理想と現実のギャップに悩み、SNSで「責任と給料が割に合わない」と吐き出したくなる気持ち、それは決して間違いではありません。本当はもっと丁寧に関わりたいのに、日々の業務に追われ、つい流れ作業になってしまう――。
そんな現場の苦しさをすべて解決するのは難しいかもしれません。ですが、ただ耐えるのではなく、制度の仕組みを正しく知り、自分の生活を守るための知識という武器を持つことは、今日からでも可能です。
この記事を読むと分かること
- 給料への不満が「正当」だと分かる
- 「割に合わない」の正体が分かる
- 給与明細の見るべき場所が分かる
- 「稼げる職場」の見極め方が分かる
- 感情論でなく制度で解決策を知れる
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
結論:あなたの努力不足ではない。「構造」を変えれば生活は守れる

現場では「利用者のために」と走り回るほど、記録や雑務が積み上がり、休憩もままならないのが現実です。それなのに、給与明細を見ると「これだけ頑張ってこれ?」と力が抜けてしまう。責任と負担ばかりが増え、対価が見合わないという葛藤は、多くの介護士が抱えています。
給料への不満は「わがまま」ではない
「もっと給料が欲しい」と口にすることに、罪悪感を持つ必要はありません。実際、多くの介護士が同じ悩みを抱えています。データによると、労働条件の悩みとして「仕事内容のわりに賃金が低い」と答えた人は35.3%に上り、これは「人手不足」に次ぐ高い割合です。あなたが感じている「割に合わない」という感覚は、決して個人的なわがままではなく、今の介護現場が抱える構造的な問題なのです。
出典元の要点(要約)
公益財団法人 介護労働安定センター令和6年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書
https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/
労働条件・仕事の負担についての悩みとして「仕事内容のわりに賃金が低い」を挙げた割合は35.3%となっている。
「給料が良い職場」は実在する
「どこに行っても介護の給料は同じ」と諦めるのはまだ早いです。実は、経営努力として「賃金水準の向上」に取り組んでいる事業所は確実に存在し、そうした職場では職員の定着率が良いという結果が出ています。つまり、給料が低いのは「介護職だから」ではなく、「その事業所が賃金向上に投資していないから」である可能性が高いのです。
出典元の要点(要約)
公益財団法人 介護労働安定センター令和6年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書
https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/
採用活動において最も効果がある方策は「賃金水準の向上」であり、職員の賃金水準を向上させた事業所の30.9%が職場への定着に効果があったと回答している。
「やりがい」だけで生活費を賄うことはできません。給料への不満は、あなたがプロとして正当な評価を求めている証拠です。我慢して働き続けるよりも、まずは自分の職場が「賃金向上」に本気で取り組んでいるか、客観的に見直すことから始めましょう。
「うちだけ?」現場で頻発する3つの“あるある”事例

現場では、「利用者様一人ひとりに寄り添いたい」という理想を持ちながらも、実際には分刻みのスケジュールと人手不足で、「業務を回すだけで精一杯」という現実に直面しています。「トイレに行く暇さえない」「記録を書くために残るしかない」といった声は、決して珍しいものではありません。ここでは、多くの介護士が悩み、データ上でも明らかになっている典型的なパターンを見ていきましょう。
1. 「ありがとう」は嬉しいけれど…埋まらない賃金の溝
「利用者様からの感謝」は、私たちがこの仕事を続ける最大の原動力です。しかし、感謝の言葉だけでは生活費を支払うことはできません。現場では、仕事そのものには強いやりがいを感じていながら、給与明細を見るたびに「責任の重さと金額が見合っていない」と落ち込むケースが後を絶ちません。
実際、データを見てもこのギャップは明らかです。多くの介護士が仕事内容には満足している一方で、労働条件の悩みとして「仕事内容のわりに賃金が低い」と感じている人は35.3%に上ります。これは、あなたの感覚が間違っているのではなく、業界全体が抱える構造的な課題なのです。
出典元の要点(要約)
公益財団法人 介護労働安定センター令和6年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書
https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/
労働条件・仕事の負担についての悩みとして「仕事内容のわりに賃金が低い」を挙げた割合は35.3%となっている。
2. 「少しだけ残って」が命取り。サービス残業の代償
「記録が終わらないから」「急な対応があったから」と、タイムカードを切った後に残って仕事をしていませんか? 現場では「利用者のためだから仕方ない」と自己犠牲でカバーしがちですが、この「見えない労働」は確実に職員の心を蝕んでいきます。
「不払い残業(サービス残業)」がある職場で働く人の約3割は、「今の職場を辞めて別の法人へ行きたい」と考えているというデータがあります。たかが数十分の残業と思うかもしれませんが、それが常態化している職場は、職員に過度な負担を強いており、長く働き続けられる環境ではない可能性が高いのです。
出典元の要点(要約)
公益財団法人 介護労働安定センター令和6年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書
https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/
不払い残業が「ある・多い」と回答した層において、「今の職場を辞めて別の法人へ転職したい」と考えている割合は28.2%となっている。
3. 募集しても人が定着しない職場の共通点
常に求人を出しているのに、入職した人がすぐに辞めてしまう。「また今月も誰か辞めるの?」と不安になる職場には、ある特徴があります。それは、採用活動において紹介会社を過度に利用していることです。
データによると、有料職業紹介所を「1社」利用している事業所の離職率は14.1%ですが、「6〜10社」利用している事業所では19.9%と高くなる傾向があります。手当たり次第に採用コストをかけても、定着するための環境(賃金や教育)が整っていなければ、穴の開いたバケツのように人材は流出し続け、現場の負担は増すばかりです。
出典元の要点(要約)
公益財団法人 介護労働安定センター令和6年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書
https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/
有料職業紹介所の利用機関数別に離職率を見ると、利用数が「1社」の場合は14.1%だが、「6~10社」の場合は19.9%と高くなっている。
これらの悩みは、あなた個人の忍耐力不足ではありません。データが示す通り、多くの現場で起きている構造的な問題です。「みんな我慢しているから」と自分を納得させるのではなく、これらのサインが出ていないか、今の職場を冷静に見つめ直してみましょう。
なぜ「割に合わない」と感じるのか? その裏にある3つの原因

現場では「人が足りないから」と一人当たりの業務量が限界まで増やされ、休憩も削って走り回る日々が続いています。それなのに、上層部からは「もっと生産性を上げろ」「加算を取れ」と数字の話ばかり。「現場の大変さを何もわかっていない」という憤りは、多くの介護士が一度は抱く感情です。なぜ、これほどまでに現場と経営、そして報酬の間にギャップが生まれてしまうのでしょうか。ここでは、データから見えてくる3つの構造的な原因を解説します。
1. 「利用者のため」より「利益」を優先する運営方針
私たちは「良いケアをしたい」という想いで働いていますが、施設側の運営方針がそれを許さない場合があります。「効率」ばかりが重視され、利用者一人ひとりと向き合う時間が削られていく状況です。
実際、運営方針への不満を理由に退職した人のデータを見ると、約3人に1人が「経営の効率性を過度に重視していた」ことを挙げています。これは、現場の「質を大切にしたい」という倫理観と、施設の「利益を出さなければならない」という論理が衝突し、介護士が疲弊してしまう大きな要因となっています。
出典元の要点(要約)
公益財団法人 介護労働安定センター令和6年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書
https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/
「職場の運営方針に不満があった」ために前職を辞めた理由として、「経営の効率性を過度に重視していた」を挙げた割合は35.9%となっている。
2. 現場を追い詰める「上司・先輩」の指導力不足
「割に合わない」と感じる要因は、金銭面だけではありません。精神的な負担、特に人間関係のストレスが業務の対価として重すぎるケースです。
退職理由として最も多い「職場の人間関係」の内訳を見ると、その半数近くが「上司・施設長・先輩」に対する不満(きつい指導やパワハラなど)であることが分かっています。適切な指導ができず、感情的に当たる上司の存在は、現場のモチベーションを下げ、本来得られるはずの「やりがい」すら奪ってしまいます。
出典元の要点(要約)
公益財団法人 介護労働安定センター令和6年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書
https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/
「職場の人間関係に不満があった」ために前職を辞めた理由として、「上司・施設長・先輩の指導のあり方や言動がきつかった(パワハラ等)」を挙げた割合は49.1%となっている。
3. 施設ごとの「賃金格差」は拡大している
「介護職だから給料が低いのは仕方ない」と思っていませんか? 実は、介護業界全体の平均賃金は上昇傾向にあります。月給者の平均賃金は248,884円となり、5年連続で増加しています。
しかし、これはあくまで「平均」の話です。重要なのは、あなたの施設が「賃金水準の向上」に動いているかどうかです。実際に賃上げを行った事業所では定着率が改善していますが、そうでない事業所との差は開く一方です。「給料が上がらない」のは業界のせいだけではなく、その事業所が制度を活用していない(還元していない)可能性が高いのです。
出典元の要点(要約)
公益財団法人 介護労働安定センター令和6年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書
https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/
介護職員(月給者)の所定内賃金の平均は248,884円で、前年度と比較して6,127円増加し、5年連続の増加となった。また、賃金水準を向上させた事業所の30.9%が定着に効果があったとしている。
「割に合わない」と感じるのは、効率優先の経営や、理不尽な上司、そして賃上げに消極的な事業所の方針といった「環境要因」が大きく影響しています。これらは個人の努力では変えられない壁です。だからこそ、自分を責めるのではなく、環境そのものを見直す視点が必要なのです。
よくある疑問と不安:データで見る「判断の基準」
「今の職場はおかしいのではないか?」「自分の考えが甘いだけなのか?」
現場で働いていると、自分だけでは判断がつかなくなり、不安になる瞬間があると思います。ここでは、多くの介護士が抱える迷いについて、客観的なデータをもとに解説します。
- Q「給料が安いから辞めたい」と思うのは、介護職としての責任感がないのでしょうか?
- A
いいえ、決して責任感がないわけでも、わがままでものでもありません。
実際に現場で働く介護士の悩みとして、「仕事内容のわりに賃金が低い」という項目は35.3%と高い割合を占めています。多くの人が、仕事への責任感と待遇のギャップに苦しんでいるのが現状です。それを「不満」と感じるのは、労働者として正当な感覚だと言えます。出典元の要点(要約)
公益財団法人 介護労働安定センター令和6年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書
https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/
労働条件・仕事の負担についての悩みとして「仕事内容のわりに賃金が低い」を挙げた割合は35.3%となっている。
- Q転職すれば、必ず給料や環境は良くなるのでしょうか?
- A
一概に「必ず良くなる」とは言えませんが、職場選びによって改善する可能性は高いです。
データによると、事業所が「賃金水準の向上」に取り組んだ結果、30.9%が職員の定着に効果があったと回答しています。つまり、賃金向上に積極的な職場を選ぶことが重要です。一方で、求人を出す際に紹介会社を多用(6社以上など)している事業所は、離職率が高い傾向にあるため、慎重に見極める必要があります。出典元の要点(要約)
公益財団法人 介護労働安定センター令和6年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書
https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/
職員の賃金水準を向上させた事業所の30.9%が職場への定着に効果があったと回答している。
公益財団法人 介護労働安定センター
令和6年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書
https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/
有料職業紹介所の利用機関数別に離職率を見ると、利用数が「1社」の場合は14.1%だが、「6~10社」の場合は19.9%と高くなっている。
- Q上司が厳しく、精神的に辛いです。人間関係で辞めるのは逃げになりますか?
- A
逃げではありません。自分の心身を守るための選択です。
前職を辞めた理由として「職場の人間関係」を挙げた人の内訳を見ると、約半数(49.1%)が「上司・施設長・先輩の指導のあり方や言動がきつかった(パワハラ等)」と回答しています。指導という名の下で精神的な負担を感じているケースは非常に多く、環境を変えることは決して珍しいことではありません。出典元の要点(要約)
公益財団法人 介護労働安定センター令和6年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書
https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/
「職場の人間関係に不満があった」ために前職を辞めた理由として、「上司・施設長・先輩の指導のあり方や言動がきつかった(パワハラ等)」を挙げた割合は49.1%となっている。
不安や悩みを感じたとき、「自分だけが我慢すればいい」と思い詰めてしまいがちです。しかし、データを見れば、あなたの悩みは多くの仲間が共有している「構造的な課題」であることが分かります。客観的な事実を知ることで、どうかご自身を責めず、冷静に次のステップを考えてみてください。
まとめ:あなたの「生活」を守ることは、介護の「質」を守ること
「利用者の笑顔が見たいから」という純粋な想いで、自分の生活や健康を犠牲にし続ける必要はありません。ここまで見てきたデータが示す通り、給料や待遇への不満は、多くの介護士が抱える共通の悩みであり、個人の努力だけで解決できる問題ではないのです。
現状を変えるために、明日からすぐに転職を決断する必要はありません。まずは、今月の給与明細を開き、自分の職場が「処遇改善加算」をどのように取得しているか、職場の掲示物やホームページで確認してみてください。あなたの職場が「賃金水準の向上」に真剣に取り組んでいるかどうかを知るだけでも、次の一歩を踏み出すための大きな判断材料になります。
あなたがプロとして正当な対価を求めることは、決してわがままではありません。自分自身が長く、安心して働き続けられる環境を選ぶことこそが、結果として利用者様へのより良いケアを持続させることにつながるのです。
最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。
関連記事
更新履歴
- 2026年1月10日:新規投稿


