【入浴介助】「傷は濡らさない」は誤解?感染リスクを下げる水道水洗浄とシャワー浴のメリット

「傷があるからお風呂はやめて」と家族に言われ、汚れている足を見てモヤモヤした経験はありませんか?
感染が怖い気持ちは理解できても、清潔を保ちたいという専門職としての視点との板挟みは、現場にとって大きなストレスです。

「とりあえず足浴で」と対応していても、本当に安全なのか自信が持てないことも多いはずです。
医師からの「清潔に」という指示だけでは分からない、現場レベルでの具体的な判断基準と、家族への説明材料を整理しましょう。

この記事を読むと分かること

  • 傷があってもシャワー浴が良い理由
  • 足浴が感染リスクになる医学的根拠
  • 水道水洗浄の安全性と正しい方法
  • 家族に納得してもらう説明のコツ

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • 家族に傷を濡らすなと言われた
  • 感染予防で「足浴」を選んでいる
  • 水道水で洗うのがなんとなく怖い
  • 利用者が痛がるので低温で洗う

結論:感染リスクを下げるなら「足浴」より「シャワー」が正解

浴室の画像

「もし傷が悪化したら責任を取れない」
そんな不安から、現場では入浴を中止して清拭や足浴で済ませることが少なくありません。

家族からの「濡らさないで」という要望もあり、リスク回避のために無難な選択をしがちです。
しかし、手間をかけて準備したその「足浴」が、状況によっては感染リスクの判断を難しくすることもあります。

糖尿病末梢動脈疾患などで足に潰瘍がある利用者では、足浴よりもシャワー浴を行った方が患肢(病気のある足)の予後が良いという報告があり、足浴では感染を拡大させる可能性が指摘されています。
感染予防の観点では、汚れたお湯に患部を浸すよりも、流水で汚れを洗い流せる方法(例:足だけのシャワー)を検討する方が説明しやすくなります。

入浴・シャワーの可否症例創の状態医師の指示で変わります。指示がある場合はそちらを最優先してください。

感染予防には「足浴」より「シャワー」が安全

傷があるからといって、一律に入浴・シャワーを中止するのではなく、「どう洗い流すか」を軸に考えることが重要です。
入浴やシャワーの可否症例によって異なりますが、入院前から継続されていた場合には一般に継続が推奨される、という整理がされています。

また、糖尿病末梢動脈疾患に伴う下肢潰瘍での検討では、足浴よりもシャワー浴を行った方が患肢の予後がよいという報告があり、足浴では感染を拡大させる可能性が指摘されています。
そのため、感染予防の観点では「溜めたお湯に浸す」よりも、流水で汚れを洗い流せるシャワー(足だけのシャワーを含む)が説明しやすい選択肢になります。

出典元の要点(要約)

厚生労働省

重篤副作用疾患別対応マニュアル「出血傾向」

https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1f09.pdf

糖尿病や末梢動脈疾患に伴う下肢潰瘍での検討では、足浴よりもシャワー浴を行った方が患肢の予後がよいという報告がなされており、足浴では感染を拡大させる可能性が指摘されている。

「濡らしてはいけない」は誤解!水道水で洗うメリット

「水道水には雑菌がいるから傷には良くない」というイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、現代の創傷ケアにおいて、水道水での洗浄は推奨される行為です。

傷の治りを遅らせる原因となる異物や細菌を取り除くこと(Wound bed preparation)が重要であり、そのためには「十分な量の水」で洗い流す必要があります。
洗浄に使う水は、高価な生理食塩水である必要はなく、水道水でも感染率や治癒率に差はないことがわかっています。

重要なのは水の種類よりも、汚れや細菌を物理的にしっかりと洗い流す「量」です。
シャワーであれば、十分な水量で効率的に洗浄を行うことができます。

出典元の要点(要約)

日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

十分な量の生理食塩水や蒸留水、水道水を用い、原因物質を洗い流すことが重要で、これらの洗浄液の違いによる感染率や治癒率に差はない。

傷があるからといって、入浴を避ける必要はありません。むしろ、感染を防ぐためには「溜めたお湯(足浴)」よりも「シャワー」で十分に洗い流すことが推奨されます。「濡らさない」ことよりも、「洗って清潔を保つ」ことが、傷を早く治すための近道です。


よくある事例:良かれと思ったケアが逆効果?

女性の介護職員の画像

現場では「何かあったら怖い」という心理が働きがちです。
特に皮膚トラブルは家族の目につきやすいため、リスクを避けて「濡らさない」「消毒する」という従来のやり方を続けてしまうことも多いのではないでしょうか。

ここでは、現場でよく見られる対応と、エビデンスとのギャップについて解説します。

事例1:「大事をとって足浴」が感染リスクを高める

「もし傷が悪化したら…」と心配になり、入浴を避けて足浴だけで済ませる判断は現場でよく起こります。
しかし、糖尿病末梢動脈疾患に伴う下肢潰瘍では、足浴よりもシャワー浴の方が患肢の予後がよいという報告があり、足浴では感染を拡大させる可能性が指摘されています。

「濡らさない」よりも、「汚れを溜めない形で洗い流す」方向へ。
たとえば全身入浴が難しい場合でも、浴室で足だけをシャワーで流すなど、流水を使った選択肢は現実的です。

出典元の要点(要約)

日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

糖尿病や末梢動脈疾患に伴う下肢潰瘍での検討では、足浴よりもシャワー浴を行った方が患肢の予後がよいという報告がなされており、足浴では感染を拡大させる可能性が指摘されている。

日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

足浴(浸漬)を行っている施設も見受けられるが、洗浄した汚染物質や細菌が浮遊している中に患肢を浸していることになり、足浴桶などを介して交差感染の危険性もある。

事例2:「痛くないように」低温で洗うことの弊害

洗浄の際、利用者が痛がるのを避けるために、あえて低い温度(または水)を使っていませんか?
冷たい洗浄液は血管を収縮させ、傷の治りに必要な酸素や栄養が届きにくくなる原因になります。

実は、体温程度に温めた生理食塩水や水道水を使う方が、痛み(疼痛)を軽減できることが分かっています。
「温めると痛む」のではなく、適切な温度管理が痛みを和らげ、治癒を促進します。

出典元の要点(要約)

日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

洗浄液の温度が低いと血管収縮を起こし、創傷治癒を遅らせる可能性があるため、体温程度に温めて洗浄することが望ましい。

日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

生理食塩水の温度については、室温よりも体温程度に温めることで有意に疼痛が緩和される。

事例3:「消毒しないと不潔」という思い込み

「ちゃんと消毒してください」という家族の声に応えて、消毒薬をたっぷり塗っていませんか?
多くの消毒薬(ポビドンヨードなど)には細胞毒性があり、細菌だけでなく再生しようとする細胞まで傷つけてしまいます。

現在のガイドラインでは、消毒よりも水道水での十分な洗浄が推奨されています。
消毒薬を使わなくても、十分な量の水で洗い流すことで、感染の原因となる物質を除去できます。

出典元の要点(要約)

日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

消毒薬(ポビドンヨード、過酸化水素など)は、細胞毒性を有するため、創傷治癒を遅らせる可能性がある。

日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

創面洗浄は、壊死組織、細菌、滲出液などを物理的に除去するために行われる。十分な量の生理食塩水や水道水を用い、原因物質を洗い流すことが重要である。

良かれと思って行っている「足浴」「低温洗浄」「念入りな消毒」が、実は傷の治りを遅らせている可能性があります。現場の負担や家族への配慮も大切ですが、まずは「十分な量のぬるま湯で洗い流す(シャワー浴)」ことが、最も安全で効果的なケアであることを押さえておきましょう。


医学的根拠:なぜ「洗い流す」ことが重要なのか

女性の介護職員の画像

「昔からこうしているから」「先輩に教わったから」
現場では経験則が優先されがちですが、根拠があいまいなままケアを続けるのは不安なものです。

忙しい業務の中で、ケアの方法を変えることには抵抗があるかもしれません。
しかし、「なぜその方法が良いのか」という医学的な理由を知ることで、自信を持って家族に説明できるようになります。

常に「新しいお湯」を使うことが感染対策の基本

入浴介助で感染リスクを下げるうえで重要なのは、「汚れや原因物質を洗い流す」ことです。
ガイドラインでも、十分な量生理食塩水・蒸留水・水道水などを用いて原因物質を洗い流すことが重要で、洗浄液の違いによる感染率や治癒率に差はない、と整理されています。

つまり「溜めたお湯に浸す」よりも、流水で流す方が、考え方として説明しやすいという判断になります。

出典元の要点(要約)

日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

糖尿病や末梢動脈疾患に伴う下肢潰瘍での検討では、足浴よりもシャワー浴を行った方が患肢の予後がよいという報告がなされており、足浴では感染を拡大させる可能性が指摘されている。

水道水でも「生理食塩水」と同じくらい安全

「水道水には雑菌がいるから傷には良くない」というイメージを持つ方もいます。
しかしガイドラインでは、十分な量生理食塩水・蒸留水・水道水を用いて原因物質を洗い流すことが重要で、洗浄液の違いによる感染率や治癒率に差はないとされています。

高価な生理食塩水を少量使うより、飲用可能な水道水十分量使って物理的に洗い流す方が、現場で再現しやすいケースがあります。

出典元の要点(要約)

日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

十分な量の生理食塩水や蒸留水、水道水を用い、原因物質を洗い流すことが重要で、これらの洗浄液の違いによる感染率や治癒率に差はない。

「冷たい!」は治癒の大敵?温度管理の重要性

洗浄液の温度が低すぎる血管収縮を起こし、創傷治癒を遅らせる可能性があります。
そのため体温程度に温めて洗浄することが望ましいとされています。
一方で高温すぎる洗浄液望ましくありません

ポイントは「洗浄液の種類」だけでなく、「十分な量」「体温程度の温度」です。

出典元の要点(要約)

日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

洗浄液の温度が低いと血管収縮を起こし、創傷治癒を遅らせる可能性があるため、体温程度に温めて洗浄することが望ましい。

生理食塩水や特別な消毒薬がなくても、身近にある「水道水」と「適温のシャワー」が最強のケア用品になります。細菌を溜め込まず、血流を妨げないケアこそが、エビデンスに基づいた正しい選択です。

広告

現場の迷いを解消するFAQ

「教科書ではこう習ったけど、実際の現場ではどうなの?」
そんな疑問や、家族への説明に困るポイントについて、ガイドライン(エビデンス)に基づいて回答します。
根拠を知ることで、自信を持ってケアに当たれるよう整理しましょう。

Q
家族に「傷があるからお風呂はやめて」と言われたらどうすればいいですか?
A
感染予防のためには、むしろ洗い流すことが重要だと伝えましょう。溜めたお湯(足浴)は感染拡大のリスクがありますが、常に新しいお湯を使うシャワー浴の方が、患部の予後が良いという報告があります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省

重篤副作用疾患別対応マニュアル「出血傾向」

https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1f09.pdf

糖尿病や末梢動脈疾患に伴う下肢潰瘍での検討では、足浴よりもシャワー浴を行った方が患肢の予後がよいという報告がなされており、足浴では感染を拡大させる可能性が指摘されている。

Q
生理食塩水ではなく、水道水で洗っても本当に大丈夫ですか?
A
はい、問題ありません。水道水を使用しても、生理食塩水と比べて感染率や治癒率に差はないことが確認されています。大切なのは水の種類よりも、十分な量で汚れや細菌を物理的に洗い流すことです。
出典元の要点(要約)
日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

十分な量の生理食塩水や蒸留水、水道水を用い、原因物質を洗い流すことが重要で、これらの洗浄液の違いによる感染率や治癒率に差はない。

Q
洗うと痛がるので、冷たい水でサッと流してもいいですか?
A
冷たい水は避けてください。洗浄液の温度が低いと血管が収縮し、傷の治りが遅くなる可能性があります。体温程度に温めることで痛みが和らぐという報告もあるため、温度管理を工夫してみてください。
出典元の要点(要約)
日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

洗浄液の温度が低いと血管収縮を起こし、創傷治癒を遅らせる可能性があるため、体温程度に温めて洗浄することが望ましい。

日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

生理食塩水の温度については、室温よりも体温程度に温めることで有意に疼痛が緩和される。

Q
洗った後は、イソジンなどで念入りに消毒した方がいいですか?
A
必ずしも消毒は必要ありません。多くの消毒薬には細胞毒性があり、傷を治そうとする細胞まで傷つけてしまうリスクがあります。消毒よりも、水道水等で原因物質を洗い流すことがケアの基本となります。
出典元の要点(要約)
日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

消毒薬(ポビドンヨード、過酸化水素など)は、細胞毒性を有するため、創傷治癒を遅らせる可能性がある。

現場での「迷い」は、利用者さんを守りたいという責任感の裏返しです。すべてのケースに当てはまるわけではありませんが、「流水で洗う」「温める」という基本を押さえるだけで、より安全で安楽なケアにつながります。


まとめ:感染リスクを減らす「洗うケア」へ

傷がある利用者への入浴介助は、悪化への不安や家族への配慮から、判断に迷うことが多い業務です。 しかし、最新のガイドラインに基づけば、「傷は濡らさない」よりも「流水で洗い流す」ことが、最も理にかなった感染対策となります。

バケツにお湯を溜める「足浴」は手軽ですが、見えない細菌を広げてしまうリスクがあります。 一方で、常に新しいお湯を使うシャワー浴は、細菌や汚れを物理的に排除し、傷の治癒を助ける環境を整えます。 水道水は生理食塩水と同等の安全性があり、特別な準備がなくても、量と温度(体温程度)さえ意識すれば、それが最高のケアになります。

いきなり全ての対応を変えるのは難しいかもしれません。 まずは、足浴の代わりに「浴室で足だけシャワーをかける」ことから始めてみてはいかがでしょうか。 「洗うこと」への罪悪感を捨て、「治すためのケアをしている」という自信を持って、日々の業務にあたっていただければと思います。

最後までご覧いただきありがとうございます。この記事が、明日の現場での判断の一助となれば幸いです。


関連記事


更新履歴

  • 2026年1月22日:新規投稿

タイトルとURLをコピーしました