「そこに子供がいる」と訴える利用者様への関わり方
研修では「否定せず寄り添って」と習いますが、人手不足の現場ではそうもいきません。何度も「人がいる」と訴えられ、つい強い口調で返してしまう夜もありますよね。
理想のケアができないのは、あなたのせいではなく疾患の特性が理由かもしれません。全部は無理でも、ここだけ知れば心と安全を守りやすくなるポイントを整理しました。
この記事を読むと分かること
- 幻視が起きる医学的な仕組み
- 状態が激変する「波」の正体
- 現場で試せる環境調整のコツ
一つでも当てはまったら、この記事が役に立つ可能性があります
結論:幻視や変動は「脳のエラー」。現場で心を守るための現実的アプローチ

「否定してはいけない」「受容が大切」と研修で何度も教わりますが、現場ではそう簡単にはいきません。
夜勤で他の業務が立て込んでいる時に、何度も「そこに人がいる」とコールで呼ばれると、つい余裕がなくなって突き放した対応をしてしまうこともあるでしょう。
建前では寄り添うべきだとわかっていても、実際の人員配置では到底カバーしきれず、自己嫌悪に陥る介護士は少なくありません。
しかし、その対応の難しさは決してあなたのスキル不足ではなく、疾患特有の症状によるものです。
完璧なケアを目指すのではなく、まずは「なぜその行動が起きるのか」という仕組みを知り、自分自身の心を守る現実的なアプローチを身につけましょう。
幻視は本人の意思ではなく「疾患の特性」
利用者が「見えないもの」を訴える時、それは周囲の気を引きたいわけでも、嘘をついているわけでもありません。
レビー小体型認知症(DLB)においては、幻視が特徴的な初期症状として現れます。
つまり、本人にはそれが現実のように映っていることがあります。
現場では「どうしてわかってくれないのか」とイライラしてしまうこともありますが、これは脳の変化によるエラーだと割り切ることが大切です。
- 幻視は疾患の特性とされる
- 見えている世界を頭ごなしに否定しない
夜勤の忙しい時間帯に延々と付き合うのは現実的に不可能ですが、「この人には現実のように見えていることがある」と捉える一助になります。
本人を変えようとするのではなく、疾患の特性として受け止めることで、私たち介護士の心理的な負担も軽減につながります。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
認知症の主な四病型には,初期症状として記憶障害や実行機能障害がみられるアルツハイマー型認知症(AD),転倒傾向・尿失禁が初期症状として現れる血管性認知症(VaD),幻視やパーキンソン症状が特徴のレビー小体型認知症(DLB),脱抑制や人格変化が初期症状となる前頭側頭型認知症(FTD)がある。
パーキンソン症状による「状態の波」への対応
さっきまで歩けていたのに、急に動きが止まってしまったり、全介助が必要になったりすることに戸惑う声も多く聞かれます。
これも本人がサボっているのではなく、レビー小体型認知症(DLB)に特有のパーキンソン症状が関係しています。
身体の動きがスムーズにいかなくなることがあります。
- できない時は「波の底」だと割り切る
- 無理な介助は転倒リスクを高めるため避ける
「できるはずだ」という思い込みを手放し、その時々の状態に合わせた安全優先の介助を心がけましょう。
人手が足りない時間帯は焦って自立を促してしまいまがちですが、身体の機能が追いついていない状態での無理強いは危険です。
現場の人員配置ですべてに合わせることは難しいですが、症状の波を理解することが、介助方法の見直しにつながります。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
認知症の主な四病型には,初期症状として記憶障害や実行機能障害がみられるアルツハイマー型認知症(AD),転倒傾向・尿失禁が初期症状として現れる血管性認知症(VaD),幻視やパーキンソン症状が特徴のレビー小体型認知症(DLB),脱抑制や人格変化が初期症状となる前頭側頭型認知症(FTD)がある。
理想のケアができなくても自分を責める必要はありません。幻視や状態の波は疾患によるものだと理解し、できる範囲で安全を守ることが現場での最善の対応であり、介護士自身の心を守る第一歩になります。
介護現場で直面しやすい「レビー小体型認知症」3つの典型事例

「認知症=物忘れ」というイメージが強いと、記憶がしっかりしている方の不可解な言動に戸惑う現場は多いはずです。
研修の建前では「否定せず寄り添う」と言われますが、人手不足の夜勤で何度も「あそこに人がいる」と呼ばれると、つい突き放したくなるのが現実ですよね。
理想と現実のギャップに悩み、自己嫌悪に陥る必要はありません。
現場で直面しやすい具体的な場面と、疾患の特性から考える「最低限の防衛策」を整理します。
深夜の「幻視」によるパニックと終わらないコール
| 状況 | 夜勤帯、利用者が「部屋の隅に知らない人がいる」と怯え、何度もナースコールを鳴らす。 |
|---|---|
| 困りごと | 他の業務が滞り、疲労と焦りから「誰もいません」と強い口調で否定してしまう。 |
| よくある誤解 | 現実の部屋を明るくして見せれば、勘違いだと気づいて納得してくれるはずだ。 |
押さえるべき視点:
本人にとってその見えているものは、現実のように感じられることがあります。
無理に説得して否定しようとするのは逆効果になることがあります。
まずは相手の価値観や考え方を受容し、相手のペースに合わせて気持ちを汲み取る声かけが重要です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
心理的特徴に応じたかかわり方として、価値観や考え方、習慣を受容する、幼児語を使わず自尊心を尊重する、不快でない距離や目線の高さに留意する、相手の表情を確認しながら話しかける、相手のペースに合わせ気持ちを汲み取る、家族とだけ話したりせず相手を置き去りにしないといったポイントがある。
「さっきは歩けたのに…」急激な活動低下への戸惑い
| 状況 | 朝食時は自分で歩いたのに、昼食時はボーッとして立ち上がることもできない。 |
|---|---|
| 困りごと | スタッフ間で「できるはずだ」「いやできない」と評価が割れ、介助方法が統一されない。 |
| よくある誤解 | さっきはできたのだから、今はわざとサボっているか、介助者に甘えているだけだ。 |
押さえるべき視点:
これはレビー小体型認知症(DLB)の初期症状に見られる、パーキンソン症状などによる身体の変化です。
できない時間は無理をさせないことが鉄則です。
認知症の方は転倒リスクが健常者の8倍にもなるため、無理な自立支援よりも安全な介助を優先すべきです。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
認知症の主な四病型には,初期症状として記憶障害や実行機能障害がみられるアルツハイマー型認知症(AD),転倒傾向・尿失禁が初期症状として現れる血管性認知症(VaD),幻視やパーキンソン症状が特徴のレビー小体型認知症(DLB),脱抑制や人格変化が初期症状となる前頭側頭型認知症(FTD)がある。
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
認知症患者の転倒リスクは健常者の8倍,骨折のリスクは3倍と報告されている。
環境や人間関係で悪化する不穏な行動
| 状況 | 周囲の騒がしさや、スタッフの慌ただしい対応が引き金で、急に怒り出したり不穏になる。 |
|---|---|
| 困りごと | 理由がわからず、腫れ物に触るような対応になり、ケアの質が下がってしまう。 |
| よくある誤解 | 病気が進行して、もともとの性格が攻撃的に変わってしまったのだ。 |
押さえるべき視点:
こうした行動は、すべての患者に見られるわけではない周辺症状(BPSD)にあたります。
疾患の重症度とは必ずしも比例せず、環境や周囲の関わり方が大きく影響します。
本人の性格のせいではなく、病気に関連する症状だとチームで共有し、不快感を与えない環境作りに努めましょう。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
認知症の症状には、程度の差はあれすべての患者にみられる「中核症状」(記憶障害、認知障害、人格変化など)と、みられない患者もおり疾患の重症度と比例しない「周辺症状(BPSD)」(精神症状、行動障害)がある。
利用者の理解しがたい言動は、性格やわがままではなく、疾患による「波」や「周辺症状」が原因と考えられます。現場の限界を認めつつ、病気のメカニズムをチームで共有することが、安全を守り、介護士自身の疲弊を防ぐことにつながります。
なぜレビー小体型認知症では「幻視」や「状態の波」が激しいのか?

研修では「本人の世界を否定しないで」「残存機能を活かして自立支援を」と教わります。
しかし現場では、少ない人員で夜勤を回す中、延々と続く幻視の訴えに付き合うのは物理的に不可能です。
「建前ではわかっているけど、現実のシフトでは無理」と追い詰められ、自分を責めてしまう介護士は少なくありません。
こうした現場の限界とジレンマが生じる根本的な原因を、疾患の仕組みから解き明かします。
建前は「否定しない」だが、現実は「対応の限界」:周辺症状の特性
| 建前(理想) | 本人の見ている世界を否定せず受容する。 |
|---|---|
| 現実(現場) | 多忙な業務に追われ、何度も訴えに付き合う余裕はない。 |
余裕のなさから強い口調になり、ケアがうまくいかないと悩むこともあるでしょう。
しかし、幻視や不穏な行動は、病気の進行度と必ずしも比例しない「周辺症状(BPSD)」によるものです。
これはすべての患者にみられる中核症状とは異なり、周囲の環境や心理状態に影響を受けることがあります。
「自分の対応が悪いからだ」と抱え込む必要はなく、環境を調整することで変化する症状だと理解することが大切です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
認知症の症状には、程度の差はあれすべての患者にみられる「中核症状」(記憶障害、認知障害、人格変化など)と、みられない患者もおり疾患の重症度と比例しない「周辺症状(BPSD)」(精神症状、行動障害)がある。
建前は「自立支援」だが、現実(現場)は「波への対応」:パーキンソン症状のジレンマ
| 建前(理想) | 残存機能を活かした自立支援を推進する。 |
|---|---|
| 現実(現場) | 身体能力の変動が激しく、画一的な支援は転倒を招きやすい。 |
「さっきはできたのだから」と無理に歩かせようとすると、思わぬ転倒事故を招く危険があります。
レビー小体型認知症(DLB)は、記憶障害が目立つ他の認知症とは異なり、パーキンソン症状が初期から現れるという特徴を持っています。
身体の動きに影響がみられることがあります。
無理な自立支援を強行するよりも、その時の状態に合わせて安全を確保することが、現場での判断の一つです。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
認知症の主な四病型には,初期症状として記憶障害や実行機能障害がみられるアルツハイマー型認知症(AD),転倒傾向・尿失禁が初期症状として現れる血管性認知症(VaD),幻視やパーキンソン症状が特徴のレビー小体型認知症(DLB),脱抑制や人格変化が初期症状となる前頭側頭型認知症(FTD)がある。
建前は「意思の尊重」だが、現実は「汲み取りの難しさ」:プロセスの壁
| 建前(理想) | 本人の意思を最大限に尊重し、支援の主体とする。 |
|---|---|
| 現実(現場) | 幻視や波に翻弄され、真意を把握できず代理決定に逃げがち。 |
時間が足りない中で、ついスタッフや家族の都合で物事を決めてしまい、後ろめたさを感じることもあるでしょう。
しかし、認知機能の低下がある方の意思決定は、一人の介護士が瞬時に判断できるものではありません。
チーム全体で本人の意思を丁寧に汲み取るための標準的なプロセスを踏むことが、ガイドラインでも示されています。
一人で完璧に意思を汲み取ろうと焦るのではなく、チームで観察し共有する仕組みを作ることが重要です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
本ガイドラインは、認知症の人が自らの意思に基づいた日常生活・社会生活を送れることを目指し、意思決定に関わる人が本人の意思を丁寧に汲み取るための標準的なプロセスや留意点、基本的考え方(理念)、姿勢、方法、配慮すべき事柄を整理して示したものである。
現場で感じる「理想と現実のギャップ」は、あなたの力不足ではなく、疾患の複雑なメカニズムと人員配置の限界から生じる構造的な問題です。建前に縛られず、波や周辺症状を予測した安全第一のケアへと視点を切り替えましょう。
レビー小体型認知症ケアに関する現場の小さな迷いQ&A
現場で日々利用者の対応に追われていると、「本当にこの声かけでいいのか」と迷う瞬間がたくさんあると思います。
ここでは、レビー小体型認知症のケアに関して現場で抱きやすい小さな疑問に、客観的な指針をもとにお答えします。
- Q夜間に「人がいる」と怯える方に、事実を伝えてはいけないのでしょうか?
- A事実を突きつけるのではなく、本人の価値観や考え方を受容し、相手のペースに合わせて気持ちを汲み取る声かけを行うことが大切だとされています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
心理的特徴に応じたかかわり方として、価値観や考え方、習慣を受容する、幼児語を使わず自尊心を尊重する、不快でない距離や目線の高さに留意する、相手の表情を確認しながら話しかける、相手のペースに合わせ気持ちを汲み取る、家族とだけ話したりせず相手を置き去りにしないといったポイントがある。
- Qさっきまで歩けたのに、急に歩けなくなるのは病気のせいですか?
- Aはい、レビー小体型認知症(DLB)にはパーキンソン症状という特徴があり、身体の動きなどに波が出やすい疾患であると考えられます。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
認知症の主な四病型には,初期症状として記憶障害や実行機能障害がみられるアルツハイマー型認知症(AD),転倒傾向・尿失禁が初期症状として現れる血管性認知症(VaD),幻視やパーキンソン症状が特徴のレビー小体型認知症(DLB),脱抑制や人格変化が初期症状となる前頭側頭型認知症(FTD)がある。
- Q利用者の物忘れが、病気によるものか年相応のものか見分けるポイントはありますか?
- A生理的な加齢によるもの忘れは「出来事の一部」を忘れるのに対し、認知症の場合は「経験したこと全体」を忘れてしまうという違いがあるとされています。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
生理的加齢によるもの忘れと認知症の違いについて,もの忘れの範囲は生理的加齢では「経験した出来事の一部を忘れる」のに対し,認知症では「経験したこと全体を忘れる」とされる。
日々のケアで迷った時は、一人で抱え込まず疾患の特性に立ち返ってみましょう。本人の見えている世界を受容し、病気による波を理解することが、介護士の心と利用者の安全を守ることに繋がります。
まとめ:レビー小体型認知症の「波」に寄り添い、自分を守る明日の一歩
レビー小体型認知症(DLB)のケアは、理想通りの「寄り添い」が最も難しい領域の一つです。幻視の訴えや状態の激変に、現場の私たちが翻弄されてしまうのは、ある意味で当然のことと言えます。
しかし、その不可解な言動の背景には疾患の特性があります。
「嘘をついている」のではなく「見えている」のだと、まずは私たちの捉え方を変えるだけで、心のトーンは少し穏やかになります。明日から実践できる無理のない一歩として、まずは「今は波の底なんだな」と心の中でつぶやいてみてください。
そして、部屋の照明を少し明るくして影を消すなど、小さな環境調整を一つだけ試してみましょう。
全部を完璧にできなくても、その小さな気付きこそが、利用者様とあなた自身の尊厳を守る大きな一歩になります。
日々、困難な現場で奮闘されている皆様の力が、少しでも報われることを願っています。
最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。
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更新履歴
- 2025年12月29日:新規投稿
- 2026年3月10日:より詳細なエビデンス(根拠)に基づき解説を充実させるとともに、最新のサイト基準に合わせて構成・レイアウトを見やすく刷新。









