アルツハイマー型認知症の特徴と適切な声掛け【認知症声掛けシリーズ第1弾】

エビデンスで学ぶ アルツハイマー型認知症の特徴と適切な声掛け ハウツー

「声掛けが正しいか不安だと感じている方、いらっしゃいますよね?」
これは、認知症の声掛けシリーズ第1弾です。今回のテーマは「アルツハイマー型認知症(AD)」に焦点を当てます。

ADは、もの忘れから始まり、徐々に見当識障害や理解力の低下が進むことが特徴です。日本神経学会の診療ガイドラインでは、記憶障害が中心症状であると明記されています。厚生労働省の研修用資料では「短文で、分かりやすく、否定せず共感する」声掛けが推奨されています。

真剣に考えている女性の介護職員

結論
アルツハイマー型認知症の中核である短期記憶障害と見当識障害を理解し、短く・具体的・共感的に伝えることが効果的です。国立長寿医療研究センターは「曖昧な言葉を避け、非言語や視覚提示を併用する」ことを推奨し、日本看護研究学会の研究では「大声の多用は逆効果の可能性」が示されています。また、日本リハビリテーション医学会誌は共感的なコミュニケーションがストレス軽減に寄与すると報告しています。

💡この記事を読んで分かる事
厚生労働省の研修用資料では、長い指示や否定的な言い方は不安を高めやすいと言われています。知らないままだとBPSDが増え、入浴・服薬・トイレ誘導などのケアが停滞し、介護士の負担が増加します。


🔷 結論:短く・具体的・共感的――“名前→共感→一つずつ”で伝える

声掛けが正しいか不安だと感じてるからいらっしゃいますよね?同じ質問や拒否が続く現場でも、根拠に沿って言い方を揃えれば落ち着きと効率は両立できます。

考え込んでいる女性の介護職員

🔶型を決めればブレない――“名前→共感→目的→手順→称賛”をすればいい

まずは型を統一します。名前で注意を向け、共感で不安を受け止め、目的を一つだけ提示し、手順を短文で示し、できたら即時称賛する——この流れが基準です。厚生労働省の研修用資料では、短文でわかりやすく、否定せず共感すると言われています。

※エビデンス

厚生労働省
認知症ケア法-認知症の理解(研修用資料)
アルツハイマー型認知症では短く平易な表現、非言語の活用、相手の尊厳の尊重が基本原則とされる。否定や叱責は不安やBPSDを助長しやすく、段階的な声掛けと称賛で安心を築くことが強調されている。
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

🔶伝わる工夫――短文・ゆっくり・非言語+視覚提示をすればいい

言葉は短く具体的に、速度はゆっくり、表情やうなずきで安心を補強し、指差し・メモ・ピクトグラムで理解を支えることが有効です。国立長寿医療研究センターの解説では、曖昧語を避け非言語と視覚提示を併用すると言っています

※エビデンス

国立長寿医療研究センター(NCGG)
認知症の方と関わるとき~大切な7つのポイント
アルツハイマー型認知症では短く具体的に伝え、相手のペースを尊重し、非言語や視覚提示を併用することが推奨されている。あいまいな表現を避け、自尊心を守る関わりが安心と受容につながると整理されている。
https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/55.html

🔶チームで標準化――前置き予告と定型句を共有すればいい

このあと〇〇しますね」と前置きで予告し、選択肢は常に2つまでに統一。効果のあった定型句は記録して全員で使います。厚生労働省の事例集では、わかりやすい言葉・図表の活用・繰り返し丁寧に説明すると言われています。

※エビデンス

厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援(事例集)
アルツハイマー型認知症では安心できる環境づくり、簡潔で平易な説明、図やメモの活用、時間をかけた繰り返しの説明が推奨される。本人の理解を支えるため、支援手順の明確化と共有の重要性が示されている。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf

忙しい現場でも、根拠ある「型」と共通フレーズを持てば迷いは減るはずです。次のセクションでは、よくある創作ケースを用いて“届く言い方”を具体的に確認していきます。


🔷 事例:アルツハイマー型認知症の声掛けが“届く”よくあるケース

現場で迷いやすい場面を取り上げ、アルツハイマー型認知症ではなぜこの言い方が届くのかを、短いスクリプトと根拠で示します。

ハテナの書いてあるサイコロ

🔶同じ質問を繰り返すとき——短文+視覚で安心を固定する

OK例:「はい、今日は火曜日です。ここ(カレンダー)に印をつけましょう」/NG例:「さっき言いましたよ」
ポイント:短く即答→視覚で再確認→称賛の順に。不安の源は短期記憶の保持困難アルツハイマー型認知症では長い説明は保持負荷を高めやすいので、一度に一つだけ伝えます。🙂

  • コツ
    • 名前を呼んで注意を合わせる
    • 指差し・メモで繰り返しの負担を減らす
    • できたらすぐ称賛(「ここまでバッチリです」)
※エビデンス

厚生労働省
認知症ケア法-認知症の理解(研修用資料)
アルツハイマー型認知症では短く平易な言葉、非言語と視覚提示の併用、否定の回避が有効とされる。繰り返しには丁寧に応じ、安心感を高める対応がBPSDの予防につながると整理している。
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

🔶入浴を拒否するとき——共感→小ステップ→同行でハードルを下げる

OK例:「寒いですね。まずは手だけ温めましょうか→次に足首まで」/NG例:「今すぐ入りましょう」
ポイント:共感で緊張を下げ、小ステップで成功体験を積み、同行で安心を保つ。アルツハイマー型認知症では見当識の乱れや不安が拒否に出やすく、段階化が受容を助けます。🛁

  • コツ
    • このあと手→足→肩の順で行きます」と前置き予告
    • 選択肢は2つ(「タオルから」「手浴から」)
    • 終了時は具体称賛(「手が温まって表情が柔らかくなりました」)
※エビデンス

厚生労働省
被災した認知症の人と家族の支援マニュアル〈介護用 詳細版〉
災害時の原則ですが、否定しない・共感する・安心をつくる・一緒に行動する』という横断的な対応原則を示しています。入浴の場面でもこの原則を小さなステップの提案に置き換えると受け入れやすくなります。
https://www.mhlw.go.jp/content/001484918.pdf

🔶トイレ誘導が進まないとき——安心ワード+同行+導線の視覚化

OK例:「今のうちに行くと安心ですよ。ご一緒しますね→こちらの表示に沿って進みましょう」/NG例:「我慢しないでください」
ポイント:アルツハイマー型認知症では見当識障害と実行機能低下で段取りの切替が難しい。安心ワードで目的を明確化し、同行サイン表示で実行を助けます。🚻

  • コツ
    • 動線にピクトグラム、便座色や照度を調整
    • 一度に一つの指示(「立ちましょう」→「歩きましょう」)
    • 終了後に即時称賛で次回の受容を促進
※エビデンス

国立長寿医療研究センター(NCGG)
認知症の方と関わるとき~大切な7つのポイント
アルツハイマー型認知症では短く具体的な指示、相手のペース、非言語・視覚提示の併用が推奨される。環境調整と安心を与える表現が行動受容を高めると解説している。
https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/55.html

迷いがちな場面でも、短文・共感・一度に一つ・視覚補助を重ねれば受け止められ方が変わります。次は、なぜこの言い方が効くのかを病態と研究の根拠から確認します。


🔷 理由:病態と根拠――なぜ「短く・具体的・共感的」が効くのか

アルツハイマー型認知症では海馬萎縮や見当識障害が進み、長い指示や否定が不安を強めます。ここでは病態とエビデンスから、声掛け設計の理由を確認します。

積み重ねられた本の後ろにいる女性介護職員

🔶海馬萎縮と短期記憶障害――一度に一つ、短文で伝えるべき理由

アルツハイマー型認知症では新しい情報の保持が難しく、長い説明は負荷になります。短く・具体的・手順は一つずつが基本です。視覚提示で再確認の手がかりを増やします。📌

※エビデンス

国立長寿医療研究センター(NCGG)
認知症の方と関わるとき~大切な7つのポイント
アルツハイマー型認知症では短く具体的に伝え、相手のペースを尊重し、非言語や指差し・メモ等の視覚提示を併用すると理解と安心が高まると解説しています。
https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/55.html

🔶見当識障害と不安――共感→安心設計→繰り返し説明が必要な理由

アルツハイマー型認知症では時間→場所→人の順に見当識が乱れ、不安が増幅しやすい。「わかります→今から○○します」の前置き予告同じ言い回しの反復が受容を助けます。🛎️

※エビデンス

厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援(事例集)
アルツハイマー型認知症では安心できる環境、平易な言葉、図やメモの活用、そして時間をかけた繰り返し説明が推奨されると記載し、意向表出を支援します。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf

🔶声量・速度・非言語――大声は逆効果の可能性あり、ゆっくり+相槌が有効な理由

アルツハイマー型認知症では大声は幼児化された扱いと受け取られ不快を招きやすい。穏やかな声量・ゆっくり・うなずきで安心感を補強し、内容は短文で届けます。🙂

※エビデンス

日本看護研究学会(J-STAGE)
介護スタッフが認知症高齢者に用いるコミュニケーション技法の特徴と関連要因
介護スタッフの実践調査で、親しみのある話し方・ゆっくり・相槌が多用され、大声の有用性は限定的と示唆。アルツハイマー型認知症では配慮的発話が望ましいと論じています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/30/4/30_20070619009/_pdf/-char/ja

🔶共感的コミュニケーションの生理効果――不安を下げる科学的根拠

アルツハイマー型認知症では共感的な受け止めが情動の安定につながります。「気持ちの理解→短い提案」という順序は、ストレス低下の生理指標とも合致します。🌿

※エビデンス

日本リハビリテーション医学会(J-STAGE)
行動・心理症状を表出するアルツハイマー認知症高齢者への情緒的・身体的介入の検証
バリデーション的関わり後に唾液アミラーゼが低下し、表情指標も改善。アルツハイマー型認知症では共感的声掛けがストレス緩和に寄与する可能性を報告しています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm/71/1/71_12/_article/-char/ja/

病態に即した短文・共感・非言語+視覚は、アルツハイマー型認知症では理にかなった設計です。次セクションでは、この根拠を具体の言い方に落とし込みます。


🔷 よくある質問:アルツハイマー型認知症の声掛け

Q
アルツハイマー型認知症では、声掛けの基本は何を意識すればいいですか?
A

短く・具体的・共感的が基本です。「名前→共感→目的→手順→称賛」の順で、一度に一つだけ伝えます。厚生労働省の研修用資料では、短文でわかりやすく、否定せず共感すると言われています。

※エビデンス

厚生労働省
認知症ケア法-認知症の理解(研修用資料)
アルツハイマー型認知症では短く平易な表現、非言語の活用、尊厳配慮が基本。否定や叱責は不安やBPSDを助長しやすく、段階的な声掛けと称賛で安心と受容を高めると整理している。
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

Q
アルツハイマー型認知症では、同じ質問が続くときの声掛けは?
A

毎回短く即答し、カレンダーやメモの視覚提示で補います。国立長寿医療研究センターの解説では、曖昧語を避け、非言語と視覚提示を併用すると言っています。

※エビデンス

国立長寿医療研究センター(NCGG)
認知症の方と関わるとき~大切な7つのポイント
アルツハイマー型認知症では短く具体的に伝え、相手のペースに合わせ、指差し・メモなど視覚提示を併用することが推奨される。安心につながる言い回しが受容を助けると解説。
https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/55.html

Q
アルツハイマー型認知症で入浴を拒否する場合、どんな声掛けが有効ですか?
A

共感→小ステップ→同行が効果的です。「寒いですね。まずは手だけ温めましょう」のように段階化します。厚生労働省のマニュアルでは、否定せず共感し段階的に提案すると言われています。

※エビデンス

厚生労働省
被災した認知症の人と家族の支援マニュアル〈介護用 詳細版〉
アルツハイマー型認知症では不安や抵抗に対し、共感で受け止め、小さな成功体験を積む段階的介入が推奨。場面別の声掛け例が示され、同行と安心づくりの重要性を記載。
https://www.mhlw.go.jp/content/001484918.pdf

Q
アルツハイマー型認知症で服薬を嫌がるときの伝え方は?
A

目的を短文で伝え、分割内服+飲水補助を提案します(例:「この薬でお腹の調子を守れます。お水で半分ずつ飲みましょう」)。事例集では、わかりやすい言葉と繰り返し説明が有効と言われています。

※エビデンス

厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援(事例集)
アルツハイマー型認知症では安心できる環境、平易な言葉、図やメモの活用、時間をかけた繰り返し説明が推奨。具体的で負担の少ない提案が意思の受容を助けると整理。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf

Q
アルツハイマー型認知症では、声は大きいほうが伝わりますか?
A

いいえ。穏やかな声量・ゆっくり・相槌が基本です。日本看護研究学会雑誌の研究で、大声の多用は逆効果の可能性が示唆されています。

※エビデンス

日本看護研究学会(J-STAGE)
介護スタッフが認知症高齢者に用いるコミュニケーション技法の特徴と関連要因
調査では親しみのある話し方・ゆっくり・相槌の技法が多用され、大声の必要性は限定的と示唆。アルツハイマー型認知症では配慮的な発話態度が望ましいと結論づけている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/30/4/30_20070619009/_pdf/-char/ja


🔷 まとめ:今日から“短く・具体的・共感的”をチームでそろえる

アルツハイマー型認知症では、短く・具体的・共感的に伝えることが基本です。「名前→共感→目的→手順→称賛」の型、選択肢は2つ、前置き予告、視覚提示+非言語をチームで統一し、トイレ誘導・入浴・食事・服薬・不安対応の各場面に落とし込みましょう。根拠は厚生労働省の研修用資料国立長寿医療研究センターの解説学術研究で一貫しています。

コメント・シェアのお願い:
あなたの現場で「この言い方がよかった/これは逆効果だった」など、具体的なフレーズや工夫・改善点をぜひ共有してください。記事の更新時に反映し、チームで使える表現集の質を一緒に高めていきましょう。


認知症声掛けシリーズ一覧


出典:
厚生労働省
認知症ケア法-認知症の理解(研修用資料)
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援(事例集)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf

厚生労働省
被災した認知症の人と家族の支援マニュアル〈介護用 詳細版〉
https://www.mhlw.go.jp/content/001484918.pdf

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター(NCGG)
認知症の方と関わるとき~大切な7つのポイント
https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/55.html

日本看護研究学会(J-STAGE)
介護スタッフが認知症高齢者に用いるコミュニケーション技法の特徴と関連要因
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/30/4/30_20070619009/_pdf/-char/ja

日本リハビリテーション医学会誌(J-STAGE)
行動・心理症状を表出するアルツハイマー認知症高齢者への情緒的・身体的介入の検証
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm/71/1/71_12/_article/-char/ja/

独立行政法人 国立障害者リハビリテーションセンター
地域/家族向け 声掛けロボット導入手順 ver.1(役立つ声掛け文の作り方)
https://www.rehab.go.jp/application/files/5916/2271/1857/2104.pdf

タイトルとURLをコピーしました