「伝えたはず」の情報が共有されておらず、後から「聞いていない」とトラブルになり、人間関係までギスギスすることもある。
そんな「言った言わない」の対応に追われ、本来向き合いたい利用者へのケアがおろそかになる葛藤を抱えていませんか。
理想は全員での丁寧な対面共有ですが、現場は時間と人員の戦いになりやすく、現実には限界があります。
全てを完璧にするのは難しくても、ICTや手順書などの「仕組み」でミスを減らし、現場を守る現実的な方法はあります。
この記事を読むと分かること
- 言った言わないのトラブルが減ることがある
- サ責の電話対応と移動が減ることがある
- 申し送り時間を短縮しケアに回しやすくなることがある
一つでも当てはまったら、この記事が役に立つかもしれません
結論:「時短=手抜き」という誤解を捨てよう

「効率化なんて冷たい」「利用者の話を聞く時間が大事なのに」。現場では、業務を見直すことに「手抜き」のような罪悪感を覚えることがあるかもしれません。
しかし、日々の記録や連絡に追われて、肝心の利用者と向き合う余裕がなくなっていることもあるのではないでしょうか。
本当の目的は「介護の価値」を高めること
公的なガイドラインにおいて、生産性向上とは単なるコスト削減や時間短縮のことではありません。
その定義は「介護の価値を高めること」と明記されています。
業務を効率化するのは、あくまで手段にすぎないといえます。
ムダを省いて生まれた時間を、利用者のためのケアや職員の育成に充てることで、初めて意味を持つといえます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
生産性向上の目的は、単に業務時間を短縮することではなく、介護の価値を高めることにあります。効率化によって生まれた時間を, 利用者へのケアや職員の育成など、サービスの質を向上させるための活動に充てることが重要です。
厚生労働省老健局
介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
生産性向上には、「質の向上(介護の価値を高めること)」と「事業の効率化」の2つの側面があります。これらは対立するものではなく、両立を目指すべきものです。
「量的な効率化」が「質の向上」を生む
業務改善によってムリやムダをなくす「量的な効率化」は、ケアの質を落とすものとは限りません。
職員の心身の負担を減らし、業務に余裕を持たせることは、結果として利用者へのサービス向上につながる「車の両輪」の関係だといえます。
仕組みで時間を生み出すことは、プロとしてより良いケアを提供するための第一歩だといえます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
「質の向上」と「量的な効率化(業務改善)」は、どちらか一方を選択するものではなく、相互に関連し合う車の両輪のような関係です。業務の効率化を進めることで、職員の負担軽減や業務の質の向上が期待できます。
情報共有の効率化はサボりではなく、利用者と向き合う時間を守るための「取り組み」だといえます。罪悪感を持つ必要はないと考えられます。まずは仕組みを見直すことが、質の高いケアにつながると考えられます。
うちの現場でも起きている?よくある「失敗パターン」

「しっかり伝えたはずなのに伝わっていない」「休日なのに電話がかかってきて気が休まらない」。現場では、こうした連絡調整の悩みが尽きないと感じることもあります。
みんな責任感を持って働いているのに、なぜかうまくいかない。そんな現場のリアルな悩みを、3つの典型的な事例で見ていきましょう。
事例1:鳴り止まない電話と「つながらない」イライラ
訪問介護の現場では、ヘルパーが利用者宅から「状態が変わっているのですが…」と事業所に電話をかける光景が見られることがあります。
しかし、電話を受けたサービス提供責任者(サ責)は自分の業務を中断され、ヘルパーも指示があるまで現場で待機しなければなりません。
「電話が一番確実」と思いがちですが、双方の時間を奪うこともあります。
押さえるべき視点の一つは、現場で情報を完結させることです。
セキュリティ対策をした「タブレット端末」を導入すれば、ヘルパーは利用者宅で必要な情報を閲覧でき、電話確認の手間やタイムラグの軽減につながります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
セキュリティ対策を施したタブレット端末を導入し、利用者宅で必要な情報を安全に閲覧できる環境を整えた。これにより、事業所に電話をして情報を確認する作業が不要となり、現場での迅速な対応が可能になった。
事例2:「言った言わない」の水掛け論
「あの件、伝えたよね?」「聞いてません」。
忙しい業務の合間に口頭で伝えた内容は、メモを取る暇もなく忘れ去られがちです。
個人の記憶力に頼った伝達は、ミスだけでなく「信じてもらえない」という職員間の不信感を生むことがあります。
「直接会って話さないと失礼」という思い込みが、かえってトラブルの原因になることもあります。
解決策の一つは、連絡手段を「ビジネスチャット」に統一することです。
文字で記録に残るだけでなく、「既読機能」を活用すれば、相手が読んだかどうかを一目で確認でき、精神的な負担とトラブルが減ることがあります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
サ責とヘルパー間の連絡手段をビジネスチャットに統一し、「既読機能」を活用することで情報の伝達状況を可視化した。これにより、電話連絡による負担が軽減され、「言った言わない」のトラブルが減少するとともに、サ責の業務負担が大幅に軽減された。
事例3:記録の「転記」が生むムダな残業
手書きのメモをパソコンに入力し、さらにそれを申し送りで読み上げる。
同じ内容を何度も書き写す「転記」作業は、現場の貴重な時間を大量に消費しています。
「丁寧に書き直すことが誠実さ」と感じるかもしれませんが, その時間は本来、ケアに使われるべきものです。
また、転記の間に情報のタイムラグが発生し、最新の状態が共有されないリスクもあります。
ICTやビッグデータを活用して入力を一本化し、転記を廃止することが重要だと考えられます。
リアルタイムで情報共有ができれば、間接的な業務の時間が減ることが期待され、ケアの質の維持・向上につながることが期待されます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
ICTやロボット技術を活用し、介護記録等の情報を電子化・ビッグデータ化することで、間接的な業務の効率化を図る。これにより、情報の転記作業をなくし、リアルタイムでの情報共有を可能にすることが期待される。
厚生労働省老健局
介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
転記作業の廃止や情報共有のタイムラグの解消など、ICT活用による業務効率化を進めることで、間接的な業務の時間を削減し、直接的なケアの時間を確保する。
これらの事例では、職員の能力不足ではなく「仕組み」の欠如が原因の一つです。電話や口頭連絡、転記といった従来の方法を見直し、ICTなどのツールを適切に使うことで、これらの負担を減らすことにつながります。
うまくいかない本当の理由。「個人の能力」ではありません

「あの人は報告が遅い」「なんで毎回言わないとわからないの」。現場では、個人の性格や能力不足を責める声が聞かれます。
しかし、本当にそうでしょうか。
みんな必死に動いているのにミスが起きるのは、個人のせいではなく、現場の「環境」や「構造」に原因があることが多いと考えられます。
現場に潜む「3つのM」が邪魔をしている
頑張っているのに空回りする現場には、多くの場合「ムリ・ムダ・ムラ(3M)」が存在します。
特に情報共有を阻む要因の一つが、人によってやり方が違う「ムラ」です。
手順が決まっていないため、ベテランと新人では情報の深さや伝え方がバラバラになり、結果として「言ったつもり」のトラブルが起きることがあります。
これは個人の資質ではなく、業務が「標準化」されていない構造上の問題だと考えられます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
介護現場には、「ムリ(過度な負担)」「ムダ(価値を生まない作業)」「ムラ(個人によるバラつき)」という3つのMが存在します。これらを発見し、解消することが業務改善の第一歩です。
厚生労働省老健局
介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
業務のやり方が職員によって異なると「ムラ」が生じます。手順書を作成し、業務を標準化することで、誰が行っても一定の質を保てるようになり、効率化と質の向上につながります。
「探す時間」が連絡を遅らせている
必要な書類やファイルがすぐに見つからず、探し回った経験はありませんか。
「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」が徹底されていない職場では、物理的に情報へアクセスするのに時間がかかります。
単なる片付けの問題ではないと考えられます。
「いつでも、誰でも、すぐに使える」状態(整頓)になっていないことが、「探すムダ」を生み、情報共有の妨げになっていると考えられます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
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5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)は、単なる美化活動ではなく、業務効率化と安全確保の土台となる活動です。職場環境を整えることで、ムダな動きやミスを減らすことができます。
厚生労働省老健局
介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
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「整頓」とは、必要なものを誰でもすぐに取り出せるように、置き場所や置き方を決めて表示することです。これにより、「探すムダ」をなくし、業務をスムーズに進めることができます。
「今のやり方」を変えることへの不安
「慣れたやり方を変えるのは怖い」「ケアの質が落ちる気がする」。
新しいツールや手順を導入しようとすると、多くの場合こうした心理的な抵抗が生まれます。
しかし、目的を見失わないことが大切です。
変化を恐れて非効率な「ルーティン」を続けることは、結果として利用者と向き合う時間を奪うことにつながります。
不安の一因は、生産性向上の本来の意味(価値を高めること)が共有されていないことにあると考えられます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
生産性向上とは「介護の価値を高めること」であり、業務時間の短縮そのものが目的ではありません。この定義を職員間で共有し、誤解を解消することが改善活動の第一歩です。
厚生労働省老健局
介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
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業務時間を短縮することだけを目的にするのではなく、ルーティン業務を見直して効率化し、その分を利用者とのコミュニケーションなど、より価値のある業務に充てることが重要です。
ミスが起きるのは、あなたが悪いわけでも、同僚が怠けているわけでもありません。手順の「ムラ」や環境の「乱れ」といった構造的な原因が、スムーズな連携を阻んでいるのです。
現場の「これってどうなの?」にお答えします
「やり方を変えるのは不安」「時間がない」。
新しいことを始める前には、誰でも疑問や迷いが生じるものです。
ここでは、現場でよく聞かれる悩みについて、ガイドラインの考え方をもとにQ&A形式でお答えします。
- Q申し送りを簡略化すると、利用者の変化を見落としませんか?
- A目的は「手抜き」ではなく、ケアの「質の向上」だといえます。 ICTなどで基本情報を効率的に共有し、口頭での申し送りは「特変事項」の共有に集中することで、利用者に接する時間を増やしやすくなると考えられます。 メリハリをつけることで、利用者へのサービス向上につながると考えられます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
業務効率化は「質の向上」と「量的な効率化」の両立を目指すものであり、ケアの質を落とすものではありません。むしろ、業務のムリ・ムダ・ムラを省くことで、ケアの質を高めるための時間を確保できます。
厚生労働省老健局
介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
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インカムやICT機器を活用し、情報共有を効率化することで、申し送り時間の短縮や移動時間の削減が可能となります。これにより、利用者に接する時間を増やし、ケアの質の維持・向上を図ることができます。
- Qベテラン職員が新しいやり方に反対しています。どうすればいいですか?
- Aいきなり全てを変えようとせず、「小さな成功事例」を作ることから始めましょう。 「まずはこの連絡だけチャットにする」など、負担の少ない範囲で試してみます。 実際にやってみて「楽になった」という実感を持ってもらうことが、周囲の理解を得るための一番の近道だと考えられます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
最初から大きな成果を狙うのではなく、「小さな成功事例」を積み重ねることが重要です。小さな改善でも効果を実感できれば、職員のモチベーション向上や意識改革につながり、取り組みが継続しやすくなります。
- Q忙しすぎて、業務改善に取り組む時間がありません。
- A最初から大掛かりな活動をする必要はありません。 まずは「課題把握シート」などを使って、現状のムリやムダを「見える化」するだけでも、改善の第一歩になると考えられます。 現状を客観的に知ることで、優先順位をつけて無理なく進めやすくなります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
「課題把握シート」を活用して、事業所の現状や課題を客観的に「見える化」することが重要です。これにより、取り組むべき課題の優先順位をつけ、効果的な改善計画(Plan)を立てることができます。
厚生労働省老健局
介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_kyotaku_Guide.pdf
改善活動は、準備→現状把握(見える化)→計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)の標準的なステップで進めます。まずは現状把握から始めることが、着実な改善につながります。
変化には不安がつきものですが、ガイドラインに沿って少しずつ進めれば大丈夫でしょう。「ケアの質を守るため」という目的さえブレなければ、現場は良くなりやすくなります。まずはできることから始めてみましょう。
まとめ:明日からできる「小さな一歩」
ここまで、情報共有の課題は個人の能力ではなく、「仕組み」や「環境」の問題であることをお伝えしてきました。
効率化といっても、明日からいきなりすべての業務を変える必要はありません。
まずは、日々の業務の中で「これってムダかも?」と違和感を持つことから始めてみてください。ガイドラインでも推奨されているように、最初は「小さな成功事例」を作ることが大切です。
「この連絡だけはメモに残そう」「探し物を減らすために定位置を決めよう」など、無理のない範囲で一つだけ試してみるのが、改善への一歩となります。業務を見直すことは、必ずしも手抜きではありません。
それは、あなたが利用者と笑顔で向き合う時間を守るための、プロとしての選択だといえます。最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。
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- 2026年3月1日:新規投稿






