「感染対策のため、手すりを全部消毒してください」 そう指示されても、今の人数で食事や排泄介助を回しながら全てを完璧にこなすなんて、現実的には無理がありますよね。
実は、ガイドラインを確認すると、「すべての場所を同じように消毒しなくてもよい」ということが読み取れます。
無理に全てを行おうとするのではなく、「本当に必要な場所」を知ることで、現場の負担は確実に減らせます。
この記事では、ガイドラインに基づいた「優先順位」と「消毒液の使い分け」について整理しました。
一つでも当てはまったら、この記事がきっと役に立ちます
この記事を知っていると
「消毒すべき場所」と「水拭きでいい場所」の境界線が明確になります。根拠を持って業務をスリム化し、現場のスタッフが疲弊しない持続可能な感染対策を実践できるようになります。
結論:消毒は「全部」ではなく「よく触れる場所」に集中する

日々の業務に追われる中で、「あれもこれも消毒しなければ」と焦っていませんか。完璧を目指して疲弊してしまうよりも、ガイドラインに基づいて「本当に必要な場所」に力を注ぐ方が、結果的に感染対策の質を維持できます。ここでは、業務をスリム化するための具体的な基準をお伝えします。
優先順位の決定:「多くの人の手が触れる場所」だけでよい
すべての場所を同じ強度で消毒する必要はありません。ガイドラインでは、床や壁、ドア等は「水拭き」としつつ、「多くの人の手が触れるドアノブ、手すり、ボタン、スイッチ等」は状況や場所に応じての「消毒が望ましい」と示されています。
つまり、誰も触らない壁や床まで必死に消毒する必要はなく、接触頻度の高い箇所(ハイタッチ・サーフェス)にリソースを集中させることが、感染対策として理にかなっています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
清掃については、床や壁、ドア等は水拭きとしつつ、「多くの人の手が触れるドアノブ、手すり、ボタン、スイッチ等」は状況や場所に応じて「消毒(消毒用エタノール等でよい)が望ましいです」とされている。日常的な環境整備により、接触感染のリスクを低減する考え方が示されている。
厚生労働省老健局
介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
清掃・消毒の基本として、「床、壁、ドア等は水拭きしますが、多くの人の手が触れるドアノブ、手すり、ボタン、スイッチ等は、状況や場所に応じての消毒(消毒用エタノール等でよい)が望ましいです。」と記載されている。共用部位は接触頻度が高く、接触感染の媒介となりやすいため、水拭きだけでなく「消毒用エタノール等」による定期的な消毒が推奨されている。
平時の消毒:「消毒用エタノール」での清拭が基本
ノロウイルス等の特定感染症が発生していない「平常時」であれば、手すりやドアノブ等の消毒には「消毒用エタノール」の使用が推奨されています。
エタノールは乾燥しやすく扱いやすいため、業務負担を軽減できます。ただし、目に見える汚れがある場合は、先に水拭きや洗剤等で汚れを除去してから消毒を行います。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
同じ表で、「手すり、ドアノブ、食卓用テーブル、 職員ロッカー パソコン、電話機器」については、「・消毒用エタノールで清拭する。」と記載されている。多数の利用者・職員が触れる「共用設備」については、「消毒用エタノール」で定期的に清拭することにより、接触感染予防を図る具体的な方法が示されている。
厚生労働省老健局
介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
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消毒薬の説明として、「(ア)消毒用エタノール 消毒用エタノールは、濃度が約80%に調製されており、環境、器具等のほか、皮膚にも使用できますが、粘膜や傷口には使用できません。」と記載されている。介護現場で広く用いられる「消毒用エタノール」の濃度と適用範囲が具体的に示されており、粘膜や傷口に使用してはいけないことが明確に注意喚起されている。
緊急時の切り替え:ノロウイルスには「次亜塩素酸ナトリウム」
ノロウイルスはアルコールに対する抵抗力が強いため、エタノール消毒では十分な効果が得られません。嘔吐物や排泄物の処理周辺、およびノロウイルス流行時には、消毒剤を「次亜塩素酸ナトリウム」等へ切り替える必要があります。
状況に応じた使い分けを表に整理しました。
| 状況 | 推奨される消毒液 | 対象となる場所 |
|---|---|---|
| 平常時 | 消毒用エタノール | 手すり、ドアノブ、スイッチ等のよく触れる場所 |
| ノロウイルス発生時 | 次亜塩素酸ナトリウム(0.02%) | 手すり、ドアノブ、トイレの便座など |
| 嘔吐物処理 | 次亜塩素酸ナトリウム(0.1%) | 嘔吐物や排泄物が付着した床、衣類など |
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
消毒薬の選択について、「例えば、消毒抵抗性が強いノロウイルスに対しては、アルコール消毒では十分な効果が得られないため、次亜塩素酸ナトリウム等を用いる必要があります。」と記載されている。病原体ごとに消毒薬の有効性が異なるため、ノロウイルス対策ではアルコールに依存せず、次亜塩素酸ナトリウム等を適切な濃度・時間で使用することが、介護現場の感染対策として求められている。
厚生労働省老健局
介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
日頃の予防法として、「ノロウイルスはアルコールによる消毒効果が弱いため、エタノール含有擦式消毒薬による手指消毒の有効性は低くなります。」と記載されている。そのため、「ノロウイルス対策においては、手指消毒はすぐに液体石けんと流水による手洗いが出来ないような場合等の手洗いの補助として用いてください。」とされ、基本は液体石けんと流水による手洗いであることが明確に示されている。
厚生労働省老健局
介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
清掃・消毒・滅菌の記載では、「なお、ノロウイルス感染症発生時は0.02%~0.1%(200ppm~1000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム液を使用し、消毒後の腐食を回避するため水拭きする等、流行している感染症によっては、その病原体に応じた清掃や消毒を行う必要があります。」とされている。ノロウイルスのようにアルコールに抵抗性がある病原体に対しては、濃度を指定した次亜塩素酸ナトリウム液を用い、その後の水拭きによる腐食対策も含めて、病原体の特性に応じた方法を選択する必要が示されている。
このように、「どこでも何でも消毒」ではなく、人の手が触れる場所や流行状況に合わせて対象を絞り込むことが、無理なく感染対策を続けるコツです。日頃はアルコールで手早く済ませ、いざという時に次亜塩素酸ナトリウムを使えるよう準備しておくことが、賢い現場の知恵といえます。
よくある事例:現場でやりがちな「NG行動」と対策

忙しい業務の中で、少しでも効率よく消毒を済ませたいと思うのは当然のことです。しかし、「良かれと思って」やっていたことが、実は逆効果だったり、あなた自身の健康を害したりする可能性もあります。ここでは、現場でよく見かける間違いと、正しい対応について解説します。
NG事例① 消毒薬の「噴霧」は行わない
「空間に撒けばウイルスが死ぬ気がする」「スプレーで直接吹きかけた方が早い」と思っていませんか? ガイドラインでは消毒薬の噴霧は行わないよう強く注意喚起されています。噴霧は消毒効果が不確実であるだけでなく、吸入することで職員や利用者様の健康被害につながる恐れがあるからです。
消毒薬は、必ずペーパータオルやクロスに含ませて「清拭(拭き取り)」で使用しましょう。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
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本文では、消毒薬の使用条件として「温度は、一般に高くなるほど殺菌力が強くなり、20℃以上で使用することが望ましいとされています。」とされ、「効果を発揮するためには一定の接触時間(作用時間)が必要です。」と記載されている。また、「消毒薬の噴霧は、3 要素を満たさずに効果が不確実であり、吸引すると有害であるため、行わないでください。」と明記され、噴霧による使用を避けるよう注意喚起している。
厚生労働省
高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版(2019年3月)
https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
c.その他の注意事項として、広範囲の拭き掃除へのアルコール製剤の使用や、室内環境でのアルコールや次亜塩素酸ナトリウム液等の噴霧は、職員および入所者の健康被害につながるため、行わないようにしますと明記される。また、カーテンは、汚れや埃、または嘔吐物、排泄物の汚染が予測される場合は直ちに交換し、感染予防に努めますとされ、過度な薬剤噴霧ではなく、汚染物の除去とリネン管理による環境対策が重視されている。
NG事例② 次亜塩素酸ナトリウム使用後の「拭き残し」
ノロウイルス対策で次亜塩素酸ナトリウムを使った後、そのまま乾燥させていませんか? 次亜塩素酸ナトリウムは金属に対して腐食性があります。手すりの金具やドアノブなどに薬剤が残っていると、サビや変色の原因になります。
使用後は必ず「水拭き」をして成分を拭き取り、乾燥させることが必要です。この「二度手間」が負担になる場合は、平常時は水拭き不要なアルコールを使用するのも賢い選択です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
清掃・消毒・滅菌の記載では、「なお、ノロウイルス感染症発生時は0.02%~0.1%(200ppm~1000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム液を使用し、消毒後の腐食を回避するため水拭きする等、流行している感染症によっては、その病原体に応じた清掃や消毒を行う必要があります。」とされている。ノロウイルスのようにアルコールに抵抗性がある病原体に対しては、濃度を指定した次亜塩素酸ナトリウム液を用い、その後の水拭きによる腐食対策も含めて、病原体の特性に応じた方法を選択する必要が示されている。
厚生労働省老健局
介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
次亜塩素酸ナトリウムの使用上の注意として、「なお、金属に用いる場合は、腐食性があることに留意し、次亜塩素酸ナトリウム液で消毒後は、水拭きして乾燥させるようにしましょう。」と記載されている。ベッド柵や手すりなど金属製の器具・設備を消毒する際には、消毒後に必ず水拭きと乾燥を行うことで、腐食を防ぎつつ消毒効果を確保することが示されている。
NG事例③ 濃度の勘違い(0.02%と0.1%の混同)
「とりあえず濃い方が効く」と考えていませんか? 次亜塩素酸ナトリウムは用途によって適切な濃度が異なります。
- 0.02%(200ppm):手すり、ドアノブ、トイレの便座などの消毒
- 0.1%(1000ppm):嘔吐物や排泄物が付着した床や衣類のつけ置き
間違って濃い液で手すりを拭くと、刺激臭が強かったり手荒れの原因になったりします。用途に合わせた使い分けを確認しましょう。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
「(参考)消毒薬が適用可能な対象」では、消毒薬と使用濃度、その消毒対象が一覧で示されている。次亜塩素酸ナトリウムについては、「0.02% 食器、まな板、リネン」「0.05% 聴診器、血圧計のマンシェット」「0.1% ウイルス汚染環境(目に見える血液付着のない場合)」と記載されており、用途に応じた濃度設定の目安が示されている。
厚生労働省
高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版(2019年3月)
https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
次亜塩素酸ナトリウムの用途別濃度として、便や吐物が付着した床等や衣類等の漬け置きには1000ppm(0.1%)を用いること、トイレの便座やドアノブ、手すり、床等には200ppm(0.02%)を用いることが示されている。対象物に応じて濃度を使い分ける具体例を提示することで、高齢者介護施設でのノロウイルス等への対応において、過不足のない濃度での環境消毒を実践できるようにしている。
NG行動を避けるだけで、あなた自身の健康を守り、施設の設備劣化も防ぐことができます。正しい知識は、あなたを守る最大の武器になります。まずは「スプレー噴霧をやめる」「金属は水拭きする」といった基本から、一つずつ見直していきましょう。
理由:なぜ「使い分け」が必要なのか

忙しい業務の中で、手順をただ暗記するのは大変です。しかし、「なぜそうするのか」という理由を知っていれば、とっさの判断に迷わなくなります。ここでは、消毒液を使い分ける根拠となる、感染対策の基本原則を解説します。
感染経路の遮断が最も重要だから
感染対策には「病原体の排除」「感染経路の遮断」「宿主の抵抗力向上」という3つの柱がありますが、ガイドラインでは、その中でも「感染経路の遮断」が最も重要な取り組みであると位置づけられています。
特に手すりやドアノブは、汚染された手を介して病原体が広がる「接触感染(間接接触感染)」の媒介物となりやすいため、ここを重点的に消毒することで、効率的に感染の連鎖を断つことができます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
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本文では、感染対策の3つの柱の中で「Ⅱ 感染経路の遮断」の重要性が最も強調されている。空気感染、飛沫感染、接触感染などの経路を踏まえ、「病原体を持ち込まないこと」「病原体を持ち出さないこと」「病原体を拡げないこと」に配慮することが、介護施設・事業所や通所・訪問サービスでの基本的な予防行動とされている。
厚生労働省老健局
介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
本手引きでは、接触感染について、「感染しているヒトに直接触れること(握手等)で伝播がおこる直接接触感染」と、「汚染された物(ドアノブ、手すり、食器、器具等)を介して伝播がおこる間接接触感染がある」と整理されている。接触対策として、利用者や職員同士の直接接触のコントロールと、ドアノブや手すり等の環境表面の管理が必要であることが示されている。
病原体によって「効く消毒薬」が違うから
残念ながら、すべての菌やウイルスに効く万能な消毒薬はありません。例えば、インフルエンザウイルス等はアルコールが有効ですが、ノロウイルスは「消毒抵抗性が強い」ため、一般的なアルコール消毒では十分な効果が得られません。
そのため、流行している感染症や排除したい病原体の特性に合わせて、消毒薬を選び直す必要があります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
消毒薬の選択について、「例えば、消毒抵抗性が強いノロウイルスに対しては、アルコール消毒では十分な効果が得られないため、次亜塩素酸ナトリウム等を用いる必要があります。」と記載されている。病原体ごとに消毒薬の有効性が異なるため、ノロウイルス対策ではアルコールに依存せず、次亜塩素酸ナトリウム等を適切な濃度・時間で使用することが、介護現場の感染対策として求められている。
厚生労働省老健局
介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
日頃の予防法として、「ノロウイルスはアルコールによる消毒効果が弱いため、エタノール含有擦式消毒薬による手指消毒の有効性は低くなります。」と記載されている。そのため、「ノロウイルス対策においては、手指消毒はすぐに液体石けんと流水による手洗いが出来ないような場合等の手洗いの補助として用いてください。」とされ、基本は液体石けんと流水による手洗いであることが明確に示されている。
効果には「濃度・温度・時間」が関係するから
消毒薬が効果を発揮するためには、「濃度」「温度」「時間(接触時間)」の3つの要素が適切である必要があります。
適正な濃度で使用することはもちろん、一定の接触時間を確保するために「清拭(拭き取り)」を行うことが重要です。空間にスプレーするだけでは、これらの条件を満たすことができず、効果が不確実になります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
消毒薬の効果に影響する3要素として、「濃度」「温度」「時間」が重要です。高濃度では、消毒効果は高くなることが一般的ですが、有害作用が発生しやすくなるため、各消毒薬には適正濃度が存在します。
厚生労働省老健局
介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
本文では、消毒薬の使用条件として「温度は、一般に高くなるほど殺菌力が強くなり、20℃以上で使用することが望ましいとされています。」とされ、「効果を発揮するためには一定の接触時間(作用時間)が必要です。」と記載されている。また、「消毒薬の噴霧は、3 要素を満たさずに効果が不確実であり、吸引すると有害であるため、行わないでください。」と明記され、噴霧による使用を避けるよう注意喚起している。
理由がわかれば、「今はアルコールで十分」「今はノロが怖いから次亜塩素酸」と、自信を持って判断できるようになります。根拠に基づいた行動は、無駄な作業を減らし、あなたと利用者様を守る最強の盾となります。
FAQ:現場の疑問に答える
消毒液の作り方や清掃用具の管理など、現場でふと迷ってしまうポイントをQ&A形式でまとめました。自己流の解釈で進める前に、ガイドラインに基づく正しい基準を確認しておきましょう。
- Q次亜塩素酸ナトリウム液(0.02%)の作り方は?
- A
市販の塩素系漂白剤(濃度約6%の場合など、製品により異なるため確認が必要)を使用する場合の希釈例として、以下のような目安があります。
- 0.02%液(200ppm)を作る場合: 6%溶液を2mlとり、水を598ml加えると、0.02%液600mlが得られます。
※製品の濃度を必ず確認し、希釈する際は直接塩素剤が手に付かないよう手袋を着用して調整してください。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版(2019年3月) https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
付録5「消毒法について」では、次亜塩素酸ナトリウムの希釈方法として、例1)6%溶液を用い、0.1%濃度に調整したい場合の具体的な原液量と水量の組合せを示している。さらに、6%溶液を2mlとり、水を598ml加えると、0.02%液600mlが得られると記載し、目的濃度ごとの調製例を提示することで、高齢者介護施設で適切な濃度の消毒液を安全に調整できるように配慮している。
厚生労働省
高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版(2019年3月) https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
⑥市販の漂白剤を用いた時の調製法では、漂白剤として市販されている次亜塩素酸ナトリウム液の塩素濃度は約5%です(家庭用塩素系漂白剤ハイター、ブリーチ等)。濃度は必ず確認してくださいと注意喚起している。また、希釈する際は、直接塩素剤が手に付かないよう手袋をしますと示され、高齢者介護施設での消毒液調整において職員自身の安全確保と適正濃度の確認が重要であることを明示している。
- Q消毒の頻度はどれくらいが正解ですか?
- A
ガイドラインには具体的な「1日何回」という回数指定はありませんが、「状況や場所に応じて」消毒することが望ましいとされています。また、多くの人が触れる場所は「定期的」な清掃・消毒が求められます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局
介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
清掃・消毒の基本として、「床、壁、ドア等は水拭きしますが、多くの人の手が触れるドアノブ、手すり、ボタン、スイッチ等は、状況や場所に応じての消毒(消毒用エタノール等でよい)が望ましいです。」と記載されている。共用部位は接触頻度が高く、接触感染の媒介となりやすいため、水拭きだけでなく「消毒用エタノール等」による定期的な消毒が推奨されている。
厚生労働省老健局
介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
清掃については、床や壁、ドア等は水拭きとしつつ、「多くの人の手が触れるドアノブ、手すり、ボタン、スイッチ等」は状況や場所に応じて「消毒(消毒用エタノール等でよい)が望ましいです」とされている。日常的な環境整備により、接触感染のリスクを低減する考え方が示されている。
- Q清掃用具(モップやクロス)の管理はどうすればいいですか?
- A
清掃用具が汚染源にならないよう注意が必要です。使用後は家庭用洗浄剤で洗い、流水下できれいに洗浄し、「次の使用までに十分に乾かす」ことが重要です。湿ったまま放置すると微生物が増殖する原因となります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版(2019年3月) https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
日常清掃の具体的手順として、「清掃に使用するモップは、使用後、家庭用洗浄剤で洗い、流水下できれいに洗浄し、次の使用までに十分に乾かします。」とされている。また、「清掃を担当しているボランティアや委託業者にも、上記のことを徹底します。」と記載され、委託・ボランティアを含めた全ての清掃担当者に同じ基準を適用する必要性が示される。湿ったままのモップは微生物の増殖源となることから、洗浄と乾燥をセットで行い、施設全体で共通のルールとして徹底することが求められている。
まとめ:無理なく続けるためのポイント
感染対策で最も大切なのは、一度だけ完璧に行うことではなく、毎日無理なく「継続すること」です。人手が足りない現場で、すべての場所を完璧に消毒しようとすれば、必ずどこかで歪みが生まれます。ここでは、現場を守り抜くための考え方を整理します。
メリハリのある対応で「継続」を優先する
現場の状況は日々変化します。だからこそ、平常時は負担の少ないアルコール消毒で済ませ、ノロウイルス発生時などの「有事」には次亜塩素酸ナトリウムで徹底的に対応するというメリハリをつけることが重要です。
ガイドラインでも、流行している感染症や病原体の種類に応じた清掃や消毒を行う必要性が示されています。状況に合わせた柔軟な対応こそが、長期間にわたる感染対策を支えるカギとなります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001155694.pdf
清掃・消毒・滅菌の記載では、「なお、ノロウイルス感染症発生時は0.02%~0.1%(200ppm~1000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム液を使用し、消毒後の腐食を回避するため水拭きする等、流行している感染症によっては、その病原体に応じた清掃や消毒を行う必要があります。」とされている。ノロウイルスのようにアルコールに抵抗性がある病原体に対しては、濃度を指定した次亜塩素酸ナトリウム液を用い、その後の水拭きによる腐食対策も含めて、病原体の特性に応じた方法を選択する必要が示されている。
厚生労働省老健局
介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
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管理者は「介護施設・事業所内の危機管理体制の構築(感染対策委員会の設置、業務継続計画(BCP)作成、緊急時連絡網作成等)」を行い、自治体等との連携体制を整備する。あわせて、職員が感染症にかかったときに療養に専念できるような人的環境も含めて労務管理を行うことが求められている。
エビデンスを味方につける
「全部やらなきゃ」というプレッシャーを感じたときは、ガイドラインを思い出してください。「床や壁は水拭きでよい」「平時はアルコールでよい」というのは、決して手抜きではなく、国が定めた標準的な運用です。
正しい知識(エビデンス)を盾にすることで、過剰な業務を見直し、限られた時間と人員を「本当に守るべき利用者様のケア」に充てることができます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省老健局介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版
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清掃については、床や壁、ドア等は水拭きとしつつ、「多くの人の手が触れるドアノブ、手すり、ボタン、スイッチ等」は状況や場所に応じて「消毒(消毒用エタノール等でよい)が望ましいです」とされている。日常的な環境整備により、接触感染のリスクを低減する考え方が示されている。
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高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版(2019年3月)
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本マニュアルは、高齢者介護施設における感染のリスクとその対策に関する基本的な知識や、押さえるべきポイントを示したものです、と位置づけられており、各施設が自施設の実情に合わせて指針やマニュアルを作成・見直しする際の基盤資料として用いることが想定されている。
あなたの体が資本です。無理をして倒れてしまっては、元も子もありません。「できない」と自分を責めるのではなく、「ここだけはやる」と決めて、賢く手を抜く勇気を持ってください。それが結果として、利用者様とあなた自身を守る一番の近道になります。
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更新履歴
- 2025年11月24日:新規投稿


