部下がすぐ辞める介護リーダー必見。「話を聞かない」姿勢が「離職率」を高める深刻な理由

部下がすぐやめる介護リーダ必見 ハウツー

介護現場のリーダーとして、「新人がすぐに辞めてしまう」「中堅が育たない」といった悩みを抱えていませんか。それは、部下の能力や忍耐力の問題ではなく、リーダーであるあなたの「話を聞かない」姿勢が、職場の「ある重大な要素」を破壊しているからかもしれません。

この記事では、なぜ部下が発言しなくなり、やがて離職に至るのか、そのメカニミズムを権威あるエビデンス(証拠)のみに基づき解説します。

一つでも当てはまったら、この記事がきっと役に立ちます

  • 部下からのミスの報告に対し、最後まで聞かずに「結論は?」と遮ってしまう。
  • 現場の改善提案に対し、「うちは昔からこのやり方だ」と取り合わないことがある。
  • 部下が相談や意見を言わず、自分(リーダー)ばかりが話している会議が多い。
  • 部下の「でも」「しかし」といった意見を「言い訳だ」と感じてしまう。
  • 自分の指示に「はい」とだけ言う部下を「素直で良い」と評価している。

この記事を知っていると

  • なぜ部下が辞めていくのか、その根本原因が「心理的安全性」の欠如にあることを、エビデンスに基づき理解できます。

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結論:「話を聞かない」姿勢が「離職」と「事故」を招く

部下が辞める理由は、給与や待遇だけではありません。リーダーであるあなたが、部下の「声」をどのように扱っているかが、実は最も大きく影響しています。「話を聞いてもらえない」と感じる職場では、職員が定着しないだけでなく、重大なリスクが隠されています。

女性の介護職員の画像

心理的安全性とは「安心して意見を表明できる状態」

部下が定着する職場環境を理解する上で、「心理的安全性」という概念が重要です。産業医学振興財団が参照する研究では、心理的安全性は「『職場で自分の立場に悪影響が及ぶおそれなく対人リスク行動に出られる心の状態』」と定義されます。これは、部下が「仕事に関する自分の意見を表明することができる」環境であり、その前提として「個人間の信頼を背景とした質の高い人間関係」が求められます。リーダーが話を聞かない職場は、この状態が根本から崩れていることを示します。

出典元の要点(要約)

産業医学振興財団(産業医学レビュー)

心理的安全性と産業保健における意義(Vol.38 No.1, 2025)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/1/38_53/_pdf/-char/en

定義として「心理的安全性は『職場で自分の立場に悪影響が及ぶおそれなく対人リスク行動に出られる心の状態』」とされ、「仕事に関する自分の意見を表明することができる」ためには「個人間の信頼を背景とした質の高い人間関係」が前提と記される。上司が傾聴せず、意見表明を阻むと、この状態が崩れ、発言しづらさという不利益が生じる。

高い心理的安全性が「離職率を低下させる」

なぜ心理的安全性がリーダーの課題なのでしょうか。それは、心理的安全性が職員の「離職率」に直接関係するからです。産業医学振興財団が参照する研究では、「職場での信頼を基盤とした高い心理的安全性は労働者の組織に対する自己同一性を促進し、離職率を低下させるとの指摘がある」と整理されています。
さらに、職員を包摂する「職場のインクルーシブネス」が「心理的安全性を促進」するとも示されます。リーダーが話を聞かず、部下を包摂しない姿勢は、この「離職率を低下させる」要因を自ら失わせる行為と言えます。

出典元の要点(要約)

産業医学振興財団(産業医学レビュー)

心理的安全性と産業保健における意義(Vol.38 No.1, 2025)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/1/38_53/_pdf/-char/en

社会的アイデンティティ理論の視点から「高い心理的安全性は…離職率を低下させるとの指摘がある」。また「職場のインクルーシブネス」が「心理的安全性を促進」する。上司が話を聞かず包摂性が損なわれると、心理的安全性が下がり、離職抑制の効果が得られないという組織の不利益が生じうる。

リーダーが話を聞かないと「ミスの報告」が消える

部下が辞めるだけでなく、リーダーが話を聞かない職場では、より深刻な事態が進行します。産業医学振興財団の総説によれば、「心理的安全性が低いと、組織としての学習行動が減少し」「ミスの報告を含めた労働者の発言が減り、沈黙が増える。」と説明されています。介護現場において、ミスの報告やヒヤリハットの共有がなくなることは、重大な事故の隠蔽(いんぺい)につながります。リーダーが部下の発言を抑える状況は、学習と報告を阻害し、現場を危険にさらす不利益につながります。

出典元の要点(要約)

産業医学振興財団(産業医学レビュー)

心理的安全性と産業保健における意義(Vol.38 No.1, 2025)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/1/38_53/_pdf/-char/en

本総説は、心理的安全性が低い職場では「組織としての学習行動が減少し」「ミスの報告を含めた労働者の発言が減り、沈黙が増える。」と説明し、産業保健の観点から「心理的安全性の高い職場風土づくり」を支える重要性を述べる。上司が話を聞かず発言を抑える状況は、学習と報告を阻害し、沈黙を増やす不利益につながる。

結論として、部下がすぐ辞めるのは、リーダーが「話を聞かない」ことで心理的安全性を破壊しているからです。その結果、職員は「意見」を言わなくなり、「ミス」を報告しなくなり、やがて組織への信頼を失い「離職」していきます。これは、リーダーの姿勢が招く、組織の安全と存続に関わる重大な問題です。


よくある事例:「話を聞かない」が心理的安全性を破壊する瞬間

介護現場の日常には、リーダーが「指導」のつもりで行っている行為が、実は部下の心理的安全性を著しく低下させている瞬間が潜んでいます。これらはすべて、部下の「沈黙」を招き、やがて「離職」へとつながっていく危険な兆候です。

女性の介護職員の画像

事例1:ミスの報告を「させない」空気

部下が利用者の服薬や移乗に関するミスを報告しようとした際、リーダーが「またやったのか」「結論から言って」と話を遮る。あるいは、報告を聞き終えた後に、ミスの背景や経緯を傾聴せず、一方的に叱責する。 このような対応は、報告した部下に「ミスの報告=罰せられる」という体験を学習させます。産業医学振興財団が参照する研究では、ミスの報告について「If I saw a colleague making a mistake, I would feel safe speaking up to my team leader.(同僚のミスを見たら、チームリーダーに安心して発言できる)」という項目が心理的安全性の尺度として示されています。リーダーが聞かない状態は、この「報告の安全感」を損ない、結果として「患者の安全を守ることが可能」となる機会を失わせる不利益につながります。

出典元の要点(要約)

産業医学振興財団(産業医学レビュー)

心理的安全性と産業保健における意義(Vol.38 No.1, 2025)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/1/38_53/_pdf/-char/en

尺度項目として「If I saw a colleague making a mistake, I would feel safe speaking up to my team leader.」が示され、「上司に報告する」ことが「患者の安全を守ることが可能」と説明される。上司が聞かない状態は、報告の安全感を損ない、患者安全の不利益につながる。

事例2:業務改善の提案を「取り合わない」

経験を積んだ部下が「この移乗手順は、こうした方が安全ではないか」と提案したとします。これに対し、リーダーが「うちは昔からこのやり方でやっているから」「忙しいのに新しいことを覚える時間はない」と、議論せずに退ける。 このような対応は、部下の「発言行動」そのものを否定する行為です。産業医学振興財団の総説では、心理的に安心な場では「情報共有や議論が活発になり」「職場全体の学習が促進され」るとされます。リーダーが提案を聞かず、情報共有を抑制する状況は、職場全体の学習と、その先にある「成果につながる」経路を損ない、チームに不利益を及ぼします。

出典元の要点(要約)

産業医学振興財団(産業医学レビュー)

心理的安全性と産業保健における意義(Vol.38 No.1, 2025)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/1/38_53/_pdf/-char/en

理論背景として、安心感のある場では「情報共有や議論が活発になり」「職場全体の学習が促進され」るとされる。さらに「社会的交換が職場で行われることで、…成果につながる」。上司が聞かず情報共有が抑制される状況は、学習促進と成果への経路を損ない、チームに不利益を及ぼす。

事例3:部下の相談や懸念を「支持しない」

部下が「〇〇さん(他の職員)の言い方がきつくて働きづらい」「最近、利用者の対応で精神的に疲れている」といった人間関係やメンタル面の不安を勇気を出して相談した際、「そんなことはどうでもいい」「あなたにも非があるのでは」と突き放す。 このような対応は、部下が感じる「上司からの支援」を決定的に裏切る行為です。経営行動科学学会が参照する研究では、「『知覚された上司の支援(Perceived supervisor support:PSS)』」が、組織への愛着や貢献意欲である「感情的コミットメントに影響」を与えることが紹介されています。リーダーが部下の支援要請(相談)を拒絶することは、部下の組織へのコミットメントを低下させ、離職の動機形成に直結します。

出典元の要点(要約)

経営行動科学学会(経営行動科学)

知覚された組織的支援(Perceived Organizational Support)研究の展望(2014)

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本研究ノートは、「知覚された上司の支援(PSS)」を整理し、「PSS が POS の経時的な変化に正の有意な相関」を示す先行研究(Eisenberger et al., 2002)や、「先行変数(…PSS)が POS を媒介して感情的コミットメントに影響」を与える分析(Rhoades et al., 2001)を紹介。上司の支援(=傾聴・受容)低下は、POS低下やコミットメント低下の経路で不利益(定着低下等)に繋がることを和文で体系的に示す。

これらの事例は、リーダーにとっては「指導」や「効率化」のつもりかもしれません。しかし、部下にとっては「意見を言っても無駄だ」「報告すると罰せられる」「相談しても助けてくれない」という強烈な学習体験となります。この積み重ねが、職場の心理的安全性を確実に破壊していくのです。


理由セクション:なぜ「話を聞かない」リーダーは組織を壊すのか

部下の離職は、氷山の一角に過ぎません。リーダーが「話を聞かない」姿勢を続けることで、組織の安全、学習、そして生産性という、目に見えにくい土台そのものが崩れていきます。

女性の介護職員の画像

介護事故のリスクが隠蔽され、増大する

リーダーが話を聞かず、心理的安全性が低い職場では「ミスの報告を含めた労働者の発言が減り、沈黙が増える。」と、産業医学振興財団の総説は指摘しています。これは介護現場にとって致命的なリスクです。公益財団法人 日本医療機能評価機構の年報では、「医療安全文化」が醸成されることで「医療チームの能力が高まり、コミュニケーションエラーが減り、医療の質が高まる」と明記されています。リーダーが現場の声(ヒヤリハットやミスの報告)を傾聴しない姿勢は、コミュニケーションエラーを誘発・隠蔽し、利用者の安全を脅かし、医療・介護の質を直接低下させる不利益につながります。

出典元の要点(要約)

公益財団法人 日本医療機能評価機構

医療安全文化調査 2022年度 年報(抜粋版)

https://www.jq-hyouka.jcqhc.or.jp/wp-content/uploads/2023/08/anzenbunka_2022_-anualreport_excerpt.pdf

本年報は「医療安全文化」を「…患者さんの安全を最優先に考え…それを可能にする組織のあり方」と定義し、醸成により「医療チームの能力が高まり、コミュニケーションエラーが減り、医療の質が高まる」と明記する。調査は「医療安全文化調査票 (HSOPS)」を用い、日本語化し定量測定する枠組みを提示。上司が現場の声を受け止めない状況は、コミュニケーションエラーの増大や安全文化の低下という具体的不利益に直結するエビデンスを示す。

組織としての「学習行動」が停止する

部下の発言は、組織にとって重要な「資源」です。産業医学振興財団の総説では、発言は「資源…を獲得するための潜在的な手段」であり、「職場内の発言や知識の共有が資源となり」「新たな資源獲得のための学びにつながる」と説明されています。リーダーが部下の提案や意見を聞き入れず、発言を抑えつけることは、この「学び」の機会を組織から奪う行為です。結果として、チームは同じミスを繰り返し、業務改善は進まず、組織としての成長が停止してしまいます。

出典元の要点(要約)

産業医学振興財団(産業医学レビュー)

心理的安全性と産業保健における意義(Vol.38 No.1, 2025)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/1/38_53/_pdf/-char/en

資源保存理論の整理で、発言は「資源…を獲得するための潜在的な手段」と位置づけられ、「職場内の発言や知識の共有が資源となり」「新たな資源獲得のための学びにつながる」。上司が聞かず発言を抑えると、資源獲得と学びの機会が失われる不利益が生じる。

メンタルヘルスが悪化し、生産性が低下する

リーダーが話を聞かない「包摂的でない」職場環境は、職員のメンタルヘルスと生産性にも深刻な影響を及ぼします。世界保健機関(WHO)のガイドライン(日本語版)の序文では、「安全で健全かつ包摂的な職場環境は」と前置きした上で、それが「アブセンティイーズム(欠勤)を減らし、仕事のパフォーマンス・生産性を向上」させ、「同僚間の対立を最小限に抑える」と記載されています。リーダーの傾聴が欠如した環境は、まさにこれとは逆の状態——欠勤の増加、生産性の低下、そして職員間の対立——を招き、組織運営に直接的な不利益をもたらします。

出典元の要点(要約)

世界保健機関(WHO)日本語版(厚生労働省掲載)

職場のメンタルヘルス対策ガイドライン 日本語版(原著2022)

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001258077.pdf

序文は「安全で健全かつ包摂的な職場環境は」「アブセンティイーズムを減らし、仕事のパフォーマンス・生産性を向上」させ、「同僚間の対立を最小限に抑える」と記載する。上司の傾聴欠如で包摂性が欠けると、これらの利点が得られず、欠勤・生産性・対立面で不利益が生じうる。

このように、「話を聞かない」ことは、単なるコミュニケーションの問題ではなく、組織の安全と成長、そして職員の健康を直接脅かす重大なリスクマネジメントの問題なのです。


FAQ:リーダーからよくあるご質問

リーダーの皆様から寄せられる疑問に対し、部下の定着や組織の安全に関するエビデンス(証拠)に基づいて回答します。

女性の介護職員の画像
Q
厳しく指導しないと、部下は成長しないのでは?
A

組織の成長には、部下からの自発的な発言や情報共有が不可欠です。産業医学振興財団の総説では、心理的に安心な場、すなわちリーダーが話を聞く場では「情報共有や議論が活発になり」「職場全体の学習が促進され」るとされます。さらに、部下の「発言や知識の共有が資源となり」「新たな資源獲得のための学びにつながる」とも説明されています。リーダーが一方的に指導し、部下が沈黙する環境では、組織としての学習行動はむしろ減少する可能性があり、成長の機会を失う不利益が生じます。

出典元の要点(要約)

産業医学振興財団(産業医学レビュー)

心理的安全性と産業保健における意義(Vol.38 No.1, 2025)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/1/38_53/_pdf/-char/en

理論背景として、安心感のある場では「情報共有や議論が活発になり」「職場全体の学習が促進され」るとされる。さらに「社会的交換が職場で行われることで、…成果につながる」。上司が聞かず情報共有が抑制される状況は、学習促進と成果への経路を損ない、チームに不利益を及ぼす。

Q
介護現場は忙しい。部下の話を全て聞く時間はありません。
A

介護・医療現場において、コミュニケーションの不足は重大なリスクに直結します。産業医学振興財団が参照した研究では、「コミュニケ―ション不全はエラーの主な原因となる」と明確に指摘されています。また、厚生労働省は、介護事故発生時の「速やかに市町村、入所者の家族等に連絡」することや、迅速な報告を求めています。忙しさを理由に部下の懸念や報告の傾聴を怠り、発言を妨げることは、エラーの発見を遅らせ、安全と学びに不利益が生じる可能性があります。

出典元の要点(要約)

産業医学振興財団(産業医学レビュー)

心理的安全性と産業保健における意義(Vol.38 No.1, 2025)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/1/38_53/_pdf/-char/en

介入研究の整理では「コミュニケ―ション不全はエラーの主な原因」とされ、懸念を「上司と共有することにより、…学びにつなげる」。またアウトカムに「心理的安全性や発言行動(voice/speaking up behavior)」が用いられる。上司が聞かず共有が滞ると、エラー原因が温存され、安全と学びに不利益が生じる。

Q
これは上司個人の「聞き方」の問題ですか? 組織の問題ですか?
A

エビデンスは、その両方に対処する必要性を示しています。世界保健機関(WHO)のガイドライン(日本語版)では、「管理監督者のトレーニングに関する推奨事項」と「組織介入に関する推奨事項」が並列で示されています。これは、リーダー個人の傾聴スキルと、組織全体の仕組みづくりの両方が重要であることを意味します。また、産業医学振興財団の総説では、「経営陣と労働者が協力し合って」健康の維持・増進を図る風土(心理社会的安全風土:PSC)が「チームの心理的安全性が高まる」ことにつながるとされています。

出典元の要点(要約)

世界保健機関(WHO)日本語版(厚生労働省掲載)

職場のメンタルヘルス対策ガイドライン 日本語版(原著2022)

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001258077.pdf

目次に「管理監督者のトレーニングに関する推奨事項」「労働者のトレーニングに関する推奨事項」「組織介入に関する推奨事項」が並び、管理監督者の関与が制度的に位置づけられている。上司が聞かない環境は、これら推奨の実施を妨げ、メンタルヘルス上の不利益を招く可能性がある。

部下の離職や沈黙は、リーダー個人の問題であると同時に、組織全体で取り組むべき安全と定着の課題です。


まとめ:「聞く」姿勢は、組織の安全と未来を守る管理技術

部下がすぐ辞めるという現象は、リーダー個人の資質の問題であると同時に、組織のリスク管理の問題です。「話を聞かない」ことが組織全体にいかに深刻な不利益をもたらすか、エビデンスが示しています。

「話を聞かない」リーダーが失う、組織の最も重要な資産

リーダーが部下の声を聞かないことで失うのは、その部下本人だけではありません。世界保健機関(WHO)のガイドライン(日本語版)では、「安全で健全かつ包摂的な職場環境」が「仕事のパフォーマンス・生産性を向上」させ、「同僚間の対立を最小限に抑える」と記載されています。部下の声を聞かない(=包摂的でない)リーダーは、組織の生産性、協調性、そして「ミスの報告」や「学習の機会」という、安全と成長に不可欠な資産そのものを失っているのです。

出典元の要点(要約)

世界保健機関(WHO)日本語版(厚生労働省掲載)

職場のメンタルヘルス対策ガイドライン 日本語版(原著2022)

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001258077.pdf

序文は「安全で健全かつ包摂的な職場環境は」「アブセンティイーズムを減らし、仕事のパフォーマンス・生産性を向上」させ、「同僚間の対立を最小限に抑える」と記載する。上司の傾聴欠如で包摂性が欠けると、これらの利点が得られず、欠勤・生産性・対立面で不利益が生じうる。

心理的安全性の確保は「優しさ」ではなく「必須の管理技術」

部下の話を聞き、心理的安全性を確保することは、「優しさ」といった感情論ではありません。これは、組織の存続に関わるエビデンスに基づいた「管理技術」です。産業医学振興財団が参照する研究では、「職場での信頼を基盤とした高い心理的安全性」が「離職率を低下させるとの指摘がある」と整理されています。部下の声を聞くことは、事故を防ぎ、学習を促進し、そして人材の定着を図るための、リーダーに必須の技術です。

出典元の要点(要約)

産業医学振興財団(産業医学レビュー)

心理的安全性と産業保健における意義(Vol.38 No.1, 2025)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/1/38_53/_pdf/-char/en

社会的アイデンティティ理論の視点から、職場の信頼関係に基づく高い心理的安全性は組織への自己同一性を促進し「離職率を低下させるとの指摘がある」と整理。「インクルーシブネス」が心理的安全性の促進要因として言及される。

あなたの「聞く」姿勢が、離職防止の第一歩

では、具体的にどうすればよいのでしょうか。日本産業衛生学会の雑誌に掲載された研究では、管理監督者に対し「積極的傾聴法を取り入れたメンタルヘルス研修」を実施したところ、部下が評価する「『上司の支援』…研修実施後に有意に上昇」したことが示されています。部下が辞めていく流れを断ち切る第一歩は、リーダーであるあなたがまず「聞く」技術を意識的に使うことです。

出典元の要点(要約)

日本産業衛生学会(産業衛生学雑誌)

積極的傾聴法を取り入れた管理監督者研修による効果(2008)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/50/4/50_E7008/_article/-char/ja

電子機器製造業事業場の管理職を対象に「積極的傾聴法」を含む研修を実施し、従業員側の評価で「上司の支援」が研修後に有意上昇。本文は、管理職の相談対応充実を通じて「上司の支援」が強化された可能性を示す。上司の傾聴が客観指標(BJSQの上司支援因子)を改善しうることを示す一次データであり、「聞かない上司」の不利益(支援不足・相談停滞)と表裏の関係で説明可能。

部下の離職と沈黙は、リーダーであるあなたの「聞く」姿勢一つで変えることができます。部下の声に耳を傾けることが、介護現場の安全と、組織の未来を守ることに直結しています。


更新履歴

  • 2025年10月21日:新規投稿

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