認知症の方へのトイレ誘導、毎日お疲れ様です。 なんとかトイレの中まで一緒に行けたのに、 いざズボンを下ろそうとすると、 強く手を払われてしまう…。
「あと一歩」の場面で拒否されると、 本当に困ってしまいますよね。
ご本人の「自分でやりたい」気持ちと、 衛生面・安全面との板挟みは、 介護士さんにとって大きな悩みです。
この記事では、その「トイレ“内”」での拒否に焦点を当てます。 背景にある「羞恥心」や「自立心」を、 厚生労働省などのエビデンス(根拠)に基づき解説します。
この記事を読むと分かること
- なぜトイレ「内」での介助拒否が起こるのか、その主な理由(羞恥心・自立心)が分かります。
- ご本人の「持っている能力を活かす・奪わない」ための、エビデンス(根拠)に基づいた関わり方を理解できます。
- 「出来なくて困っているときだけ手伝う」という、専門的な介助のコツが学べます。
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
結論:「トイレ内」拒否の核心は「羞恥心」と「自立心」
トイレの中という最もプライベートな空間での拒否は、 ご本人の「尊厳」に関わる重大なサインです。
厚生労働省や専門機関の資料(エビデンス)は、 この拒否の背景に、人間として当たり前の 2つの重要な心理があることを示しています。

「羞恥心」と「苦痛」への最大限の配慮
東京都福祉保健局の資料では、 「排泄は本来、 決して人前で行うものではない」ため、 介助は「大変恥ずかしく苦痛」を伴うと指摘されています。
トイレ「内」の拒否は、 この「恥 ずかしさや苦痛ができるだけ少なくすむようにしなければならない」 という、ご本人の尊厳を守ろうとする 切実なサインである可能性が極めて高いのです。
出典元の要点(要約)
東京都福祉保健局
認知症ケアに関する知識(第2章 日常生活援助 排泄援助)
排泄援助では、本人の羞恥心への配慮が重要であり、「排泄は本来、 決して人前で行うものではない。」と明確に記されている。陰部や排泄物を見られることは大きな苦痛であり、認知症の人は迷惑をかけないよう常に緊張と不安を抱えがちであると説明されている。
東京都福祉保健局
認知症ケアに関する知識(第2章 日常生活援助 排泄援助)
テキストは、排泄援助の場面で認知症の人が感じる恥ずかしさや苦痛を最小限に抑える必要があるとし、「恥 ずかしさや苦痛ができるだけ少なくすむようにしなければならない。」と記す。表情を観察しつつ、できない部分をさりげなく補い、傷つける言葉を避ける具体的な配慮が求められている。
「自分でやりたい」という「自己決定」の尊重
厚生労働省のガイドラインが示す 「本人の意思の尊重」(「自己決定の尊重」)は、 トイレ内でも最優先される原則です。
東京都福祉保健局の資料では、排泄が 「自分で行うよう身に付けてきた」自立性の高い行為であり、 「持っている能力を維持するよい機会になる」とされています。 「自分でできる!」という拒否は、 この自立心(プライド)と能力を 守ろうとする「意思表示」なのです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
認知症の人の意思決定支援に関する国の公式ガイドラインであり、誰が対象で、誰が支援するのか、そしてどのような原則で支えるのかを体系的に整理している。特に「本人の意思の尊重」を最初に掲げ、本人の能力を過小評価せず、可能な限り自らの意思で選び・決められるように支える姿勢を明確にしている。また、家族や専門職を含むチームによる継続的な支援が重要であると位置づけている。
東京都福祉保健局
認知症ケアに関する知識(第2章 日常生活援助 排泄援助)
本テキストは排泄について、「成長の過程で人は、排泄に関する一連の行為は、自分で行うよう身に付けてきた」と述べ、排泄が本来は自分で完結させる行為であることを指摘している。認知症によりこの一連の流れが難しくなったとしても、自立性や羞恥心、尊厳と密接に結びついた行為であることを前提に、援助者は十分な配慮をもって声かけや介助の方法を選ぶ必要があることが示されている。
東京都福祉保健局
認知症ケアに関する知識(第2章 日常生活援助 排泄援助)
同じ節では、「トイレでの排泄は、立位・座位の保持、排泄感など、持っている能力を維持するよい機会になる」と述べ、トイレでの排泄が単なる排泄行為にとどまらず、身体機能や感覚の維持に重要な役割を持つことが示されている。認知症の人に対しても、可能な範囲でトイレへの誘導と声かけを続けることが、リハビリテーション的な意味も含んだケアになると位置づけられている。
解決策は「能力を活かす・奪わない」支援
では、どうすればよいのでしょうか。 拒否されたからと諦めておむつにする(能力を奪う)のではなく、 厚生労働省の研修テキスト(株式会社穴吹カレッジサービス)では、 具体的な支援の工夫として 「出来なくて困っているときだけ手伝う」ことが示されています。
全てを介助するのではなく、ご本人の「自己決定」を尊重しつつ、 できない部分だけを補う専門的な関わりが求められます。
出典元の要点(要約)
株式会社穴吹カレッジサービス
認知症ケア法-認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
資料では、衣服のケアの場面で「着替えを嫌がる」「一人で着替えが出来なくなる」ケースを取り上げている。そのうえで、「脱がせるときは後方から脱がせない」「一人で着られるように順序よく重ねておく」「出来なくて困っているときだけ手伝う」といった具体的な留意点が箇条書きで示されている。本人の残っている能力を活かしつつ、負担や不安を増やさない手順の工夫が重要であることが、具体的な着替え支援のポイントとして整理されている。
東京都福祉保健局
第2章 認知症ケアに関する知識(日常生活援助の実際)
第2章では、日常生活援助の実際として食事介助・排泄介助・整容介助がまとめて取り上げられている。排泄介助の記載では、「持っている能力を活かす・奪わない」という見出しのもと、適切なタイミングで声を掛け誘導することで、トイレでの排泄を継続できる場合があることが示されている。また、介助者にとってはおむつ交換の方が楽であっても、トイレでの排泄は立位・座位の保持や排泄感など持っている能力を維持する良い機会になると記されており、能力を奪わない支援の重要性が強調されている。
トイレ「内」というデリケートな空間だからこそ、 ご本人の「羞恥心」と「自立心」に最大限配慮した 関わり方が必要になります。
よくある事例:「トイレ内」拒否を減らす介助のコツ
トイレ内で起こりがちな拒否に対し、 厚生労働省や専門機関の資料が示す原則に基づいた 介助のコツ(応用例)を解説します。

ここに掲載するアプローチは、厚生労働省の資料に 直接記載されている「これが正解」という方法ではありません。 あくまで、資料が示す「尊厳への配慮」「能力を活かす」 「安心できる関わり」といった基本原則を、 現場で応用した「支援の一例」として参考にしてください。
事例1:「ズボンを下ろす」拒否への対応
- NGな関わり例
- ご本人の正面に立ち、「はい、下ろしますね」と 声をかけながら介助する。
- OKな関わり例(応用)
- ご本人の視界から少しずれ(羞恥心への配慮)、 ご本人が自分で下ろすのを待ちます。
- 厚生労働省の研修テキストが示す 「出来なくて困っているときだけ手伝う」姿勢で、 難しい部分(例:ボタン、ファスナー)だけを 「お手伝いしましょうか?」とそっと補助します。
- なぜOKか(根拠)
- 東京都福祉保健局の資料が示すように、 排泄は「大変恥ずかしく苦痛」を伴うため、 介助者の視線や位置に配慮します。 また、「持っている能力を活かす・奪わない」ため、 ご本人の「できる」ことを尊重し、 できない部分だけを支援することが重要です。
出典元の要点(要約)
株式会社穴吹カレッジサービス
認知症ケア法-認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
資料では、衣服のケアの場面で「着替えを嫌がる」「一人で着替えが出来なくなる」ケースを取り上げている。そのうえで、「脱がせるときは後方から脱がせない」「一人で着られるように順序よく重ねておく」「出来なくて困っているときだけ手伝う」といった具体的な留意点が箇条書きで示されている。本人の残っている能力を活かしつつ、負担や不安を増やさない手順の工夫が重要であることが、具体的な着替え支援のポイントとして整理されている。
東京都福祉保健局
認知症ケアに関する知識(第2章 日常生活援助 排泄援助)
テキストは、排泄援助の場面で認知症の人が感じる恥ずかしさや苦痛を最小限に抑える必要があるとし、「恥 ずかしさや苦痛ができるだけ少なくすむようにしなければならない。」と記す。表情を観察しつつ、できない部分をさりげなく補い、傷つける言葉を避ける具体的な配慮が求められている。
事例2:「自分で拭きたい」拒否への対応
- NGな関わり例
- 「うまく拭けていませんよ」と事実を指摘し、 介護士が拭き直してしまう。
- OKな関わり例(応用)
- 東京都福祉保健局の資料が示す 「持っている能力を活かす・奪わない」原則に基づき、 ご本人にトイレットペーパーを渡し、 まずは自分で拭いてもらいます。
- その後、「最後に確認だけさせてくださいね」と 「分かりやすく声をかけ」(東京都福祉保健局の資料より)、 ご本人の「尊厳に配慮した声掛け」 (認知症介護研究・研修仙台センターの資料より)で 仕上げ(確認)を行います。
- なぜOKか(根拠)
- 排泄行為は「自分で行うよう身に付けてきた」 自立性の高い行為です(東京都福祉保健局の資料より)。 ご本人の「自分でやりたい」という「自己決定」を尊重し、 能力を維持する機会を奪わないことが重要です。
出典元の要点(要約)
東京都福祉保健局
第2章 認知症ケアに関する知識(日常生活援助の実際)
第2章では、日常生活援助の実際として食事介助・排泄介助・整容介助がまとめて取り上げられている。排泄介助の記載では、「持っている能力を活かす・奪わない」という見出しのもと、適切なタイミングで声を掛け誘導することで、トイレでの排泄を継続できる場合があることが示されている。また、介助者にとってはおむつ交換の方が楽であっても、トイレでの排泄は立位・座位の保持や排泄感など持っている能力を維持する良い機会になると記されており、能力を奪わない支援の重要性が強調されている。
認知症介護研究・研修仙台センター
初めての認知症介護解説集
https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf
排泄場面の説明では、「声掛けを行うにあたり大事な点は、尊厳に配慮した声掛けを行うこと、残存能力に応じた声掛け を行うこと、といえます。」と明記している。どこまでできるか、理解力がどの程度あるかを判断し、できない部分だけを補う声掛けを行うことが、トイレ誘導やパッド交換の際の不快感や羞恥心を軽減し、本人の尊厳を守るケアにつながると位置付けている。
東京都福祉保健局
認知症ケアに関する知識(第2章 排泄援助)
同テキストの排泄援助の章では、オムツ交換などの場面で「次に何をされるか予測することができない認知症の人では、 声をかけると同時に布団をはぐな ど、 認知症の人の反応を待たずにケアを進めると、 不安や恐怖、 混乱を招く」としている。そのうえで、「分かりやすく声をかけ、 ゆっくり反応を待つことが大切である」と明示し、説明→反応を待つ→ゆっくり進める、という流れを徹底することが拒否やトラブルの予防策になることを示している。
事例3:介助全般で共通する「待ち」の姿勢
- NGな関わり例
- ご本人が戸惑っているのに、「早くしてください」と 次の動作を急かしてしまう。
- OKな関わり例(応用)
- 東京都福祉保健局の資料が示すように、 「反応を待たずにケアを進めると、 不安や恐怖、 混乱を招く」ため、 ご本人の反応を「ゆっくり反応を待つ」ことが大切です。
- 同資料が示す「“ゆっくり・ ゆったり・ 丁寧に”」という 心構えで関わります。
- なぜOKか(根拠)
- トイレ内での一連の動作(脱衣、着座、排泄、清拭、更衣)は、 認知症の人にとって手順が分からなくなりやすい(実行機能障害) 複雑な作業です。 急かさずに「待つ」ことで、ご本人が安心して 次の動作に移るための時間と安心感を保障します。
出典元の要点(要約)
東京都福祉保健局
認知症ケアに関する知識(第2章 排泄援助)
同テキストの排泄援助の章では、オムツ交換などの場面で「次に何をされるか予測することができない認知症の人では、 声をかけると同時に布団をはぐな ど、 認知症の人の反応を待たずにケアを進めると、 不安や恐怖、 混乱を招く」としている。そのうえで、「分かりやすく声をかけ、 ゆっくり反応を待つことが大切である」と明示し、説明→反応を待つ→ゆっくり進める、という流れを徹底することが拒否やトラブルの予防策になることを示している。
東京都福祉保健局
認知症ケアに関する知識(第2章 ケアの基本姿勢)
本資料はケアの基本姿勢として、「認知症の人のペースを守り、全てのケアを“ゆっくり・ゆったり・丁寧に”行うことで、援助者による脅威、ケアに伴う恐怖を起こさないで済む」と明記している。入浴・排泄・食事などあらゆる場面に共通する考え方として、一方的に急がせるのではなく、本人の理解と動きに合わせてゆっくり進めることが、結果的に拒否を減らし、スムーズなケアと職員の負担軽減にもつながるという構造が示されている。
このように、「すべて手伝う」のではなく、 ご本人の「できること」を尊重し、 「困っていること」だけを安心できる形で手伝うことが、 トイレ内での拒否を減らす鍵となります。
理由:なぜご本人はトイレ「内」で拒否するのか?
トイレ誘導には応じてくれたのに、 なぜ「中」に入ってから拒否が強まるのでしょうか。
その「本当の理由」は、ご本人の尊厳に関わる 切実なサインである可能性が高いです。 エビデンスに基づき解説します。

理由1:排泄行為に伴う「羞恥心」と「苦痛」
トイレ「内」は、最もプライベートな空間です。 東京都福祉保健局の資料では、排泄が 「本来、 決して人前で行うものではない」 「自分で行うよう身に付けてきた」行為であるため、 介助されること自体が「大変恥ずかしく苦痛」を伴うと指摘されています。
ご本人の拒否は、この根源的な尊厳(羞恥心)を守ろうとする 防衛反応である可能性が高いのです。 同資料では、介助の際に 「恥 ずかしさや苦痛ができるだけ少なくすむようにしなければならない」 と、最大限の配慮を求めています。
出典元の要点(要約)
東京都福祉保健局
認知症ケアに関する知識(第2章 日常生活援助 排泄援助)
排泄援助では、本人の羞恥心への配慮が重要であり、「排泄は本来、 決して人前で行うものではない。」と明確に記されている。陰部や排泄物を見られることは大きな苦痛であり、認知症の人は迷惑をかけないよう常に緊張と不安を抱えがちであると説明されている。
東京都福祉保健局
認知症ケアに関する知識(第2章 日常生活援助 排泄援助)
テキストは、排泄援助の場面で認知症の人が感じる恥ずかしさや苦痛を最小限に抑える必要があるとし、「恥 ずかしさや苦痛ができるだけ少なくすむようにしなければならない。」と記す。表情を観察しつつ、できない部分をさりげなく補い、傷つける言葉を避ける具体的な配慮が求められている。
理由2:「自立」と「能力」を奪われることへの抵抗
東京都福祉保健局の資料が示すように、 トイレで排泄することは「持っている能力を維持するよい機会」です。
「自分でできる」と思っていることを介護職員に先回りして行われると、 ご本人の「能力を奪う」ことになり、 その「自己決定」(厚生労働省ガイドライン)を 侵害されたと感じて抵抗します。
出典元の要点(要約)
東京都福祉保健局
第2章 認知症ケアに関する知識(日常生活援助の実際)
第2章では、日常生活援助の実際として食事介助・排泄介助・整容介助がまとめて取り上げられている。排泄介助の記載では、「持っている能力を活かす・奪わない」という見出しのもと、適切なタイミングで声を掛け誘導することで、トイレでの排泄を継続できる場合があることが示されている。また、介助者にとってはおむつ交換の方が楽であっても、トイレでの排泄は立位・座位の保持や排泄感など持っている能力を維持する良い機会になると記されており、能力を奪わない支援の重要性が強調されている。
厚生労働省
認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
本ガイドラインは、基本原則の一つとして「本人の意思の尊重」を掲げ、「本人への支援は、本人の意思の尊重、つまり、自己決定の尊重に基づき行う」と明記している。そのため、自己決定に必要な情報は「認知症の人が有する認知能力に応じて、理解できるように説明しなければならない」とされ、説明方法の工夫が求められる。また支援は「本人の表明した意思・選好」や、表明が難しい場合には「推定意思・選好」を確認し、それを尊重することから始まると整理されており、日常生活の場面でも本人の選好を丁寧に汲み取る姿勢が重視されている。
理由3:手順が分からない「混乱」と「恐怖」
認知機能の低下により、一連の動作(ズボンの下げ方、座り方、拭き方)の 「手順」が分からなくなり(実行機能障害)、 混乱している可能性もあります。
東京都福祉保健局の資料では、以下のように指摘されています。
- 介護職員の急いだ関わりが、ご本人の「援助者による脅威、 ケアに伴う恐怖」を招く。
- 「反応を待たずにケアを進める」と、「不安や恐怖、 混乱を招く」。何をされるか分からない恐怖から、拒否という形で 抵抗しているのかもしれません。
出典元の要点(要約)
東京都福祉保健局
認知症ケアに関する知識(第2章 排泄援助)
同テキストの排泄援助の章では、オムツ交換などの場面で「次に何をされるか予測することができない認知症の人では、 声をかけると同時に布団をはぐな ど、 認知症の人の反応を待たずにケアを進めると、 不安や恐怖、 混乱を招く」としている。そのうえで、「分かりやすく声をかけ、 ゆっくり反応を待つことが大切である」と明示し、説明→反応を待つ→ゆっくり進める、という流れを徹底することが拒否やトラブルの予防策になることを示している。
東京都福祉保健局
認知症ケアに関する知識(第2章 ケアの基本姿勢)
本資料はケアの基本姿勢として、「認知症の人のペースを守り、全てのケアを“ゆっくり・ゆったり・丁寧に”行うことで、援助者による脅威、ケアに伴う恐怖を起こさないで済む」と明記している。入浴・排泄・食事などあらゆる場面に共通する考え方として、一方的に急がせるのではなく、本人の理解と動きに合わせてゆっくり進めることが、結果的に拒否を減らし、スムーズなケアと職員の負担軽減にもつながるという構造が示されている。
このように、トイレ「内」での拒否は、 ご本人なりの切実な理由に基づいています。
- 「羞恥心」
- 「自立心(自己決定)」
- 「混乱や恐怖」
FAQ(よくある質問)
トイレ「内」でのデリケートな介助に関する疑問に、 厚生労働省や専門機関の資料(エビデンス)を基にお答えします。

- Q「自分でできる」と言いますが、明らかにできていません。どうすればいいですか?
- A
まずはご本人の「自己決定」を尊重して見守ることが基本です。 厚生労働省の研修テキスト(株式会社穴吹カレッジサービス)では、 衣服のケアの工夫として 「出来なくて困っているときだけ手伝う」 という支援が示されています。
「自分でできる」という意思を尊重し(厚生労働省ガイドライン)、 ご本人の「持っている能力を活かす・奪わない」 (東京都福祉保健局の資料より)ためにも、 全部介助するのではなく、ご本人が困っている部分 (例:ボタンが外せない、紙がうまく取れない)だけを 「お手伝いしましょうか?」と 「質問・依頼形」(認知症介護研究・研修センターの資料より)で 支援するのが適切です。
出典元の要点(要約)
株式会社穴吹カレッジサービス
認知症ケア法-認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
資料では、衣服のケアの場面で「着替えを嫌がる」「一人で着替えが出来なくなる」ケースを取り上げている。そのうえで、「脱がせるときは後方から脱がせない」「一人で着られるように順序よく重ねておく」「出来なくて困っているときだけ手伝う」といった具体的な留意点が箇条書きで示されている。本人の残っている能力を活かしつつ、負担や不安を増やさない手順の工夫が重要であることが、具体的な着替え支援のポイントとして整理されている。
東京都福祉保健局
第2章 認知症ケアに関する知識(日常生活援助の実際)
第2章では、日常生活援助の実際として食事介助・排泄介助・整容介助がまとめて取り上げられている。排泄介助の記載では、「持っている能力を活かす・奪わない」という見出しのもと、適切なタイミングで声を掛け誘導することで、トイレでの排泄を継続できる場合があることが示されている。また、介助者にとってはおむつ交換の方が楽であっても、トイレでの排泄は立位・座位の保持や排泄感など持っている能力を維持する良い機会になると記されており、能力を奪わない支援の重要性が強調されている。
認知症介護研究・研修仙台センター
初めての認知症介護解説集 Ⅱ部 解説 入浴場面における認知症ケアの考え方(清拭)
https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf
同箇所では、清拭時の声かけについて「『体を拭きましょう』も丁寧な言葉ではありますが、指示・命令的な言葉です。」としたうえで、「原則は「体を拭きませんか」と質問・依頼形を用いることが、『意志の尊重』を具現化した声かけです。」と記載している。認知症の人の意志を尊重するために、命令ではなく選択を促す言い方を用いることが具体的なコミュニケーション技法として示されている。
- Q介助しようとすると叩かれます。
- A
東京都福祉保健局の資料では、 乱暴なケアに対し「暴力で抵抗せざるを得ない場合も ある」 と指摘されています。 叩く行為は、ご本人の「恐怖」や「苦痛」の サインかもしれません。
同資料では、おむつ交換の場面でも 「恐怖を感じさせない」ことや、 「反応を待たずにケアを進めると、 不安や恐怖、 混乱を招く」 とされています。
まずは介助を中断し、ご本人が何に恐怖や苦痛を感じているのか (例:介助のスピードが速すぎる、触れ方が乱暴、説明がない)を 見直す必要があります。 「“ゆっくり・ ゆったり・ 丁寧に”」(東京都福祉保健局の資料より) 関わることが原則です。
出典元の要点(要約)
東京都福祉保健局
認知症ケアに関する知識
入浴や清拭の例として、雑に皮膚をこすられたり、声もかけられずにシャワーを浴びせられたりした場合、「体を拭くのも乱暴にされたとしたら、 暴力で抵抗せざるを得ない場合も あるだろう。」と述べている。認知症の人の「暴力的な拒否」は、しばしば不快なケアへの防御反応であり、原因は本人ではなくケアの質にあることを示し、丁寧で説明を伴う関わりの重要性を強調している。
東京都福祉保健局
認知症ケアに関する知識(第2章 排泄援助)
同テキストの排泄援助の章では、オムツ交換などの場面で「次に何をされるか予測することができない認知症の人では、 声をかけると同時に布団をはぐな ど、 認知症の人の反応を待たずにケアを進めると、 不安や恐怖、 混乱を招く」としている。そのうえで、「分かりやすく声をかけ、 ゆっくり反応を待つことが大切である」と明示し、説明→反応を待つ→ゆっくり進める、という流れを徹底することが拒否やトラブルの予防策になることを示している。
東京都福祉保健局
認知症ケアに関する知識(第2章 ケアの基本姿勢)
本資料はケアの基本姿勢として、「認知症の人のペースを守り、全てのケアを“ゆっくり・ゆったり・丁寧に”行うことで、援助者による脅威、ケアに伴う恐怖を起こさないで済む」と明記している。入浴・排泄・食事などあらゆる場面に共通する考え方として、一方的に急がせるのではなく、本人の理解と動きに合わせてゆっくり進めることが、結果的に拒否を減らし、スムーズなケアと職員の負担軽減にもつながるという構造が示されている。
- Q衛生面が心配でも、本人の「自分でやる」を待つべきですか?
- A
衛生(安全)と尊厳(自己決定)の両立が求められます。 東京都福祉保健局の資料は 「恥 ずかしさや苦痛ができるだけ少なくすむようにしなければならない」 としています。
ご本人の「自分でやる」という意思は尊重しつつ、 例えば「仕上げに、きれいになったか確認だけさせてくださいね」と 尊厳に配慮した声掛け(認知症介護研究・研修仙台センターの資料より)で 関わるなど、ご本人の「能力」に応じた妥協点を探ることが 現実的な対応です。 「持っている能力を活かす・奪わない」支援が基本となります。
出典元の要点(要約)
東京都福祉保健局
認知症ケアに関する知識(第2章 日常生活援助 排泄援助)
テキストは、排泄援助の場面で認知症の人が感じる恥ずかしさや苦痛を最小限に抑える必要があるとし、「恥 ずかしさや苦痛ができるだけ少なくすむようにしなければならない。」と記す。表情を観察しつつ、できない部分をさりげなく補い、傷つける言葉を避ける具体的な配慮が求められている。
認知症介護研究・研修仙台センター
初めての認知症介護解説集
https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf
排泄場面の説明では、「声掛けを行うにあたり大事な点は、尊厳に配慮した声掛けを行うこと、残存能力に応じた声掛け を行うこと、といえます。」と明記している。どこまでできるか、理解力がどの程度あるかを判断し、できない部分だけを補う声掛けを行うことが、トイレ誘導やパッド交換の際の不快感や羞恥心を軽減し、本人の尊厳を守るケアにつながると位置付けている。
東京都福祉保健局
第2章 認知症ケアに関する知識(日常生活援助の実際)
第2章では、日常生活援助の実際として食事介助・排泄介助・整容介助がまとめて取り上げられている。排泄介助の記載では、「持っている能力を活かす・奪わない」という見出しのもと、適切なタイミングで声を掛け誘導することで、トイレでの排泄を継続できる場合があることが示されている。また、介助者にとってはおむつ交換の方が楽であっても、トイレでの排泄は立位・座位の保持や排泄感など持っている能力を維持する良い機会になると記されており、能力を奪わない支援の重要性が強調されている。
このように、トイレ「内」での拒否は、 ご本人の「羞恥心」や「自立心」の表れです。 エビデンスに基づき、ご本人の能力と意思を尊重した 柔軟な対応が求められます。
まとめ
トイレ「内」での「ズボンを下ろせない」といった介助拒否は、 「わがまま」ではなく、ご本人の 「羞恥心」と「自立心(自己決定)」の 表れである可能性が高いです。
「羞恥心」と「自立心」への配慮
東京都福祉保健局の資料が示すように、 排泄は「本来、 決して人前で行うものではない」 「大変恥ずかしく苦痛」な行為です。
同時に、トイレでの排泄は 「持っている能力を維持するよい機会」でもあります。 この2つの側面への配慮が、 トイレ「内」の介助では不可欠です。
出典元の要点(要約)
東京都福祉保健局
認知症ケアに関する知識(第2章 排泄援助)
排泄援助では、本人の羞恥心への配慮が重要であり、「排泄は本来、 決して人前で行うものではない。」と明確に記されている。陰部や排泄物を見られることは大きな苦痛であり、認知症の人は迷惑をかけないよう常に緊張と不安を抱えがちであると説明されている。
東京都福祉保健局
認知症ケアに関する知識(第2章 排泄援助)
同じ節では、「トイレでの排泄は、立位・座位の保持、排泄感など、持っている能力を維持するよい機会になる」と述べ、トイレでの排泄が単なる排泄行為にとどまらず、身体機能や感覚の維持に重要な役割を持つことが示されている。認知症の人に対しても、可能な範囲でトイレへの誘導と声かけを続けることが、リハビリテーション的な意味も含んだケアになると位置づけられている。
「能力を活かす」支援の技術
この記事で解説したように、 解決の鍵は「すべて手伝う」ことではありません。 厚生労働省の研修テキスト(株式会社穴吹カレッジサービス)が示す 「出来なくて困っているときだけ手伝う」という視点が重要です。
ご本人の「尊厳に配慮した声掛け」 (認知症介護研究・研修仙台センターの資料より)を実践し、 信頼関係を築くことが、 スムーズな排泄ケアにつながります。
出典元の要点(要約)
株式会社穴吹カレッジサービス
認知症ケア法-認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
資料では、衣服のケアの場面で「着替えを嫌がる」「一人で着替えが出来なくなる」ケースを取り上げている。そのうえで、「脱がせるときは後方から脱がせない」「一人で着られるように順序よく重ねておく」「出来なくて困っているときだけ手伝う」といった具体的な留意点が箇条書きで示されている。本人の残っている能力を活かしつつ、負担や不安を増やさない手順の工夫が重要であることが、具体的な着替え支援のポイントとして整理されている。
認知症介護研究・研修仙台センター
初めての認知症介護解説集
https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf
排泄場面の説明では、「声掛けを行うにあたり大事な点は、尊厳に配慮した声掛けを行うこと、残存能力に応じた声掛け を行うこと、といえます。」と明記している。どこまでできるか、理解力がどの程度あるかを判断し、できない部分だけを補う声掛けを行うことが、トイレ誘導やパッド交換の際の不快感や羞恥心を軽減し、本人の尊厳を守るケアにつながると位置付けている。
この記事が、日々奮闘されている皆さんの悩みを少しでも軽くし、 明日からのケアのヒントとなれば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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更新履歴
- 2025年11月19日:新規投稿


