救急隊から「家族の連絡先を教えて」と聞かれ、手元にあるのに「本人が嫌がっていた」と躊躇する。そんな板挟みに、胸を痛めていませんか。
「勝手に教えたら守秘義務違反になる」という恐怖と、「命には代えられない」という正義感。全部は無理でも、例外ルールさえ知れば、迷いを減らすことができます。
この記事を読むと分かること
- 同意なしで提供できる「例外」
- 救急・警察への提供根拠
- 守秘義務違反にならない記録法
- 本人と家族を守る情報共有術
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
結論:「隠すこと」が正解とは限りません。命を守る緊急時、法律は「話すこと」を認める場合があります。

現場では、「個人情報は絶対に教えない」という強い防衛意識が働きがちです。特に本人が拒否していた場合、教えることへの心理的ハードルはさらに上がります。
しかし、個人情報保護法は、利用者の生命や身体を守るための活用を禁じてはいません。迷った時の判断基準として、「今、情報を出さないと命に危険が及ぶか」という視点が重要です。
人の生命・身体を守るためなら「本人の同意なし」でも提供できます
「本人の同意がなければ、家族の連絡先も教えられない」と思っていませんか?実は、これには明確な例外があります。
個人情報保護法では、「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」は、本人の同意なく個人データを第三者に提供できると定めています。
つまり、意識不明で倒れた時や、虐待で身体に危険が及んでいる時などは、この例外規定に基づき、救急隊や関係機関へ情報提供することが法的に認められると考えられます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
意識不明等で本人の同意を得られない場合環境でも、人の生命、身体又は財産の保護のために必要があるときは、個人情報保護法の例外として本人同意なしでの情報の取得や提供が可能である。
虐待対応や警察への協力も「正当な理由」になります
「役所や警察相手でも、守秘義務があるから話せない」と悩む必要はありません。
法令に基づく場合(高齢者虐待防止法や刑事訴訟法など)は、本人の同意がなくても情報提供が可能です。虐待の疑いがある場合の通報や調査への協力は、むしろ利用者の権利を守るために求められる行動と言えます。
「守秘義務」は大切ですが、それが利用者の安全を脅かす壁になってはいけません。法律は、必要な連携を後押ししています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
法令に基づく場合(刑事訴訟法に基づく捜査関係事項照会等)や、人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合などは、本人の同意なく個人データを提供することが認められている。
迷ったら「根拠」を持って提供し、記録に残すことが重要です
「後で家族からクレームが来たらどうしよう」という不安への対処法は一つです。それは、提供した理由を記録に残すことです。
「意識レベルが悪く緊急搬送が必要だったため、生命保護の例外規定に基づき救急隊へ連絡先を提供した」と記録にあれば、それは守秘義務違反ではなく、正当な業務行為として認められる可能性が高いと考えられます。
自分の身を守るためにも、「なんとなく教える」のではなく、「法に基づいて教える」という意識を持つことが重要です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
個人情報保護法の例外規定に基づき情報提供を行う場合は、その判断根拠(生命保護の必要性等)を記録に残すことが重要である。
個人情報は「隠すもの」ではなく、利用者の命を守るために「正しく使うもの」です。緊急時や法令に基づく場合は、本人の同意がなくても提供できる例外があります。このルールを知り、根拠を持って行動することが、利用者とあなた自身を守る盾になります。
「教えるべきか、隠すべきか」現場で迷う3つのケース

マニュアルには「同意が必要」と書いてあっても、現場では同意書を取る暇もない緊急事態が起こります。
そんな時、個人情報保護法の例外ルールが実際にどう適用されるのか。よくある3つのシチューションを通して、具体的な判断基準を確認していきましょう。
事例1:救急搬送時、隊員に「家族の連絡先」を聞かれた
独居の利用者が自宅で倒れ、意識不明の状態で発見されました。到着した救急隊員から「親族の連絡先を知りませんか?」と聞かれましたが、本人は以前「家族とは絶縁している、絶対に連絡しないでほしい」と話していました。
| 状況 | 本人は意識がなく、家族への連絡を拒否していた経緯がある。 |
|---|---|
| 困りごと | 本人の意思を尊重して隠すべきか、救命のために教えるべきか判断できない。 |
| よくある誤解 | 本人の拒否がある以上、どんな緊急時でも教えてはいけない。 |
| 押さえるべき視点 | 生命の危険があるため「例外規定」が適用され、提供は許容される可能性が高い。 |
意識不明で生命の危険がある場合、「人の生命・身体の保護」が最優先されます。本人の同意を得ることが困難であるため、個人情報保護法の例外として提供が可能と考えられます。ただし、提供時には、本人の同意を得ることが困難であった状況などを共有することが考えられます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
意識不明等で本人の同意を得られない場合でも、人の生命、身体又は財産の保護のために必要があるときは、個人情報保護法の例外として本人同意なしでの情報の取得や提供が可能である。家族等の特定のために所持品を確認することも「不正な手段」には当たらない。
事例2:虐待の疑いがあり、地域包括から情報提供を求められた
訪問介護に入った際、利用者の身体に不審なアザや傷を見つけました。地域包括支援センターに通報したところ、職員から「詳細な家族構成や、同居家族の状況を教えてほしい」と求められました。
| 状況 | 虐待の疑いで通報し、行政機関から詳細情報の提供を求められた。 |
|---|---|
| 困りごと | 虐待しているかもしれない家族の情報を、本人の同意なく話して良いか不安。 |
| よくある誤解 | 守秘義務があるため、役所であっても本人の同意書がないと話せない。 |
| 押さえるべき視点 | 虐待対応は利用者の身体保護に直結するための優先順位がある。 |
高齢者虐待防止法などの法令に基づく場合や、利用者の身体を守る必要がある場合は、本人の同意がなくても情報提供が認められています。虐待対応において、守秘義務を理由に情報を隠すことは、かえって利用者を危険に晒すことになりかねません。
出典元の要点(要約)
厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
法令に基づく場合(刑事訴訟法に基づく捜査関係事項照会等)や、人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合などは、本人の同意なく個人データを提供することが認められている。
事例3:転院先の病院へ送るサマリーに「疎遠な娘」の連絡先を書くか
施設から病院へ転院することになりました。診療情報提供書(サマリー)を作成する際、キーパーソンとして登録されているものの、普段全く関わりのない「疎遠な娘」の連絡先を記載すべきか迷っています。
| 状況 | 転院時のサマリーに、疎遠な親族の連絡先を記載するか判断に迷う。 |
|---|---|
| 困りごと | 本人は嫌がるかもしれないが、病院側は緊急時のために情報を欲しがる。 |
| よくある誤解 | 医療連携のためなら、本人の同意なしに無条件ですべて共有して良い。 |
| 押さえるべき視点 | 継続的な医療のために必要なら提供は許容されるが、疎遠である事実も伝える。 |
医療機関間の連携や継続的な治療のために必要であり、それが心身の保護や公衆衛生の向上のために特に必要があると判断できる場合は、提供が許容される範囲と考えられます。ただし、トラブル防止のため、「長年疎遠である」という付帯情報もセットで申し送ることが望ましいと考えられます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき、または人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合などは、第三者提供の例外として認められる可能性がある。
どの事例も共通しているのは、「今、情報を出さないと利用者が不利益を被るか」という視点です。救急搬送や虐待対応は待ったなしの状況です。迷った時は「例外規定」を思い出し、利用者の命と安全を守るための選択をしてください。
なぜ、現場はこんなにも「情報共有」に萎縮してしまうのか

「教えた方がいい」と頭では分かっていても、いざとなると恐怖が勝ってしまう。多くの介護職員が抱えるこの葛藤には、実は構造的な原因があります。
法律の「本来の目的」と、現場に広がる「誤解」のギャップを知ることが、不要なプレッシャーから解放される第一歩です。
「個人情報保護法=情報を隠す法律」という根強い誤解
現場では、「個人情報保護法は、情報を一切漏らさないための法律だ」と信じ込まれていることが少なくありません。
しかし、この法律の本来の目的は「個人の権利利益を保護すること」であり、その中には当然、生命や身体の安全を守ることも含まれています。
つまり、利用者の命を守るために情報を活用することは、法の趣旨に反するどころか、法の目的にかなう行為であるとも解釈できます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
個人情報保護法は、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的としている。人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合などは、本人の同意なく第三者提供が可能である。
「教えないリスク」より「教えるリスク」を過大に恐れている
「もし教えてしまって、後でクレームになったら…」という不安から、現場では過剰なまでの防衛反応が働きがちです。
しかし、本当に恐れるべきは「教えたことによるクレーム」よりも、「教えなかったことで利用者の命が救えなかった」という事態ではないでしょうか。
虐待や急病といった緊急時には、情報を隠すことの方が、法的にも倫理的にも大きなリスクになり得るという視点を持つ必要があります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
虐待対応や救急搬送等の場面では、守秘義務や個人情報保護を理由に情報提供を拒むことで、かえって利用者の生命・身体に危険が及ぶ可能性があることが示唆されている。
「例外規定」が現場の共通言語になっていない
多くの現場では、「本人の同意が必要」という原則ルールだけが強く認識され、「緊急時の例外」についてはあやふやなままです。
この知識の偏りが、「同意書がないから何もできない」という思考停止を招いています。
「例外規定」を現場の共通言語にし、いざという時に「法律の例外に基づいて提供します」と言い合える環境を作ることが、現場での適切な運用を行うためのカギとなります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
医療・介護関係事業者は、個人情報保護法の例外規定(人の生命・身体の保護等)について正しく理解し、必要な場面で適切に運用することが求められる。
私たちが恐れているのは「法律」そのものではなく、「法律を知らないこと」による不安です。個人情報保護法は、利用者を危険に晒すためのものではありません。例外規定を正しく理解し、「守るための情報共有」に自信を持ってください。
よくある質問(FAQ):現場の「迷い」に答えます
「法律の理屈は分かったけれど、実際この場面ではどうなの?」という疑問は尽きないはずです。ここでは、現場で即答に困る具体的な質問に対し、エビデンスに基づいて回答します。
- QQ1. 本人が「絶対に教えるな」と拒否していた場合でも、教えていいのですか?
- AA1. 生命に関わる緊急時であれば、提供は許容されると考えられます。 生命の危険があり、本人の同意を得ることが困難(または拒否により生命保護が図れない)な場合は、「人の生命・身体の保護」が優先されます。その際、本人が同意していなかった状況もあわせて伝えておくことが望ましいと考えられます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
本人の同意を得ることが困難であるとき、または本人が同意しない場合であっても、人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合は、例外的に第三者提供が認められる。
- QQ2. 警察から「事件の捜査で」と照会があったら、教えてもいいですか?
- AA2. 「法令に基づく場合」に該当するため、回答することは許容されると考えられます。 刑事訴訟法に基づく照会などは、個人情報保護法の例外規定(法令に基づく場合)に当たるため、本人の同意がなくても提供することが法的に認められています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
法令に基づく場合(刑事訴訟法に基づく捜査関係事項照会等)は、本人の同意なく個人データを提供することが認められている。
- QQ3. 後で家族から「勝手に教えた」とクレームになったらどうすればいいですか?
- AA3. 「緊急的な対応として、法令に基づき提供しました」と説明することが有効です。 提供に至った理由(生命の危険性など)と法的根拠(個人情報保護法の例外規定)を伝えられるよう、当時の状況を記録に残しておくことが重要です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
個人情報保護法の例外規定に基づき情報提供を行う場合は、その判断根拠や経緯を記録に残すことが重要である。
緊急時の判断に迷ったら、「利用者の命を守るために必要か」という原点に立ち返ってください。法律は、必要な情報共有を妨げるものではありません。例外規定を理解し、自信を持って行動しましょう。
広告まとめ:迷ったときは「命を守る」を最優先に. 明日からできる備え
現場で判断に迷ったとき、最終的に優先されるべきは「利用者の命と尊厳」です。個人情報保護法は、そのための連携を阻むものではありません。
もしもの時に備えて、明日からできることがあります。この「事前の合意」を得ておくことで、緊急時に円滑な情報共有が可能になります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」に基づく事例集
https://www.mhlw.go.jp/content/000976428.pdf
入院時や契約時のアセスメントにおいて、緊急連絡先やACP等の情報提供について事前に確認し、本人の包括的な同意を得ておくことが望ましい。
最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。
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更新履歴
- 2026年2月6日:新規投稿







