介護現場の冬換気、「対角線」が正解!室温と感染対策を両立するコツ

冬の訪れとともに、暖房の効いた室内が 心地よい季節になりましたね。 しかし、現場の皆様にとっては 「換気」との戦いが始まる時期でもあります。

「窓を開けると寒い!」という利用者様の声と、 感染対策としての換気の必要性。 その板挟みで、心苦しい思いをされていませんか?

実は、室温の低下を最小限に抑えつつ、 空気を効率よく入れ替える「コツ」があります。

この記事では、厚生労働省の推奨する換気方法に基づき、 冬場の現場で無理なく実践できる 具体的な工夫についてご紹介します。

この記事を読むと分かること

  • 室温を下げすぎずに空気を入れ替える「対角線」の換気術が分かります
  • 厚生労働省が推奨する、具体的な換気の「頻度」と「時間」を理解できます
  • 感覚ではなく数値で管理する、CO2センサーの活用基準が分かります
  • 利用者様に寒さを感じさせにくい、事前の準備と配慮のポイントが分かります

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • 換気のたびに「寒い」と苦情を言われ、対応に困っている
  • 室温が下がるのが心配で、つい換気の間隔が空いてしまうことがある
  • 「1時間に1回」などの基準はあるが、徹底するのが難しいと感じている
  • 空気の汚れ具合が目に見えないため、換気のタイミングに迷いがある
  • 効率的な窓の開け方を知らず、近くの窓だけを全開にしている

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寒くても守りたい「換気の3原則」

冬場の換気は、単に窓を開ければよいというものではありません。寒さを我慢して長時間開けっ放しにしても、効率が悪ければ室温が下がるだけで、感染対策としての効果は限定的です。まずは厚生労働省などが推奨する、効率的かつ利用者の負担を減らすための「3つの基準」を確認しましょう。

基準は「1時間に1回、10分程度」

「換気=常に窓を開けておくこと」と思い込んでいませんか?

日本環境感染学会の資料では、日中の換気の目安として「1時間に1回程度、1回10分程度」という具体的な基準が示されています。漫然と開け続ける必要はありません。時間を決めて短時間で空気を入れ替える「メリハリ換気」こそが、冬場の正解です。

出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本環境感染学会

高齢者介護施設における感染対策 第1版

https://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/koreisyakaigoshisetsu_kansentaisaku.pdf

本提言では、環境対策として、「日中は1時間に1回程度、1回10分程度)な換気を行いましょう。」とされ、窓開放による換気が基本となる。テーブルや手すりの消毒と合わせ、発熱職員の勤務調整・換気の徹底が、介護施設での呼吸器感染症対策の柱であることが読み取れる。

効率重視!「二方向」を開けて風を通す

女性の介護職員の画像

「寒いから少しだけ開けよう」と、窓を1箇所だけ数センチ開けて満足していませんか?

実は、1箇所を開けるだけでは空気の通り道ができず、効率的な換気はできません。厚生労働省は、「二方向の窓や扉を開け室内全体の空気の流れを作る」ことを推奨しています。入口と出口を作ることで、短時間で一気に空気を入れ替えることができます。

出典元の要点(要約)
厚生労働省ほか

介護施設における感染対策(継続すべきこと、緩和してもよいこと)

https://www.mhlw.go.jp/content/000501120.pdf

換気について、「締め切った室内、空気の流れが停滞している室内は感染リスクが⾼まります」と指摘し、「室温に配慮しながら定期的に(あるいは常時)窓開け換気をし、可能であれば⼆⽅向の窓や扉を開け室内全体の空気の流れを作りましょう」と推奨しています。さらに、「⼆酸化炭素濃度測定器(CO2 センサー)やサーキュレーターまたは HEPA フィルタ付空気清浄機」の活用が示され、特養やデイなど閉鎖空間での空気環境管理の具体的な方法が提示されています。

寒さ対策は「室温配慮」が大前提

換気は重要ですが、それによって利用者が体調を崩してしまっては本末転倒です。

ガイドラインには必ず「室温に配慮しながら」という文言が添えられています。これは、「寒くても我慢しろ」という意味ではなく、「室温が下がりすぎないよう工夫せよ」という意味です。

換気を行う際は、以下のポイントを意識して環境を整えましょう。

ポイント具体的なアクション
頻度と時間1時間に1回、10分程度を目安にする
空気の流れ二方向(対角線)を開けて通り道を作る
室温管理暖房器具や衣類調整と併用し、室温低下を防ぐ
出典元の要点(要約)
厚生労働省ほか

介護施設における感染対策(継続すべきこと、緩和してもよいこと)

https://www.mhlw.go.jp/content/000501120.pdf

「室温に配慮しながら定期的に(あるいは常時)窓開け換気をし」と記載されており、換気を行う際には室温管理もセットで行う必要があることが示されています。

3つの原則を押さえたところで、次は具体的な「対角線換気」のやり方や、やってしまいがちなNG換気について解説します。現場ですぐに使えるテクニックを見ていきましょう。


現場でやりがち?「NG換気」と「プロの換気術」

女性の介護職員の画像

「換気しなきゃ!」という責任感から、とにかく窓を全開にしていませんか? しかし、そのやり方が室温を一気に下げ、利用者様を震え上がらせているかもしれません。ここでは、現場でよく見かけるNGな換気方法と、室温低下を抑える「プロの技」を対比して解説します。

【NG行動】近くの窓だけを「全開」にする

寒さを防ごうとして、「一番大きな窓を1箇所だけ全開にして、短時間で済ませよう」としていませんか?

実は、1箇所だけを開けても空気の通り道ができず、室内全体の空気はなかなか入れ替わりません。それどころか、窓際のエリアだけが急激に冷え込み、その席に座っている利用者様に強い寒冷ストレスを与えてしまいます。

効率が悪い上に、利用者様からの「寒い」という苦情に直結しやすい方法です。

出典元の要点(要約)
厚生労働省ほか

介護施設における感染対策(継続すべきこと、緩和してもよいこと)

https://www.mhlw.go.jp/content/000501120.pdf

資料では、換気について「締め切った室内、空気の流れが停滞している室内は感染リスクが高まります」としつつ、「可能であれば二方向の窓や扉を開け室内全体の空気の流れを作りましょう」と推奨しています。単一箇所の開放ではなく、空気の流れを作ることが重要視されています。

【プロの技】「対角線」を開けて短時間で済ませる

効率よく換気をするためのキーワードは「対角線」です。

  • 部屋の「手前」「奥」(対角線上にある窓と扉など)の2箇所を開ける
  • 窓を全開にする必要はなく、空気の入り口と出口を作るイメージで開ける

こうすることで気流(空気の流れ)が生まれ、部屋全体の空気がスムーズに入れ替わります。効率が良い分、窓を開けている時間を短縮でき、結果として室温の低下を最小限に抑えることができます。

出典元の要点(要約)
厚生労働省ほか

介護施設における感染対策(継続すべきこと、緩和してもよいこと)

https://www.mhlw.go.jp/content/000501120.pdf

「室温に配慮しながら定期的に(あるいは常時)窓開け換気をし、可能であれば二方向の窓や扉を開け室内全体の空気の流れを作りましょう」と具体的な方法が示されています。

【活用】CO2センサーで「見える化」する

「なんとなく空気が淀んでいる気がする」という感覚だけで窓を開けていませんか?

冬場は、二酸化炭素濃度測定器(CO2センサー)を活用し、換気のタイミングを「数値」で判断することをおすすめします。

  • 数値が基準(例:1000ppmなど)を超えたら換気する
  • 数値が下がったらすぐに閉める

これにより、「空気がきれいなのに窓を開けて寒い思いをさせる」という無駄をなくすことができます。

出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本環境感染学会

介護施設における感染対策(継続すべきこと、緩和してもよいこと)

https://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/COVID-19_kansentaksaku.pdf

この資料では、換気や環境衛生管理も継続すべき基本対策とされています。室内の換気については、窓や扉を開けて空気の流れをつくる方法が示され、二酸化炭素濃度測定器(CO₂センサー)を用いて換気状況を確認することにも言及しています。


なぜ「閉め切ったまま」ではいけないのか?

食堂

冬場は寒いので、できれば窓を閉め切っておきたいものです。しかし、閉め切った空間はウイルスにとって好都合な環境になってしまいます。

厚生労働省の資料では、「締め切った室内、空気の流れが停滞している室内は感染リスクが高まります」と明記されています。換気をすることで、空気中に漂うウイルス(エアロゾル)を建物の外に出し、室内のウイルス濃度を下げることができます。これが、クラスターを防ぐための基本的な考え方です。

出典元の要点(要約)
厚生労働省ほか

介護施設における感染対策(継続すべきこと、緩和してもよいこと)

https://www.mhlw.go.jp/content/000501120.pdf

資料では、換気について「締め切った室内、空気の流れが停滞している室内は感染リスクが高まります」と指摘し、定期的な換気やCO2センサー等の活用を推奨しています。

出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局

介護現場における感染対策の手引き 第3版

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf

本手引きでは、「適切な換気を確保することで、空気感染やエアロゾル感染を予防することができます」と述べられており、換気が感染経路遮断の有効な手段であることが示されています。

なぜ「二方向」開ける必要があるのか?

「1箇所だけ開ければ十分では?」と思うかもしれませんが、それだけでは空気は動きません。

空気の入れ替えには、「入り口」と「出口」が必要です。対角線上にある二方向の窓(または窓と扉)を開けることで、室内に空気の通り道(気流)が生まれ、淀んでいた空気が一気に外へ押し出されます。

効率よく換気を行うことは、窓を開ける時間を短縮し、結果として室温低下を防ぐことにもつながります。

出典元の要点(要約)
厚生労働省ほか

介護施設における感染対策(継続すべきこと、緩和してもよいこと)

https://www.mhlw.go.jp/content/000501120.pdf

換気の方法として、「可能であれば二方向の窓や扉を開け室内全体の空気の流れを作りましょう」と推奨されています。単一方向ではなく、空気の流れを作ることが効率的な換気の条件とされています。

閉め切った部屋は感染リスクを高めます。「二方向」を開けて空気の通り道を作ることで、短時間で効率的に換気ができ、室温低下も最小限に抑えられます。


現場の悩みに答える!換気に関するQ&A

「寒いから閉めて!」と言われる辛さ、よく分かります。現場の現実的な悩みに対し、ガイドラインの基準を元にした解決策をQ&A形式でまとめました。

Q
寒いと苦情が出ます。どうすればいいですか?
A

「室温への配慮」も業務のうちです。防寒対策とセットで行いましょう。

厚生労働省の資料にも「室温に配慮しながら」と明記されています。ただ窓を開けるのではなく、以下の対策をセットで行うことで、利用者様の不快感を減らすことができます。

  • タイミング:暖房で部屋が暖まってから開ける。
  • 服装:換気の前には「今から空気を入れ替えますね」と声をかけ、ひざ掛けや上着を羽織ってもらう。
  • 場所:風が直接当たる席の利用者様には特に配慮する。

「寒くても我慢」ではなく、「寒くないように工夫して換気」が正解です。

出典元の要点(要約)

厚生労働省ほか

介護施設における感染対策(継続すべきこと、緩和してもよいこと)

https://www.mhlw.go.jp/content/000501120.pdf

「室温に配慮しながら定期的に(あるいは常時)窓開け換気をし」と記載されており、換気を行う際には室温管理もセットで行う必要があることが示されています。

Q
換気扇(機械換気)だけではダメですか?
A

「外気」を取り込めているかが鍵です。窓開けとの併用が推奨されます。

換気扇が回っていても、空気が循環しているだけで「外の新鮮な空気」が入ってきていない場合があります。

日本環境感染学会の提言では、「外気を取り込む換気(窓やドアを開けて行う自然換気、機械換気)」を行うよう求めています。換気扇の能力に不安がある場合や、人が密集している場合は、やはり窓を開けて確実に空気を入れ替えるのが最も安全です。

出典元の要点(要約)

一般社団法人 日本環境感染学会

高齢者介護施設における感染対策 第1版

https://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/koreisyakaigoshisetsu_kansentaisaku.pdf

換気について、「外気を取り込む換気(窓やドアを開けて行う自然換気、機械換気)をよりこまめに行ってください」と記載されています。室内の空気を回すだけでなく、外気との交換が重要です。

Q
サーキュレーターはどう使えばいいですか?
A

空気の「流れ」を作るために使います。

窓が1つしかない部屋や、風が通りにくい構造の場合、サーキュレーター(または扇風機)が役に立ちます。

  • 窓に向けて置く:室内の空気を外に出す。
  • 窓を背にして置く:外の空気を室内に取り込む。

空気が淀んでいる場所に向けて風を送り、強制的に気流を作ることで、換気の効率を高めることができます。

出典元の要点(要約)

厚生労働省ほか

介護施設における感染対策(継続すべきこと、緩和してもよいこと)

https://www.mhlw.go.jp/content/000501120.pdf

換気の補助として、「二酸化炭素濃度測定器(CO2 センサー)やサーキュレーターまたは HEPA フィルタ付空気清浄機があれば、引き続き有効活用していきましょう」と推奨されています。

寒さ対策(防寒)と換気はセットで行います。換気扇やサーキュレーターも活用しつつ、最終的には「外気」を確実に取り入れる工夫が重要です。


まとめ:賢い換気で、冬場の安全と快適を守ろう

冬場の換気は、感染対策の中でも特にバランス感覚が求められる業務です。最後に、今回の記事のポイントを振り返り、明日からの実践につなげましょう。

今日からできる!冬換気3つの見直し

  • 対角線を開ける:2箇所を開けて空気の通り道を作ります。
  • 短時間で済ませる:効率よく換気し、1回10分程度を目安にします。
  • 室温に配慮する:換気前後の室温管理と、利用者様への声かけを忘れないようにします。

これらを徹底することで、寒さを最小限に抑えながら、ウイルスが滞留しない安全な環境を作ることができます。

出典元の要点(要約)
厚生労働省ほか

介護施設における感染対策(継続すべきこと、緩和してもよいこと)

https://www.mhlw.go.jp/content/000501120.pdf

「室温に配慮しながら定期的に(あるいは常時)窓開け換気をし、可能であれば二方向の窓や扉を開け室内全体の空気の流れを作りましょう」という原則が、冬場の換気における最も重要な指針となります。

「なんとなく」から「根拠ある」換気へ

「寒いけど仕方ない」と諦めるのではなく、CO2センサーの数値や、効率的な気流の作り方を知ることで、現場のストレスは減らせます。

正しい知識に基づいたあなたの行動が、利用者様の健康と、快適な冬の生活を守ります。

出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本環境感染学会

介護施設における感染対策(継続すべきこと、緩和してもよいこと)

https://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/COVID-19_kansentaksaku.pdf

換気や環境衛生管理は、今後も継続して実施すべき基本的対策です。施設内のルールを確認し、適切に実施することが求められています。

対角線換気と室温配慮を組み合わせることで、冬場の難題を解決できます。根拠ある換気で、利用者様もスタッフも快適な冬を過ごしましょう。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。 この記事が、冬場の換気に対する迷いを解消し、温かく安全な施設づくりの一助となれば幸いです。



更新履歴

  • 2025年11月22日:新規投稿

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