救急車を呼ぶべきか?介護現場における家族の意向確認と搬送想定

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本人の意思を尊重して看取ると決めたはずが、急変時に家族のパニックで搬送を迫られる。理想と現実のギャップに立ち尽くす現場は少なくありません。

一度の合意ですべてを守るのは困難ですが、「揺らぎ」を前提に備えることで、自分も利用者も守る助けになります。調査が示す現実的な対応の方向性を確認しましょう。

この記事を読むと分かること

  • 急変時の搬送想定の立て方
  • 意思を推定できる人の確認法
  • 家族間の意見食い違いへの備え

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • 家族の翻意に振り回された
  • 救急隊の視線が怖いと感じる
  • ACPがただの紙に思える
  • 看取り方針の板挟みが辛い

結論:なぜACPの合意は急変時に崩れるのか?現場を守る「揺らぎ」を前提とした事前相談

都市部の道路をサイレンを点灯させて走行する救急車。高齢者の急変や介護現場での緊急搬送をイメージした救急医療対応の様子

現場では、本人と看取りの合意をしていても、急変時に家族がパニックになり「救急車を呼んで!」と懇願される場面が多々あります。

「本人の意思」「家族の感情」の板挟みになり、どうすべきか立ち尽くしてしまうのは、決して現場のスキル不足ではありません。

方針が急変時に揺らぐのは当然のこととして捉え、「揺らぎ」を前提とした事前相談をしておくことが、現場を守る防波堤となり得ます。

利用者ごとの「搬送に関する想定」が現場で求められる

漠然とした「看取り」の約束だけでは、土壇場でのパニックを防ぐのは難しいものです。

事前の相談で具体的にどのような場面を想定し、家族と何を共有しておくべきかを整理しました。

想定すべき場面相談しておくべきポイント
身体的な苦痛呼吸が苦しそうな時に救急車を呼ぶか
夜間・休日の急変主治医と連絡がつかない時に誰に頼るか
家族間の不一致意見が分かれた時に最終判断を誰がするか

このように、あらかじめ具体的な「場面」を区切って話し合っておくことで、家族もイメージが湧きやすくなり、いざという時の迷いを軽減できます。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書

https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf

訪問看護において、利用者の救急搬送をより迅速・適切にするために必要と思われることとして、「利用者ごとの搬送に関する想定及び本人・家族との相談」が75.8%(273件)で最も多かった。

いざという時, 本人の「意思を推定できる人」を決めておく

急変時は本人が意思表示できないことが多く、現場では「誰の言葉を信じればいいのか」という混乱が生じがちです。

誰を意思の推定者(キーパーソン)に据えるべきか、その役割を改めて確認しましょう。

役割の名前具体的な人物像
緊急連絡窓口急変時に真っ先に連絡を取る人
価値観の理解者本人の生き方や願いを最もよく知る人
最終判断の代行意見が割れた時に最終的な決断を委ねる人

役割を明確にした上で「意思を推定できる人」を確認しておく対応が多くの施設でとられており、これが緊急時の責任の所在をはっきりさせ、現場を支える助けになります。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書

https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf

本人が医療・ケアの選択について意思決定できなくなった場合に備えて、本人の意思を推定できる人を確認していたかについて、全体では「はい」が89.0%であった。回答者種別ではいずれも「はい」が8割を超え、特定施設(91.5%)、特別養護老人ホーム(91.0%)、診療所(86.6%)、訪問看護(86.4%)であった。

急変時の混乱に備えるには、一度の合意で終わらせず、個別具体的な「搬送想定」と「意思を推定できる人」の事前確認が重要です。揺らぐことを前提とした準備が、現場での備えにつながります。

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現場で起きている「本人の意思」が家族に覆される典型パターン

介護施設で、女性介護職員がメモ帳に記録を取りながら利用者の家族から話を聞いている様子。利用者の生活状況や要望を丁寧にヒアリングし、ケア内容の共有や情報収集を行っている場面。

現場では、時間をかけて看取りの同意を得ていても、いざ急変すると家族が耐えきれず「救急車を!」と懇願するケースが後を絶ちません。

調査結果から抽出した「判断が崩れる事例」を比較表にまとめ、どこに注意すべきかを整理しました。

本人は搬送を拒否しているが、家族が強く希望する場面

状況本人は搬送拒否だが、家族が救急車を懇願する
困りごと専門職が本人の意思と家族の感情の板挟みになる
押さえる視点意向の相違は起こり得るとあらかじめ理解する

本人と家族の希望が異なることは、現場の判断を困難にさせる要因の一つです。「家族なら本人の願いを知っているはず」という期待値を調整することが重要です。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書

https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf

救急車を要請するか判断に困る具体的な内容として、「本人や家族の希望」が挙げられた。訪問看護からは「看護師としては必要ないと思うものの、家族の強い希望がある場合」や「本人拒否の時」、診療所からは「本人の希望と家族の希望が異なる場合」といった意見があった。

DNARが曖昧で、家族が決断できない場面

状況治療か看取りかの選択を家族が決めきれない
困りごと方針が定まらず、現場が救急要請を保留せざるを得ない
押さえる視点事前の意向確認不足が家族のパニックを招くと知る

家族も「決めろ」と言われるのは苦しいものです。DNAR(蘇生措置拒否)が曖昧な場合、いざという時に家族は選択できずに迷うという実態を共有しておきましょう。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書

https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf

救急要請の判断に困った具体的な事例として、延命希望やDNAR、本人・家族の希望に関連する事例が挙げられている。訪問看護では「DNARがきちんと決まっていない場合」「高齢で自宅看取り (急変でターミナルの人ではない人)か病院かの選択を出来ない家族の場合」「本人拒否の時」「末期なのに、家族が搬送希望するとき」といった事例が挙げられている。

延命を希望していないのに搬送し、救急隊に問われる場面

状況延命非希望の利用者を家族の希望等で搬送する
困りごと救急隊から「搬送が必要か」と問われ現場が疲弊する
押さえる視点搬送の「理由」を事前に整理し、救急側と連携する

延命希望がないケースでの搬送は、救急隊側にも疑問を生じさせます。なぜ今日、この場面で搬送を選択したのかを説明できる備えが必要です。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書

https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf

救急要請の判断に困った具体的な事例として、延命希望やDNAR、本人・家族の希望に関連する事例が挙げられている。特別養護老人ホームでは「延命希望されてない利用者の急変時に救急隊から『救急搬送する必要があるのか』と問われることがあるため」という事例がある。

本人の意思と家族の感情のズレは、施設で起こり得る日常的な葛藤です。現場のせいだと自分を責めず、事例を通じて「判断が崩れるポイント」をあらかじめ知っておくことが大切です。


なぜ急変時の合意は崩れるのか?現場を悩ませる構造的・心理的原因

介護施設の事務スペースでパソコンに向かったまま机に伏せる若い女性介護職員の様子。業務過多や人手不足による疲労蓄積、夜勤負担、介護職のメンタルヘルス不調リスクを示すイメージ。

平時の合意がいとも簡単に崩れるのは、そこに「理想」と「現実」の深刻な乖離があるからです。なぜ合意が機能しなくなるのか、その根本的な原因を対比構造で見ていきましょう。

「本人の尊重」と「家族の感情」の対立

本人の意思決定支援が「権利の尊重」という建前だけで進むと、現場では以下の摩擦が生じます。

視点理想と現場のギャップ
建前(理想)本人の搬送拒否の意思をいかなる時も最優先する
現実(現場)家族の懇願により倫理的ジレンマと搬送が生じる

介護職は、権利擁護と家族のケアの間で引き裂かれます。「家族の強い希望」による搬送は、現場の判断ミスではなく構造的な必然といえます。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書

https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf

救急車を要請するか判断に困る具体的な内容として、「本人や家族の希望」が挙げられた。訪問看護からは「看護師としては必要ないと思うものの、家族の強い希望がある場合」や「本人拒否の時」、診療所からは「本人の希望と家族の希望が異なる場合」といった意見があった。

「方針決定」と「状況想定」の乖離

大まかな「看取り」の合意だけでは、実際の急変に対応できない理由を確認します。

視点合意の質のギャップ
建前(理想)「もしもの時は看取り」という基本方針で合意する
現実(現場)具体的な場面想定がなく、いざという時誰も決められない

「漠然とした方針」と「目の前の苦痛」の間に大きな溝があります。この溝を埋める具体的なシミュレーションがない限り、ルールは機能しにくくなります。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書

https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf

訪問看護において、利用者の救急搬送をより迅速・適切にするために必要と思われることとして、「利用者ごとの搬送に関する想定及び本人・家族との相談」が75.8%(273件)で最も多かった。

「DNAR」と「意向未確認」のジレンマ

書類上の同意と、現場での確信の差が判断を鈍らせる構造を整理しました。

視点意思確認のギャップ
建前(理想)DNARのサインがあれば、迷わず看取り対応へ移る
現実(現場)同意を適用してよいか確信が持てず、判断が保留される

家族が「病院か自宅か」を決めきれない状況は多く、現場職員は責任の重さから判断を保留してしまいます。これが対応の遅れにつながる一つの要因です。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書

https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf

救急要請の判断に困った具体的な事例として、延命希望やDNAR、本人・家族の希望に関連する事例が挙げられている。訪問看護では「DNARがきちんと決まっていない場合」「高齢で自宅看取り (急変でターミナルの人ではない人)か病院かの選択を出来ない家族の場合」「本人拒否の時」「末期なのに、家族が搬送希望するとき」といった事例が挙げられている。

急変時の合意が崩れるのは、決して誰かの怠慢ではありません。「理想」と「現実」の衝突や、状況想定の欠如といった、現場が抱える構造的なギャップが引き起こす必然的な結果といえます。

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意思決定と救急搬送に関する現場の小さな迷いへの回答

現場では、急変時の対応について「本当にこれでいいのか」と日々小さな迷いを抱えながら業務に当たっています。

ここでは、意思決定や事前の備えに関して、現場が抱きがちなよくある疑問と、調査結果に基づく客観的な回答をまとめました。

Q
マニュアルを作る以外に、現場で最も重視されている事前対策は何でしょうか?
A
マニュアル整備だけでなく、「利用者ごとの搬送に関する想定」「本人・家族との相談」が重要です。平時のうちに、個別の具体的な状況を話し合っておくことが重要です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省

自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書

https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf

特別養護老人ホームにおいて、利用者の救急搬送をより迅速・適切にするために必要と思われることとして、「利用者ごとの搬送に関する想定及び本人・家族との相談」が66.1%(199件)で最も多かった。

Q
本人が認知症などで自分の意向を伝えられなくなった時に備え、どのような対策がとられていますか?
A
約9割の施設で、本人に代わって意思を推定できる人(キーパーソン)を事前に確認する対応がとられています。いざという時に「誰と方針を決めるか」を確認する対応がとられています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省

自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書

https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf

本人が医療・ケアの選択について意思決定できなくなった場合に備えて、本人の意思を推定できる人を確認していたかについて、全体では「はい」が89.0%であった。回答者種別ではいずれも「はい」が8割を超え、特定施設(91.5%)、特別養護老人ホーム(91.0%)、診療所(86.6%)、訪問看護(86.4%)であった。

Q
家族間で意見が食い違うと、現場ではどのような困りごとが発生しますか?
A
本人が搬送を拒否していても、家族が強く搬送を希望するなど、救急車要請の判断そのものが困難になる事例が報告されています。このような希望のズレが、要因の一つとなります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省

自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書

https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf

救急車を要請するか判断に困る具体的な内容として、「本人や家族の希望」が挙げられた。訪問看護からは「看護師としては必要ないと思うものの、家族の強い希望がある場合」や「本人拒否の時」、診療所からは「本人の希望と家族の希望が異なる場合」といった意見があった。

急変時の判断に迷うのは、現場の準備不足だけでなく、家族の心情の揺れや意向の不一致が影響することがあります。だからこそ、日頃から「誰と」「どんな場面を想定して」話し合うかという事前の枠組みづくりが重要です。


まとめ:急変時の「意思決定」を支えるために:明日からできる最初の一歩

「看取りの合意」があっても、急変時の家族の動揺は避けにくい面があります。それは現場のスキル不足ではなく、構造的な問題です。

まずは一度の合意で完璧を目指すのをやめてみませんか。「合意は揺らぐもの」だと前提に置くだけで、現場での備えにつながります。

明日, 担当している利用者の記録を見返したとき、「意思を推定できる人」が明確になっているか、一箇所だけ確認してみてください。

その確認こそが、いざという時にあなた自身と利用者の意思を守るための、一つの最初の一歩になります。

最後までご覧いただきありがとうございます。この記事が、日々現場で奮闘する皆さまのお役に立てれば幸いです。


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  • 2026年6月5日:新規投稿

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