいものに交換しましょう。
出典元の要点（要約）
一般社団法人 日本環境感染学会高齢者介護施設における感染対策 学習内容
https://www.kankyokansen.org/other/edu_pdf/4-6_01.pdf
「おむつ交換」の項目では、「手袋、ビニールエプロンを着用する」「必ずひとりのおむつ交換毎に交換」「外した後に手指衛生を行う」といった具体的な標準予防策が示されています。また、「手袋やビニールエプロンは患者ごと、ケア毎に交換する」とされ、嘔吐物処理や排泄介助に限らず、すべてのケアで防護具の使い捨てと手指衛生をセットにすることが標準予防策の基本と示されています。
外した後の「手洗い」までがセット
「手袋をしていたんだから、手は汚れていないはず」と、外した後の手洗いを省略していませんか？
実は、手袋には目に見えない小さな穴（ピンホール）が開いている可能性があり、そこからウイルスが侵入することがあります。また、手袋を外す瞬間に、汚れた表面が手首や指先に触れてしまうリスクも非常に高いです。
そのため、ガイドラインでは「手袋を外した後は、必ず手指衛生（手洗いまたはアルコール消毒）を行うこと」が義務付けられています。手袋着用は、手洗いの代わりにはなりません。
出典元の要点（要約）
厚生労働省感染対策の基礎知識｜2 標準予防策
https://www.mhlw.go.jp/content/000501120.pdf
標準予防策の説明では、「※手袋等を外した時は必ず手指消毒を行うこと」と明記され、手袋はあくまで補助であり、外した後の手指衛生が不可欠であるという考え方が示されています。また、「感染性廃棄物を取り扱うとき」も「手袋の着用」が求められており、廃棄物処理がそのまま感染対策であることが分かります。
手袋は便利な道具ですが、決して万能ではありません。「汚染されたら交換する」「外したら手を洗う」という基本動作を徹底することで初めて、あなたと利用者を守る有効な手段となります。次は、現場でよく見かける具体的なNG行動について解説します。
現場でよく見る「手袋NG行動」3選
「汚いものを触りたくない」という心理から、つい手袋をつけっぱなしにしてしまうことはありませんか？ しかし、その手袋が感染の「媒介者」になっているかもしれません。ここでは、現場で無意識に行われがちな3つのNG行動と、それがなぜ危険なのかを解説します。
【NG行動①】掃除の手袋で「ちょっと手伝う」
テーブルを拭いたり、汚物室を掃除したりしている最中に、「ちょっと手伝って！」とトイレ介助や移乗介助を頼まれることはよくあります。その時、「手袋をしているから大丈夫」と、そのまま介助に入っていませんか？
これは、環境中の汚れやウイルスを、手袋を通じて利用者様の体や衣服に擦り付ける行為です。掃除で使った手袋はすでに汚染されています。
どんなに急いでいても、「環境整備」と「身体介護」の間では必ず手袋を外し、手指衛生を行うのが鉄則です。
出典元の要点（要約）
厚生労働省老健局介護現場における感染対策の手引き 第３版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
本手引きでは、テーブル等の清掃中にトイレ介助などを行う場合、手袋をしていても表面は汚染されているため、そのまま利用者に触れることは避けるべきであると示しています。このような場合でも、必ず手袋を外し、手指衛生を行ってからケアに移ることが大切です。
【NG行動②】手袋をしたまま「ドアノブ・記録」に触れる
オムツ交換や処置の後、手袋をしたままドアノブを開けたり、記録用のタブレットやペンを触ったりしていませんか？
汚染された手袋で触れた場所は、ウイルスや細菌が付着し、新たな「感染の交差点（ハブ）」になります。次にそのドアノブやペンを触った職員の手を通じて、感染が施設全体に広がってしまいます。
「ケアが終わったらその場で外す」ことを徹底し、共有部分を手袋で触らないようにしましょう。
出典元の要点（要約）
一般社団法人 日本環境感染学会高齢者介護施設における感染対策
https://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/koreisyakaigoshisetsu_kansentaisaku.pdf
標準予防策では、「使用した器具・器材」や「上記（汚染物）に触れた手指等」も感染源となりうると定義されています。手袋をしたまま環境表面に触れることは、感染経路を広げるリスクとなります。
【NG行動③】手袋を外して「そのまま」次の業務へ
手袋を外した後、「手は汚れていない」と思って、手を洗わずに次の利用者様のところへ行ったり、パソコンを操作したりしていませんか？
前述の通り、手袋を外す際には目に見えない飛沫や接触によって、手指が汚染されている可能性が高いです。「手袋を外す＝手が汚れた」と考え、必ずアルコール消毒か手洗いを行ってください。
これを省くと、手袋をしていた意味がなくなってしまいます。
出典元の要点（要約）
厚生労働省感染対策の基礎知識｜2 標準予防策
https://www.mhlw.go.jp/content/000501120.pdf
資料では、「※手袋等を外した時は必ず手指消毒を行うこと」と明記されており、手袋着用は手洗いの代わりにはならないことが示されています。
これらの行動は、悪気なく「つい」やってしまいがちなことばかりです。しかし、その一瞬の油断が感染の連鎖を生んでしまいます。「手袋は汚れているもの」という意識を持ち、こまめな交換と手洗いを習慣化していきましょう。次は、なぜそこまで厳密にする必要があるのか、医学的な理由を深掘りします。
根拠を知れば怖くない！「なぜダメなのか」の医学的理由
「手袋を交換するのは面倒」「もったいない」という気持ちも分かります。しかし、医学的な理由を知れば、それが自分と利用者を危険にさらす行為だと理解できるはずです。ここでは、なぜそこまで厳密な管理が必要なのか、その根拠を解説します。
なぜ手袋をしていても「手」は汚れるのか？
「手袋は完璧なバリア」だと思っていませんか？ 実は、そうとは言い切れません。
- ピンホール（目に見えない穴）：手袋には、製造段階や使用中に生じた微細な穴が開いていることがあり、そこからウイルスが浸透する可能性があります。
- 着脱時の汚染：手袋を外す際、汚れた表面がどうしても手首や指先に触れてしまいます。
これらの理由から、ガイドラインでは「手袋着用は手洗いの代わりにはならない」と明記されています。「手袋を外す＝手が汚れた」と認識し、必ずセットで手を洗う必要があるのです。
出典元の要点（要約）
厚生労働省感染対策の基礎知識｜2 標準予防策
https://www.mhlw.go.jp/content/000501120.pdf
「標準予防策」の解説において、手袋等を外した時は「必ず手指消毒を行うこと」と注意書きがなされています。これは、手袋が完全な遮断を保証するものではなく、着脱時の汚染リスクなどを考慮した基本的なルールです。
なぜ「環境」と「人」を区別するのか？
標準予防策では、血液・体液・排泄物などを「感染源」とみなして対応します。
もし、手すりやテーブル（環境）を触った手袋で、利用者の食事介助（人）を行ったらどうなるでしょうか？ 環境に付着していたウイルスを、手袋を介して利用者の口元へ運んでしまうことになります。
逆に、オムツ交換（人）の後にドアノブ（環境）を触れば、そこが新たな感染源になります。
「環境」と「人」の間には見えない境界線があると考え、その境界を越えるたびに手袋を交換し、手指衛生を行うことで、感染の連鎖（チェーン）を断ち切ることができるのです。
出典元の要点（要約）
厚生労働省老健局介護現場における感染対策の手引き 第３版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
本手引きでは、感染成立の3大要因として「病原体」「感染経路」「宿主」を挙げています。手袋の適切な交換を行わないことは、「感染経路」をつなげてしまう行為であり、これを遮断するために標準予防策の徹底が求められています。
理由がわかると、「なぜ1ケアごとに交換が必要なのか」が腑に落ちるはずです。それはルールだからではなく、物理的にウイルスを遮断するために必要な手順なのです。次は、現場で抱えがちなコストや手荒れなどの悩みにお答えするQ&Aです。
現場の悩みに答える！手袋に関するQ&A
「毎回交換するのは現実的じゃない」「手荒れが辛い」など、現場には理想通りにいかない事情も多々あります。そんな現場のジレンマに対し、ガイドラインの基準に照らし合わせた回答をまとめました。
- Q手袋の消費量が増えると怒られます。どうすればいいですか？
- A
感染が拡大した場合のコストの方が甚大です。「1ケア1交換」は最低限のルールです。
「節約」は大切ですが、感染対策を削ることは節約ではなく「リスクの放置」です。万が一施設内で感染が広がれば、消毒業務、職員の休業補償、風評被害など、手袋代とは比較にならないコストがかかります。
「1ケアごとの交換」は贅沢ではなく、標準予防策（スタンダード・プリコーション）における必須条件です。
出典元の要点（要約）
一般社団法人 日本環境感染学会
高齢者介護施設における感染対策 学習内容
https://www.kankyokansen.org/other/edu_pdf/4-6_01.pdf
「手袋やビニールエプロンは患者ごと、ケア毎に交換する」と明記されています。また、おむつ交換時は「必ずひとりのおむつ交換毎に交換」することが求められており、連続使用は認められていません。
- Q手荒れがひどいので、手袋の下に綿手袋をしてもいいですか？
- A
可能です。ただし、その場合も「外側の手袋」は処置ごとに交換が必要です。
ラテックスアレルギーや手荒れ対策として、インナー手袋（綿手袋など）を着用することは問題ありません。
重要なのは、「一番外側の手袋」をケアごとに交換することと、業務の区切りで必ず手袋（インナー含む）を外して手指衛生を行うことです。インナー手袋をしていても、汗や湿気で細菌が繁殖する場合があるため、定期的な交換と手洗いは欠かせません。
出典元の要点（要約）
厚生労働省
感染対策の基礎知識｜2 標準予防策
https://www.mhlw.go.jp/content/000501120.pdf
標準予防策において「手袋等を外した時は必ず手指消毒を行うこと」が基本とされています。手袋の重ね履き等の工夫をする場合でも、この原則（着脱ごとの衛生管理）は変わりません。
- Q手袋の上からアルコール消毒をして、使い続けてもいいですか？
- A
推奨されません。手袋の劣化や、消毒不十分のリスクがあります。
使い捨て手袋（プラスチックやニトリル）は、アルコール消毒を想定して作られていないものが多く、消毒液によって劣化し、小さな穴が開く可能性があります。
また、手袋のシワの間に汚れが残りやすく、確実な消毒が難しいため、「消毒して再利用」ではなく「交換」が原則です。
出典元の要点（要約）
出典元の要点（要約）
一般社団法人 日本環境感染学会
高齢者介護施設における感染対策 学習内容
https://www.kankyokansen.org/other/edu_pdf/4-6_01.pdf
標準予防策として「手袋やビニールエプロンは患者ごと、ケア毎に交換する」とされています。消毒しての継続使用ではなく、都度交換が明確なルールとして示されています。
まとめ：手袋は正しく使えば「武器」、間違えば「凶器」になる
手袋は、感染対策において非常に強力なアイテムですが、使い方を一つ間違えれば、施設中にウイルスを拡散させる原因にもなり得ます。最後に、今回の記事のポイントを振り返り、明日からの実践につなげましょう。
今日からできる！手袋運用の3つの見直し
- 1ケア・1交換：利用者ごと、処置ごとに必ず新しい手袋に変えます。
- 外したら手洗い：手袋を外した後は、必ず手指衛生（手洗い・消毒）を行います。
- 環境と人を分ける：手袋をしたままドアノブや記録類に触れないようにします。
これらを徹底することで、あなた自身の手を感染から守り、利用者様への交差感染を確実に防ぐことができます。
出典元の要点（要約）
厚生労働省感染対策の基礎知識｜2 標準予防策
https://www.mhlw.go.jp/content/000501120.pdf
標準予防策では、手袋の着用は「血液・体液等に触れるとき」の基本ですが、同時に「手袋等を外した時は必ず手指消毒を行うこと」がセットで求められています。これは、手袋の表面汚染やピンホールのリスクを考慮した、感染制御の絶対的なルールです。
正しい知識が、あなたと施設を守る
「もったいない」「面倒くさい」という気持ちが湧いたときは、「手袋の表面は汚物と同じ」という事実を思い出してください。
正しいタイミングで交換することは、決して無駄遣いではありません。それは、利用者様の命と、あなた自身の健康を守るための必要なコストです。
出典元の要点（要約）
一般社団法人 日本環境感染学会高齢者介護施設における感染対策
https://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/koreisyakaigoshisetsu_kansentaisaku.pdf
資料では、標準予防策の遵守が基本であり、手指衛生や個人防護具（PPE）の適切な使用が、感染経路を遮断するために重要であるとされています。特に「感染経路の遮断」は、集団生活の場である介護施設において、感染拡大を防ぐための要となります。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。 この記事が、現場での手袋に関する迷いを解消し、より安全で安心なケア環境を作る一助となれば幸いです。
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更新履歴
- 2025年11月26日：新規投稿
