「給料を上げれば人は辞めないはず」そう信じて処遇改善に奔走しても、突然の退職届が止まらない。現場では「人手不足で有給なんて言い出せない」「上司の顔色を伺ってピリピリする」といった閉塞感が漂っていませんか。
制度の壁があり、これ以上の賃上げや増員は現実的に厳しいのが本音でしょう。しかし、データは「お金以外の意外な要素」が定着の鍵であることを示しています。全部は無理でも、ここだけ押さえれば組織は変わります。
この記事を読むと分かること
- 離職率が低い職場に共通する条件
- 給料以上に定着に効く「休み方」
- コストゼロでできる人間関係改善策
- 上司ができる「辞めない」土壌作り
- データが示す離職防止の優先順位
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
結論:「給料アップ」だけでは人は定着しない。鍵は「休みやすさ」と「関係性」

「処遇改善手当で給料は上がった。でも、もう限界です」「人がいないから有給なんて申請できない雰囲気がある」。現場からは、こうした悲痛な声が絶えません。給与明細の額面が増えても、日々の業務に忙殺され、心がすり減ってしまえば「辞めたい」という気持ちは止められないのが現実です。
経営努力で賃金を上げても離職が止まらない時、私たちは何を見落としているのでしょうか。データが示したのは、採用には「お金」が効く一方で、長く働き続けてもらうためには「お金以外の居心地」が決定的であるという事実でした。
「採用」と「定着」で効く特効薬は違う
介護現場において、人材を確保するための入り口である「採用」と、入職した後に長く働いてもらうための「定着(離職防止)」では、効果的な施策が異なります。事業所側は採用のために「賃金水準の向上」を重視しがちですが、実際に現場で働く職員が「今の職場を辞めずに働き続けている理由」として挙げた上位は、賃金ではありませんでした。
もっとも多くの職員が挙げた理由は「職場の人間関係が良好(47.2%)」であり、次いで「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり(43.2%)」となっています。つまり、人は「給料」を見て入職したとしても、最終的にそこに留まるかどうかを決めるのは、日々の「人間関係」や「休みの融通が利くか」という働きやすさのソフト面なのです。
出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf
採用活動では、「ハローワークや福祉人材センターの担当者に相談」「職員に対して友人・知人の紹介を依頼」を行っている事業所がいずれも約3分の2を占め、そのうち4割超が「採用に効果があった」と回答した。採用や職場定着・離職防止の方策としては「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」「人間関係が良好な職場づくり」が実施率で高く、採用面では「賃金水準の向上」が最も効果がある方策とされている。
公益財団法人介護労働安定センター
令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf
「現在の職場を辞めずに働き続けることに役立っている勤務先の取り組み」としては、「人間関係が良好な職場づくり」47.2%、「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」43.2%が高い。
「休日の数」よりも「休みと言える雰囲気」が重要
「うちは公休数なら他より多いはずなのに定着しない」という悩みを聞くことがありますが、データが示唆しているのは単純な休日の日数だけではありません。定着に寄与しているのは、「有給休暇等の取得」や「勤務日時の変更」がしやすい職場づくりです。
実際に、労働条件に関する悩みとして「有給休暇が取りにくい」(19.2%)や「休憩が取りにくい」(17.1%)が挙げられています。これらは制度上の日数だけでなく、「急な用事でも相談に乗ってくれるか」「休みを申請しても嫌な顔をされないか」という職場の柔軟性と許容度が問われていると言えます。現場のマンパワー不足でカツカツの状態であっても、互いにカバーし合い「お互い様」と言える空気がなければ、定着率は向上しません。
出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について
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労働条件・仕事の負担についての悩み・不安・不満等では、「雇用が不安定である」(3.2%)、「無期雇用職員になれない」(0.6%)に加え、「労働時間が不規則である」(8.0%)、「労働時間が長い」(6.5%)、「不払い残業がある・多い」(3.1%)、「休憩が取りにくい」(17.1%)、「有給休暇が取りにくい」(19.2%)など、勤務時間や休憩・休暇、雇用の安定性に関する不安が多面的に示されているとされる。
公益財団法人介護労働安定センター
令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について
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勤務先の介護休業制度等の認知状況については、「勤務先の介護休業制度を知っている」が20.0%、「勤務先の介護休暇制度を知っている」が18.5%となっている。また、「日頃から、有給休暇をとりやすい」とする者は17.0%、「勤務日時の急な変更に対応してくれる」とする者は59.1%であり、一方で「突然の時間外勤務がない」「いずれもあてはまらない」も一定割合存在する。
「上司の関わり方」を変えることが最大の離職対策
離職理由の第1位は「職場の人間関係」ですが、その詳細を見ると、同僚とのいざこざ以上に「上司や先輩の指導」が大きなウェイトを占めています。具体的には、「上司や先輩からの指導や言動がきつかったり、パワーハラスメントがあった」(49.1%)や、「上司の業務指示が不明確、リーダーシップがなかった」(36.2%)という理由です。
これらを防ぐために有効なのが、カウンセリング技法における「受容的態度」です。これは相手を批判や非難なしに、一人の人間として尊重して接する態度のことです。上司がこの姿勢を持ち、部下の言い分をまずは否定せずに聴くことで、部下は「攻撃された」ではなく「受け入れられた」と感じ、信頼関係(ラポール)が崩れるのを防ぐことができます。
出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について
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直前の仕事が介護関係で、辞めた理由が「職場の人間関係に問題があったため」とする人に具体的内容を尋ねると、「上司や先輩からの指導や言動がきつかったり、パワーハラスメントがあった」が最も多く、約半数を占める。次いで「上司の業務指示が不明確、リーダーシップがなかった」など、管理職の対応や指示の仕方に起因する不満が多く挙げられている。
厚生労働省
大学等におけるキャリア教育実践講習テキスト(平成24年度)Part.15「カウンセリングのスキル」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/h24text-15.pdf
受容的態度とは、批判や非難の目を向けることなく、受容的な態度で話し手に接することと定義される。話し手をひとりの人間として大切に思いやり、「こうあるべきだ」という価値観を一方的に押しつけない姿勢が求められる。否定的評価を前面に出さずに話を聴くことで、話し手は失敗や悩みを含めた本音を語りやすくなり、カウンセリング関係の中での安心感と尊重感が高まるとされている。
離職を防ぐために、必ずしも明日すぐに給与を上げたり、人員を増やしたりする必要はありません。現場で働く人々が求めているのは、「困ったときに休みを相談できる柔軟さ」と、「自分を否定せずに話を聞いてくれる上司」の存在です。これらはお金をかけずに、今日からの関わり方一つで変えていける領域です。
現場で起きがちな「すれ違い」の典型パターン

「良かれと思ってやったのに」「精一杯配慮しているつもりなのに」。現場の管理者やリーダーが抱える苦悩の多くは、スタッフが求めているものとの「決定的なズレ」から生じています。ここでは、データに基づいた「よくあるすれ違い」を3つの事例で解説します。
事例1:【賃金アップ】「手当はつけたのに」なぜ辞める?
- 状況
- 事業所が経営努力を行い、処遇改善加算を活用して給与や手当を増額しました。しかし、期待に反して中堅職員が「退職したい」と申し出てきました。
- 困りごと
- 管理者は「給料が不満だと言っていたから上げたのに、裏切られた気分だ」と感じ、スタッフは「お金の問題じゃない」と感じており、話が噛み合いません。
- よくある誤解
- 「結局、介護職は給料が高ければ辞めないはずだ」という思い込みです。
- 押さえるべき視点
- 採用時には「賃金」が効果的ですが、定着(辞めずに働き続けること)に関しては「職場の人間関係(47.2%)」や「有給休暇や勤務変更のしやすさ(43.2%)」の方が重視される傾向にあります。お金でつなぎ止めるには限界があることをデータが示しています。
出典元の要点(要約)
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「現在の職場を辞めずに働き続けることに役立っている勤務先の取り組み」としては、「人間関係が良好な職場づくり」47.2%、「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」43.2%が高い。採用面では「賃金水準の向上」が最も効果がある方策とされている。
事例2:【休みの申請】「休んでもいいけど…」の無言の圧力
- 状況
- スタッフが有給休暇を申請した際、管理者が「いいよ」と許可はしたものの、「人がいないからシフト調整が大変だ」「忙しい時期だけどね」と一言添えてしまいました。
- 困りごと
- スタッフは「迷惑をかけている」と罪悪感を抱き、次第に休みを言い出せなくなります。結果、疲労が蓄積し「ここには居場所がない」と感じて離職を選びます。
- よくある誤解
- 「制度として有給を使わせているから問題ない」「許可はしている」という認識です。
- 押さえるべき視点
- 労働条件の悩みとして「有給休暇が取りにくい(19.2%)」が挙げられています。重要なのは「休める制度」があること以上に、「気兼ねなく休める雰囲気」や「勤務日時の変更に対応してくれる柔軟性」があるかどうかなのです。
出典元の要点(要約)
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労働条件・仕事の負担についての悩み・不安・不満等では、「有給休暇が取りにくい」(19.2%)、「休憩が取りにくい」(17.1%)など、勤務時間や休憩・休暇に関する不安が多面的に示されている。また、「勤務日時の急な変更に対応してくれる」とする者は59.1%であり、実務上の柔軟な対応が評価されている。
事例3:【指導のつもり】「正論」が心を折る瞬間
- 状況
- ミスをしたスタッフに対し、リーダーが「なぜ確認しなかったの?」「マニュアル通りやって」と、事実確認と改善要求のみを淡々と伝えました。
- 困りごと
- リーダーは「正しいことを伝えた」つもりですが、スタッフは「冷たい」「怒られた」と受け取り、萎縮してしまいます。
- よくある誤解
- 「厳しく言わないと命に関わる」「感情を挟まず指導するのがプロだ」という考え方です。
- 押さえるべき視点
- 離職理由の人間関係トラブルの内訳は、約半数が「上司・先輩の指導や言動がきつい」ことです。相手を批判せず、まずは言い分を受け止める「受容的態度」がなければ、どんなに正しい指導も「攻撃」として受け取られ、離職の引き金になります。
出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について
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直前の仕事が介護関係で、辞めた理由が「職場の人間関係に問題があったため」とする人に具体的内容を尋ねると、「上司や先輩からの指導や言動がきつかったり、パワーハラスメントがあった」が最も多く、約半数を占める。
厚生労働省
大学等におけるキャリア教育実践講習テキスト(平成24年度)Part.15「カウンセリングのスキル」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/h24text-15.pdf
受容的態度とは、批判や非難の目を向けることなく、受容的な態度で話し手に接することと定義される。否定的評価を前面に出さずに話を聴くことで、話し手は失敗や悩みを含めた本音を語りやすくなり、カウンセリング関係の中での安心感と尊重感が高まるとされている。
これらの事例から分かるのは、スタッフが辞めるのは「条件が悪いから」だけではないということです。「大切にされていない」「話を聞いてもらえない」という心理的な孤立感が、最終的な退職決断につながっているのです。
なぜ「給料」を上げても「離職」は止まらないのか

「給料が安すぎる」という不満を聞いて手当を厚くしたのに、それでも退職願が出される。このやるせない現象の背景には、「人が集まる理由」と「人が居続ける理由」は根本的に違うという、見落とされがちな事実があります。
構造的な人手不足の中で、他法人に負けない待遇を用意することは重要です。しかし、データは「お金以外の要素」が定着の決定打になっていることを残酷なまでに示しています。
「採用」には金、「定着」には心と休み
事業所への調査では、採用に最も効果があるのは「賃金水準の向上」だと認識されています。しかし、実際に現場で働く職員が「今の職場を辞めずに働き続けている理由」として挙げた上位は、賃金ではありません。
トップは「職場の人間関係が良好(47.2%)」、次いで「有給休暇等の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり(43.2%)」でした。つまり、給料は「入職のきっかけ」にはなりますが、日々の辛い業務の中で「明日もここに来よう」と思えるかどうかは、「人間関係」と「休みの融通」というソフト面に依存しているのです。
出典元の要点(要約)
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採用面では「賃金水準の向上」が最も効果がある方策とされている。一方、「現在の職場を辞めずに働き続けることに役立っている勤務先の取り組み」としては、「人間関係が良好な職場づくり」47.2%、「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」43.2%が高い。
「柔軟性」がない職場は息が詰まる
介護現場はギリギリの人員で回しているため、「休みたい」と言い出しにくい雰囲気になりがちです。しかし、定着率が高い職場では、単に公休数が多いだけでなく、「勤務日時の急な変更に対応してくれる(59.1%)」という柔軟性が確保されています。
「困ったときはお互い様」という空気があるか、それとも「休むなんて迷惑だ」という無言の圧力があるか。この「心理的な安全性」の有無が、離職率を大きく左右します。制度として休みがあっても、使えなければ意味がないのです。
出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について
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労働条件・仕事の負担についての悩み・不安・不満等では、「有給休暇が取りにくい」(19.2%)、「休憩が取りにくい」(17.1%)などが挙げられる一方、働き続けている理由として「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」が上位にある。また、「勤務日時の急な変更に対応してくれる」とする者は59.1%である。
リーダーの「聴く力」が定着の命綱
人間関係による離職の多くは、上司の「きつい指導」や「指示不足」に起因します。逆に言えば、リーダーがスタッフの話を批判せずに聴く「受容的態度」を持ち、適切に指導・相談を行っている職場は、定着率が劇的に改善します。
データによれば、サービス提供責任者がヘルパーに対して「仕事上の課題に関する相談や指導」を行っている事業所は、離職率が低い傾向にあります。忙しさを理由にコミュニケーションを後回しにすることは、結果として離職を招き、さらなる忙しさを生む「負のループ」への入り口となってしまうのです。
出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について
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「訪問介護員からの仕事上の課題などに関する相談や指導など」を実施している(「十分実施している」+「ある程度実施している」)場合には、担当訪問介護員の離職率「10%未満」の割合が63.0%と高く、コミュニケーションや指導の実施が低離職率と関連している。
厚生労働省
大学等におけるキャリア教育実践講習テキスト(平成24年度)Part.15「カウンセリングのスキル」
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信頼関係(ラポール)構築のためには、カウンセリングの基本的態度である「純粋性」「受容的態度」「共感的理解」が重要であるとされる。これらの態度を備えることで、話し手は批判や非難を恐れずに相談でき、カウンセラーとの関係の中で本音を語りやすくなる。
お金を積むことには限界がありますが、「話を聴く」「休みの相談に乗る」という態度の変容は、コストをかけずに今日からでも実践できます。定着率を決めるのは、給与明細の数字よりも、日々の関わりの中にある「大切にされている実感」なのです。
よくある疑問(FAQ)
- Q給料を上げられない場合、他に何ができますか?
- A
給料以外で定着率を高めるには、「有給休暇の取得しやすさ」や「勤務日時の変更への柔軟な対応」が効果的です。 また、「人間関係が良好であること」も重要な継続理由となるため、上司が部下の話を批判せずに聴く「受容的態度」を持つなど、コミュニケーションの質を変えることも有効な対策となります。
出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター
令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について
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「現在の職場を辞めずに働き続けることに役立っている勤務先の取り組み」としては、「人間関係が良好な職場づくり」47.2%、「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」43.2%が高い。
厚生労働省
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受容的態度とは、批判や非難の目を向けることなく、受容的な態度で話し手に接することと定義される。否定的評価を前面に出さずに話を聴くことで、話し手は失敗や悩みを含めた本音を語りやすくなり、カウンセリング関係の中での安心感と尊重感が高まるとされている。
- Q人手不足で有給なんて取れません。どうすればいいですか?
- A
物理的に休めない状況でも、「お互い様」の雰囲気を作ることは可能です。 データでは「勤務日時の急な変更に対応してくれる」ことが働きやすさの指標となっています。無理に日数を増やすだけでなく、急な欠勤や変更相談に対して「迷惑だ」という態度を見せず、柔軟に対応する姿勢を示すことが定着につながります。
出典元の要点(要約)
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勤務先の介護休業制度等の認知状況については、「勤務日時の急な変更に対応してくれる」とする者は59.1%であり、実務上の柔軟な対応が評価されている。
- Qスタッフが辞める本当の理由を知りたいです。
- A
本音を聞き出すには、普段からの信頼関係(ラポール)が必要です。 離職理由の多くは「人間関係(特に上司)」や「将来への不安」です。退職時に聞くだけでなく、日頃から「仕事の課題」や「悩み」について相談に乗る時間を設け、相手の話を否定せずに聴くことで、本音を話しやすい関係を築けます。
出典元の要点(要約)
公益財団法人介護労働安定センター
令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について
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直前の仕事が介護関係であった者がその仕事を辞めた理由では「職場の人間関係に問題があったため」が24.7%で最多となっている。また、「訪問介護員からの仕事上の課題などに関する相談や指導など」を実施している場合には、担当訪問介護員の離職率「10%未満」の割合が高く、コミュニケーションや指導の実施が低離職率と関連している。
厚生労働省
大学等におけるキャリア教育実践講習テキスト(平成24年度)Part.15「カウンセリングのスキル」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/h24text-15.pdf
信頼関係(ラポール)とは、話し手と聴き手の間に築かれる信頼関係のことであり、しっかりとしたラポールが築かれると、話し手はカウンセリング関係の中で安心して自由に振る舞い、素直な感情を表現できるようになると説明されている。
まとめ
本記事では、介護現場における離職防止の鍵が、必ずしも「給与」だけにあるのではなく、「職場の人間関係」や「休みの取りやすさ」といった環境要因に大きく依存していることを、データに基づいて解説しました。
介護労働実態調査の結果が示すように、職員が長く働き続けたいと感じる職場は、互いにフォローし合える柔軟性があり、上司が部下の話を批判せずに聴く「受容的態度」を持っています,。大規模な制度改革が難しくとも、日々の関わりの中で「相談に乗る時間」を設け、相手を尊重する姿勢を示すことは、今すぐにでも始められる最も効果的な定着対策です。
「給料を上げられないから仕方がない」と諦める前に、まずは目の前のスタッフの声に耳を傾け、心理的な居場所を作ることから始めてみてはいかがでしょうか。その小さな変化が、組織全体の信頼関係を強固にし、離職の連鎖を断ち切る一歩となるはずです。
最後までご覧いただきありがとうございます。この記事が、貴事業所の定着率向上と、より良い職場づくりの一助となれば幸いです。
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更新履歴
- 2025年12月10日:新規投稿


