認知症の「家に帰りたい」にどう対応する?説得せず不安を受け止める介護職の関わり方

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施設の玄関で帰宅を望む高齢女性の話を目線を合わせて聴く女性介護職

現場では、認知症の利用者から「そろそろ帰ります」「家に電話してください」と何度も訴えられます。最初は丁寧に答えられても、食事介助や転倒が心配な利用者への対応が重なると、返事が短くなり、最後には無視してしまうこともあります。

内線で子どもや親類を演じると安心した人がいる一方、同じ訴えを続けた人もいました。うまくいった方法を繰り返すべきか、事実を説明すべきか迷うところです。この経験から見えるのは、一つの対応を全員の正解にしないということです。

全部に長く付き添うのが難しい日でも、命令や否定を避け、その人にとって安心できる言葉を探します。言葉だけでなく、光や音、周囲の人との関係などの環境にも目を向けます。この最初の言葉と見る範囲を決めておくことが、現実的な対応の入口です。

この記事を読むと分かること

  • 安心できる言葉の選び方
  • 本人の背景を見る視点
  • 関わりの見直し方
  • 職員の焦りや苛立ちの捉え方

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • 説明しても繰り返す
  • 電話を頼まれ迷う
  • 返事が雑になる
  • 対応後に自分を責める

認知症の「家に帰りたい」には説得より先に不安を受け止める

帰宅を望む高齢女性の不安を受け止め表情と背景を確かめる介護職

現場では、認知症の利用者に「今日は帰れません」と説明しても、数分後にまた「家に帰りたい」と言われることがあります。食事や排泄など別の介助も迫るなか、正しく説明するか、話を合わせるか迷い、最初の数回は丁寧でも、やがて「さっき伝えました」と押し返したくなる場面です。内線で家族役をすると落ち着く人もいれば、変わらず繰り返す人もおり、一つの方法を続けるだけでは判断できません。

この章では、目的を「帰れないと納得してもらう」から、本人の不安をこれ以上増やさないへ置き直します。最初に安心できる言葉へ言い換えること、生活歴や感情などに目を向けること、反応が変わらないときに関わりを見直すこと、職員の焦りや苛立ちの背景を捉えることを順に整理します。

ある現場では、一人で約25人を見ながら食事対応や転倒が心配な人への対応が重なり、一人の訴えに長く付き添えませんでした。こうしたときも、命令や否定を避けることを意識し、その人にとって安心できる言葉を探します。

最初の一言は否定せず受け止める

帰宅したい思いを話す高齢女性を否定せずうなずいて受け止める介護職

別の介助中に「家に帰る」と言われると、急ぐほど「今日は帰れません」と結論だけを返したくなります。ところが、その返答を何度も重ねれば、本人には毎回否定される言葉になります。ここでは、否定より先に安心できる表現へ置き換えることを押さえます。

「帰れません」を「ここにいて大丈夫ですよ」などへ言い換え、その人が安心できる言葉を探します。命令や子ども扱いも、自尊心を傷つける言葉として避けます。忙しい場面でも、長い説明を始める前の一言だけは整えられます。同じ否定を重ねていると気づいた時点を、言い換えのタイミングにします。

最初の一言で本人の反応が変わる理由

声かけが拒否につながるときは、言葉の内容だけでなく、急ぐ気持ちが声や態度に表れていないか、本人がどう反応したかまで振り返ると、次の関わりを選びやすくなります。

詳しくは、トイレ誘導の一言目で拒否される原因とは|認知症ケアで必要な声かけの見直し方で確認できます。

出典・根拠を確認

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 認知症・せん妄サポートチーム(D2ST),身体拘束最小化チーム

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

コミュニケーションをとる上で,注意する言葉が3つある.それは,「命令する言葉」,「子ども扱いする言葉」,「相手を否定する言葉(スピーチロック)」である.この3つの言葉は,相手の自尊心を傷つけることになる.特に,相手を否定する言葉は,私たちは一瞬一瞬で使用しているつもりでも,認知症患者が何度も同じ行動をとる場合は毎回否定されることになり,気分の落ち込みや易怒性などに繋がることがある.そのため,安心できる言葉がけや言い換えを使用する.例えば,「帰れません」は「ここにいて大丈夫ですよ」,「立たないでください」は「座っていていいですよ」などである.他に安心できる言葉として「安心して下さいね」や「任せて下さい」など,その人にとって安心できる言葉を探すことが大切である.

本人の表情と生活歴・感情・できることに目を向ける

「家に帰りたい」の一言から、誰を気にしているのか、何をしたいのかまでは分かりません。質問を続ける余裕がないほど忙しいと、聞かずに説明だけで終えがちです。ここでは、本人の表情を観察し、生活歴や感情、できることに目を向けます

生活歴や感情、その人に残っている力へ目を向け、本人の自己決定を尊重します。短い時間でも、言葉だけでなく表情を見ながら、本人が望んでいることを捉えようとする姿勢を保ちます。

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国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 認知症・せん妄サポートチーム(D2ST),身体拘束最小化チーム

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

認知症患者との関りにおける前提として,他の患者と同じ「人」として接することである.認知症患者がいる目の前で本人が傷つく話をする,無視する,怒鳴るなど,「人」として傷つく行為は行わないようにする.その上で認知症看護の基本として,以下7点を挙げる.①その人らしく存在していられることを支援.②できることに目を向け,本人が有する力を最大限に活かせるよう,自己決定を尊重.③生活歴を知り,生活の継続性を保つケア環境.④感情・情緒に配慮した,心地よいケアやコミュニケーション.⑤家族やケアスタッフの心身状態にも配慮.

同じ説明で変わらなければ別の関わりへ切り替える

内線で家族役を演じて落ち着いた人がいる一方、同じ電話の後も帰宅訴えが続いた人もいました。うまくいった手順ほど繰り返したくなりますが、反応が変わらなければ、その人に合う方法かどうか見直す必要があります。ここでは、一度の成功を全員の正解にしないと考えます。

その人にとって安心できる言葉を探します。さらに、光や音、におい、温度、周囲の人との関係、決められた予定など、言葉以外の環境にも目を向けます。

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認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

コミュニケーションをとる上で,注意する言葉が3つある.それは,「命令する言葉」,「子ども扱いする言葉」,「相手を否定する言葉(スピーチロック)」である.この3つの言葉は,相手の自尊心を傷つけることになる.特に,相手を否定する言葉は,私たちは一瞬一瞬で使用しているつもりでも,認知症患者が何度も同じ行動をとる場合は毎回否定されることになり,気分の落ち込みや易怒性などに繋がることがある.そのため,安心できる言葉がけや言い換えを使用する.例えば,「帰れません」は「ここにいて大丈夫ですよ」,「立たないでください」は「座っていていいですよ」などである.他に安心できる言葉として「安心して下さいね」や「任せて下さい」など,その人にとって安心できる言葉を探すことが大切である.

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 認知症・せん妄サポートチーム(D2ST),身体拘束最小化チーム

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

認知症患者を取り巻く環境は,物理的環境,社会的環境,運営的環境の3つの側面でとらえることができる.物理的環境では,光や音,におい,温度などが影響する.例えば,モニターやナースコール,同室者の声など,音刺激が過剰となる場合がある.認知症患者は,刺激を選択することが困難になりやすく,自分に関係ない音を聞き流すことができず,混乱に繋がったりする.そのため,静かな環境になるよう調整が必要となる.社会的環境としては,医療従事者も環境となる.入院環境において医療従事者との信頼関係が崩れた場合,家族と離れた生活をする認知症患者にとって,味方が全くいない環境となる.不安や緊張などから混乱に至る場合があり,入院時は早期に信頼関係を築くかかわり方が必要である.

職員の焦りや苛立ちが生じる背景に目を向ける

同じ訴えに3~4回は丁寧に答えられても、食事対応やほかの介助が重なるうちに返事が雑になり、無視してしまうことがあります。これはある現場での経験であり、全員の限界を示す回数ではありません。繰り返し訴えや業務の重なりで生じる焦りや苛立ちにも目を向けます

介護職員の語りを扱った研究では、複数業務と繰り返し訴えが重なる状況や、認知症と理解していても苛立つ状況が示されています。苛立ちが生じる背景を職員の人格だけに帰さず、業務の重なりや繰り返し訴えも含めて捉えます。ただし、感情が生じる背景を認めることと、その後の乱暴な言葉を仕方ないと終わらせることは分けて考えます。

出典・根拠を確認

日本社会福祉学会

介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf

色々な業務が重なり,介護職員が身体的にも,精神的にも,追い詰められた状態となり,苛立ちが生まれていた.“繰り返される訴えへの苛立ち”とはʻ利用者の繰り返される訴えや繰り返される行動・心理症状への対応に苛立つことʼである.「何回も同じことを聞いてくる入居者がいて,その頻度も1分に1回とか,頻回なんですね」「ちゃんとした正しい答えを返しても,また5分後には同じ訴えが来るっていうところのやっぱり大変さ,辛さ」何度も同じ訴えを繰り返されると,対応しているのに変化がみられないことに苛立ってしまう状況となる.このような終わりの見えない介護は,介護職員を疲弊させて苛立たせていた.

日本社会福祉学会

介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf

“わかっていても苛立ち”とはʻ利用者の言動は病気の症状であり,仕方のないことであると理解しているものの,その言動に苛立ってしまうことʼである.「頭ではみんな認知症なのでわからないことがある,何度も何度も同じことをいうっていう状況があって当たり前なのは頭では理解しているんだけれども,忙しい業務のなかで,何度も何度も同じ話を聞かれたりだとか,わけわからない行動をされたときに,『こんなに忙しいのに』って」頭のなかでは,利用者の行動の背景を考えて対応するということは理解しているが,業務のなかのさまざまな焦り・苛立ちのなかで,理解してはいるものの苛立ちが生起するという状況に追い込まれていた.

帰宅訴えへの初動では、命令や否定を避け、その人にとって安心できる言葉を探します。生活歴や感情、できることに目を向け、光や音、人との関係などの環境にも配慮します。


認知症の「家に帰りたい」でよくある4つの場面

繰り返す説明や電話の依頼と役割拒否と疲労に悩む介護職の四つの場面

現場では、「家に帰りたい」という同じ言葉でも、説明を繰り返す場面、電話や迎えを頼まれる場面、別の活動を断られる場面で迷い方が変わります。最初は丁寧に応じられても、訴えとほかの介助が重なるほど、何を続けてどこで切り替えるか分からなくなります。

ある現場では、フロアの内線で子どもや親類になりきって話すと、帰宅や電話の訴えが止まった人がいました。ところが、同じように電話を使っても、その後も「迎えに来てもらう」と繰り返す人がおり、この対応を全員の正解にしてよいのか、話を合わせ続けてよいのかという迷いが残りました。食事や排泄、服薬に加え、転倒に注意が必要な人への対応まで重なる時間には、一人の訴えに長く付き添えず、丁寧にしたい気持ちだけでは動けない苦しさもあります。こうした場面でも、その人にとって安心できる言葉を探します。

「今日は帰れません」と何度も説明してしまう

食事の準備へ移りたいときに「家に帰る」と繰り返されると、最初の3~4回は丁寧に答えられても、次第に「さっきお伝えしました」と返したくなります。正しいことをもう一度説明するか、別の返答へ変えるかで迷い、その場を早く終えたい焦りから、声や表情まで強くなったこともありました。次の返答では否定を足さず、安心できる言い換えを使います。

「今日は帰れません」と事実を伝え続ける状況では、同じ行動のたびに本人を否定する形になり得ることが困りごとです。よくある誤解は、説明の内容が正しければ、そのまま繰り返してよいと考えることです。押さえたいのは、命令、子ども扱い、否定の言葉は自尊心を傷つけ、否定の反復は気分の落ち込みや易怒性につながることがあるという点です。最初に対応した介護士は、次の訴えが出たときに同じ説明を足さず、「ここにいて大丈夫ですよ」などの安心できる表現へ一度言い換えます。反応が変わらなければ、その言葉も万能だと決めず、本人に合う言葉を探す側へ切り替えます。

止める声かけが逆効果になるとき

「帰れません」と繰り返しそうなときは、本人が歩こうとする背景や、その言葉への反応まで見直したくなります。帰宅の訴えにも重なる徘徊場面を例に、逆効果になりやすい声かけと、言葉を重ねる前に見るポイントを確認できます。

詳しくは、認知症の徘徊を止めようとすると不穏になる?逆効果になりやすい声かけ10例で確認できます。

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国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 認知症・せん妄サポートチーム(D2ST),身体拘束最小化チーム

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

コミュニケーションをとる上で,注意する言葉が3つある.それは,「命令する言葉」,「子ども扱いする言葉」,「相手を否定する言葉(スピーチロック)」である.この3つの言葉は,相手の自尊心を傷つけることになる.特に,相手を否定する言葉は,私たちは一瞬一瞬で使用しているつもりでも,認知症患者が何度も同じ行動をとる場合は毎回否定されることになり,気分の落ち込みや易怒性などに繋がることがある.そのため,安心できる言葉がけや言い換えを使用する.例えば,「帰れません」は「ここにいて大丈夫ですよ」,「立たないでください」は「座っていていいですよ」などである.他に安心できる言葉として「安心して下さいね」や「任せて下さい」など,その人にとって安心できる言葉を探すことが大切である.

「家に電話して」「迎えを呼んで」と頼まれる

電話や迎えを求める高齢女性の希望を聞きチームで確認する女性介護職

「家へ電話したい」「家族に迎えを頼んでほしい」と要求が具体的になると、話を合わせるか、できないことを説明するかで手が止まります。内線で家族役をすると安心した人がいる一方、電話の後も同じ訴えが続いた人もおり、成功した方法をもう一度試すべきか、別の関わりへ移るべきか迷いました。本人の表情を観察し、生活歴や感情、できることに目を向けます。

電話や迎えという要求が出た場面でも、本人の生活歴、感情、できること、自己決定に目を向けます。よくある誤解は、一度安心につながった方法なら、別の人や次の場面にもそのまま使えると考えることです。本人の反応を待ちながら、その人にとって安心できる言葉を探します。

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国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 認知症・せん妄サポートチーム(D2ST),身体拘束最小化チーム

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

認知症患者との関りにおける前提として,他の患者と同じ「人」として接することである.認知症患者がいる目の前で本人が傷つく話をする,無視する,怒鳴るなど,「人」として傷つく行為は行わないようにする.その上で認知症看護の基本として,以下7点を挙げる.①その人らしく存在していられることを支援.②できることに目を向け,本人が有する力を最大限に活かせるよう,自己決定を尊重.③生活歴を知り,生活の継続性を保つケア環境.④感情・情緒に配慮した,心地よいケアやコミュニケーション.⑤家族やケアスタッフの心身状態にも配慮.

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 認知症・せん妄サポートチーム(D2ST),身体拘束最小化チーム

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

コミュニケーションをとる上で,注意する言葉が3つある.それは,「命令する言葉」,「子ども扱いする言葉」,「相手を否定する言葉(スピーチロック)」である.この3つの言葉は,相手の自尊心を傷つけることになる.特に,相手を否定する言葉は,私たちは一瞬一瞬で使用しているつもりでも,認知症患者が何度も同じ行動をとる場合は毎回否定されることになり,気分の落ち込みや易怒性などに繋がることがある.そのため,安心できる言葉がけや言い換えを使用する.例えば,「帰れません」は「ここにいて大丈夫ですよ」,「立たないでください」は「座っていていいですよ」などである.他に安心できる言葉として「安心して下さいね」や「任せて下さい」など,その人にとって安心できる言葉を探すことが大切である.

タオルたたみなどの役割を断られる

「少し手伝ってもらえますか」とタオルたたみを提案しても、「やりません」「帰ります」と断られることがあります。帰宅の話題を変えたい気持ちが強いほど、別の作業を続けて勧めるか、何も効かないと諦めるかで迷い、せっかく考えた提案を受けてほしい気持ちも出ます。断られた提案を押し続けず、その返答も本人の意思として受け取り、生活歴や今できることを見直すところへ戻ります。

活動を提案しても応じない状況では、せっかく考えた方法を続けるかどうかが困りごとになります。よくある誤解は、本人に役割を示せば帰宅の訴えが変わると決めることです。資料が示すのは、できることに目を向けて本人の力を活かすことと、同時に自己決定を尊重することです。役割を提案する場合も、本人のできることに目を向け、生活歴や感情にも配慮します。提案を断られたことだけで、関わり全体を失敗と決めないことが大切です。

活動を断られた後の関わりを考える

タオルたたみなどの活動を断られたときは、拒否の理由を一つに決めず、提案を押し続けるのではなく、本人の好みや生活歴、表情を見直し、意思を尊重しながら次の関わりを考える視点が役立ちます。

詳しくは、認知症でレク拒否される理由|現場で迷わない関わり方で確認できます。

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国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 認知症・せん妄サポートチーム(D2ST),身体拘束最小化チーム

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

認知症患者との関りにおける前提として,他の患者と同じ「人」として接することである.認知症患者がいる目の前で本人が傷つく話をする,無視する,怒鳴るなど,「人」として傷つく行為は行わないようにする.その上で認知症看護の基本として,以下7点を挙げる.①その人らしく存在していられることを支援.②できることに目を向け,本人が有する力を最大限に活かせるよう,自己決定を尊重.③生活歴を知り,生活の継続性を保つケア環境.④感情・情緒に配慮した,心地よいケアやコミュニケーション.⑤家族やケアスタッフの心身状態にも配慮.

何度も続いて返事が雑になる

ある勤務では、一人で約25人を見ながら、食事、排泄、服薬への対応と、転倒に注意が必要な人への見守りが重なっていました。「家に帰りたい」に最初の3~4回は答えられても、その後は返事が短くなり、最後には無視してしまって、勤務後にもっと別の言い方があったのではないかと後悔したこともあります。繰り返し訴えや業務の重なりで生じる焦りや苛立ちにも目を向けます。

複数の業務が重なるなかで訴えが繰り返される状況は、介護職員を身体的、精神的に追い詰め、疲弊や苛立ちにつながる過程として報告されています。困るのは、本当は丁寧に関わりたいと分かっていても、最低限の援助で手いっぱいになり、その通りにできないことです。苛立つ自分は介護職に向いていない、と人格だけの問題にするのは実態を捉えきれません。一方で、負担があることと、無視や強い言葉をよい対応とすることは別です。対応中の介護士は、自分の焦りや苛立ちを含む心身状態にも目を向けます。

返事が雑になった後の自責を整理する

訴えが続いて言葉が強くなり、勤務後まで自分を責めてしまうときは、感情が生じた背景と実際の言動を分け、疲労や業務の重なりも含めて振り返ると、次に変える点を整理しやすくなります。

詳しくは、介護職が利用者にイライラするのはなぜ?我慢しても自分を責めてしまう理由で確認できます。

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日本社会福祉学会

介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf

色々な業務が重なり,介護職員が身体的にも,精神的にも,追い詰められた状態となり,苛立ちが生まれていた.“繰り返される訴えへの苛立ち”とはʻ利用者の繰り返される訴えや繰り返される行動・心理症状への対応に苛立つことʼである.「何回も同じことを聞いてくる入居者がいて,その頻度も1分に1回とか,頻回なんですね」「ちゃんとした正しい答えを返しても,また5分後には同じ訴えが来るっていうところのやっぱり大変さ,辛さ」何度も同じ訴えを繰り返されると,対応しているのに変化がみられないことに苛立ってしまう状況となる.このような終わりの見えない介護は,介護職員を疲弊させて苛立たせていた.

日本社会福祉学会

介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf

“やりたいけどできない”とはʻ利用者に対して,もっと違う介護をしてあげたいと思っているのに,そのような介護ができないことʼである.「今ある介助,最低限の援助でいっぱいいっぱいで,時間を作ってあげられないなっていうところのイライラ」「本当はちゃんと一声,一声かけてやるのが,時間かけてやるのがってわかっているんですけど,まぁそうはうまくはいかないっていうか」利用者の症状や言動に対して,どのように対応すればよいのかわかっていても,そのような介護ができないというフラストレーションである.換言すれば,介護職員はやりたい介護,やらなければならない介護ができない状況であり,業務をこなすだけの作業人になってしまっている現状が示唆された.

日本社会福祉学会

介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf

“わかっていても苛立ち”とはʻ利用者の言動は病気の症状であり,仕方のないことであると理解しているものの,その言動に苛立ってしまうことʼである.「頭ではみんな認知症なのでわからないことがある,何度も何度も同じことをいうっていう状況があって当たり前なのは頭では理解しているんだけれども,忙しい業務のなかで,何度も何度も同じ話を聞かれたりだとか,わけわからない行動をされたときに,『こんなに忙しいのに』って」頭のなかでは,利用者の行動の背景を考えて対応するということは理解しているが,業務のなかのさまざまな焦り・苛立ちのなかで,理解してはいるものの苛立ちが生起するという状況に追い込まれていた.

帰宅の訴えが続く場面では、命令や否定を避け、その人にとって安心できる言葉を探します。本人のできることに目を向け、自己決定を尊重します。

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認知症の「家に帰りたい」への対応で見る4つの視点

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現場では、「今日は帰れません」と正しく説明しても、数分後に同じ訴えが戻り、説明の仕方が悪かったのかと迷うことがあります。対応では、本人の生活歴や感情、周囲の環境、ケアスタッフの心身状態にも目を向けます。ここでは、その4つの視点を説明します。

ある現場では、内線で家族役をして話すと安心した人がいる一方、電話の後も帰宅の訴えが変わらない人がいました。最初の3~4回は丁寧に答えられても、食事や排泄、服薬などが重なると、説明を短く強くしてしまい、後で自分の対応を責めることもあります。こうした場面では、本人の生活歴や感情、周囲の環境、ケアスタッフの心身状態に目を向けます。

本人の生活歴・感情・できることに目を向ける

「迎えを呼んでください」と言われ、ほかの介助も迫る場面では、帰れるかどうかを先に答えるか、背景を見るかで迷います。長く話を聞く余裕がないと、表面の要求だけを処理してしまい、同じやり取りへ戻る苦しさが残ります。最初に対応した介護士は、本人の表情を観察し、生活歴や感情、できることに目を向けます。

本人を理解する際は、「帰りたい」という言葉だけでなく、生活歴、感情、できることにも目を向けます。理想は、その人らしさを丁寧に捉えることです。しかし、複数の介助が重なると、長時間話を聞くことは難しく、帰宅できるかどうかだけを答えてしまいがちです。押さえたいのは、まず一人の人として接し、生活歴、残された力、感情へ目を向けることです。

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認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

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認知症患者との関りにおける前提として,他の患者と同じ「人」として接することである.認知症患者がいる目の前で本人が傷つく話をする,無視する,怒鳴るなど,「人」として傷つく行為は行わないようにする.その上で認知症看護の基本として,以下7点を挙げる.①その人らしく存在していられることを支援.②できることに目を向け,本人が有する力を最大限に活かせるよう,自己決定を尊重.③生活歴を知り,生活の継続性を保つケア環境.④感情・情緒に配慮した,心地よいケアやコミュニケーション.⑤家族やケアスタッフの心身状態にも配慮.

否定を重ねるほど毎回否定された体験になり得るから

数分おきに同じ訴えが戻ると、「今日は泊まりです」「帰れません」と、前より強い調子で結論を返したくなります。周囲で「何回言えば分かるんだ」といった言葉が出た場面もあり、説明を続けることと、本人を責めることの境目で迷いが生じました。同じ否定をもう一度言いそうだと気づいた時点で、安心できる表現へ一度言い換えます。

否定を重ねることが問題になる理由は、職員には一回ずつの返答でも、同じ行動をする本人には毎回否定される形になるためです。理想は、自尊心を傷つけず、安心できる言葉を選ぶことです。しかし、忙しい場面では、短く正確に伝えようとして「帰れません」という結論だけを返しやすくなります。そのずれは、気分の落ち込みや易怒性などにつながることがあります。押さえたいのは、説明の正しさより、命令、子ども扱い、否定の反復になっていないかです。その人にとって安心できる言葉を探します。

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国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 認知症・せん妄サポートチーム(D2ST),身体拘束最小化チーム

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

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コミュニケーションをとる上で,注意する言葉が3つある.それは,「命令する言葉」,「子ども扱いする言葉」,「相手を否定する言葉(スピーチロック)」である.この3つの言葉は,相手の自尊心を傷つけることになる.特に,相手を否定する言葉は,私たちは一瞬一瞬で使用しているつもりでも,認知症患者が何度も同じ行動をとる場合は毎回否定されることになり,気分の落ち込みや易怒性などに繋がることがある.そのため,安心できる言葉がけや言い換えを使用する.例えば,「帰れません」は「ここにいて大丈夫ですよ」,「立たないでください」は「座っていていいですよ」などである.他に安心できる言葉として「安心して下さいね」や「任せて下さい」など,その人にとって安心できる言葉を探すことが大切である.

言葉だけでなく環境と関係性も影響するから

人の多い施設で不安な高齢女性と静かな場所で介護職と落ち着く様子の比較

食事前後の慌ただしい時間に帰宅の訴えが続くと、声かけの文言だけを何度も変え、周囲の音や人の動きを見る余裕がなくなります。穏やかな言葉を選んでも反応が変わらないと、さらに別の言い方を探すべきか迷います。訴えが出た場所、音、周囲の人、直前の状況にも目を向けます。

声かけに加え、光や音などの物理的環境と、支援者との関係にも目を向けます。理想は、落ち着いて話せる環境と信頼関係の両方を見ることです。資料は病院環境を例にしているため、施設へ個別例をそのまま当てはめるのではなく、環境と関係性も観察する視点として用います。対応している介護士は、場所、音、周囲の人、本人の表情を確認します。

声かけ以外の環境にも目を向ける

穏やかに声をかけても反応が変わらないときは、本人の不安や羞恥心だけでなく、周囲の音や人の動きなど、落ち着きにくさにつながる環境も一緒に見直すと、次の手がかりを探しやすくなります。

詳しくは、認知症のトイレ拒否が起きる原因とは|声かけ・環境・本人の不安から考える対応で確認できます。

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国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 認知症・せん妄サポートチーム(D2ST),身体拘束最小化チーム

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

認知症患者を取り巻く環境は,物理的環境,社会的環境,運営的環境の3つの側面でとらえることができる.物理的環境では,光や音,におい,温度などが影響する.例えば,モニターやナースコール,同室者の声など,音刺激が過剰となる場合がある.認知症患者は,刺激を選択することが困難になりやすく,自分に関係ない音を聞き流すことができず,混乱に繋がったりする.そのため,静かな環境になるよう調整が必要となる.社会的環境としては,医療従事者も環境となる.入院環境において医療従事者との信頼関係が崩れた場合,家族と離れた生活をする認知症患者にとって,味方が全くいない環境となる.不安や緊張などから混乱に至る場合があり,入院時は早期に信頼関係を築くかかわり方が必要である.

終わらない業務と繰り返し訴えが職員を疲弊させるから

ある勤務では、一人で約25人を見ながら複数の介助が重なり、帰宅の訴えに何度も返事をするうちに言葉が雑になりました。無視してしまった後には、「認知症ケアに向いていないのではないか」と勤務後まで自分を責めることもあります。繰り返し訴えや業務の重なりで生じる焦りや苛立ちにも目を向けます。

職員側の焦りも関係する理由は、複数業務と繰り返し訴えが重なる状況が、介護職員を疲弊させ、苛立ちへつながる過程として示されているためです。理想は、毎回時間を取り、一声ずつ丁寧に関わることです。しかし、最低限の援助で手いっぱいになり、分かっていてもその介護ができない現実があります。そのずれは、やりたい介護ができないフラストレーションや、分かっていても苛立つ状況につながります。これは質的研究で示された参加者の過程であり、すべての職員へ同じように一般化はできません。押さえたいのは、苛立ちを職員の人格だけで片づけず、強い言葉を正当化もしないことです。対応中の介護士は、自分の焦りや苛立ちを含む心身状態にも目を向けます。

忙しさからケアが崩れる流れを知る

焦りや苛立ちを職員個人の問題だけで終わらせず、心身の不調や終わらない業務、自己否定が重なるなかで、どの時点から関わりが崩れていくのかを整理すると、早めの見直しにつなげやすくなります。

詳しくは、不適切ケアに気づけない理由|忙しい現場で迷う瞬間の整理で確認できます。

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日本社会福祉学会

介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf

色々な業務が重なり,介護職員が身体的にも,精神的にも,追い詰められた状態となり,苛立ちが生まれていた.“繰り返される訴えへの苛立ち”とはʻ利用者の繰り返される訴えや繰り返される行動・心理症状への対応に苛立つことʼである.「何回も同じことを聞いてくる入居者がいて,その頻度も1分に1回とか,頻回なんですね」「ちゃんとした正しい答えを返しても,また5分後には同じ訴えが来るっていうところのやっぱり大変さ,辛さ」何度も同じ訴えを繰り返されると,対応しているのに変化がみられないことに苛立ってしまう状況となる.このような終わりの見えない介護は,介護職員を疲弊させて苛立たせていた.

日本社会福祉学会

介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf

“やりたいけどできない”とはʻ利用者に対して,もっと違う介護をしてあげたいと思っているのに,そのような介護ができないことʼである.「今ある介助,最低限の援助でいっぱいいっぱいで,時間を作ってあげられないなっていうところのイライラ」「本当はちゃんと一声,一声かけてやるのが,時間かけてやるのがってわかっているんですけど,まぁそうはうまくはいかないっていうか」利用者の症状や言動に対して,どのように対応すればよいのかわかっていても,そのような介護ができないというフラストレーションである.換言すれば,介護職員はやりたい介護,やらなければならない介護ができない状況であり,業務をこなすだけの作業人になってしまっている現状が示唆された.

日本社会福祉学会

介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf

“わかっていても苛立ち”とはʻ利用者の言動は病気の症状であり,仕方のないことであると理解しているものの,その言動に苛立ってしまうことʼである.「頭ではみんな認知症なのでわからないことがある,何度も何度も同じことをいうっていう状況があって当たり前なのは頭では理解しているんだけれども,忙しい業務のなかで,何度も何度も同じ話を聞かれたりだとか,わけわからない行動をされたときに,『こんなに忙しいのに』って」頭のなかでは,利用者の行動の背景を考えて対応するということは理解しているが,業務のなかのさまざまな焦り・苛立ちのなかで,理解してはいるものの苛立ちが生起するという状況に追い込まれていた.

帰宅の訴えへの対応では、本人の生活歴や感情、否定の反復、環境と関係性、職員の焦りに目を向けます。

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認知症の帰宅願望に関するよくある質問

現場では、「家に帰りたい」と数分ごとに言われ、説明を続けるべきか迷うことがあります。ほかの介助も重なるなかで、同じ訴えにどう返せばよいのか分からなくなる場面を整理します。

Q
「帰れません」と事実を伝えてはいけませんか?
A

「帰れません」と繰り返すより、まずは「ここにいて大丈夫ですよ」など、安心できる言葉へ言い換えます。数分後に同じ訴えが戻ると説明を足したくなりますが、否定する言葉は自尊心を傷つけ、気分の落ち込みや易怒性につながることがあるため、その人に合う言葉を探します。

出典・根拠を確認

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 認知症・せん妄サポートチーム(D2ST),身体拘束最小化チーム

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

コミュニケーションをとる上で,注意する言葉が3つある.それは,「命令する言葉」,「子ども扱いする言葉」,「相手を否定する言葉(スピーチロック)」である.この3つの言葉は,相手の自尊心を傷つけることになる.特に,相手を否定する言葉は,私たちは一瞬一瞬で使用しているつもりでも,認知症患者が何度も同じ行動をとる場合は毎回否定されることになり,気分の落ち込みや易怒性などに繋がることがある.そのため,安心できる言葉がけや言い換えを使用する.例えば,「帰れません」は「ここにいて大丈夫ですよ」,「立たないでください」は「座っていていいですよ」などである.他に安心できる言葉として「安心して下さいね」や「任せて下さい」など,その人にとって安心できる言葉を探すことが大切である.

Q
最初に何へ目を向ければよいですか?
A

本人の生活歴や感情、できることに目を向け、自己決定を尊重します。言葉だけでなく、表情にも注意を向けます。

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国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 認知症・せん妄サポートチーム(D2ST),身体拘束最小化チーム

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

認知症患者との関りにおける前提として,他の患者と同じ「人」として接することである.認知症患者がいる目の前で本人が傷つく話をする,無視する,怒鳴るなど,「人」として傷つく行為は行わないようにする.その上で認知症看護の基本として,以下7点を挙げる.①その人らしく存在していられることを支援.②できることに目を向け,本人が有する力を最大限に活かせるよう,自己決定を尊重.③生活歴を知り,生活の継続性を保つケア環境.④感情・情緒に配慮した,心地よいケアやコミュニケーション.⑤家族やケアスタッフの心身状態にも配慮.

Q
同じ声かけで落ち着かないときはどうしますか?
A

その人にとって安心できる言葉を探し、光や音、周囲の人との関係にも目を向けます。電話で安心する人も変わらない人もいた経験から、一度うまくいった方法を全員の正解にはしません。

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国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 認知症・せん妄サポートチーム(D2ST),身体拘束最小化チーム

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

コミュニケーションをとる上で,注意する言葉が3つある.それは,「命令する言葉」,「子ども扱いする言葉」,「相手を否定する言葉(スピーチロック)」である.この3つの言葉は,相手の自尊心を傷つけることになる.特に,相手を否定する言葉は,私たちは一瞬一瞬で使用しているつもりでも,認知症患者が何度も同じ行動をとる場合は毎回否定されることになり,気分の落ち込みや易怒性などに繋がることがある.そのため,安心できる言葉がけや言い換えを使用する.例えば,「帰れません」は「ここにいて大丈夫ですよ」,「立たないでください」は「座っていていいですよ」などである.他に安心できる言葉として「安心して下さいね」や「任せて下さい」など,その人にとって安心できる言葉を探すことが大切である.

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 認知症・せん妄サポートチーム(D2ST),身体拘束最小化チーム

認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版

https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf

認知症患者を取り巻く環境は,物理的環境,社会的環境,運営的環境の3つの側面でとらえることができる.物理的環境では,光や音,におい,温度などが影響する.例えば,モニターやナースコール,同室者の声など,音刺激が過剰となる場合がある.認知症患者は,刺激を選択することが困難になりやすく,自分に関係ない音を聞き流すことができず,混乱に繋がったりする.そのため,静かな環境になるよう調整が必要となる.社会的環境としては,医療従事者も環境となる.入院環境において医療従事者との信頼関係が崩れた場合,家族と離れた生活をする認知症患者にとって,味方が全くいない環境となる.不安や緊張などから混乱に至る場合があり,入院時は早期に信頼関係を築くかかわり方が必要である.

Q
何度も言われてイライラするのは介護職失格ですか?
A

繰り返される訴えと複数の業務が重なるなかでは、対応しても変化が見えないことや、望むケアができないことが苛立ちにつながる過程が示されています。この背景を職員の人格だけに帰さず、ケアスタッフの心身状態にも目を向けます。

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日本社会福祉学会

介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf

色々な業務が重なり,介護職員が身体的にも,精神的にも,追い詰められた状態となり,苛立ちが生まれていた.“繰り返される訴えへの苛立ち”とはʻ利用者の繰り返される訴えや繰り返される行動・心理症状への対応に苛立つことʼである.「何回も同じことを聞いてくる入居者がいて,その頻度も1分に1回とか,頻回なんですね」「ちゃんとした正しい答えを返しても,また5分後には同じ訴えが来るっていうところのやっぱり大変さ,辛さ」何度も同じ訴えを繰り返されると,対応しているのに変化がみられないことに苛立ってしまう状況となる.このような終わりの見えない介護は,介護職員を疲弊させて苛立たせていた.

日本社会福祉学会

介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf

“やりたいけどできない”とはʻ利用者に対して,もっと違う介護をしてあげたいと思っているのに,そのような介護ができないことʼである.「今ある介助,最低限の援助でいっぱいいっぱいで,時間を作ってあげられないなっていうところのイライラ」「本当はちゃんと一声,一声かけてやるのが,時間かけてやるのがってわかっているんですけど,まぁそうはうまくはいかないっていうか」利用者の症状や言動に対して,どのように対応すればよいのかわかっていても,そのような介護ができないというフラストレーションである.換言すれば,介護職員はやりたい介護,やらなければならない介護ができない状況であり,業務をこなすだけの作業人になってしまっている現状が示唆された.

日本社会福祉学会

介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf

“わかっていても苛立ち”とはʻ利用者の言動は病気の症状であり,仕方のないことであると理解しているものの,その言動に苛立ってしまうことʼである.「頭ではみんな認知症なのでわからないことがある,何度も何度も同じことをいうっていう状況があって当たり前なのは頭では理解しているんだけれども,忙しい業務のなかで,何度も何度も同じ話を聞かれたりだとか,わけわからない行動をされたときに,『こんなに忙しいのに』って」頭のなかでは,利用者の行動の背景を考えて対応するということは理解しているが,業務のなかのさまざまな焦り・苛立ちのなかで,理解してはいるものの苛立ちが生起するという状況に追い込まれていた.

帰宅訴えには、命令や否定を避け、その人にとって安心できる言葉を探します。生活歴や感情、できること、周囲の環境、ケアスタッフの心身状態にも目を向けます。


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認知症の「家に帰りたい」には不安を増やさない一言から始める

現場では、「家に帰りたい」と何度も言われるうち、最初は丁寧に返せても、次の介助が重なると「また同じ説明をするのか」と迷いやすくなります。

大切なのは、帰れないことをすぐ納得してもらうより、本人の不安を増やさないことです。まず命令や否定を避け、その人にとって安心できる言葉を探します。

安心できる言葉を探し、光や音、人との関係などの環境にも目を向けます。一度で落ち着かなくても、それだけで対応の失敗とは決めません。

明日からは、「帰れません」と返しそうになった時点で、「ここにいて大丈夫ですよ」などへ一度言い換えます

毎回長く付き添えない時間帯があっても、最初の一言なら準備できます。最後までご覧いただきありがとうございます。


更新履歴

  • 2026年1月17日:新規投稿
  • 2026年9月21日:内容を全面的にリライト

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