
タブレットを導入したのに、紙への記録も残り、同じ内容をもう一度入力している。画面を開くたびに利用者を選び、過去の記録を探し、止まれば紙へ退避する。こうした声を聞くと、施設長は「稼働しているのに、なぜ前より不満が強いのか」と判断に迷います。
導入台数だけを見ていると、毎日積み重なる転記・検索・確認は把握しにくくなります。苦労の中から見えてくるのは、職員が新しい機器を嫌っているとは限らず、古い仕事が消えないまま新しい仕事が足されたことに疲れている可能性です。
全部の業務を一度に測る必要はありません。まず一つの業務を選び、導入前後の工程を同じ範囲で並べます。減った仕事・残った仕事・増えた仕事を確かめれば、次の機器を探す前に直すべき運用が見えやすくなります。
この記事を読むと分かること
- 比較範囲の決め方
- 工程の分け方
- 時間以外の見方
- 再評価のタイミング
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
介護DXの効果は「導入数」ではなく「減った仕事」で測る

一つの業務の導入前後を同じ範囲で並べ、減った・残った・増えた工程を確認します。
現場では、システムが動いていても、紙への記録、タブレットへの再入力、過去記録の検索が続くことがあります。施設長にとって難しいのは、稼働という分かりやすい事実と、「前より面倒になった」という職員の実感をどう結びつけるかです。ここでは、そのずれを一つの業務工程から確かめる方法を整理します。
ある現場では、紙に書いた後で同じ内容をタブレットへ入れる流れになり、「便利になるはずだったのに」と苛立ちが生まれていました。別の場面では、二重記録が解消しないまま次の機器の話が出て、「また仕事が増える」と強い反発につながっています。こうした声を変化嫌いと決める前に、次の導入を決める時点で、いまの工程が実際に減ったかを確認することが現実的な出発点です。
まず一つの業務と始点・終点を決める

「記録業務を測ろう」と言っても、入力だけを見る職員と、介助後のメモから検索・申し送りまでを含める職員では答えが変わります。時間を集めたのに話がかみ合わないときは、測り方より先に、どこからどこまでを一つの業務とするかをそろえます。
ガイドラインは、現場の課題を把握するには業務全体の流れを見える化し、誰が、どの業務に、どの程度の時間をかけているかを確かめることが大切だとしています。たとえば「介助終了から記録完了まで」と範囲を固定し、通常時と不具合時は分けて記録すると、比較対象がぶれにくくなります。
- 測定範囲を決める前に、生産性向上で何を改善し、どの時間をケアへ戻したいのかを整理しておくと評価軸がぶれにくくなります。
- 詳しくは、介護施設の生産性向上とは?意味と目的を初心者向けにわかりやすく解説で確認できます。
出典・根拠を確認
厚生労働省介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
現場の課題を把握するには、業務全体の流れを見える化(可視化)することも大切です。事業所全体で職員がどのように時間を使っているのかを把握する。誰が、どのような業務に、どの程度の時間をかけているかを見える化し、現在の業務における3M(ムリ・ムダ・ムラ)を明らかにする。
工程を「減った・残った・増えた」に分ける
タブレットの導入後も、紙への記録が残り、ログインや画面切替が加わっていることがあります。「導入済み」という一語では、現場が毎日繰り返す手間が隠れてしまいます。そこで、職員の経験を工程名へ置き換えて並べます。
この整理では、転記、検索、集計、確認、紙の保管、不具合時の退避や再入力を一つずつ書きます。そのうえで減った・残った・増えたの3列へ分けます。これは唯一の公的な評価基準ではなく、現場で何が変わったかを見失わないための実務的な見方です。ICTは、転記作業の削減など、具体的な業務改善と結びつけて評価します。
- 工程を並べたあとは、「残す仕事」だけでなく、廃止・統合できる仕事を決めることで、改善後に別の業務が増える状態を避けやすくなります。
- 詳しくは、忙しい介護現場ほど「やらない業務」を決めるべき理由|生産性向上委員会の実践例で確認できます。
出典・根拠を確認
厚生労働省介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
ICTなどを用いて転記作業の削減や、一斉同時配信による報告申し送りの効率化、情報共有のタイムラグの解消を図る。
時間とともに質・一覧性・負担感も確認する
入力時間だけを見ると短くなっていても、過去の経過を探す画面操作が増えたり、フロア全体を見渡せなくなったと感じたりすることがあります。数字は改善しているのに、職員の納得が得られない場面では、時間以外の変化が測定から抜けていないかを見ます。
ガイドラインは、時間が短いほどよいとは限らず、成果は定量的・定性的の両面で振り返ることを示しています。所要時間と一緒に、「必要情報を探しやすいか」「全体を確認しやすいか」「特定の職員へ負担が偏っていないか」を同じ時点で聞き取ります。全勤務帯を一度に測れない場合は、条件を混ぜず別欄に残します。
- 時間が短くなっても、確認作業や負担の偏りが残れば、現場が改善を実感できないことがあります。負担軽減を業務改善として見る視点も必要です。
- 詳しくは、職員の負担軽減は甘えではない|介護の質と離職防止を守る生産性向上の考え方で確認できます。
出典・根拠を確認
厚生労働省介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
これまでの取組に対する成果を検証します。具体的には、進捗管理シートに沿った取組により得られた成果を、プロジェクトチームにおいて振り返ります。振り返りの中で、上手くいった点、いかなかった点を整理しましょう。成果を確認する上では、定量的・定性的の両面から振り返りを行いましょう。成果を検証する際に、業務時間の見える化を再度実施することも大切です。取組成果を確認すると同時に、新たな改善点の発見につながります。
介護DXの効果は、一業務の範囲をそろえ、工程と時間、現場の使いやすさを導入前後で比べます。次の導入判断前に、残った作業と増えた作業まで確認することが大切です。
介護DX導入後によくある「仕事が減らない」4つの事例

現場から「また仕事が増えた」と言われると、施設長は新しい仕組みへの慣れの問題なのか、運用そのものの問題なのか迷います。反発の言葉だけを見るのではなく、その前後に残っている工程をたどる必要があります。
ある現場では、便利になるはずのタブレットが、紙からデジタルへ同じ内容を移すための機器になっていました。別の現場では、不具合時のための紙が常用となり、二つの媒体を管理する負担が残っています。さらに次の機器が提案されれば、「その前に今の二重記録を何とかしてほしい」と感じるのも無理はありません。次の4事例では、職員の感情を工程へ置き換えて確認します。
紙に書いた内容をタブレットへ再入力している
介助後に紙へ記録し、時間ができたらタブレットを開いて同じ内容を入力する。紙を先に使う運用では、デジタル入力が後へたまります。「使い方を覚えれば解決する」と考えたくなりますが、まず見るのは習熟度ではなく、転記が工程として残っているかです。
状況は、紙とタブレットの両方へ同じ内容を記録する二重運用です。困りごとは、記録完了までの工程が増えること。よくある誤解は、システムが稼働していれば記録業務も効率化したとみなすことです。施設長は勤務後の記録場面で、紙に書いた内容を誰がいつ再入力しているかを確認します。ガイドラインも、ICT活用を転記作業の削減と結びつけています。
- 二重入力が残る場合は、単に紙を廃止するのではなく、誰が・どこで・いつ記録を使うのかまで整理すると、媒体を選び直しやすくなります。
- 詳しくは、介護記録は紙とタブレットどっちがいい?二重入力を減らす選び方で確認できます。
出典・根拠を確認
厚生労働省介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
ICTなどを用いて転記作業の削減や、一斉同時配信による報告申し送りの効率化、情報共有のタイムラグの解消を図る。
過去記録を探す画面操作が増えている
「この利用者は少し前にも同じ様子ではなかったか」と確認したいのに、日付が分かりません。利用者を選び、記録画面を開き、日付をさかのぼる操作を繰り返すと、入力時には見えなかった負担が表れます。記録する工程だけでなく、後から使う工程まで測ることが必要です。
状況は、入力時間だけを効果測定の対象にしていることです。困りごとは、検索、閲覧、確認の工程が評価から漏れること。よくある誤解は、一件の入力が速ければ記録業務全体も速いと考えることです。施設長は、日付が分からない記録を探す場面を職員と一度たどり、画面切替や待ち時間を工程表へ加えます。ガイドラインが示すように、業務全体の流れを見ます。
- 記録時間だけでなく、必要な情報を探す手間や、記録したデータを次の申し送り・業務改善へどう活かすかまで整理すると、DXの効果を考えやすくなります。
- 詳しくは、介護×DX 事例でわかる介護現場の業務改善で確認できます。
出典・根拠を確認
厚生労働省介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
現場の課題を把握するには、業務全体の流れを見える化(可視化)することも大切です。事業所全体で職員がどのように時間を使っているのかを把握する。誰が、どのような業務に、どの程度の時間をかけているかを見える化し、現在の業務における3M(ムリ・ムダ・ムラ)を明らかにする。
紙の一覧表が残り、二つの媒体を管理している
紙の排泄表ならフロア全体を一度に見渡せるのに、タブレットでは利用者ごとに画面を開かなければならない。そんな経験があると、職員は紙を手放しにくくなります。紙を残す職員を責めるか、二重運用を認めるかの二択ではなく、紙が担っている目的を確認します。
状況は、紙の一覧性とデジタル記録が別々の役割を持っていることです。困りごとは、紙の更新・保管と入力の両方が続くこと。よくある誤解は、紙があるだけで失敗、または紙をなくせば成功と決めることです。施設長は実際の確認場面で、紙を見て何を判断しているかを聞き取ります。時間だけでなく、業務ごとに必要な手順と手間を話し合う視点が欠かせません。
- 紙には一覧性など現場で使われてきた役割があるため、紙が残ったことだけでDXの失敗とは判断できません。まず紙が何を担っているかを確認します。
- 詳しくは、介護DXとは?紙をなくすことが目的ではない|現場で本当に目指す業務改善を解説で確認できます。
出典・根拠を確認
厚生労働省介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
業務時間を見える化すると、業務に要する時間が短いほど優秀だと錯覚することがありますが、決してそうとは限りません。なぜなら、かける時間によって質が高まるものもあり、一概に時間を短くするだけが生産性向上につながるとは言えないからです。時間が短ければ短いほど良いものは、ルーティン化された業務や単純な事務・経理業務など誰がやっても同じ結果が得られるものです。そのため、業務時間を記録するにあたっては、業務ごとに適切とされる手順と、必要な時間を事業所の中であらかじめ定めておくことがとても重要です。事業所の中でどのような業務にどの程度の手間と時間をかけるのかを事前に話し合っておくと生産性向上に向けた適切な取組が見えてくるでしょう。
不具合対応が残ったまま次の機器を提案している
画面が止まる、入力した内容が消えたと感じる、念のため紙にも残す。こうした経験が続く中で別の機器が提案されれば、「また増やすのか」と警戒する職員もいます。その反応を変化嫌いと片づける前に、現行の取組で増えた作業を振り返ります。
状況は、既存運用の成果と課題を確かめる前に次の導入判断が近づくことです。困りごとは、不具合時の退避、再入力、確認が工程表にないこと。よくある誤解は、説明会を増やせば反発が解けると考えることです。施設長は次の稟議や選定に入る前に、通常時と不具合時を分けて再度可視化します。成果は定量・定性の両面から確認します。
- 以前の導入で不具合や二重作業が残ったままでは、新しい機器への警戒を単なる「変化への抵抗」として扱わない視点が必要です。
- 詳しくは、なぜ介護DXは現場で進まないのか―本部には見えない、現場介護職員の不安と抵抗で確認できます。
出典・根拠を確認
厚生労働省介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
これまでの取組に対する成果を検証します。具体的には、進捗管理シートに沿った取組により得られた成果を、プロジェクトチームにおいて振り返ります。振り返りの中で、上手くいった点、いかなかった点を整理しましょう。成果を確認する上では、定量的・定性的の両面から振り返りを行いましょう。成果を検証する際に、業務時間の見える化を再度実施することも大切です。取組成果を確認すると同時に、新たな改善点の発見につながります。
「仕事が減らない」という声は、転記・検索・一覧確認・不具合対応に分けると確認しやすくなります。次の導入前に、通常時と例外時の工程を別々に見直します。
なぜ介護DXの効果は「導入数」だけでは見えないのか?

導入台数や稼働開始日は会議資料へ書きやすい一方、職員が勤務ごとに繰り返す転記や画面切替は見えにくいものです。施設長の理解不足ではなく、数えている対象と現場が負担を感じる対象がずれている可能性があります。ここでは、そのずれが生まれる背景を説明します。
システム導入後の報告では「予定どおり稼働」と整理されていても、実務者からは「紙もタブレットも必要で前より終わらない」と言われることがあります。施設長は、数字と職員の実感のどちらを優先すべきか迷います。ここでは、意見を勝ち負けにせず、始点から終点までの作業名へ置き換えます。ただし、聞き取りの負担を増やさないよう、一度に扱う業務は一つに絞ります。
導入したものは数えやすく、消えなかった仕事は数えにくいから
タブレットの台数はすぐに答えられても、「紙から何回転記したか」「誰が例外対応をしたか」は記録されていないことがあります。施設長は導入成果を説明したい一方で、職員の「楽になっていない」という声も無視できません。導入物ではなく、取組前後の業務量と質へ視点を移します。
理想は、ICTを使うことで転記作業などのムダが減り、情報共有がしやすくなることです。ところが現場経験では、旧工程を残したまま新工程が加わる場面が語られています。そのずれを「慣れ」の一言で終えると、消えなかった作業を見落とします。施設長は導入報告の前に、実務者へ「なくなった作業は何か」「まだ続けている作業は何か」を聞き、工程名で記録します。
- ICTや新しい仕組みを入れた実績だけを見ると、紙運用や追加作業など、現場に残った仕事を見落としやすくなります。
- 詳しくは、介護リーダーがやりがちな生産性向上の勘違い|現場を疲弊させる指示と改善策で確認できます。
出典・根拠を確認
厚生労働省介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
「質の向上」は、業務の改善活動を通じて、ケアに直接関係する業務時間の割合増加や内容の充実を意味します(上図①)。「量的な効率化」は、業務の質を維持・向上しつつ、ムリやムダのある作業や業務量(時間)を減らすことを意味します(上図②)。「量的な効率化」により業務負担を軽減し働きやすい環境づくりを図り、業務改善によって生み出した時間や人手の余裕を研修の実施やOJTなどの人材育成の時間に振り分け、「質の向上」に活用する考えもあります(上図②)。
入力だけを測ると、検索・確認の工程が範囲外になるから
一件の入力時間は短くても、あとから過去記録を探すために何度も画面を切り替えることがあります。職員の「使いにくい」を感覚論で終えたくないものの、どこまで測ればよいか迷います。記録を残す場面から、記録を使う場面までを一つの流れとして確認します。
理想は、入力速度を測れば記録業務の改善が分かることです。しかし現実には、利用者選択、検索、閲覧、一覧確認など、入力後にも作業があります。測定範囲が入力で終わると、それらは結果に現れにくくなります。ガイドラインは、現場の課題把握には業務全体の流れを見える化することが大切だとしています。施設長は実際の記録確認に立ち会い、始点と終点を職員と同じ言葉で決めます。
- 記録は入力して終わりではなく、次の勤務者が必要な情報を見つけ、判断できるところまで含めて考える必要があります。
- 詳しくは、申し送りをAIで要約する方法|重要情報が埋もれない整理と現場への伝え方で確認できます。
出典・根拠を確認
厚生労働省介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
現場の課題を把握するには、業務全体の流れを見える化(可視化)することも大切です。事業所全体で職員がどのように時間を使っているのかを把握する。誰が、どのような業務に、どの程度の時間をかけているかを見える化し、現在の業務における3M(ムリ・ムダ・ムラ)を明らかにする。
時間が短いほど成功とは限らないから
記録時間が短くなった一方で、記録が簡潔になりすぎたと感じる職員がいると、施設長は効率と内容のどちらを優先すべきか迷います。短縮できた数字だけで判断せず、必要な手順と質を保てているかを同じ場で振り返ります。
理想は、所要時間が短くなれば負担も減ったと評価できることです。ガイドラインは、かける時間によって質が高まる業務もあるため、時間が短いほど優秀とは限らないと注意しています。短縮だけを目標にすると、必要な手順や内容が測定から抜けるおそれがあります。施設長は評価前に、業務ごとに必要な手順を職員と確認し、時間と一緒に使いやすさや負担感も聞き取ります。
- 記録時間や残業だけでは、申し送りの抜け、安全面、職員の疲労などを見落とすことがあります。効率化後の変化を複数の指標で見ることが重要です。
- 詳しくは、介護現場の生産性向上で本当に見るべき指標とは?残業・事故・記録・職員の疲労から考えるで確認できます。
出典・根拠を確認
厚生労働省介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
業務時間を見える化すると、業務に要する時間が短いほど優秀だと錯覚することがありますが、決してそうとは限りません。なぜなら、かける時間によって質が高まるものもあり、一概に時間を短くするだけが生産性向上につながるとは言えないからです。時間が短ければ短いほど良いものは、ルーティン化された業務や単純な事務・経理業務など誰がやっても同じ結果が得られるものです。そのため、業務時間を記録するにあたっては、業務ごとに適切とされる手順と、必要な時間を事業所の中であらかじめ定めておくことがとても重要です。事業所の中でどのような業務にどの程度の手間と時間をかけるのかを事前に話し合っておくと生産性向上に向けた適切な取組が見えてくるでしょう。
導入後に測り直さないと、増えた仕事を見つけにくいから
導入時には問題なく見えても、通常運用へ戻った後に紙への退避や再入力が続くことがあります。稼働確認で終えるか、もう一度測るか迷う場面です。次の導入判断前に再可視化すると、運用後に生まれた工程を拾いやすくなります。
理想は、導入時に立てた計画どおりに効果が続くことです。現実には、うまくいかなかった点や新しい改善点が運用後に見える場合があります。ガイドラインは、成果を定量・定性の両面で振り返り、業務時間の見える化を再度行うことを示しています。施設長は評価日を導入前に決め、通常時と不具合時を分けて、残った工程と新しく増えた工程を確認します。
- 導入時の確認だけで終わらせず、委員会などで成果と新しい課題を継続して振り返れる状態にすると、次の改善判断につなげやすくなります。
- 詳しくは、介護現場の生産性向上とは?委員会で話し合うこと・加算の考え方をわかりやすく解説で確認できます。
出典・根拠を確認
厚生労働省介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
これまでの取組に対する成果を検証します。具体的には、進捗管理シートに沿った取組により得られた成果を、プロジェクトチームにおいて振り返ります。振り返りの中で、上手くいった点、いかなかった点を整理しましょう。成果を確認する上では、定量的・定性的の両面から振り返りを行いましょう。成果を検証する際に、業務時間の見える化を再度実施することも大切です。取組成果を確認すると同時に、新たな改善点の発見につながります。
導入数だけでは、測定範囲の外にある検索・確認・例外対応を拾いにくくなります。業務全体を決め、時間と使いやすさを導入前後で測り直すことが必要です。
介護DXの効果測定で迷いやすいこと【FAQ】
現場では、全部の業務を調べる余裕がない一方、時間だけでは職員の「使いにくい」を説明できず迷います。ここでは、導入前後の比較を始めるときに押さえたい範囲を整理します。
- Q何の業務から比べればよいですか?
- A
困りごとが具体的な一業務から始めます。たとえば記録なら、入力だけにせず「介助終了から記録・確認の完了まで」と始点と終点を決めます。まず誰が何にどの程度の時間を使うか、全体の流れを一つだけ可視化します。
出典・根拠を確認
厚生労働省
介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
現場の課題を把握するには、業務全体の流れを見える化(可視化)することも大切です。事業所全体で職員がどのように時間を使っているのかを把握する。誰が、どのような業務に、どの程度の時間をかけているかを見える化し、現在の業務における3M(ムリ・ムダ・ムラ)を明らかにする。
- Q時間が短くなればDXは成功ですか?
- A
時間が短いだけでは判断しません。ガイドラインは、かける時間によって質が高まる業務もあり、短いほど優秀とは限らないとしています。所要時間と一緒に、必要な手順を保てたか、情報を探しやすいか、職員の負担感はどうかを確認します。
出典・根拠を確認
厚生労働省
介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
業務時間を見える化すると、業務に要する時間が短いほど優秀だと錯覚することがありますが、決してそうとは限りません。なぜなら、かける時間によって質が高まるものもあり、一概に時間を短くするだけが生産性向上につながるとは言えないからです。時間が短ければ短いほど良いものは、ルーティン化された業務や単純な事務・経理業務など誰がやっても同じ結果が得られるものです。そのため、業務時間を記録するにあたっては、業務ごとに適切とされる手順と、必要な時間を事業所の中であらかじめ定めておくことがとても重要です。事業所の中でどのような業務にどの程度の手間と時間をかけるのかを事前に話し合っておくと生産性向上に向けた適切な取組が見えてくるでしょう。
- Q時間以外に何を記録すればよいですか?
- A
定量と定性の両面を残します。定量では工程数、所要時間、転記や画面切替などを記録します。定性では、探しやすさ、一覧で確認しやすいか、負担が特定の職員へ偏っていないかを聞き取ります。時間帯や不具合時など条件が違う場面は同じ欄へ混ぜません。
出典・根拠を確認
厚生労働省
介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
これまでの取組に対する成果を検証します。具体的には、進捗管理シートに沿った取組により得られた成果を、プロジェクトチームにおいて振り返ります。振り返りの中で、上手くいった点、いかなかった点を整理しましょう。成果を確認する上では、定量的・定性的の両面から振り返りを行いましょう。成果を検証する際に、業務時間の見える化を再度実施することも大切です。取組成果を確認すると同時に、新たな改善点の発見につながります。
- Q導入後はいつ評価し直せばよいですか?
- A
導入前に振り返りの時点を決め、設定した取組期間が終わる前に一度確認します。さらに次の機器を選ぶ前にも、同じ始点・終点で再び可視化します。固定の期間だけに頼らず、通常運用へ移った後の作業や不具合時の工程を分けて見ます。
出典・根拠を確認
厚生労働省
介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
進捗管理シートで設定した取組期間が終了する前に、プロジェクトリーダーを中心に、プロジェクトチームで一度振り返りを行いましょう。進捗管理シートにおいて、あらかじめ設定したゴールを達成できそうかを確認しつつ、簡潔に振り返ります。必ずしも実行計画に固執する必要はなく、期待する成果が明らかに望めない場合は、早々に取組を切り上げ、次の取組内容を検討する柔軟さも必要です。
最初から全業務を測らず、一業務の範囲をそろえます。時間だけでなく定性的な使いやすさも残し、取組期間の終了前と次の導入判断前に測り直します。
まとめ|介護DXの次の一歩は、一つの業務を並べること
現場では、機器が動いていても「紙も残った」「検索が増えた」「また次の機器が来る」と不安が強くなることがあります。その声を賛否で分ける前に、導入前後で実際に変わった仕事を見ます。
明日の記録業務が終わった後、施設長と実際に入力した職員で、「介助終了から記録完了まで」の作業を一つずつ書いてください。導入前と導入後を並べ、減った・残った・増えたへ印を付ける。それだけを最初の一歩にします。
一回の確認で全勤務帯を代表させる必要はありません。時間帯や不具合時は別欄に残し、次の導入を決める前に測り直します。最後までご覧いただき、ありがとうございます。
