長い廊下に、階段、そしてトイレ。 施設中に張り巡らされた「手すり」の清掃は、 体力を使う、本当に骨の折れる作業ですよね。
「とにかく全部拭かなきゃ」と、 バケツと雑巾を持って走り回る日々。 その懸命な姿には頭が下がる思いです。
しかし、実はその頑張りが、 かえってウイルスを広げる原因になっている 可能性があるとしたら、どうでしょうか。
この記事では、厚生労働省のガイドラインに基づき、 手すり消毒で避けるべき行動と、 安全な手順について整理しました。 日々の業務をより安全にするヒントとしてお読みください。
この記事を読むと分かること
- 厚生労働省等が推奨しない、手すり清掃のNG行動とその理由が分かります
- 感染を広げないための、正しい拭き方の手順を理解できます
- 廊下やトイレなど、場所に応じた適切な消毒薬の選び方が分かります
- 効率よく、かつ安全に環境を整えるためのポイントが分かります
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
手すりは「感染のハブ」!清掃の3大原則

施設内に長く続く手すりは、利用者の歩行を支える大切な設備ですが、感染対策の視点では最も警戒すべき場所の一つです。やみくもに拭くのではなく、なぜそこを拭くのか、どう拭けば安全かという「3つの原則」を知ることで、効率的で意味のある清掃が可能になります。
手すりはウイルスが乗り換える「交差点」
手すりは、多くの利用者が移動のたびに手でつかみ、体重をかける場所です。つまり、誰かの手に付着していたウイルスや菌が手すりに移り、そこからまた別の人の手へと移っていく「接触感染」が最も起こりやすい場所といえます。
厚生労働省の手引きでも、手すりは「高頻度接触面」として挙げられており、汚染された物を介して感染が広がるリスクが指摘されています。そのため、床や壁よりも優先して、重点的に清掃・消毒を行う必要があります。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本環境感染学会
高齢者介護施設における感染対策 第1版
https://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/koreisyakaigoshisetsu_kansentaisaku.pdf
この文書では、環境・器材の消毒対象として「よく触れられるところ」を挙げ、ドアの取っ手、ベッド柵、オーバーテーブル、手すり、スイッチ、蛇口、洗浄弁のハンドル、トイレの手すりなどが例示されている。これらの高頻度接触面を中心に環境消毒を行うことが、高齢者介護施設での感染拡大防止に重要であると示されている。
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
接触感染について、本手引きは「感染している人との接触や汚染された物との接触による感染。」と定義し、「汚染された物(ドアノブ、手すり、食器、器具等)を介して伝播がおこる間接接触感染がある」と具体例を挙げる。介護施設では多くの利用者が同じ「手すり、ドアノブ、食器、器具等」を触れるため、ここが病原体のハブになりやすいと位置づけられる。そのため環境面の対策として、「接触が多い共用設備(手すり、ドアノブ、パソコンのキーボード等)の消毒を行う」ことが推奨され、日常の清掃・消毒計画に高頻度接触部位を組み込むことが介護現場の接触感染対策の核となる。
原則は「一方向」に拭くこと
手すりを拭く際、汚れを落とそうとして雑巾をゴシゴシと往復させていませんか? 実は、往復拭きは清掃の基本ルールに反する行動です。
往復させると、一度雑巾で拭き取った汚れやウイルスを、戻る動作で再び手すりに塗りつけてしまうことになります。清掃の基本は、「清浄な側から汚染側へ」、または「一方向」に拭き取ることです。一筆書きのイメージで、常に新しい面を使いながら拭き進めることが重要です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
本手引きは、環境清掃の細かな手順も示しており、清掃の順序として「部屋の奥から入口方向」「一方向での拭き取り」「汚染度の高いところを最後に清掃」するといった基本を示し、「トイレ、洗面所、汚染場所用と居室用のモップは区別して使用、保管」することで、清掃用具による二次汚染を防ぐ視点を示している。
場所とリスクに応じた「使い分け」
すべての手すりを同じ消毒液で拭く必要はありません。場所や汚染のリスクに応じて、適切な方法を選ぶことが推奨されています。
- 日常の廊下:目に見える汚れがあれば水拭き(洗剤拭き)で除去し、必要に応じてアルコール等で消毒します。
- トイレの手すり:排泄介助等の後に触れるため、ノロウイルス等のリスクが高くなります。状況に応じて「次亜塩素酸ナトリウム」を使用します。
「どこもかしこも消毒」と気負うのではなく、リスクの高い場所を見極めてメリハリをつけることが、継続可能な感染対策の鍵となります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
清掃・環境消毒について手引きは、「床、壁、ドア等は水拭きしますが、多くの人の手が触れるドアノブ、手すり、ボタン、スイッチ等は、状況や場所に応じての消毒(消毒用エタノール等でよい)が望ましいです」とし、高頻度接触面での「消毒用エタノール」の活用を勧める。一方、「ノロウイルス感染症発生時は 0.02%~0.1%(200ppm~1000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム液を使用し、消毒後の腐食を回避するため水拭きする等」と記載し、病原体によって「その病原体に応じた清掃や消毒」を切り替えることが必要と示す。つまり日常はアルコール中心、ノロ流行時などは次亜塩素酸ナトリウムを使い分ける施設内の環境管理が求められている。
厚生労働省
高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版(付録5:消毒法について)
https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
同じく付録5の表では、次亜塩素酸ナトリウムの用途別濃度として、「○便や吐物が付着した床等」には「1000ppm(0.1%)」を、「○食器等の漬け置き」や「○トイレの便座やドアノブ、手すり、床等」には「200ppm(0.02%)」を使うことが示されている。さらに、「500mlのペットボトル1本の水に◯ml」「5Lの水に◯ml」といった具体的な希釈方法が記載されており、介護現場で職員が直感的に必要な濃度の消毒液を作れるようになっている。
手すり清掃は重労働ですが、正しい知識を持つことで「無駄な動き」を減らし、確実な安全を手に入れることができます。次からは、現場でついやってしまいがちな具体的なNG行動と、その改善策について詳しく解説します。
現場でよく見る「NG消毒」5選!その努力、実は逆効果かも?

広い施設の手すりを清潔に保つのは、体力と根気のいる作業です。だからこそ、少しでも効率よく進めたいと思うのは当然のことです。しかし、効率を求めて行う「時短テクニック」や「昔ながらの雑巾がけ」が、実は厚生労働省のガイドラインでは推奨されていない場合があります。ここでは、現場で特に見直すべき5つのNG行動を解説します。
NG行動① スプレーを吹きかけながら歩く
長い廊下の手すりに、消毒液の入ったスプレーを「シュッシュッ」と吹きかけながら歩き、その後を追って雑巾で拭いていませんか?
これは一見効率的に見えますが、厚生労働省は消毒薬の噴霧を「行わないこと」としています。理由は、消毒液が霧状になって空気中に漂い、それを職員や利用者が吸い込むことで健康被害(目の痛みや呼吸器への刺激)を引き起こすリスクがあるからです。また、床や手すりのウイルスが風圧で舞い上がり、かえって拡散する恐れもあります。
必ず「布やペーパーに消毒液を含ませてから」拭くようにしましょう。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
本マニュアルの「その他の注意事項」では、広範囲の拭き掃除へのアルコール製剤の使用とは別に、「室内環境でのアルコールや次亜塩素酸ナトリウム液等の噴霧は、職員および入所者の健康被害につながるため、行わないようにします」と明確に禁止している。また、カーテンについては、汚れや埃、あるいは嘔吐物や排泄物の汚染が予測される場合には「直ちに交換」し、感染予防に努めるよう求めており、環境整備の具体的な注意点が示されている。
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
嘔吐があった場合、本手引きは「周囲 2m くらいは汚染していると考えて」対応するよう求めている。まず濡れたペーパータオルや布等を嘔吐物にかぶせて拡散を防ぎ、「外側から内側に向けて静かに拭き取」り、一度拭いたペーパータオルはその都度廃棄する。最終的に「次亜塩素酸ナトリウム液(0.02%)」で浸すように拭き取り、その後に水拭きを行う。また「希釈液をスプレーで吹きかけると…感染の機会を増やしてしまうため、噴霧はしないようにします」とし、噴霧による処理を避けるよう注意喚起している。
NG行動② 一枚の雑巾で「往復拭き」をする
汚れをしっかり落とそうとして、雑巾をゴシゴシと左右に往復させていませんか?
往復拭きをすると、往路で拭き取ったウイルスや汚れを、復路で再び手すりに塗りつけてしまうことになります。清掃の基本動作は「一方向」です。常に新しい面で汚れを絡め取りながら、一筆書きの要領で拭き進めることが、感染を広げないための鉄則です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
本手引きは、環境清掃の細かな手順も示しており、清掃の順序として「部屋の奥から入口方向」「一方向での拭き取り」「汚染度の高いところを最後に清掃」するといった基本を示し、「トイレ、洗面所、汚染場所用と居室用のモップは区別して使用、保管」することで、清掃用具による二次汚染を防ぐ視点を示している。
NG行動③ 汚れた雑巾をバケツですすぎながら使う
バケツに水を張り、汚れた雑巾をジャブジャブと洗って絞り、また次の手すりを拭く……。大掃除などでよく見る光景ですが、感染対策としてはNGです。
消毒液が入っていないバケツの水は、雑巾を洗った瞬間に汚染されます。その水ですすいだ雑巾を使うことは、汚染された水を手すりに塗り広げる行為と同じになってしまいます。
- 雑巾の面(裏表など)を変えながら使い、汚れたら新しいものに交換する
- 可能であれば、使い捨てのペーパータオルや不織布を使用する
「汚れを再付着させない」工夫が必要です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
本手引きは、環境清掃の細かな手順も示しており、清掃後について、「拭き掃除の際はモップや拭き布を良く絞ります。清掃後の水分の残量に注意し、場合によっては、拭き掃除後、乾燥した布で水分をふき取ります」としている。「清掃に使用するモップは、使用後、家庭用洗浄剤で洗い、流水下できれいに洗浄し、次の使用までに十分に乾かします」「清掃後は、よく手を洗い、衛生の保持を心がけます」と記載。
厚生労働省
高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
マニュアルの「付録5:消毒法について」では、「清拭法(ワイピング法)」として「消毒用エタノールを含ませた布または綿で 拭き取る。」方法が示され、テーブル・手すり・ドアノブなど環境表面の消毒に適した方法とされています。一方、「浸漬法(ベースン法)」は「ベースン内で洗う。交差感染すること があ り、禁止。」と記載され、共通の洗面器に手や器具を“つけて洗う”やり方は交差感染の危険があるため避けるべきとされています。
NG行動④ 濡れた手すりにアルコールを使う
水拭きや洗剤拭きをした直後、手すりがまだ濡れている状態でアルコール消毒をしていませんか?
アルコールは水と混ざりやすいため、手すりに水分が残っていると濃度が薄まってしまいます。消毒に必要な濃度(約80%前後など)を下回ると、十分な殺菌効果が得られません。
水拭きをした場合は、一度乾拭きをして水分を取り除くか、自然乾燥を待ってからアルコール清拭を行います。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版(付録5:消毒法について)
https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
付録5では、速乾性手指消毒薬を用いる「擦式法(ラビング法)」について、「手が汚れているときには無効であることに注意します」と明確に指摘し、可視的な汚れがある場合には「スクラブ法を使用します」としている。つまり、嘔吐物や便が付着した場面では、いきなりアルコールでこするのではなく、まず石けんと流水での洗浄(スクラブ法)を行い、その上で状況に応じてラビング法を使うという、手指衛生の基本的な切り分けを示している。
NG行動⑤ トイレの手すりも「アルコールだけ」で済ませる
廊下の手すりと同じ流れで、トイレの手すりもアルコールだけで拭いていませんか?
トイレの手すりは、排泄後の手が触れる場所であり、ノロウイルスなどの汚染リスクが非常に高いエリアです。ノロウイルスには一般的なアルコールが効きにくいため、トイレの手すりには「次亜塩素酸ナトリウム(0.02%など)」を使用することが推奨されています。
- 廊下・居室:アルコール(または水拭き)
- トイレ:次亜塩素酸ナトリウム+水拭き
場所のリスクに応じた「使い分け」が重要です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版(付録5:消毒法について)
https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
「⑥市販の漂白剤を用いた時の調製法」では、「漂白剤として市販されている次亜塩素酸ナトリウム液の塩素濃度は約 5%です」と説明したうえで、「トイレの便座やドアノブ、 手すり、床等」に用いる濃度として「200ppm(0.02%)」が例示されています。ペットボトルやキャップを使った具体的な希釈方法も示されており、家庭用漂白剤を使って介護施設の手すり・ドアノブ・床を適切な濃度で消毒する際の実践的な手がかりとなります。
いかがでしたか? これらは現場で「良かれと思って」行われがちなことばかりですが、感染対策の視点では修正が必要です。次は、これらのNG行動がなぜ危険なのか、その医学的な理由を深掘りして解説します。
根拠を知れば納得!「なぜダメなのか」の医学的理由

「昔からこうやっていた」「先輩に教わった」という手順が、実は感染対策の理にかなっていないことがあります。なぜスプレーしてはいけないのか、なぜトイレだけ液を変えるのか。その理由を医学的な根拠(エビデンス)に基づいて知ることで、自分と利用者を守るための「正しい判断」ができるようになります。
なぜ「スプレー噴霧」は禁止されているのか?
「空間に撒いたほうが空気がきれいになる気がする」と思うかもしれませんが、これは大きな間違いです。
厚生労働省のマニュアルでは、有人空間での消毒剤の噴霧は「行ってはならない」とされています。その理由は以下の通りです。
- 健康被害のリスク:消毒液の成分(次亜塩素酸やアルコール)を職員や利用者が吸い込んだり、目に入ったりすることで、皮膚や呼吸器に害を及ぼす可能性があります。
- ウイルスの拡散:床や手すりに付着しているウイルスが、スプレーの風圧やミストによって舞い上がり、かえって空気中に広がってしまう恐れがあります。
- 効果の不確実性:対象物に均一にかからず、十分な消毒効果が得られないことがあります。
消毒は「空間に撒く」のではなく、「布で拭き取る(清拭)」ことで初めて、物理的にウイルスを除去できます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
本マニュアルの「その他の注意事項」では、広範囲の拭き掃除へのアルコール製剤の使用とは別に、「室内環境でのアルコールや次亜塩素酸ナトリウム液等の噴霧は、職員および入所者の健康被害につながるため、行わないようにします」と明確に禁止している。また、カーテンについては、汚れや埃、あるいは嘔吐物や排泄物の汚染が予測される場合には「直ちに交換」し、感染予防に努めるよう求めており、環境整備の具体的な注意点が示されている。
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
嘔吐があった場合、本手引きは「周囲 2m くらいは汚染していると考えて」対応するよう求めている。まず濡れたペーパータオルや布等を嘔吐物にかぶせて拡散を防ぎ、「外側から内側に向けて静かに拭き取」り、一度拭いたペーパータオルはその都度廃棄する。最終的に「次亜塩素酸ナトリウム液(0.02%)」で浸すように拭き取り、その後に水拭きを行う。また「希釈液をスプレーで吹きかけると…感染の機会を増やしてしまうため、噴霧はしないようにします」とし、噴霧による処理を避けるよう注意喚起している。
なぜ「清潔な雑巾」に変える必要があるのか?
「消毒液を使っているから、雑巾はずっと清潔だ」と思っていませんか?
一度手すりを拭いた雑巾には、汚れや細菌が付着しています。それをバケツの水(消毒液が入っていないただの水)ですすぐと、バケツの中の水自体が汚染液となります。その水で絞った雑巾を使って次の手すりを拭くことは、「汚れや菌を塗り広げている」のと同じです。
- 一方向拭き:一度拭き取った汚れを戻さないため
- 面の交換:常にきれいな面で拭くため
この原則を守ることで、「拭いたのに汚い」という事態を防ぐことができます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
本手引きは、環境清掃の細かな手順も示しており、カーテンのような大きな布製品については、「嘔吐物、排泄物による汚染があると考えられる場合は直ちに交換」とし、汚染の疑いの残るものをそのままにしないことを求めている。また、清掃の順序として「部屋の奥から入口方向」「一方向での拭き取り」「汚染度の高いところを最後に清掃」するといった基本を示し、「トイレ、洗面所、汚染場所用と居室用のモップは区別して使用、保管」することで、清掃用具による二次汚染を防ぐ視点を示している。
なぜトイレの手すりは「次亜塩素酸」なのか?
「アルコールの方が手軽で、臭いもしないのに」と思うかもしれません。
しかし、トイレは排泄後の手が触れる場所であり、ノロウイルスが存在する可能性が施設内で最も高い場所の一つです。ノロウイルスはアルコールに対する抵抗力が強いため、アルコールで拭いても死滅しません。
確実に感染を断つためには、ノロウイルスに有効な「次亜塩素酸ナトリウム」を使う必要があります。多少の手間はかかりますが、トイレの手すりを正しく消毒することが、施設全体の胃腸炎流行を防ぐ防波堤となります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
本手引きの「清掃・消毒・滅菌等」では、定期清掃の基本として「床、壁、ドア等は水拭きしますが、多くの人の手が触れるドアノブ、手すり、ボタン、スイッチ等」は、状況や場所に応じて消毒用エタノール等で消毒することが望ましいとされている。また、ノロウイルス感染症発生時には「0.02%~0.1%(200ppm~1000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム液」を使用し、消毒後は腐食を防ぐために水拭きするなど、日常清掃とアウトブレイク時の清掃を使い分ける視点を示している。
理由を知ると、一つ一つの作業に意味があることがわかります。「なんとなく」ではなく「根拠」を持って清掃を行うことで、あなたの仕事は単なる「掃除」から「専門的な感染ケア」へと変わります。次は、現場でよくある疑問にお答えするQ&Aです。
現場の疑問を解決!手すり清掃のQ&A
手すりの清掃は範囲が広く、素材も様々です。「全部消毒したら色が落ちてしまった」「時間が足りない」といった現場特有の悩みに対し、ガイドラインの視点から現実的な解決策をQ&A形式で解説します。
- Q木製の手すりが白くなるのが心配です。
- A
素材を傷めないよう、消毒後は「水拭き」で仕上げるか、日常は「洗剤拭き」にします。
次亜塩素酸ナトリウムやアルコールは、手すりの塗装を溶かしたり、変色(白化)させたりする可能性があります。また、金属部分は腐食(サビ)の原因になります。
- 消毒した場合:成分が残らないよう、必ず最後に「水拭き」をして拭き取ってください。
- 日常のケア:目に見える汚れを落とすことが基本です。感染リスクが低いエリアであれば、薄めた中性洗剤での清拭と水拭きで対応し、建材を守ることも「住みやすい環境づくり」の一つです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
本手引きの「清掃・消毒・滅菌等」では、定期清掃の基本として「床、壁、ドア等は水拭きしますが、多くの人の手が触れるドアノブ、手すり、ボタン、スイッチ等」は、状況や場所に応じて消毒用エタノール等で消毒することが望ましいとされている。また、ノロウイルス感染症発生時には「0.02%~0.1%(200ppm~1000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム液」を使用し、消毒後は腐食を防ぐために水拭きするなど、日常清掃とアウトブレイク時の清掃を使い分ける視点を示している。
厚生労働省
高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
マニュアルでは、「施設内の環境の清潔を保つことが重要です」と述べ、まずは整理整頓と日常の清掃によって「目に見える埃や汚れを除去」することを基本とする。消毒薬による消毒そのものよりも、入所者にとって「居心地の良い、住みやすい環境づくり」を優先する考え方が示されており、消毒は状況に応じて行う。感染対策を理由に過剰な消毒で生活環境を損なうのではなく、清潔さと生活のしやすさの両立が求められている。
- Q毎日すべての手すりを消毒すべきですか?
- A
「よく触れる場所」を最優先し、メリハリをつけましょう。
理想は毎日ですが、業務量には限りがあります。感染対策では「リスクの高い場所」を重点的に管理することが効率的です。
- 最優先(毎日消毒):トイレの手すり、食堂の入り口、玄関、階段の終わりなど、多くの人が無意識に掴む場所。
- 通常(清掃):居室前の廊下など、接触頻度が比較的低い場所は、目に見える汚れの除去(水拭き)を基本とします。
全てを完璧にこなそうとして疲弊するよりも、「ここは絶対に感染源にしない」というポイントを決めて徹底することが重要です。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本環境感染学会
高齢者介護施設における感染対策 第1版
https://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/koreisyakaigoshisetsu_kansentaisaku.pdf
本資料は、介護施設の環境消毒で特に意識すべき「良く触れるところ」として、「ドアの取っ手」「ベッド柵」「オーバーテーブル」「手すり」「スイッチ」「蛇口」「洗浄弁」「ハンドル」「トイレの手すり」などを具体的に挙げ、「ここを中心に環境消毒しましょう」と示している。これにより、限られた人員・時間の中でも、感染リスクの高い高頻度接触面に優先順位を付けて清拭・消毒を行う考え方が明確になり、介護職員が日常業務の中でどこに目を向けるべきかを具体的にイメージしやすくしている。
- Q雑巾の代わりにペーパータオルを使ってもいいですか?
- A
推奨されます。使い捨て(ディスポーザブル)にすることで再汚染を防げます。
布製の雑巾は、適切な洗濯と乾燥(熱水消毒や漂白剤への浸漬など)を行わないと、雑巾自体が菌の温床になるリスクがあります。
ペーパータオルや使い捨ての不織布であれば、拭き取った汚れやウイルスをそのまま廃棄できるため、「感染を拡げない」という観点からは非常に有効です。コストとの兼ね合いはありますが、特にトイレや嘔吐物処理など高リスクな場面では、使い捨て製品の活用を強くおすすめします。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
本手引きは、環境清掃の細かな手順も示しており、清掃の順序として「部屋の奥から入口方向」「一方向での拭き取り」「汚染度の高いところを最後に清掃」するといった基本を示し、「トイレ、洗面所、汚染場所用と居室用のモップは区別して使用、保管」することで、清掃用具による二次汚染を防ぐ視点を示している。
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
手引きは、嘔吐物や排泄物の処理に使用したペーパータオル等について、「ビニール袋に密閉して廃棄します」とし、その際「ビニール袋に廃棄物が充分に浸る量の次亜塩素酸ナトリウム液(0.1%)を入れることが望ましいです」と示している。処理に用いた洗面所等もよく洗浄・消毒し、処理後は「液体石けんと流水で入念に手を洗い」さらに「次亜塩素酸ナトリウム液を使用した後は窓をあけて、換気をします」と記載されており、廃棄物・手指・環境・換気をセットで管理する流れが明確にされている。
疑問を解消し、正しい方法を選択することで、無駄な労力を減らしながら安全性を高めることができます。最後に、今回の記事のポイントをまとめます。
まとめ:正しい知識で、施設を「安全な場所」に変えよう
毎日繰り返される手すりの清掃は、単なる汚れ落としではなく、感染の連鎖を断ち切るための重要な業務です。最後に、今回の記事のポイントを振り返り、明日からの実践につなげましょう。
今日から実践!3つの見直しポイント
NG行動を避け、より安全な環境を作るために、まずは以下の3点から見直してみてください。
- 「スプレー」をやめる:消毒液は必ず布に含ませてから拭きます。
- 「一方向」に拭く:往復させず、汚れを一方向に拭き取ります。
- 「使い分け」を徹底する:トイレの手すりは次亜塩素酸、廊下はアルコール(または水拭き)と区別します。
これらを意識するだけで、無駄な労力が減り、感染対策の効果は確実に上がります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
施設内の衛生管理では、まず施設内の環境の清潔を保つことが重要ですとされ、日常的な整理整頓と清掃の意義が示される。そのうえで、消毒薬による消毒よりも目に見える埃や汚れを除去し、居心地の良い、住みやすい環境づくりを優先しますと述べられ、過度な消毒よりも「きれいに保つこと」が基本とされている。また、手洗い場やうがい場、汚物処理室といった感染対策に必要な施設や設備を入所者や職員が利用しやすい形態で整備することが大切ですとされ、職員が感染対策を実行しやすい環境設計の重要性が示される。
あなたの清掃が、利用者の歩行を支えている
手すりは、利用者が安心して歩くための命綱です。そこが清潔であることは、利用者の自立支援にも直結します。
「ただの掃除」ではなく、「利用者の生活空間を守るケア」として、自信を持って取り組んでください。正しい知識に基づいたあなたの行動が、施設全体の安全を支えています。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本環境感染学会
高齢者介護施設における感染対策
https://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/koreisyakaigoshisetsu_kansentaisaku.pdf
資料では、感染対策の原則として「感染成立の3要因への対策」と「病原体を持ち込まない・持ち出さない・拡げない」が基本であると整理されています。特に「感染経路の遮断」は感染拡大防止のためにも重要な対策となります。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。 この記事が、現場での迷いを減らし、利用者様とスタッフの皆様が安心して過ごせる環境づくりの一助となれば幸いです。
関連記事
更新履歴
- 2025年11月21日:新規投稿


