「そこに子供がいる」と訴える利用者様への関わり方。レビー小体型認知症の視覚認知障害への対応

「そこに子供がいる」と訴える利用者様への関わり方。レビー小体型認知症の視覚認知障害への対応

夜勤中に「人がいる」と言われると、丁寧に寄り添いたい反面、つい「誰もいない」と遮りたくなるものです。理想のケアが難しい現場だからこそ、まずは病気の仕組みを知る必要があります。

全てを完璧に受け止めるのは限界だからこそ、特性を絞って理解することが大切です。最低限の重要ポイントだけを押さえ、自身の心を守りながら関わるヒントを整理しましょう。

この記事を読むと分かること

  • 幻視が起きる脳の仕組み
  • 否定せず恐怖を除く声かけ
  • 状態が変化する波の正体
  • 薬剤過敏性のリスクと兆候
  • 現場で無理のない関わり方

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • 幻視の対応に正解がない
  • 忙しい時に何度も言われる
  • 日によって介助の難易度が違う
  • 寝言や叫び声の対応に困る
  • 薬でふらつきが出て不安

結論:レビー小体型認知症(DLB)のケアで「最低限」押さえるべき現実的なポイント

現場では、ガイドライン通りに「否定せず、ゆっくり寄り添う」ことが重要だと理解していても、実際の人員配置では物理的な限界があります。何度も繰り返される幻視の訴えや、夜間の叫び声への対応で、つい強い口調になってしまい自己嫌悪に陥る場面も少なくありません。理想と現実のギャップに悩み、疲弊してしまうのは、あなたが不誠実だからではなく、今の介護現場が抱える構造的な課題ゆえのことです。この記事では、忙しい現場でもここだけは守りたい「最低限の視点」を整理します。

記憶障害がなくても現れる「特有の症状」をチームで知る

現場では、「物忘れがないからしっかりしている」と判断されがちですが、レビー小体型認知症(DLB)は初期に記憶障害が目立たないことがよくあります。
その代わり、実際にはないものが見える幻視や、空間の把握が難しくなる視空間認知の障害、寝ている間に叫んだり暴れたりするレム期睡眠行動異常症などが先に現れるのが特徴です。
これらが「わざと」や「性格の変化」ではなく、脳の疾患によるものだと職員全員が認識することで、不要な摩擦を避けることができます。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

DLBの臨床診断には、国際ワークショップ診断基準改訂版やDSM-5の診断基準が使用される。病初期には記憶障害が目立たない場合があり、記憶以外の認知機能(注意、遂行機能、視空間認知など)の障害や、レム期睡眠行動異常症、パーキンソニズム、自律神経症状、嗅覚障害、うつ症状などの有無に留意することが早期診断のポイントとなる。

日によって状態が変わる「波」を疾患特性として捉える

現場では、さっきまで普通に歩けていた人が急に動けなくなったり、会話が通じなくなったりすることに戸惑う声が多くあります。
これは「認知の変動」と呼ばれるDLB特有の症状で、注意能力意識のハッキリ度合いが波のように変化するために起こります。
「今は調子が悪い波の時間帯なんだ」と割り切ることで、無理な介助を強行せず、事故のリスクを未然に防ぐことができます。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

DLBの主徴には、注意や覚醒水準の明らかな変化を伴う認知機能の変動、繰り返し現れる具体的な内容の幻視、パーキンソニズムが含まれる。

急激な体調変化を招く「お薬の影響」を警戒する

現場では、新しい薬が始まってから急にふらつきが増えたり、表情が固まったりすることがあります。
DLBの方は薬剤過敏性という特性を持っており、通常は問題ないような薬でも、強い副作用が出てしまうリスクがあります。
特に、精神症状を抑えるために使われることがあるハロペリドールなどの薬剤は、DLBの方には原則使用を控えるべきとされており、変化に気づいた際は速やかに医療職へ共有することが重要です。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

審査情報提供委員会により、器質的疾患に伴うせん妄や易怒性に対し、クエチアピン、ハロペリドール、ペロスピロン、リスペリドンを処方した事例を審査上認める取り扱いが出されている。ただし、ハロペリドールはParkinson病に対して使用禁忌であり、DLBに対しても原則使用を控えるべきである。

現場の限界がある中で大切なのは、完璧なケアを目指すことよりも、DLB特有の症状の波お薬の影響をチームで共有することです。
疾患の特性を理解してリスクを予測するだけで、突発的な事態への心理的負担を減らす一歩になります。
すべてを抱え込まず、エビデンスに基づいた「仕組みの理解」をケアの盾にしましょう。

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介護現場で直面しやすい「レビー小体型認知症」3つの典型事例

現場では、「認知症=物忘れ」という先入観があるため、記憶がしっかりしているレビー小体型認知症(DLB)の方の言動を、どう受け止めていいか迷う場面が多々あります。
「目に見えるものを否定しないで」という建前はあっても、多忙な時間帯に「あそこに誰かいる」と何度も訴えられると、つい「誰もいませんよ」と突き放したくなるのが現実です。
こうした現場特有の葛藤を抱えやすい典型的な場面を整理し、疾患特性に基づいた解決のヒントを共有します。

事例1:深夜の「幻視」によるパニック

状況夜間の訪室時、利用者が「部屋の隅に知らない子供が座っている」と怯えている。
困りごと「誰もいない」と説明しても納得せず、恐怖心から不眠や興奮が続いてしまう。
よくある誤解「ボケているから適当に流せばいい」「現実を見せれば安心するはずだ」
押さえるべき視点幻視は本人にとって紛れもない現実です。否定は不信感や不安を強めるため、まずは恐怖心に寄り添い、照明を調整するなど本人の見え方に配慮した環境整備を検討します。
出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

DLBの主徴には、注意や覚醒水準の明らかな変化を伴う認知機能の変動、繰り返し現れる具体的な内容の幻視、パーキンソニズムが含まれる。

事例2:日によって別人のようになる「認知の変動」

状況朝食時は自力で全量摂取できたのに、昼食時はスプーンも持てずボーっとしている。
困りごと職員によって「できるはず」と判断が分かれ、介助の統一が図れず現場が混乱する。
よくある誤解「さっきはできたのに、今はわざとサボっているのではないか」
押さえるべき視点意識のハッキリ度合いが波のように変わる認知の変動は、DLBの大きな特徴です。できない時は「疾患による波の影響」と捉え、無理に自立を促さず安全な介助を優先します。
出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

DLBの臨床診断において、注意、遂行機能、視空間認知などの障害や、レム期睡眠行動異常症、パーキンソニズム、自律神経症状などの有無に留意することがポイントとなる。病初期には記憶障害が目立たない場合がある。

事例3:就寝中の叫び声と激しい動き

状況入眠後に急に大声で叫んだり、壁を叩いたり、ベッドから転落しそうな動きを見せる。
困りごと他の利用者の安眠を妨げるため、強い薬で眠らせるべきか対応に苦慮する。
よくある誤解「性格が攻撃的になった」「認知症が急激に悪化して不穏になった」
押さえるべき視点これはレム期睡眠行動異常症(※)という特有の症状です。夢の内容がそのまま行動に出てしまうため、攻撃意図はありません。薬の調整は慎重に行い、まずは怪我を防ぐための環境調整を優先します。

※レム期睡眠行動異常症:眠っている間に、夢の内容に合わせて体が動いたり叫んだりしてしまう症状のこと。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

病初期には記憶障害が目立たない場合があり、記憶以外の認知機能(注意、遂行機能、視空間認知など)の障害や、レム期睡眠行動異常症、パーキンソニズム、自律神経症状、嗅覚障害、うつ症状などの有無に留意することが早期診断のポイントとなる。

これらの事例はすべて、本人の性格ややる気の問題ではなく、脳の疾患特性から生じるものです。現場の忙しさの中で完璧な対応は困難ですが、「これはDLB特有の症状の波幻視だ」と認識するだけで、感情的な対応を抑え、安全を優先した現実的な判断が可能になります。


なぜレビー小体型認知症(DLB)では「見えないもの」が見えるのか

女性の介護職員の画像

現場では、幻視を訴える利用者様に対し、マニュアル通りに「受容」しようと努めても、何度も同じことを言われると精神的な限界を感じることがあります。「わざと言っているのではないか」と疑ってしまったり、忙しさからつい強い言葉で否定してしまったりすることに、罪悪感を抱く職員も少なくありません。なぜ、本人の目にはこれほどまでハッキリと「実際にはないもの」が見え、日によって状態が大きく変わるのでしょうか。その根本的な理由を脳の仕組みから整理します。

視覚情報を正しく処理できない「視空間認知」の障害

レビー小体型認知症(DLB)では、脳の中で物の形や位置、奥行きを正しく判断する視空間認知(※1)という機能が低下します。これにより、実際には壁の汚れや影でしかないものを、虫や人の姿として脳が誤って作り出してしまうのが幻視の正体です。本人は「嘘」をついているのではなく、脳が送ってくる誤った映像を真実として受け止めています。

※視空間認知:目で見ている物が「どこに」「どのような形で」存在するかを正しく認識する力のこと。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

DLBの臨床診断には、国際ワークショップ診断基準改訂版やDSM-5の診断基準が使用される。病初期には記憶障害が目立たない場合があり、記憶以外の認知機能(注意、遂行機能、視空間認知など)の障害や、レム期睡眠行動異常症、パーキンソニズム、自律神経症状、嗅覚障害、うつ症状などの有無に留意することが早期診断のポイントとなる。

意識の鮮明さが波のように変化する「認知の変動」

現場で「さっきまで普通だったのに」と戸惑う理由は、DLB特有の認知の変動(※)にあります。これは、脳の覚醒水準(ハッキリ目覚めている度合い)が一定ではなく、波のように変化するために起こる現象です。意識が低下している時間帯は幻視が現れやすく、意識がハッキリしている時は正常に見えるため、周りからは「わがまま」や「演技」のように見えてしまうことがあります。

  • ※認知の変動:日や時間帯によって、意識がハッキリしたり、急にボーッとして反応がなくなったりすること。
出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

DLBの主徴には、注意や覚醒水準の明らかな変化を伴う認知機能の変動、繰り返し現れる具体的な内容の幻視、パーキンソニズムが含まれる。

外部からの刺激に体が敏感に反応する「薬剤過敏性」

ケアが難しくなるもう一つの理由は、DLBの方が持つ薬剤過敏性です。脳内の神経伝達物質のバランスが崩れているため、一般的な認知症で使われる精神安定剤などに対しても、体が過剰に反応してしまいます。これにより、幻視を抑えようとして使った薬が、逆にふらつき意識の混濁を招き、介護拒否や転倒などの新たなトラブルを引き起こす原因となります。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

審査情報提供委員会により、器質的疾患に伴うせん妄や易怒性に対し、クエチアピン、ハロペリドール、ペロスピロン、リスペリドンを処方した事例を審査上認める取り扱いが出されている。ただし、ハロペリドールはParkinson病に対して使用禁忌であり、DLBに対しても原則使用を控えるべきである。

現場で感じる「対応の難しさ」は、性格ややる気のせいではなく、すべて脳の医学的な仕組みに原因があります。幻視や状態の波を「本人の意思」ではなく「脳のエラー」と捉え直すことで、過度な期待や落胆を避け、今の状態に合わせた現実的なケアを選択できるようになります。本人の見えている世界を理解しようとする姿勢そのものが、現場の安心感につながります。

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現場で迷いやすい「レビー小体型認知症」へのギモン

女性の介護職員の画像

「否定してはいけない」と分かっていても、忙しい現場では、利用者様の見えている世界にどこまで合わせるべきか迷う瞬間があります。現場の職員が日々感じる「どうして?」「どうすればいい?」という切実な疑問に対し、疾患の特性に基づいた答えを整理しました。

Q
あそこに人がいる」と言われたとき、本人が納得するまで「いない」と説明してもよいのでしょうか?
A

納得してもらうために現実を強く説明することは、かえって混乱や不信感を招くことがあります。レビー小体型認知症(DLB)の方にとって、幻視は脳が作り出す「避けることのできない現実」です。まずは「そう見えるのですね」と本人の不安に寄り添い、照明を明るくしたり、見え方の原因となっている物(衣服の影など)を片付けたりする環境調整が、安心につながる現実的な一歩となります。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

DLBの臨床診断において、記憶以外の認知機能(注意、遂行機能、視空間認知など)の障害や、レム期睡眠行動異常症、パーキンソニズム、自律神経症状などの有無に留意することが早期診断のポイントとなる。

Q
日によって食事や歩行がスムーズにできる時と、全くできない時があるのはなぜですか?
A

これは「認知の変動」と呼ばれる、レビー小体型認知症特有の症状です。本人の「やる気」や「わがまま」ではなく、脳の覚醒水準(意識のハッキリ度合い)が時間帯や日によって波のように変化するために起こります。できない時は無理強いせず、「今は調子が悪い波の時間なんだ」とチームで共有し、安全を最優先にした介助を選択することが、お互いの負担を減らすコツです。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

DLBの主徴には、注意や覚醒水準の明らかな変化を伴う認知機能の変動、繰り返し現れる具体的な内容の幻視、パーキンソニズムが含まれる。

Q
幻視を抑えるお薬を使い始めてから、急に体が固まったり、ふらつきが強くなったりすることがありますか?
A

はい、起こる可能性があります。レビー小体型認知症の方は「薬剤過敏性」という特性があり、一部の精神科薬に対して体が過剰に反応しやすいことが知られています。特に、幻視などの精神症状に対して処方されることがある「ハロペリドール」などの薬剤は、副作用が強く出るリスクがあるため、原則として使用を控えるべきとされています。お薬の変更後に少しでも「いつもと違うふらつき」や「表情の固さ」を感じたら、速やかに医療職へ報告することが大切です。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

認知症疾患治療ガイドライン2017

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf

審査情報提供委員会により、器質的疾患に伴うせん妄や易怒性に対し、クエチアピン、ハロペリドール、ペロスピロン、リスペリドンを処方した事例を審査上認める取り扱いが出されている。ただし、ハロペリドールはParkinson病に対して使用禁忌であり、DLBに対しても原則使用を控えるべきである。

日々の介助の中で、思い通りにいかないことや、自分の対応に自信をなくしてしまうこともあるかもしれません。しかし、レビー小体型認知症の理解しがたい言動の多くは、本人の意思ではなく脳の疾患特性によるものです。すべてを完璧に解決しようとせず、「今は病気の波が来ているんだな」と一歩引いて捉えることが、あなた自身の心を守り、利用者様への穏やかな関わりを続けるための大切な「心の余裕」になります。


まとめ:レビー小体型認知症の特性を知り、無理のないケアを

レビー小体型認知症(DLB)のケアにおいて、現場の職員が最も大切にしたい視点は「疾患の特性を正しく理解し、予測すること」にあります。日々の忙しさの中で、利用者様の訴えに完璧に応えることは容易ではありませんが、脳の仕組みを知ることで、自分自身の心理的な負担を軽減し、より安全な介助へとつなげることができます。

この記事で解説した、現場で押さえておくべき重要なポイントは以下の3点です。

  • 症状の正体を知る:幻視や睡眠時の異常行動は、本人の意思ではなく脳の視覚認知や抑制機能の障害によるものです。
  • 状態の波を受け入れる:「できる時」と「できない時」があるのは認知の変動という疾患特性であり、無理な自立支援よりも安全を優先する判断が求められます。
  • お薬の影響を警戒する:薬剤過敏性のリスクを認識し、薬の変更後にふらつきや表情の固さが見られた場合は速やかに共有します。

まずは、利用者様が何かを指差した際、否定でも肯定でもなく「何か見えますか?」「怖いですか?」と感情に一言寄り添うことから始めてみてください。すべてを抱え込まず、エビデンスに基づいた知識を支えに、現場でできる範囲のケアを続けていきましょう。

最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。



更新履歴

  • 2025年12月29日:新規投稿

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