楽しい食事の時間に、突然の失禁トラブル。「せっかくの温かい食事を中断させたくない」「臭いで他の利用者様が不穏になったらどうしよう」と、焦りを感じた経験はありませんか?
本当は手袋をして丁寧に消毒すべきと分かっていても、忙しさからつい「雑巾で拭いてアルコール」で済ませてしまう。そんな現場の葛藤に対し、今回は「全部は無理でも、ここだけ押さえれば大丈夫」という現実的なラインを提案します。
この記事を読むと分かること
- 尿が標準予防策の対象である根拠
- 0.02%消毒液の作り方
- 4ステップの対応手順
- 現場で無理なく続く感染対策の落とし所
- 自分と利用者を守る判断基準
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
結論:「尿」は汚くない?現場が守るべき基本の判断基準

「標準予防策が大事なのはわかっている」。でも、実際の人員配置では「丁寧な対応」をする余裕がないのが現実ではないでしょうか。
食事介助の手を止めたくない、同僚に負担をかけたくない。そんな責任感が、皮肉にも「素手での対応」や「不十分な消毒」につながってしまうことがあります。
しかし、どんなに忙しくても「ここだけは譲れないライン」があります。
1. 尿は「標準予防策」の対象と割り切る
見た目がきれいでも、普段お世話をしている馴染みの利用者様でも、医学的な事実は変わりにくいです。
尿などの排泄物は、すべての人が感染症を持っている可能性があるとみなして対応する「標準予防策(スタンダード・プリコーション)」の対象です。
「汚いから」ではなく「感染源だから」手袋をする。この割り切りが、あなたと利用者を守る助けになります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
標準予防策(スタンダード・プリコーション)は、汗を除くすべての血液、体液、分泌物、排泄物、傷のある皮膚、粘膜を対象とする。
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
標準予防策の対象は、血液、体液、分泌物(汗は除く)、排泄物、傷のある皮膚、粘膜である。
2. 「4ステップ」の手順
焦ってしまうのは、やるべきことが曖昧だからだと考えられます。食堂での対応は、以下の4ステップのみに集中するとよいでしょう。
- ステップ1:使い捨て手袋・エプロン(PPE)を着用する
- ステップ2:ペーパータオル等で汚れを静かに拭き取る
- ステップ3:次亜塩素酸ナトリウム液で清拭(消毒)する
- ステップ4:水拭きで仕上げる
可能な範囲で「物理的な除去」と「適切な消毒」を行うことが重要です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
排泄物の処理では、使い捨て手袋・エプロン(ガウン)を着用し、ペーパータオル等で静かに拭き取り、次亜塩素酸ナトリウム液で清拭後、水拭きする。
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
清掃(環境整備)では、ドアノブや手すりなど高頻度接触面は1日1回以上、0.05%の次亜塩素酸ナトリウム液またはアルコール等で清拭消毒する。目に見える汚れがある場合は、洗剤等で除去後に消毒する。
3. 消毒液は「0.02%」を作る
嘔吐物処理(0.1%)では高濃度の消毒液が示されていますが、0.02%(200ppm)の次亜塩素酸ナトリウム液を用いる方法が示されています。
作り方の例が示されています。
- 500mlのペットボトルの水
- 市販の漂白剤(約5%濃度)2ml(キャップ半杯)
これらを混ぜて作ります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
市販の漂白剤(約5%)を用いて0.02%(200ppm)の消毒液を作る場合、希釈倍率は250倍であり、例として500mlのペットボトル1本の水に漂白剤2ml(キャップ半杯)を加える方法がある。
忙しい現場だからこそ、対応をパターン化して迷いをなくすとよいでしょう。「尿=標準予防策=0.02%消毒」というルールは、感染対策の基本になります。
よくある「ヒヤリハット」現場で起きがちな3つのNG対応

食堂で失禁が発生すると、他の利用者様の視線や食事の進行を気にして、つい「早さ」を優先したくなりませんか?
「臭いが広がる前に」「誰かが踏む前に」という焦りから、マニュアルとは違う自己流の対応をしてしまうこと。
それは、現場の誰もが経験する葛藤ですが、実は感染拡大のきっかけになりかねません。
1. 焦って「雑巾&アルコール」で済ませてしまう
食事の再開を急ぐあまり、手近にある雑巾で汚れを拭き取り、仕上げにアルコールスプレーを吹きかけて終わりにする。
よくある光景ですが、これは推奨されないとされています。
雑巾を洗う際に洗面所などが汚染され、そこから菌を広げてしまうリスクがあります。また、排泄物の処理では、次亜塩素酸ナトリウム液で清拭後、水拭きする手順が示されています。
「使い捨てのペーパータオル」などで除去し、適切な消毒を行うとよいでしょう。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
排泄物の処理では、ペーパータオル等で静かに拭き取る。
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
清掃(環境整備)では、ドアノブや手すりなど高頻度接触面は1日1回以上、0.05%の次亜塩素酸ナトリウム液またはアルコール等で清拭消毒する。目に見える汚れがある場合は、洗剤等で除去後に消毒する。
2. 尿なのに「嘔吐物セット」を使って大ごとに
「感染対策=ノロウイルスセット」と思い込み、尿失禁の対応でも凝固剤や高濃度(0.1%)の消毒液を準備してしまうケースです。
慎重な姿勢は大切だと考えられますが、準備に時間がかかりすぎると、かえって利用者様を待たせてしまいます。
また、高濃度の塩素は床や家具に影響が出る場合があります。
0.02%の消毒液を作る方法が示されています。リスクに応じた適切な濃度を選ぶとよいでしょう。
出典元の要点(要約)
厚生労働省高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
市販の漂白剤(約5%)を用いて0.02%(200ppm)の消毒液を作る場合、希釈倍率は250倍であり、例として500mlのペットボトル1本の水に漂白剤2ml(キャップ半杯)を加える方法がある。
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
嘔吐物の処理では、0.1%次亜塩素酸ナトリウム液を使用する。
3. 「少しだから」と素手で触れてしまう
「いつもの利用者さんだし、量も少しだから」と、手袋をせずにトイレットペーパーで拭き取っていませんか?
たとえご本人が健康そうに見えても、感染症が潜んでいる可能性はゼロではありません。
標準予防策は「人」(誰の排泄物か)ではなく「モノ」(排泄物そのもの)に対して行うルールです。
可能な範囲で手袋を着用しましょう。
出典元の要点(要約)
厚生労働省高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
標準予防策(スタンダード・プリコーション)は、汗を除くすべての血液、体液、分泌物、排泄物、傷のある皮膚、粘膜を対象とする。
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
標準予防策の対象は、血液、体液、分泌物(汗は除く)、排泄物、傷のある皮膚、粘膜である。
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
介護職員において、自分自身が感染源(病原体)になったり、感染を拡大させる媒介者にならないようにすることが重要である。
焦った時こそ、一番シンプルな「標準予防策」に立ち返りましょう。あれこれ迷わず「手袋・ペーパー・0.02%消毒」の3点セットさえ使えば、どんな場面でも利用者様とあなた自身を守る「一定水準」の対応ができます。
面倒でも「標準予防策」を徹底すべき3つの理由

「いちいち手袋を変えていたら業務が回らない」「手荒れが酷くて手洗いが辛い」。それが現場で働く皆さんの偽らざる本音かもしれません。
家庭であれば「ちょっと拭いて終わり」で済むことが、なぜ施設では許されないのでしょうか。
そこには、介護施設特有の「構造的な理由」があります。
1. 施設は「免疫力の弱い集団」だから
高齢者介護施設は、単なる住まいとは異なり、感染症に対する抵抗力が弱い方々が集団で生活する場です。
若くて健康な人なら発症しないような菌でも、高齢者にとっては重症化につながることがあります。
また、一人が感染すると、共同生活を通じて比較的速やかに周囲へ広がりやすい環境にあります。
そのため、家庭レベルの対応ではなく、集団を守るための「被害を最小限にする」対策が平常時から求められます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
高齢者介護施設は、感染症に対する抵抗力が弱い高齢者等が集団で生活する場であり、感染が広がりやすい状況にある。感染を完全になくすことはできないが、集団生活における感染の被害を最小限にすることが求められる。施設では感染症を予防する体制を整備し、平常時から対策を実施するとともに、発生時には感染拡大防止のため迅速かつ適切な対応を図る必要がある。
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
介護現場は、抵抗力が弱い高齢者が集団で生活する場であり、感染症が広がりやすい状況にある。
2. 「見えない感染」が潜んでいるから
検査をしていない段階では、どんな病原体が含まれているかは分からないことがあります。
だからこそ、すべての血液・体液・排泄物を「感染源があるもの」として扱う「標準予防策(スタンダード・プリコーション)」が基本となります。
相手や汚れの見た目で判断せず、常に一定の対策を行うことが、結果的にリスクを最小限にします。
出典元の要点(要約)
厚生労働省高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
標準予防策(スタンダード・プリコーション)は、汗を除くすべての血液、体液、分泌物、排泄物、傷のある皮膚、粘膜を対象とする。
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
標準予防策の対象は、血液、体液、分泌物(汗は除く)、排泄物、傷のある皮膚、粘膜である。
3. あなたが「媒介者」にならないために
介護職員は、多くの利用者様に次々と関わります。
もし対策を怠れば、あなた自身の手指や衣服を介して、病原体を他の利用者様へ運んでしまう「媒介者」になりかねません。
手袋をしていても、目に見えない穴が開いていることや、外す際に汚染することもあります。
ケアの後の手洗いは、重要な動作です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
介護職員において、自分自身が感染源(病原体)になったり、感染を拡大させる媒介者にならないようにすることが重要である。
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
手袋をしていても手袋に目に見えない小さな穴があいていたり、手袋を外す時に手指が汚染される可能性があるため、手袋を外した後も手指衛生を行う。
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
排泄物等を扱うとき等に手袋を着用していても、手袋を外した後は、手洗いまたは手指消毒が必要である。
施設における感染対策は、マニュアルのためではなく、目の前の利用者様と仲間の命を守るためにあります。この「根拠」を知っているだけで、忙しい時の判断の助けになります。
よくある質問(FAQ)
現場で判断に迷いやすいポイントを、エビデンスに基づいて整理しました。
職員間でのルールの再確認にご活用いただければと思います。
- Q尿の処理は、アルコール消毒ではいけないのですか?
- A排泄物の処理では、次亜塩素酸ナトリウム液で清拭後、水拭きする手順が示されています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
排泄物の処理では、ペーパータオル等で静かに拭き取り、次亜塩素酸ナトリウム液で清拭後、水拭きする。
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
清掃(環境整備)では、ドアノブや手すりなど高頻度接触面は1日1回以上、0.05%の次亜塩素酸ナトリウム液またはアルコール等で清拭消毒する。目に見える汚れがある場合は、洗剤等で除去後に消毒する。
- Q0.02%の消毒液は、作り置きしても大丈夫ですか?
- Aいいえ、原則として、その日に使い切る必要があります。消毒液は作り置きせず、その日に使い切るとされています。500mlペットボトルで作る方法が例として示されています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
消毒液は作り置きせず、その日に使い切る。
厚生労働省
高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
市販の漂白剤(約5%)を用いて0.02%(200ppm)の消毒液を作る場合、希釈倍率は250倍であり、例として500mlのペットボトル1本の水に漂白剤2ml(キャップ半杯)を加える方法がある。
- Q消毒の後の「水拭き」は省略してもいいですか?
- A原則として、水拭きを行うとよいでしょう。手順として「水拭きする」と示されています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護現場における感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
排泄物の処理では、次亜塩素酸ナトリウム液で清拭後、水拭きする。
迷った時は「手袋・ペーパー・0.02%・水拭き」の基本に戻りましょう。これらをセットにしておくだけで、いざという時の安心感が違います。
まとめ:防げない事故を「広げない」ために
食堂での失禁は、どれほど注意していても完全に防ぐことは難しいかもしれません。しかし、そこから感染を「広げない」ことは、あなたの対応で可能になることがあります。
完璧を目指して疲弊するのではなく、まずは以下の「現実的な一歩」から始めてみてください。
- 「尿の処理=手袋」を反射的に行えるよう、ポケットに予備を入れる
- 0.02%消毒液を作るための「漂白剤」と「ペットボトル」の場所を確認する
標準予防策は、単なるマニュアル上のルールではありません。現場で働くあなた自身と、あなたの帰りを待つ大切な家族を感染症から守るための「盾」になります。
忙しい中でも「基本」に立ち返る勇気が、安全なケア環境づくりにつながります。
最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。
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更新履歴
- 2026年1月31日:新規投稿







