介護現場の「人手不足」はいつ終わる?令和6年実態調査から読み解く未来

利用者様の話をじっくり聞きたいのに、業務に追われてつい「ちょっと待って」と言ってしまう。そんな理想と現実のギャップに、心を痛めている方は少なくありません。

現場の人手不足感は深刻ですが、全ての解決は困難です。まずは最新データから見えた「今すぐできる対策」に絞り、現状を変えるヒントを探ります。

この記事を読むと分かること

  • 人手不足感が過去最悪レベルである本当の理由
  • 離職率は下がっているのに人が増えない原因
  • 人が辞める最大の理由は「給料」ではない
  • 現場の定着率を変える「上司の関わり方」
  • 最新データに見る賃金と処遇の今後の行方

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • 業務が回らず毎日が不安で仕方がない
  • 求人を出しても応募が全く来ない
  • 書類作成に追われて指導ができない
  • 上司の指示が毎回変わり振り回される
  • 現場の将来が見えず転職を迷っている

「人手不足」の正体は“採用難”にあり。現場ができる唯一の対策とは

男性介護職員

「求人を出しても、半年間応募がゼロ」「やっと面接に来ても、条件が合わずに辞退される」。現場からは、こんな悲鳴が聞こえてきます。

今いる職員でシフトを埋めるために残業が続き、「忙しくて新人に教える時間がない」と焦る中で、さらに人が辞めていく悪循環。「給料を上げれば人は来る」と世間は言いますが、「そもそも人がいない」という現実に、現場の努力だけではどうにもならない無力感を感じている方も多いのではないでしょうか。

しかし、最新のデータは意外な事実を示しています。実は今、現場を苦しめているのは「離職」よりも「採用」の停滞なのです。

1. 「人が辞めている」のではなく「入ってこない」

「次々と人が辞めていく」という感覚があるかもしれませんが、統計的に見ると離職率は下がっています。令和6年度の離職率は12.4%と2年連続で低下しており、職場への定着自体は進んでいる傾向にあります。

問題は、それ以上に「採用率」が急落していることです。採用率は14.3%まで落ち込み、離職率の改善幅を上回る勢いで低下しています。つまり、現場の「人が足りない」という感覚(不足感65.2%)の正体は、バケツの穴(離職)が広がったからではなく、蛇口(採用)が詰まってしまったことにあります。

出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター

令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について

https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf

訪問介護員・介護職員を合わせた2職種計の令和6年度採用率は14.3%、離職率は12.4%であり、離職率は2年連続で低下した一方、採用率は3年ぶりに低下し、その低下幅は2.6ポイントと離職率を上回った。事業所ごとの分布では採用率・離職率ともに「10%未満」の事業所が約半数を占め、従業員の過不足状況では「大いに不足」「不足」「やや不足」の合計が65.2%と前年度より0.5ポイント上昇していることが示されている。

2. それでも辞める理由は「給料」より「上司」

採用が難しい今、最も重要なのは「今いる職員を辞めさせないこと」です。では、なぜ人は辞めるのでしょうか。「給料が安いから」と思われがちですが、データによると直前の仕事を辞めた最大の理由は「職場の人間関係」です。

さらに踏み込んでその中身を見ると、「同僚との不仲」以上に、「上司や先輩の指導・言動がきつい(パワハラ含む)」「上司の指示が不明確」といった、リーダー層のマネジメントに対する不満が圧倒的多数を占めています。現場の頑張りを支えるはずのリーダーの振る舞いが、皮肉にも離職の引き金になっている可能性があります。

出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター

令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について

https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf

直前の仕事が介護関係で、辞めた理由が「職場の人間関係に問題があったため」とする人に具体的内容を尋ねると、「上司や先輩からの指導や言動がきつかったり、パワーハラスメントがあった」が最も多く、約半数を占める。次いで「上司の業務指示が不明確、リーダーシップがなかった」など、管理職の対応や指示の仕方に起因する不満が多く挙げられている。

3. 「忙しい」を理由に指導しないと、もっと忙しくなる

特に深刻な人手不足(不足感83.4%)にある訪問介護の現場では、サービス提供責任者(サ責)が事務作業や自身の訪問業務に追われ、「ヘルパーへの指導・相談」がおろそかになりがちです。

しかし、データは残酷な真実を示しています。サ責が「仕事上の課題に関する相談や指導」を十分に行っている事業所ほど、ヘルパーの離職率は低く抑えられています。逆に言えば、「忙しいから後で」とコミュニケーションを後回しにすることが、結果として離職を招き、さらなる多忙を生む負のループを作っているのです。

出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター

令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について

https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf

サービス提供責任者が担当する訪問介護員に対して実施しているコミュニケーションや研修・指導では、「新規利用者を訪問する訪問介護員に対する同行訪問」「新任の訪問介護員に対する同行訪問」で「十分実施されている」の割合が5割前後と高い。一方、「外部の研修会等の受講機会の設定」は「あまり実施していない」の割合が最も高い。さらに、「訪問介護員からの仕事上の課題などに関する相談や指導など」を実施している(「十分実施している」+「ある程度実施している」)場合には、担当訪問介護員の離職率「10%未満」の割合が63.0%と高く、コミュニケーションや指導の実施が低離職率と関連している。

市場全体で採用が難しい以上、現場でコントロールできるのは「定着」だけです。給与などの条件面はすぐには変えられませんが、「指示を明確にする」「忙しくても相談に乗る」といった関わり方は、今日からでも変えられます。それが、結果として最も確実な人手不足対策となります。

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よくある事例:努力が裏目に出る?現場の「ボタンの掛け違い」3選

「みんなで頑張っているのに、なぜか人が定着しない」。そんな現場では、個人の能力不足ではなく、組織としての「努力の方向性」が少しだけズレているケースがよく見られます。

ここでは、データに見る「離職リスクが高い現場」の特徴を、よくあるエピソードとして紹介します。

事例1:【人間関係】「背中で覚えろ」の限界と、伝わらない熱意

  • 状況
    • ベテラン中心の職場で、「利用者のために」という意識が非常に高いA施設。新人が入っても「あの介助じゃ危ない」「動きが遅い」と先輩からの指導が飛び交い、新人は萎縮してしまっています。
  • 困りごと
    • 先輩たちは「質を高めるため」に熱心に指導しているつもりですが、新人は数ヶ月で「自信がない」と辞めてしまいます。現場は「最近の子は根性がない」と嘆いています。
  • データから見る視点
    • これは典型的な「指導とハラスメントの境界線」の問題です。離職理由のトップである「人間関係」の内訳を見ると、「上司や先輩の言動がきつい(パワハラ含む)」が約半数、「指示が不明確」が3割強を占めています。 「見て盗め」「言わなくても察しろ」という職人気質の指導は、現代の採用市場では「指示不明確」と受け取られ、離職の直接的な原因となり得ます。

事例2:【サ責の多忙】「私が現場に出れば回る」という自己犠牲

  • 状況
    • 訪問介護事業所のBサ責は、ヘルパーの急な欠勤や不足分を埋めるため、朝から晩まで自身の訪問業務(現場)に入っています。事務所に戻るのは夕方で、そこから書類作成やシフト調整を行う日々です。
  • 困りごと
    • サ責自身は責任感で動いていますが、登録ヘルパーからは「サ責に相談したくても捕まらない」「事務所に行っても誰もいない」と思われています。結果、ヘルパーが孤独を感じて辞めていき、さらにサ責が現場から抜け出せなくなっています。
  • データから見る視点
    • サ責の業務比率において、「自分の訪問業務」が望ましい比率より高い(現場に出すぎている)状態は、高い離職率には直結しませんが、「管理業務」がおろそかになると離職率は跳ね上がります。 データ上、サ責が「相談・指導」や「同行訪問」に時間を使えている事業所は、離職率が低い傾向にあります。目の前のシフトを埋めることより、「ヘルパーと話す時間」を確保することが、遠回りに見えて最短の解決策です。

事例3:【採用の迷走】「数打ちゃ当たる」の紹介会社依存

  • 状況
    • 慢性的な人手不足のC法人。「とにかく誰でもいいから来てほしい」と、電話営業があった人材紹介会社(有料職業紹介所)と片っ端から契約し、窓口を広げています。
  • 困りごと
    • 面接の数は増えましたが、採用しても「聞いていた条件と違う」などの理由で早期離職が多発。高額な紹介手数料だけがかさみ、現場も「また新しい人に教えるのか」と疲弊しています。
  • データから見る視点
    • 紹介会社を活用すること自体は有効ですが、「活用社数」には注意が必要です。調査では、契約している紹介会社が「6社以上」にのぼる事業所は、平均離職率が約20%と非常に高い傾向が出ています。 手当たり次第に依頼するのではなく、相性の良い数社に絞るか、定着率の高い「友人紹介」や「ホームページ経由」の採用 に注力する方が、結果として定着につながります。

これらの事例に共通するのは、「良かれと思ってやったこと」が、データで見ると逆効果になっている点です。気合や根性で乗り切るのではなく、ここからは「離職理由の構造」を理解した冷静な対処が必要になります。


なぜ「不足感」は過去最悪なのか?データで読み解く3つの構造

「離職率は下がっている」というデータを見ても、現場の感覚としては「人は減る一方で、楽になる兆しがない」というのが正直なところでしょう。 なぜ、数字と実感にこれほどのズレが生じるのでしょうか。そこには、単なる「人手不足」という言葉では片付けられない、3つの構造的な要因が隠れています。

理由1:バケツの穴よりも「蛇口」が詰まっている

現場では「辞める人を止められない」ことに悩みがちですが、データを見ると、実は離職率(バケツの穴)は12.4%まで改善しています。しかし、それ以上に深刻なのが、新たに入ってくる人(蛇口)の減少です。

令和6年度の採用率は14.3%と、3年ぶりに大きく低下しました。特に離職率の低下幅よりも採用率の低下幅の方が大きいため、結果として職員数は増えず、ジリ貧の状態が続いています。 「募集をかけても来ない」のは、あなたの事業所だけの問題ではなく、介護市場全体で「採用氷河期」に入っていることが最大の要因です。

出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター

令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について

https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf

訪問介護員・介護職員を合わせた2職種計の令和6年度採用率は14.3%、離職率は12.4%であり、離職率は2年連続で低下した一方、採用率は3年ぶりに低下し、その低下幅は2.6ポイントと離職率を上回った。

理由2:「人間関係」の正体は“縦のトラブル”

「人間関係が悪い」と聞くと、同僚同士の派閥やいじめを想像しがちです。しかし、離職理由の詳細を見ると、最も多いのは「上司や先輩からの指導・言動がきつい(パワハラ含む)」であり、約半数を占めています。次いで多いのが「上司の指示が不明確」です。

つまり、現場で起きている「人間関係のトラブル」の多くは、横のつながりではなく、「縦(上司と部下)の関係」に起因しています。 余裕のない現場で、リーダーが焦って強い口調で指導したり、朝令暮改の指示を出したりすることが、部下の心を折る決定打になっているのです。

出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター

令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について

https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf

直前の仕事が介護関係で、辞めた理由が「職場の人間関係に問題があったため」とする人に具体的内容を尋ねると、「上司や先輩からの指導や言動がきつかったり、パワーハラスメントがあった」が最も多く、約半数を占める。次いで「上司の業務指示が不明確、リーダーシップがなかった」など、管理職の対応や指示の仕方に起因する不満が多く挙げられている。

理由3:「中途採用=即戦力」という誤解

「経験者に来てほしい」というのは全事業所の願いですが、現実はシビアです。中途採用で入職した人のうち、直前の仕事が「介護・福祉・医療以外」だった人は、その約85%が「介護経験なし」です。

他産業からの転職者が増えていること自体は歓迎すべきことですが、現場が「中途だからこれくらいできるだろう」と期待して受け入れると、ミスマッチが起きます。 「中途採用のほとんどは未経験者である」という前提で教育体制を組まなければ、教える側も教わる側も疲弊し、早期離職につながってしまいます。

出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター

令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について

https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf

中途採用の介護労働者のうち、直前の仕事が「介護・福祉・医療関係以外の仕事」であった者について、これまでに介護関係の仕事の経験がない者が約85%を占める。訪問介護員では直前非介護職からの転入者のうち介護経験なしが85.1%、介護職員では85.9%となっており、いずれも8割超が全くの未経験から介護分野に参入している。

採用が止まり、入ってくるのは未経験者が中心。その状況下で余裕を失った上司が厳しい指導をしてしまい、人が辞めていく。これが、データから浮かび上がる「不足感の正体」です。この構造を断ち切るには、現場のマネジメントを変えるしかありません。

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よくある質問:現場の「本当のところ」

女性の介護職員の画像
Q
介護職の給料は安いままですか?ニュースでは上がったと聞きますが、実感がありません。
A

データ上、給料は確実に上がっています。月給で働く人の平均月収は248,884円となり、前年比で3.1%増加、5年連続のアップとなりました。特に20代などの若年層での伸びが目立ちます。 ただし、現場の満足度(賃金水準D.I.)は依然としてマイナスであり、世間のニュースと個人の実感にはまだギャップがあるのが現状です。

出典元の要点(要約)

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令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について

https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf

賃金支払形態が月給の介護労働者の通常月の平均月収は248,884円で、前年度比3.1%増となり、とくに「20~24歳」5.8%、「25~29歳」5.0%など若年層の伸びが大きい。平均月収の推移をみると、平成30年度以降5年連続で増加している。

Q
採用にお金をかけてもすぐに辞められてしまいます。どうすれば定着する人が採れますか?
A

最も定着しやすい採用ルートは、広告費をかけた媒体ではなく「友人・知人からの紹介」や「自社ホームページ」です。これらの経由で入職した人は「今の事業所で働き続けたい」と考える割合が高い傾向にあります。 逆に、人材紹介会社(有料職業紹介所)を「6社以上」活用している事業所は、平均離職率が約20%と非常に高くなるデータが出ており、手当たり次第の活用は逆効果になるリスクがあります。

出典元の要点(要約)

公益財団法人介護労働安定センター

令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について

https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf

現在の法人に就職した主なきっかけでは、「友人・知人からの紹介」が35.7%と最も高い。就職したきっかけ別の今の事業所での就労継続希望では、「法人又は施設・事業所のホームページ」経由が「今の事業所で働き続けたい」割合65.4%と最も高い。一方、有料職業紹介所の活用社数が「6~10社」の事業所では平均離職率が19.9%と高くなる傾向がある。

Q
ICTや介護ロボットを導入しても、結局使わなくなるのではと不安です。
A

機器の種類によります。「入浴」や「排泄」を支援するロボットは普及率も低くハードルが高いですが、「見守りセンサー」や「記録・転記ソフト」は多くの事業所で導入されており、約半数が「昼間・夜間の業務負担軽減に効果がある」と回答しています。 まずは身体介護のロボットではなく、事務作業や見守りを楽にするICTから検討するのが現実的です。

出典元の要点(要約)

公益財団法人介護労働安定センター

令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について

https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf

ICT機器等・介護ロボットの導入効果について、「効果がある」と「やや効果がある」の合計をみると、「昼間の業務負担の軽減」が49.4%、「夜間の業務負担の軽減」が44.6%であり、約半数の事業所が業務負担の軽減効果を認識している。日常的に利用している機器としては、ケア記録の入力機能や見守りセンサーが多い。


まとめ:採用が難しい今だからこそ、「今いる仲間」を大切に

本記事では、令和6年度の最新データに基づき、介護現場の人手不足感の正体について解説してきました。

離職率は低下傾向にあり、実は「辞める人」は減っています 。しかし、それ以上に「入ってくる人」が急減しているため、現場の苦しさが解消されないのが現実です 。

この状況下で、現場ができる最も確実な対策は、今いる職員の定着率を高めることです。データが示す通り、離職の最大の要因は給与額そのものよりも、「上司との人間関係(指導・指示のあり方)」や「相談時間の不足」にあります。

明日からできる第一歩として、まずは以下のことを意識してみてはいかがでしょうか。

  • リーダーやサ責の方へ:事務作業の手を少しだけ止め、部下やヘルパーの顔を見て話す時間を5分でも作る。
  • 指導する立場の方へ:「見て覚えろ」ではなく、言葉で明確に指示を出すよう心がける。
  • 経営・管理者の方へ:安易に紹介会社を増やす前に、現場が「指示不明確」や「ハラスメント」で疲弊していないか点検する。

劇的な解決策ではありませんが、こうした「対話」と「丁寧なマネジメント」の積み重ねだけが、結果として離職を防ぎ、現場の余裕を取り戻す最短ルートとなります。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。この記事が、少しでも皆様の現場改善のお役に立てれば幸いです。



更新履歴

  • 2025年12月14日:新規投稿

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