介護の現場では、落ち着いて対応したいと思っていても、実際はコールや介助が重なり、その通りに動けない時間があります。
頭では分かっているのに、気持ちが追いつかない。そんな場面が続くと、「自分が弱いのでは」と考えやすくなります。
この記事では、介護職のイライラや自分責めを、気持ちの問題だけで片づけず、エビデンスの範囲で整理します。
結論:介護職の苛立ちは悪循環しやすい

ここでは、その背景をエビデンスの範囲で整理します。
心身の不調や業務の焦りが、苛立ちやすさにつながる
介護職員は、心身状態の不調やモチベーションの低下という苛立ちやすい状態で業務につき、そのなかで終わらない業務への焦りや利用者への苛立ちが生起していたとされています。
出典元の要点(要約)
社会福祉学介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf
「分析の結果,介護職員は〈心身状態の不調〉〈モチベーションの低下〉という苛立ちやすい状態で業務につき,そのなかで〈終わらない業務への焦り〉,〈利用者への苛立ち〉が生起していた.」
認知症ケアでは、否定的感情と疲弊、不安が重なりやすい
認知症ケア実践者の精神的負担は、ケアの対象者にネガティブな感情を抱きながら、BPSD対応に疲弊し、困難なケアへの不安を感じ、倫理的苦悩にも押しつぶされている状態と定義されています。
出典元の要点(要約)
日本看護科学会誌介護施設における認知症ケア実践者の精神的負担の概念分析
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/45/0/45_214/_pdf/-char/ja
「結論:介護施設における認知症ケア実践者の精神的負担は「ケアの対象者に対してネガティブな感情を抱きながら,BPSD対応に疲弊し,困難なケアへの不安を常に感じている一方で,倫理的苦悩にも押しつぶされている状態」と定義した.」
利用者への苛立ちは、自分自身への苛立ちへ移りやすい
介護職員の利用者への苛立ちは、最終的に自分自身への苛立ちとなり、焦りや苛立ちが悪循環していくプロセスとなっていたとされています。
出典元の要点(要約)
社会福祉学介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf
「そして最終的に介護職員の〈利用者への苛立ち〉は〈自分自身への苛立ち〉となり,諸種の焦りや苛立ちが悪循環していくプロセスとなっていた.」
心身の不調、業務の焦り、認知症ケアの負担、自分自身への苛立ちが重なりやすい背景を整理します。
よくある事例:介護職のイライラが重なりやすい場面

ここでは、エビデンスで確認できる範囲だけで、介護職のイライラが重なりやすい場面を整理します。
認知症の症状だと分かっていても、苛立ってしまう
この表は、認知症の症状だと理解していても苛立ってしまう場面を整理したものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 状況 | 利用者の言動は病気の症状だと理解している |
| 困りごと | 理解していても苛立ちが生じる |
| よくある誤解 | 分かっていれば苛立たないはずだ |
| 押さえるべき視点 | 焦りや苛立ちの中では、理解と感情がずれることがある |
この表からは、理解していても苛立ってしまうことがあると整理されています。
出典元の要点(要約)
社会福祉学介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf
「“わかっていても苛立ち”とは‘利用者の言動は病気の症状であり,仕方のないことであると理解しているものの,その言動に苛立ってしまうこと’である.」
時間に追われるほど、業務の焦りが強くなる
この表は、時間に追われるほど業務の焦りが強くなる場面を示しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 状況 | 担当業務を時間内に終わらせなければならない |
| 困りごと | 時間に迫られて焦りやすい |
| よくある誤解 | 要領の問題だけだ |
| 押さえるべき視点 | 時間に追われる現実そのものが焦りを強める |
この表からは、終わらない業務への焦りが、現場の流れの中で強まりやすいことが整理されています。
出典元の要点(要約)
社会福祉学介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf
「“迫りくる時間への焦り”とは‘自分の担当業務を時間内に終わらせなければならないと焦ってしまうこと’である.」
夜勤の少人数帯では、不安が強くなりやすい
この表は、BPSD対応を抱える夜勤の少人数帯で不安が強くなりやすい場面を整理したものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 状況 | 夜勤でスタッフが少ない中、BPSDに対応する |
| 困りごと | 不安が強くなりやすい |
| よくある誤解 | 慣れれば不安はなくなる |
| 押さえるべき視点 | 少人数での対応は、不安の増強要因として示されている |
この表からは、夜勤への不安が増強すると整理されています。
出典元の要点(要約)
日本看護科学会誌介護施設における認知症ケア実践者の精神的負担の概念分析
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/45/0/45_214/_pdf/-char/ja
「特に夜勤のスタッフが少ない中で BPSDに対応しなければいけないことは,〈夜勤への不安〉を増強させるだろう.」
利用者への苛立ちが、自分への苛立ちに変わる
この表は、利用者への苛立ちが自分への苛立ちに変わる流れを整理しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 状況 | 利用者への苛立ちが出る |
| 困りごと | その後に自分を嫌悪しやすい |
| よくある誤解 | 利用者への苛立ちだけを見ればよい |
| 押さえるべき視点 | 苛立ちは自分自身への苛立ちへ移り、悪循環しやすい |
この表からは、利用者への苛立ちが自分自身への苛立ちへ移る流れが整理されています。
出典元の要点(要約)
社会福祉学介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf
「そして〈利用者への苛立ち〉は,“自然に乱れる介護”となり,そのことで介護職員は“苛立つ自分への嫌悪・否定”をするようになり,〈自分自身への苛立ち〉が出現するようになっていた.」
理解していても苛立つこと、時間に追われること、少人数で不安が強まること、自分責めに移ることが重なる流れが示されています。
理由:介護職のイライラはなぜ起きるのか

ここでは、介護職のイライラがなぜ起きやすいのかを、エビデンスで確認できる範囲だけで整理します。
対象者に否定的感情を抱きながらケアする場面があるため
この表は、認知症ケアで対象者に否定的感情を抱きながらケアする理由を示したものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 建前 | 対象者の立場に立って関わる |
| 現実 | イライラや怒り、恐れを感じることがある |
| 押さえるべき視点 | 否定的感情を抱くこと自体が、精神的負担の一部として示されている |
この表からは、対象者にイライラや怒り、恐れを感じることがあると整理されています。
出典元の要点(要約)
日本看護科学会誌介護施設における認知症ケア実践者の精神的負担の概念分析
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/45/0/45_214/_pdf/-char/ja
「認知症ケア実践者は,ケアの対象者にイライラや怒り,恐れを感じ,その言動に対し「じっとしていて欲しい,静かにしていて欲しい」と思い,面倒をかけられているという負担を感じていた.」
症状を理解していても、業務の焦りが重なるため
この表は、利用者の症状を理解していても業務の焦りが重なる理由を整理しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 建前 | 症状の背景を考えて対応する |
| 現実 | 焦りや苛立ちの中で、理解していても苛立ちが生じる |
| 押さえるべき視点 | 理解不足だけでなく、業務の焦りも重なっている |
この表からは、理解していても苛立ちが生起する状況があると整理されています。
出典元の要点(要約)
社会福祉学介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf
「頭のなかでは,利用者の行動の背景を考えて対応するということは理解しているが,業務のなかのさまざまな焦り・苛立ちのなかで,理解してはいるものの苛立ちが生起するという状況に追い込まれていた.」
怒りや嫌悪を自分の中に留めようとするため
この表は、怒りや嫌悪を自分の中に留めようとする理由を示しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 建前 | 感情を表に出さずに働く |
| 現実 | 怒りや嫌悪を自分の中で留めようとする |
| 押さえるべき視点 | 感情を抑えること自体が、負担の背景になっている |
この表からは、怒りや嫌悪を自分の中で留めようとすると整理されています。
出典元の要点(要約)
日本看護科学会誌介護施設における認知症ケア実践者の精神的負担の概念分析
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/45/0/45_214/_pdf/-char/ja
「そして心身機能が衰えつつある高齢対象者に,怒りや嫌悪の感情をぶつけるわけにはいかず,そのことを十分に理解しているケア実践者は,怒りや嫌悪を自分の中で留めようとする」
心身の不調やモチベーション低下が土台にあるため
この表は、心身の不調やモチベーション低下が土台にある理由を整理したものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 建前 | 疲れていても平常心で働く |
| 現実 | 心身状態の不調やモチベーション低下がある |
| 押さえるべき視点 | 苛立ちは、その状態の上で起きやすくなる |
この表からは、〈心身状態の不調〉〈モチベーションの低下〉という苛立ちやすい状態が示されています。
出典元の要点(要約)
社会福祉学介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf
「分析の結果,介護職員は〈心身状態の不調〉〈モチベーションの低下〉という苛立ちやすい状態で業務につき,そのなかで〈終わらない業務への焦り〉,〈利用者への苛立ち〉が生起していた.」
まずは自分のストレスに気づく必要があるため
この表は、まず自分のストレスに気づく必要がある理由をまとめたものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 建前 | 気合いで整える |
| 現実 | 自分のストレスに気づけないと整理しにくい |
| 押さえるべき視点 | 最初の一歩は、ストレスへの気づきと認識に置かれている |
この表からは、自らのストレスや心の健康状態について正しく認識できるようにする必要があるとされています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省職場における心の健康づくり
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153859.pdf
「ストレスに気づくためには、労働者がストレス要因に対するストレス反応や心の健康について理解するとともに、自らのストレスや心の健康状態について正しく認識できるようにする必要がある。」
否定的感情、業務の焦り、怒りや嫌悪を自分の中に留めようとすること、心身状態の不調やモチベーションの低下が示されています。
FAQ:介護職のイライラとストレスに関する疑問
ここでは、エビデンスで確認できる範囲だけで、よくある疑問を整理します。
- Q介護職が利用者にイライラするのは珍しいことですか?
- A提示済みエビデンスでは、介護職員が利用者にイライラしたり、ムカッとしたりすることは、珍しいことではないとされています。
出典元の要点(要約)
社会福祉学
介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf
「このように,介護職員が利用者に対して,イライラしたり,ムカッとすることは珍しいことではない.」
- Q頭では分かっているのに苛立つのはなぜですか?
- Aエビデンスでは、利用者の行動の背景を考えて対応することは理解していても、業務のなかのさまざまな焦りや苛立ちのなかで、苛立ちが生起する状況に追い込まれていたとされています。
出典元の要点(要約)
社会福祉学
介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf
「頭のなかでは,利用者の行動の背景を考えて対応するということは理解しているが,業務のなかのさまざまな焦り・苛立ちのなかで,理解してはいるものの苛立ちが生起するという状況に追い込まれていた.」
- Qイライラのあとに自分を責めるのは、よくある流れですか?
- A提示済みエビデンスでは、利用者への苛立ちは、自分自身への苛立ちとなり、悪循環していくプロセスとなっていたとされています。
出典元の要点(要約)
社会福祉学
介護職員が利用者に対して苛立っていくプロセス
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/60/4/60_56/_pdf
「そして最終的に介護職員の〈利用者への苛立ち〉は〈自分自身への苛立ち〉となり,諸種の焦りや苛立ちが悪循環していくプロセスとなっていた.」
- Qまず最初に意識するなら何ですか?
- A厚生労働省の資料では、労働者が自らのストレスや心の健康状態について正しく認識できるようにする必要があるとされています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
職場における心の健康づくり
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153859.pdf
「ストレスに気づくためには、労働者がストレス要因に対するストレス反応や心の健康について理解するとともに、自らのストレスや心の健康状態について正しく認識できるようにする必要がある。」
- Q相談しやすい環境は必要ですか?
- A厚生労働省の資料では、労働者自身が管理監督者や事業場内産業保健スタッフ等に自発的に相談しやすい環境を整えるものとするとされています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
職場における心の健康づくり
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153859.pdf
「また、6(3)に掲げるところにより相談体制の整備を図り、労働者自身が管理監督者や事業場内産業保健スタッフ等に自発的に相談しやすい環境を整えるものとする。」
ストレスへの気づきと、相談しやすい環境を整えることが必要とされています。
まとめ:介護職のイライラを整理するための最初の一歩
介護の現場では、落ち着いて関わりたいと思うほど、現実の忙しさとのずれが苦しくなることがあります。頭では分かっていても、時間や人手に追われると、その通りに動けない場面は出てきます。
この記事で確認してきたように、心身状態の不調、終わらない業務への焦り、認知症ケアの精神的負担、自分自身への苛立ちは切り離して見にくいものです。どれか一つだけを責めるより、重なりとして捉えたほうが整理しやすくなります。
明日からの最初の一歩として、無理に気持ちを切り替えようとするより、まずは自分のストレスや心の健康状態に気づくことを意識するほうが現実的です。今つらいのが何によるものかを言葉にできるだけでも、抱え方は少し変わります。
最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。
関連コンテンツ
更新履歴
- 2026年1月8日:新規投稿
- 2026年3月27日:より詳細なエビデンス(根拠)に基づき解説を充実させるとともに、最新のサイト基準に合わせて構成・レイアウトを見やすく刷新。
タイトルとURLをコピーしました







