「トイレに行きませんか」はNGワード!尊厳を守り失敗を減らす排泄介助の環境調整とタイミング

「さっき聞いた時は行かないと言ったのに…」「トイレと言うだけで怒鳴られる」。現場では、こうした拒否や失禁への対応に苦慮する声が聞かれます。

本人のペースに合わせるべきと分かっていても、業務に追われる中では、つい「早く行って」と焦ってしまうのが現実ではないでしょうか。

しかし、認知症の方にも羞恥心はあります。この記事では、現場の限界を踏まえ、「全部は無理でもここだけは」という環境調整とタイミングの工夫を解説します。

この記事を読むと分かること

  • 排泄介助における拒否の心理的背景を理解できます
  • 尊厳を守るための具体的な声かけや誘導の工夫が分かります
  • 失敗を減らすための環境調整とタイミングの見極め方を学べます
  • 現場の負担を減らすための優先順位の付け方が分かります

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • トイレ誘導の声かけで断られることが多く、少し困っている
  • つい大きな声で誘導してしまうことに心当たりがある
  • 排泄のリズムが掴めず、誘導が空振りすることに悩んでいる
  • 忙しくて一人ひとりに時間をかけるのが難しいと感じている
  • 利用者の尊厳を守りたいが、具体的な方法に迷っている

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プロが守るべき「たった一つの鉄則」

「トイレ行こう」と声をかけただけで怒鳴られる、人が足りないのに「個別のケア」なんて無理…。現場では、こうした悲痛な叫びが溢れています。「尊厳を守る」という言葉も、戦場のような日々の中では綺麗事に聞こえるかもしれません。それでも、プロとしてここだけは押さえておきたい原則があります。

「身体的ケア」と「心理的ケア」はセットである

エビデンスでは、ケアにおいて絶対にやってはいけないこととして、「身体的ケア(清潔保持・栄養摂取・排泄)」と「心理的ケア(快感情・安心)」の2つの目的を同時に達成できない介護を挙げています 。

例えば、漏れてしまうからといって、嫌がる利用者を無理やりトイレに座らせたとします。これで「排泄(身体的ケア)」は成功するかもしれませんが、本人が恐怖や屈辱を感じていれば「安心(心理的ケア)」は達成されていません。片方しか満たせないケアは、プロとして行うべきではないという強い指針があります。

出典元の要点(要約)
認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

本文は「認知症における入浴介護で絶対にしてはいけない事について説明します」とし、入浴の2つの目的のうち「いずれか一方だけ達成し、もう一方は達成しないことです。これは非常に危険ですのでやめてください」と警告する。具体例として「高齢者の気持ちを無視し、何がなんでも無理矢理入浴、洗髪等をさせる場合」や、反対に「高齢者の気持ちや要求を聞きすぎて、全く入浴等をしない場合」を挙げ、「2つの目的を同時に達成できない介護は、絶対にやめるべきでしょう」とまとめている。

その怒りや拒否は「作られた」ものかもしれない

認知症の方の怒りや拒否(BPSD:行動・心理症状)は、本人の性格や病気だけが原因ではありません。ガイドラインなどでは、本人の「不安・不快」といった感情と、介護者側の「不適切なケア(焦り・説得)」が相互に反応し合って「作られた」ものであるという視点が示されています。

こちらの「早くしてほしい」という焦りや、「さっきも言ったでしょう」というイライラは、敏感に伝わります。それが利用者の不安を増幅させ、さらなる拒否を生むという悪循環に陥ってしまいます。

出典元の要点(要約)
厚生労働省

認知症ケア法-認知症の理解

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

繰り返し怒鳴られる経験を通じて、認知症の人にとって介護者は「困っているときに、 怒鳴る怖い人」として認識され、「介護への抵抗」につながる様子が描かれている。このような関わりは「作られた BPSD(行動・心理状態)-介護は相互に反応しあう過程」として位置づけられ、「不快」「不安」「ストレス」といった感情の悪循環と「不適切なケア」が「人間関係を 壊していきます・・・」と示されている。介護者と認知症の人の相互作用がBPSDを「作られた」ものとして悪化させうることが明示されている。

「説得」するのではなく「環境」を整える

「イヤ!」と言わせないためには、本人を言葉で説得しようとするのではなく、本人が「快感情(心地よさ)」を感じられる環境や関係性を整えることが近道です。

国のガイドラインでは、信頼関係があり安心感が持てる介護者が声かけや誘導をすることが重要だと示しています。

  • 信頼関係のあるスタッフが対応する
  • トイレを明るく、温かくする
  • 周囲に聞こえないように配慮する

このように、まずは環境を整えることから始めてみましょう。

出典元の要点(要約)
厚生労働省

認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf

意思決定支援は、 意思決定支援者の態度や意思決定支援者との信頼関係、 立ち会う人との関係性や環境による影響を受けることから、意思決定支援に当たっては留意が必要とされる。意思決定支援者 は、本人の意思を尊重する態度で接していることが必要であり、本人が自らの意思を表明しやすいよう、本人が安心できるような態度で接することが必要である。

理想通りにいかない日もあるでしょう。しかし、「身体ケア」と「心の安心」はセットだという視点を持つだけで、声かけのトーンは変わります。まずは焦らず、深呼吸してから向き合ってみませんか。


現場でよくある「すれ違い」と「成功のヒント」

高齢者男性

「何度言っても失敗される」「着替えさせようとすると暴れる」。現場では、こうしたすれ違いが日常茶飯事です。しかし、その拒否は「性格」ではなく、アプローチの「ズレ」が原因かもしれません。よくある失敗例と、プロが実践する成功パターンを対比して見ていきましょう。

ケース1:「トイレに行きましょう」と誘って怒られる

忙しいとつい、リビングの端から「〇〇さん、そろそろトイレ行きませんか?」と大きな声で呼んでしまうことはありませんか。これは利用者にとって「排泄の話を皆に聞かれる」という屈辱的な体験になりかねません。

プロは、周囲に気づかれないようこっそりと誘います。本人のそばに行き、耳元でささやいたり、目配せをしたりして合図を送ります。言葉を使わず、「ちょっとあっちへ」と手招きするだけでも伝わることがあります。

出典元の要点(要約)
認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

資料では、「トイレに誘導しようとする時、いくら優しく丁寧でも『トイレに行きませんか?』と周りの人にも聞こえるような声掛けは望ましくありません」と明記されています。声を掛けられた方は周りの人がどう思ったのか気になり、嫌な思いをするとその後のケアにも支障をきたすため、声の大きさを加減したり、他の人との距離を保ったりする配慮が必要であるとしています。

ケース2:汚れた下着を隠そうとして抵抗する

失禁してしまった時、「濡れてますよ、替えましょう」と正論を伝えても、「濡れてない!」と怒り出してしまうことがあります。これは認知機能の低下ではなく、「失敗を知られたくない」という強い羞恥心の表れです。

このような時は、「トイレ」や「失敗」という言葉を使わないのが鉄則です。「汗をかいたので着替えましょう」「ズボンを整えさせてください」と、別の目的を伝えて誘導します。汚れたものは、中身が見えない袋などを使い、本人の目の前から素早く、さりげなく片付けます。

出典元の要点(要約)
認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

「汚れてしまって恥ずかしい、周りの人に知られたくないと感じて拒否する場合もあります」とし、そのような時は「トイレに行くことが目的ではなく、着替えを勧めるなどお部屋に行く事を目的とした声掛けをしてみることも良い方法」と提案しています。また、汚れた物は「本人の羞恥心を軽減できるように、すばやく片付ける配慮が必要」であり、ランドリーバッグなどを活用する工夫が示されています。

ケース3:タイミングが合わず「空振り」する

「さっき聞いた時は行かないって言ったのに、直後に失禁されていた」。これは介護士あるあるですが、認知症の方は尿意を正しく認識・表現できないことがあります。本人の「行かない」という言葉だけを頼りにするのはリスクがあります。

効果的なのは、「排泄リズム」の記録と活用です。24時間の排泄状況を記録し、「この方は食後30分で排便がある」「起床時に尿量が多い」といったパターンを把握します。そのタイミングに合わせて誘導することで、空振りを減らし、成功率を高めることができます。

出典元の要点(要約)
認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

「排泄ケアを行う時には、記録の活用が欠かせません」と強調し、24時間の中でのおおまかなタイミングをつかむ必要があるとしています。そのタイミングをスタッフで共有したうえで本人が行く気になるような声掛けの工夫をすることで、尿意・便意がない方でも適切に誘導でき、失禁を劇的に減らせる可能性があると示されています。

拒否された時、つい「どうして分かってくれないの」と思ってしまいますが、実はアプローチの方法がその人の「ボタン」と掛け違っていただけかもしれません。タイミングや誘い方を変えるだけで、嘘のようにスムーズにいくこともあります。まずは一つ、試してみてください。


なぜ、「説得」や「正論」は通用しないのか

女性の介護職員の画像

「着替えないと風邪をひきますよ」「汚れたままでは皮膚がただれますよ」。私たちはつい、正論で説得しようとしてしまいます。しかし、認知症の方にはその理屈が届かないことが多々あります。それは「わがまま」ではなく、脳の機能変化による「受け止め方」の違いが原因です。

事実は消えても「感情」は残るから

認知症の特性として、「出来事(事実)は忘れても、その時に感じた感情(快・不快)は長く残る」という点があります。

例えば、強い口調でトイレに誘導されたとします。「トイレに行った」という事実は忘れても、「この人に怒られた」「怖い思いをした」という不快な感情だけが記憶に刻まれます。その結果、次にあなたの顔を見ただけで「この人は嫌だ」と拒否反応を示してしまうのです。逆に、笑顔で接してくれた人には安心感を抱き続けます。

出典元の要点(要約)
厚生労働省

認知症ケア法-認知症の理解

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

資料では、叱責や疑いの言葉を浴びることで、認知症の人が「自責」に陥り、「抑うつ」「無気力」「自信の喪失」を経験し、「プライドが傷つく」過程が図解されており、言葉かけの影響が感情や自己評価に直結することが強く示されています。また、認知症の人にとっては、接し方自体が状態の安定や向上に向けた重要なケアとなると強調されています。

言葉の意味よりも「感覚」が優先されるから

認知機能が低下すると、長い説明や論理的な言葉を理解するのが難しくなります。「ズボンを下ろしますね」という言葉の意味が理解できる前に、急に肌に触れられたり、服を引っ張られたりすると、それは「ケア」ではなく「攻撃」として認識されてしまいます。

また、便座が冷たい、照明が暗くて怖いといった「身体的な不快感」や「環境への恐怖」は、言葉による説明よりもはるかに強く行動を支配します。理屈よりも、まずは「肌触り」や「温度」などの感覚的な不快感を取り除くことが先決です。

出典元の要点(要約)
認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

「言葉をかけないうちに手を引いてしまったり、ズボンを下ろしてしまったり」という関わりは、相手に「恐怖心を抱いてしまう」場合があると指摘されています。また、「便座が冷たい事も座ることを嫌がる原因」にもなるとされ、身体的な感覚への配慮も重要なポイントとして示されています。

その拒否は、本人なりの「SOS」だから

「イヤ!」という拒否や抵抗は、単なる反抗ではありません。そこには必ず理由があります。「お腹が痛い(便秘)」「場所がわからなくて不安」「失敗して恥ずかしい」といった、言葉にできない苦痛や不安を、態度で訴えている(SOSを出している)状態なのです。

ガイドライン等では、こうした行動・心理症状(BPSD)を、本人の性格や病気のせいだけにするのではなく、環境やケアとの相互作用で「作られたもの」として捉える視点が重要だとしています。拒否は「困った行動」ではなく、「困っているサイン」なのです。

出典元の要点(要約)
厚生労働省

認知症ケア法-認知症の理解

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

認知症の人は「排泄の誘導を嫌がる」ことがあり、その理由として「服の着脱がわからない等の不安やその他の疾患の有無、もともと排泄が嫌いなど、様々な理由」が考えられるとしています。言葉に出せなかったとしても、スタッフがその方の視点を持ってあらゆる可能性を考えることが大切であると述べられています。

「分かってくれない」と嘆く前に、「伝え方が合っていないのかもしれない」「何か別の理由があるのかもしれない」と視点を変えてみましょう。それだけで、張り詰めた空気が少し緩むはずです。


よくある質問(FAQ)

女性の介護職員の画像

現場では、マニュアル通りにいかないことの連続です。「こんな時はどうすれば?」というよくある悩みについて、現場の現実に即した解決のヒントをまとめました。

Q
時間がない時、つい急かしてしまいます。どうすればいいですか?
A

急ぐほど、かえって時間がかかります。一呼吸おいてみましょう。

業務に追われていると、こちらの「早くしてほしい」という焦りが無意識に態度に出てしまうものです。しかし、認知症の方はその空気を敏感に察知し、不安になって余計に動けなくなったり、抵抗したりすることがあります。

結果的に説得に時間がかかってしまうため、急いでいる時こそ、一呼吸おいて「ゆっくり」対応することが、かえって近道になります。

出典元の要点(要約)

認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

資料では、「介護者の都合で、今交換したい、と思えば思うほど、本人はその焦りを感じて不快感情を持つことがあります」と指摘しています。焦りが伝わって頑なになってしまう時こそ、「ゆっくりと対応することが、かえって近道になります」と述べられています。

Q
排泄の失敗を隠そうとして、着替えさせてくれません。
A

「失敗」を指摘せず、羞恥心に配慮してさりげなく対応しましょう。

汚れた下着を見られることは、誰にとっても恥ずかしいものです。隠そうとするのは、認知機能の低下ではなく、羞恥心が残っている証拠です。

「漏れてますよ」と失敗を指摘せず、「汗をかいたので着替えましょう」と別の目的で誘導したり、汚れたものは中身が見えない袋を使って素早く片付けるなど、プライドを守る配慮が必要です。

出典元の要点(要約)

認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

「排泄時に粗相をして衣類を汚してしまった場合は、介助者に見られたり、片付けられたりすることを恥ずかしいと思うものです」と述べ、汚れた物は「本人の羞恥心を軽減できるように、すばやく片付ける配慮が必要」としています。また、拒否がある場合は「トイレに行くことが目的ではなく、着替えを勧めるなどお部屋に行く事を目的とした声掛け」も有効な方法であるとしています。

Q
トイレ以外の場所で用を足してしまうことがあります。どうすればいいですか?
A

「撤去」するのではなく、環境を「付け加える」工夫をしてみましょう。

部屋の隅やゴミ箱などで放尿してしまう場合、そこがトイレに見えてしまっているか、トイレの場所がわからなくなっている可能性があります。

対象物を片っ端から撤去するのではなく、トイレの場所がわかるような目印(貼り紙やのれん)をつけたり、目につきやすい場所にポータブルトイレを置くなど、正解にたどり着きやすくする環境調整が有効です。

出典元の要点(要約)

認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

「放尿の対象になるものを撤去するという方法」が行き過ぎると無機質な空間になると指摘し、「できる限り、撤去ではなく何かをちょっと付け加える対策」を推奨しています。具体的には、歩いている途中にトイレが見つけられるような表札や目印をつける、目につきやすいところにポータブルトイレを設置するといった工夫が示されています。

「またうまくいかなかった」と落ち込む必要はありません。今日うまくいかなくても、明日はタイミングが合うかもしれません。チームで情報を共有しながら、その人に合う「正解」を少しずつ見つけていきましょう。


まとめ:声かけ一つで、その人の「尊厳」は守れる

毎日必死にケアをしているのに、怒鳴られたり拒否されたりすると、どうしても心が折れそうになります。「自分のやり方が悪いのか」と責めてしまうこともあるでしょう。しかし、完璧なケアを目指して自分を追い込む必要はありません。まずは、視点を少し変えることから始めてみませんか。

「説得」よりも「納得」できる環境を

排泄ケアで最も大切なのは、「トイレに行かせよう」と言葉で説得するのではなく、本人が「行こうかな」と思える環境や関係性を作ることです。

「トイレ」という言葉に抵抗があるなら「便所」と言い換える、あるいは何も言わずに誘導する。場所がわからないなら目印をつける。こうした環境調整こそが、言葉よりも雄弁に本人を動かす「最強の声かけ」になります。

出典元の要点(要約)
認知症介護研究・研修仙台センター

初めての認知症介護 食事・入浴・排泄編 解説集

https://www.dcnet.gr.jp/pdf/download/support/research/center3/35/35.pdf

資料では、「本人の過ごしてきた環境や認知力の程度を確認しながら物の配置や表示、形状などを考えましょう」とし、自宅の環境や習慣に近づける工夫を提案しています。また、「なじみの言葉で話しかけることで、トイレの場所や意味が理解しやすくなります」と述べ、言葉選びや環境設定が本人の理解と行動を助ける重要な鍵であるとしています。

「拒否」はあなたへの攻撃ではない

利用者の「イヤ!」という拒否は、あなた個人への攻撃ではありません。それは「恥ずかしい」「怖い」「やり方が合わない」という、本人なりのSOSのサインです。

その背景にある感情に目を向けることができれば、「どうしてわかってくれないの」というイライラは、「何か理由があるはずだ」という探求心に変わります。拒否された時は、一度引いて、その理由を想像する余裕を持ってみてください。

出典元の要点(要約)
厚生労働省

認知症ケア法-認知症の理解

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf

「認知症の人にとっては、接し方自体が状態の安定や向上に向けた重要なケアとなる」と強調されています。また、不適切なケアが「知らずしらずのうちに、人間関係を壊していきます」と警告し、拒否や抵抗(BPSD)はケアとの相互作用で生じるものであるという視点を持つよう促しています。

チームで「その人の正解」を見つける

認知症の方のケアに、たった一つの正解はありません。日によって気分も変われば、受け入れられるスタッフも変わります。

「あの人ならうまくいくのに」と落ち込むのではなく、「どんな時にうまくいったか」をチームで共有しましょう。一人で抱え込まず、チーム全体でその人の「快感情」のツボを探していくことが、結果として全員の負担を減らすことにつながります。

出典元の要点(要約)
厚生労働省

認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf

意思決定支援にあたっては、本人の意思を踏まえて、家族や関係者がチームとなって日常的に見守り、本人の意思や状況を継続的に把握し必要な支援を行う体制(意思決定支援チーム)が必要であるとしています。チームで情報を共有し、多角的に検討することが求められます 。

全部を一度に変える必要はありません。「今日は声をかける前に一呼吸置いてみよう」「トイレの電気を明るくしてみよう」。そんな小さな工夫の積み重ねが、利用者の安心感となり、いつか「ありがとう」の笑顔になって返ってくるはずです。



更新履歴

  • 2025年11月30日:新規投稿

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