認知症の声かけで拒否される理由|現場で使えるNG例と改善方法【介護職向け】

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「もっと丁寧に関わらなければ」と分かっていても、時間に追われ、次の業務が頭に浮かぶ中で余裕が持てない——そんな場面は誰にでもあります。

気づけば口調が強くなり、あとから「もう少し違う言い方ができたのでは」と振り返って落ち込む。その繰り返しに、しんどさを感じている方も多いはずです。

ただ、それはあなたの意識が低いからではなく、限られた人員と時間の中で現場を回している構造そのものが原因です。

だからこそ、完璧を目指す必要はありません。まずは無理なく続けられる小さな工夫(非言語や環境)だけに絞ることで、利用者だけでなく、自分自身も守る視点を持っていきましょう。

この記事を読むと分かること

  • 言葉より伝わる非言語の力
  • NGな声かけと言い換え例
  • 拒否を防ぐ最小限の環境調整

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • 優しくしても拒否される
  • 忙しさから口調がきつくなる
  • 注意すると余計に怒り出す
  • 声かけの正解がわからない

結論:認知症ケアの声かけの結論:言葉選びより「非言語メッセージ」と「環境」を味方につける

介護施設の個室で、不穏症状がみられる高齢男性に対し、若い女性介護職員が両腕をやさしく支えながら落ち着いて声かけを行っている場面。ベッド横で立位を保ちながら、安全に配慮しつつ安心感を与える対応をしている様子。

現場では、「どう言えばスムーズに動いてくれるのか」と悩む暇すら与えられず、日々の業務に追われる現実があります。「相手のペースに合わせる」という建前は理解していても、人員配置の厳しい中で一人ひとりにゆっくり向き合うのは本当に難しいことです。しかし、完璧な言葉のフレーズを探すよりも、まずは自分自身の焦った態度を見直す方が、はるかに即効性があります。

「言葉」よりも伝わる非言語メッセージの効力

認知症が進行するにつれて、言葉そのものによるコミュニケーションよりも、以下のような対応がより効果的になります。

  • 表情や身振りを積極的に活用する
  • 言葉以上に伝わる非言語メッセージを重視する

現場では業務を早く終わらせたい思いから、つい「言葉で説得しよう」と焦ってしまいがちです。しかし、ご本人にはその焦った雰囲気や苛立ちだけが強く伝わってしまい、かえって強い拒否を招く原因となってしまいます。言葉を尽くして説明する前に、まずはしっかりと視界に入り、穏やかな表情や態度で接することが、コミュニケーションの重要な土台となります。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

認知症が重度になるほど,表情や身振りを使い,非言語メッセージを使うことが効果的である.

こちら側の都合を押し付けず「反応を待つ」ことの重要性

忙しい業務の中では、どうしても医療者や介護者が「伝えたいこと」や「やってほしいこと」を優先して声かけをしてしまいがちです。しかし、一方的なコミュニケーションを避けるために以下の点を意識しましょう。

  • 声かけを行った後は、ご本人の反応を一呼吸待つ
  • ご本人が何を行いたいのか、その意思を読み取る

次から次へと指示を出されると、ご本人は混乱してしまい、結果的に介助にさらに時間がかかってしまいます。ほんの少しだけ待つ時間を持つことで、ご本人の意思を適切に把握し、お互いにとって負担の少ないスムーズな支援に繋げることが可能になります。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

医療者・介護者が伝えたいことを優先してコミュニケーションをとるよりも,本人の反応を一呼吸待ち,本人が何を行いたいか,本人の意思を読み取ることが大切である.

拒否を減らすための「安心できる言葉」への言い換え

転倒を防ぐなど安全を守る目的であっても、無意識のうちに「ダメ」といった相手を否定する言葉を使ってしまうことがあります。介護側は一瞬の注意のつもりでも、ご本人にとっては毎回行動を否定されることになり、気分の落ち込みや怒り(易怒性※怒りっぽくなること)に繋がってしまいます。

  • 行動を否定するのではなく、安心できる言葉がけを行う
  • 「立たないで」を「座っていていいですよ」などと言い換え

このように、ご本人の行動を頭ごなしに制止するのではなく、自尊心を守りながら別の行動へと誘導する工夫が求められます。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

相手を否定する言葉は,私たちは一瞬一瞬で使用しているつもりでも,認知症患者が何度も同じ行動をとる場合は毎回否定されることになり,気分の落ち込みや易怒性などに繋がることがある.そのため,安心できる言葉がけや言い換えを使用する.

声かけにおいて最も大切なのは、完璧な言葉を探すことではなく、非言語メッセージを活用し、否定を避けて相手の反応を待つことです。これらを意識するだけで、お互いの負担を大きく減らすことができます。

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現場でよくある「声かけの失敗」パターンと現実的な対応策

介護施設の廊下で、若い女性介護職員が両手を広げながら説明している場面。状況報告や対応方針について相手に説明している様子を示すイメージ。

現場では、「さっきも言ったのに」「なぜ急に怒り出すの?」と、思い通りにいかない状況にため息をつく毎日が続いています。少ない人員で時間内に業務を回さなければならない中、すべての方に完璧な対応をするのは難しいのが現実です。しかし、そんな「またこのパターンか…」と絶望したくなる場面でも、ほんの少し視点を変えるだけで、お互いの消耗を防ぐことができます。

何度も同じことを聞かれる時の対応

この場面では「状況・困りごと・誤解・視点」を整理すると、対応の方向性が明確になります。

項目内容
状況利用者が何度も「今日は何日?」「ここはどこ?」と聞いてくる。
困りごと「さっきも言いましたよね」と返してしまい不穏になる。
よくある誤解一度教えれば納得してくれるという思い込み。
押さえるべき視点不安が根本にあるため、安心できる言葉で都度フォローする。

ポイントは「記憶」ではなく「不安」に対応することです。繰り返しへの苛立ちより、安心の積み重ねが優先されます。

出典元の要点(要約)

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認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版

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分からない様子であれば、必ずフォローする.「今日は2月9日です.外は寒いですよ」

安全のための注意が「拒否・興奮」を招く

安全配慮の声かけでも、構造を整理するとリスクが見えます。

項目内容
状況転倒リスクがあり「歩かないで」と強く制止した。
困りごと怒り出し、かえって危険行動を強行する。
よくある誤解強い言葉で止めるのが最も安全という認識。
押さえるべき視点否定は自尊心を傷つけBPSDを悪化させる。意図を汲む。

「止める」より「誘導する」発想に切り替えることで、拒否とリスクの双方を下げられます。

出典元の要点(要約)

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認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版

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行動を否定しない.「何をしたいと思われたのですか?」

言葉での指示が伝わらずケアが進まない

伝達不全は「聴力」ではなく「理解プロセス」の問題として整理します。

項目内容
状況「服を脱いでください」と言っても反応がない。
困りごと無理に介助し抵抗され、時間がかかる。
よくある誤解大声や反復で伝わるという思い込み。
押さえるべき視点視覚情報(実物提示)で理解を補助する。

言語だけに依存せず、視覚・動作を組み合わせることで処理負荷を下げられます。

出典元の要点(要約)

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認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版

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言葉だけでは理解できない場合もあるため,物を見せるなどの視覚的情報を活用すると,認知症患者が理解しやすくなる.

現場で頻発する声かけの失敗は、忙しさからくる焦りや思い込みが原因となることが多いです。相手の行動を否定せず、視覚情報や都度のフォローを活用することで、拒否を防ぎ業務負担を軽減できます。


なぜ良かれと思った「声かけ」が伝わらないのか?その構造的・心理的原因

介護施設の廊下で、若い女性介護職員が両手を軽く広げている様子。状況説明や選択肢提示をしている場面、あるいは「どう対応すべきか」と考えながら周囲に問いかけているイメージ。

現場では、「利用者のために」と一生懸命に声をかけているのに、なぜか強く拒絶されてしまう場面が多々あります。「一人ひとりに寄り添うべき」という建前はわかっていても、実際の人員配置や時間の制約の中では、理想通りにいかないのが現実です。声かけがうまくいかないのはあなたの努力不足ではなく、認知症という症状の特性と、現場の余裕のなさが引き起こしている構造的なすれ違いが原因なのです。

焦りが「非言語メッセージ」として先に伝わってしまうから

理想と現実の差を並べると、ズレの原因が可視化されます。

観点内容
建前(理想)穏やかな表情で相手のペースに合わせる。
現実(現場)焦りで無表情・早口となり苛立ちが出る。

言葉より先に雰囲気が伝わるため、まず態度の調整が優先されます。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

認知症の人のケアの基本原則

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

相手のペースに合わせ、気持ちを汲み取る(表情やうなずきなど)

無意識の「否定する言葉」が自尊心を傷つけているから

言葉選択の差を構造化すると、介入ポイントが明確になります。

観点内容
建前(理想)否定せず言い換えで安心を与える。
現実(現場)咄嗟に「ダメ」「動かないで」と制止する。

短い言葉ほど影響が強いため、定型の言い換えを準備しておくと安定します。

出典元の要点(要約)

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

特に,相手を否定する言葉は,私たちは一瞬一瞬で使用しているつもりでも,認知症患者が何度も同じ行動をとる場合は毎回否定されることになり,気分の落ち込みや易怒性などに繋がることがある.

多くの指示に対する「情報処理のペース」が追いつかないから

指示量と処理能力のミスマッチを整理します。

観点内容
建前(理想)一つずつゆっくり伝える。
現実(現場)複数指示を同時に早口で出す。

分割提示と間を取るだけで、理解率と協力度が上がります。

出典元の要点(要約)

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認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

多くの指示や次々と場面が変わる環境に戸惑い,混乱することも少なくない.そのため,緊急時以外はいつもより指示を出すペースをゆっくりにする.

良かれと思った声かけが伝わらないのは、現場の焦りによる非言語メッセージや無意識の否定、早すぎる指示が原因です。建前と現実のギャップを認識し、少しペースを落とすことが拒否を減らす第一歩となります。

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現場で迷いがちな「声かけ・コミュニケーション」のQ&A

日々のケアの中で「こんな時、本当はどうすればいいの?」と悩む小さな疑問。忙しい現場ですべてを完璧にする必要はありません。エビデンスに基づく確かな視点から、現場で無理なく活かせる現実的なヒントをお答えします。

Q
デリケートなケアの時、どのような声かけをすべきですか?
A
排泄の誘導などを行う際は、他人に聞かれたくない内容に配慮することが大前提です。大勢の前で声をかけることは避け、ご本人の自尊心を守る工夫が求められます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省

認知症の人のケアの基本原則

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

声かけの内容は、他人に聞かれたくない内容ではないか留意する

Q
危険な行動をとろうとした時、どう止めるのがよいでしょうか?
A
安全を守るためであっても、行動を頭ごなしに否定しないことが大切です。行動そのものを禁止するのではなく、「何をしたいと思われたのですか?」と意図を汲み取ったり、安心できる言葉に言い換えたりする対応が推奨されます。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

行動を否定しない.「何をしたいと思われたのですか?」

Q
声をかけても視線が合わず、反応がない場合はどうすればいいですか?
A
言葉や視界に入るだけでは注意が向かない場合、優しく手を握るなどのタッチングを行い、触覚に刺激を加えることで注意を向けてもらう工夫が効果的です。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

認知症・せん妄ケアマニュアル 第2版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

アイコンタクトをとろうと視野に入ってアプローチをしても視線が合わない場合,タッチングを行い,触覚に刺激を加えることで注意が向くよう工夫する.

日々のコミュニケーションでは、相手の自尊心を傷つけない配慮や、行動を否定しない言い換え、タッチングなどの非言語的アプローチを組み合わせることが、拒否を防ぎお互いの負担を減らす鍵となります。


まとめ:完璧じゃなくていい。認知症の方への「声かけ」は、まず「待つ」と「言い換え」から始めよう

毎日ギリギリの人員で業務を回す現場において、「一人ひとりに寄り添う」という建前通りに、すべての利用者様へ完璧な対応をすることは不可能です。

忙しさからつい強い口調になってしまったり、焦って早く動かそうとしてしまったりする自分を、どうか責めすぎないでください。

まずは明日、「ダメ」「ちょっと待って」と言いそうになった時に、一呼吸置いて「どうされましたか?」と言い換えてみませんか。

あるいは、声をかける前に必ず相手の視界に入ってからゆっくり話しかけることだけを、一つ意識してみてください。

そのほんの小さな非言語メッセージの配慮言葉の言い換えが、相手の安心感を生み、結果的にあなた自身の業務負担を軽くすることに繋がります。

全部を完璧にやろうとせず、できる範囲で無理のない小さな一歩から、ぜひ試してみてください。

最後までご覧いただきありがとうございます。この記事が、日々現場で葛藤しながらもケアに向き合うあなたのお役に立てれば幸いです。


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更新履歴

  • 2025年11月21日:新規投稿
  • 2026年3月23日:より詳細なエビデンス(根拠)に基づき解説を充実させるとともに、最新のサイト基準に合わせて構成・レイアウトを見やすく刷新。

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