介護現場では「自分ばかり身体介助が続き、あの人は記録室にいる」といった不公平感が生じることがあります。人手不足を背景に、誰かが過剰な負担を強いられる状況が続くことがあります。
全ての理想を追うのは難しくても、業務の仕分けや手順の整理という現実的な一歩で、現場の空気が変わることがあります。公的なエビデンスを基に、無理のない着地点を探る考え方を示します。
この記事を読むと分かること
- 不公平感の正体と解決のコツ
- 直接ケアと事務作業の分け方
- 現場で活かせる5Sの進め方
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
結論:介護現場の「あの人だけずるい」を、個人の問題ではなく、組織の生産性向上の課題として捉える

現場では「自分ばかり重労働を任され、あの人は記録室にいる」という声が聞かれることがあります。
建前ではチームケアとわかっていても、実際の人手不足の中では特定の職員に負担が集中しがちな場合があります。
「手抜き」ではなく「介護の価値」を高める改善
業務の見直しと聞くと、「効率化=手抜き」と感じる場合もあります。
しかし、本稿でいう生産性向上とは、「介護の価値を高めること」です。
無駄を省き、利用者のための時間と心のゆとりを生み出すことを通じて、「介護の価値を高めること」を目的とします。
| 目指す方向 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 本来の目的 | 介護の価値を高めること |
| 効率化の役割 | 介護の価値を高めるための手段 |
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
本ガイドラインでは、介護サービスの生産性向上を「介護の価値を高めること」と定義しています。
直接的なケアと間接的業務を仕分ける
日々の業務を明確に分類する方法があります。
身体介助などの直接接する業務と、記録などの間接的な業務を分けます。
この仕分けにより、誰がどの業務に偏っているかが可視化されやすくなります。
| 業務区分 | 具体的な業務例 |
|---|---|
| 直接的なケア | 食事や入浴など利用者に直接接する業務 |
| 間接的業務 | 記録の記入や会議などの周辺業務 |
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
本ガイドラインでは、介護に関する業務を「直接的なケア」と「間接的業務」に分けています。直接的なケアは利用者に直接接しながらサービスを提供する業務であり、間接的業務は情報の記録や会議など利用者とは直接接しない形で行う業務を指します。
現場に潜む「ムリ・ムダ・ムラ」を解消する
業務を分けた後は、そこに潜む負担や無駄を見つけていく考え方を示します。
特定の時間帯に負担が集中する無理な状況や、人による手順のばらつきを洗い出す方法を示します。
これらを一つずつ解消することが、働きやすい職場づくりにつながることがあります。
| 項目 | 現場で起きている状態 |
|---|---|
| ムリ | 特定の職員に過剰な負担がかかっている状態 |
| ムダ | 重複する記録など省けるはずの手間 |
| ムラ | 職員によって介助の手順やスピードが違う状態 |
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
日常業務の中にあるムリ・ムダ・ムラを見つけ、解消していく一連の取組であり、本ガイドラインでは業務改善の視点から7つの取組に分類しています。
業務の偏りによる不公平感は、個人の問題ではなく組織の課題です。業務を直接ケアと間接業務に分け、現場のムリ・ムダ・ムラを解消することで、結果として働きやすい職場の実現につながることがあります。
現場で起きている「業務の偏り」の典型パターンと改善の糸口

ここでは、現場でよくある「不公平感」の典型パターンと、それを組織の課題として捉え直す視点を示します。
事例1:「あの人は記録ばかり」間接業務との切り分け不足
現場では「自分は介助で走り回っているのに、あの人はずっと記録室にいる」という不満が聞かれることがあります。
人手不足の折、特定のベテラン職員が記録や準備に専念してしまうと、他の職員に身体的負担が集中することがあります。
| 状況 | 忙しい時間帯に一部の職員が事務作業に偏っている。 |
|---|---|
| 困りごと | 身体介助が特定の人に集中し、不公平感が募る。 |
| よくある誤解 | 「あの人はサボっている」と個人の性格のせいにする。 |
| 解決の視点 | 業務を直接ケアと間接業務に明確に分類する。 |
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
本ガイドラインでは、介護に関する業務を「直接的なケア」と「間接得業務」に分けています。直接的なケアは利用者に直接接しながらサービスを提供する業務であり、間接的業務は情報の記録や会議など利用者とは直接接しない形で行う業務を指します。
事例2:「あの人のやり方じゃないとダメ」標準化不足によるムラ
「あの人がいないと回らない」「人によって介助の手順が違う」というのも、現場で聞かれる悩みの一つです。
自己流のケアが広がると、それに合わせる周囲の負担が増え、ケアの質にもばらつきが出ることがあります。
| 状況 | 職員ごとに介助のやり方が異なっている。 |
|---|---|
| 困りごと | ミスが起きやすく、尻拭いによる不公平が生じる。 |
| よくある誤解 | 「経験の差だから仕方ない」と諦めてしまう。 |
| 解決の視点 | 手順書を作成し、標準化する。 |
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
「手順書の作成」では職員の知識を可視化・標準化します。
事例3:「探し物で時間が潰れる」5Sの欠如
「オムツやリネンがすぐ見つからず、自分の仕事が遅れる」という日々の小さなイライラも不満の種です。
要領の良い人は自分の分だけ確保し、そうでない人が探し回るハメになると、そこに不公平が生じることがあります。
| 状況 | 物品の置き場所が決まっておらず探す手間が発生する。 |
|---|---|
| 困りごと | 探し物に時間を取られ、本来のケアに集中できない。 |
| よくある誤解 | 「個人の準備不足だ」と個人の能力のせいにする。 |
| 解決の視点 | 5Sを徹底し、探さずに済む環境を整える。 |
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
5Sとは整理・整頓・清掃・清潔・躾を指します。特に3S(整理・整頓・清掃)の徹底と繰り返しにより、組織の業務プロセスとして習慣化させることが重要です。
現場で生じる「ズルい」という感情は、業務の切り分けや手順の標準化、5Sといった仕組みが整っていないサインです。個人の性格や能力を責めるのではなく、組織の仕組みを見直す視点が解決の糸口となります。
なぜ「あの人だけずるい」が起きるのか?不公平感を生む3つの構造的原因

ここでは、個人の善意や努力だけでは解決しにくいと考えられる、現場に潜む根本的な原因を紐解きます。
1. 特定の職員に「ムリ」な負担が集中しているから
建前(理想)は「みんなで協力して利用者を支える」ことですが、現実は異なります。
特定の職員に対し、一人では困難な介助や重労働が偏っているのが実情です。
目的に対して手段(人員や時間)が足りないムリな状態が、不公平感の背景になっている場合があります。
| 項目 | 現場の対比 |
|---|---|
| 建前(理想) | チーム全員で業務を均等にカバーする |
| 現実(現場) | 特定の職員にのみ過大な負荷(ムリ)がかかる |
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
ムリは目的に対して手段が下回ること(目的>手段)、ムダは目的に対して手段が上回ること(目的<手段)、ムラはそれらが混在すること(目的>手段 or 目的<手段)と定義されます。
2. 日常業務に潜む「ムダ」が放置されているから
建前(理想)は「利用者のための直接的なケアに集中する」ことです。
しかし現実は、重複する記録作業など、本来省けるはずの間接業務がそのままになっています。
このムダが解消されないことで、忙しい時間帯に一部の人が事務作業へ逃げ込む余地が生まれることがあります。
| 項目 | 現場の対比 |
|---|---|
| 建前(理想) | 利用者に寄り添う時間を最優先にする |
| 現実(現場) | 放置されたムダな業務が「逃げ道」になっている |
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
日常業務の中にあるムリ・ムダ・ムラを見つけ、解消していく一連の取組であり、本ガイドラインでは業務改善の視点から7つの取組に分類しています。
3. 役割分担(タスクシフト)が進まず負担が減らないから
建前(理想)は「全員が全ての業務を同じようにこなす」ことかもしれません。
ですが現実は、専門職が本来不要な周辺業務まで抱え込んでいると考えられる場合があり、負担が限界に近づいている場合があります。
タスクシフトやテクノロジー活用による業務効率化が進まないと、根本的な負担軽減が実現しにくくなります。
| 項目 | 現場の対比 |
|---|---|
| 建前(理想) | 専門職として全員が同じように働く |
| 現実(現場) | 役割分担が進まず全体の負担が高止まりしている |
出典元の要点(要約)
厚生労働省介護人材確保と職場環境改善・生産性向上、経営改善支援等
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001586129.pdf
「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関するとりまとめ」では、テクノロジー活用やタスクシフト/シェアによる業務効率化を通じて、職員の負担軽減やケア業務時間の増加、処遇改善を目指している。
「ズルい」という不満の裏には、目的に対して手段が伴わない「ムリ」、放置された「ムダ」、そしてタスクシフト不足という構造的な原因があります。個人のモラルを責める前に、こうした根本的な仕組みの改善が必要だと考えられます。
介護の「業務の偏り」に関する現場の小さな迷いへの回答
現場で業務改善や不公平感の解消を進める際に、ふと感じる疑問や不安を整理しました。
これらは個人の悩みだけではなく、多くの介護現場で見られる課題です。
公的な指針に基づいた、考え方を確認する意図です。
- Q「生産性向上」というと、単なる手抜きのように感じて反発が起きませんか?
- A「生産性向上」は手抜きと誤解されることがあります。
ガイドラインでは、これを「介護の価値を高めること」と定義しています。
無駄を省くことで、利用者に質の高いケアを届けるための時間や心のゆとりを生み出し、「介護の価値を高めること」を目的とします。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
本ガイドラインでは、介護サービスの生産性向上を「介護の価値を高めること」と定義しています。
- Qタスクシフト(役割分担)は、かえって現場の混乱や負担を招きませんか?
- A短期的には役割の調整が必要ですが、中長期的には職員の負担軽減に繋がる場合があります。
周辺業務を分担する「タスクシフト」により、ケア業務時間の増加が目指されています。
これにより、一人あたりの負担を軽減する効果が期待できます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
介護人材確保と職場環境改善・生産性向上、経営改善支援等
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001586129.pdf
「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関するとりまとめ」では、テクノロジー活用やタスクシフト/シェアによる業務効率化を通じて、職員の負担軽減やケア業務時間の増加、処遇改善を目指している。
- Q不公平感をなくすための業務改善は、具体的に何から始めれば良いですか?
- Aまずは、身の回りの5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)から始めることが推奨されることがあります。
安全な介護環境と働きやすい職場を整備することで、探し物の時間などの「ムダ」が減ることがあり、全員が等しく業務に集中できる土台ができ上がることがあります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
生産性向上のための7つの取組のうち、「職場環境の整備」では5Sの視点で安全な介護環境と働きやすい職場を整備します。
業務改善への疑問を整理することは、自分たちの心を守ることにも繋がる場合があります。生産性向上は手抜きではなく「価値の向上」であるという考え方であり、役割分担や5Sはそのための具体的な手段と位置づけられます。まずはできることから一つずつ、仕組みを整えることを提案します。
まとめ:「あの人だけずるい」を仕組みで解決し、自分を守るための一歩を
現場で感じる「自分ばかり損をしている」という不満は、あなたの心が狭いからとは限りません。
本稿では、それは現場の仕組みが整っていないサインである場合があります。全てを一度に変えるのは難しいですが、まずは自分の業務を「直接ケア」と「間接業務」に書き出してみることから始める提案です。
自分の状況を可視化することが、無理のない改善への第一歩になることがあります。また、身の回りの5S(整理・整頓など)を一つ見直すだけでも、日々の「ムダ」が減り、心にゆとりが生まれることがあります。
大切なのは、一人で抱え込まず、仕組みの力で自分と利用者を守ることだと考えられます。最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。
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更新履歴
- 2025年11月10日:新規投稿
- 2026年2月22日:より詳細なエビデンス(根拠)に基づき解説を充実させるとともに、最新のサイト基準に合わせて構成・レイアウトを見やすく刷新。








