レク中の落ち着かなさ、その「見立て」の正解
レク中に立ち歩く利用者を前に、「座ってほしい」と焦る。でも心の中では、寄り添えない自分に自己経験。人員不足の現場では、理想と現実のギャップに悩む方が多いです。
全部を完璧にするのは無理です。まずは転倒への恐怖を、少しだけ手放しましょう。エビデンスから導き出した、現実的な見立て方を伝えます。
この記事を読むと分かること
- 落ち着かない理由の特定法
- 環境調整による解決法
- 尊厳を守る具体的声かけ
- 現場の負担を減らす視点
一つでも当てはまったら、この記事が役に立つ可能性があります
結論:レク中に落ち着かなくなる理由は「性格」ではなく「SOS」。環境と身体から見立てる

現場では「本人のペースに合わせるのが理想だと分かっているけれど、限られたスタッフ数で事故を防ぐためには、とにかく座っていてほしい」という葛藤がしばしばあります。
転倒リスクや他の利用者様への影響を考えると、つい強い口調で制止してしまい、後から「またやってしまった」と自己嫌悪に陥ることも少なくありません。
しかし、レクを予定通り進めることよりも、まずは落ち着かない行動の裏にあるSOSに気づくことが、見立ての第一歩になります。
レク中の「徘徊」や「イライラ」は周囲の環境への反応
現場では、レク中に立ち歩く行動を「認知症」と捉えてしまいがちです。
しかし、これらは病気による症状であり、ご本人が置かれている状況に対する反応として現れます。具体的には、以下のような症状として表れることが知られています。
| 症状の種類 | 具体的な現れ方 |
|---|---|
| 徘徊 | 席を立ち、歩き回るなど |
| 不安・うつ | 疑い深くなる、不安になる |
| 易怒性 | イライラ怒りっぽくなる |
無理に座らせようとする私たちの焦りや、フロアの騒がしさが、ご本人の不安をさらに煽っている可能性があります。
「レクに参加してほしい」という思いから来る言葉が、かえって症状を引き出すきっかけになっていないか、立ち止まって考えることが必要です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
本人を取り巻く環境や性格、家族のかかわり方に対する反応として現れる症状には「疑い深くなる」「不安・うつ状態」「徘徊」「イライラ怒りっぽく、攻撃的になる」「昼夜が逆転する(夜間に動き回る)」「自分から何かをしようとしなくなる」などがある。
「性格のせい」と片付けず、関わり方を見直すサインと捉える
「あの人はいつもレクに参加しない」と、本人の性格の問題にしてしまうのは簡単です。
ですが、これらは症状は、ご本人が持つ元々の性格だけでなく、私たちスタッフのかかわり方に対する反応としても現れるものです。
落ち着かない行動が見られたときは、以下の要因が影響していないかを見直します。
- 本人を取り巻く環境が不安を与えていないか
- スタッフの焦った声かけが負担になっていないか
- ご本人の性格に合わない対応をしていないか
「予定通りに進めなければ」という私たちの都合を手放し、まずは自分たちの関わり方が負担になっていないかを見直すことが必要です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
本人を取り巻く環境や性格、家族のかかわり方に対する反応として現れる症状には「疑い深くなる」「不安・うつ状態」「徘徊」「イライラ怒りっぽく、攻撃的になる」「昼夜が逆転する(夜間に動き回る)」「自分から何かをしようとしなくなる」などがある。
レク中の落ち着かない行動は、わがままや性格のせいではなく、環境や私たちの関わり方に対する「SOS」のサインです。無理に座らせようとするのをやめ、まずは環境や声かけを見直すことから始めてみましょう。
「うちの現場と同じだ」レクで落ち着かなくなる典型的な3つの場面

現場では「全員に楽しんでもらいたい」という建前があっても、実際の人員配置では一人ひとりに付きっきりで寄り添う余裕はありません。
レク中にイレギュラーな行動が起きると、他の利用者様への対応もあり、頭が真っ白になってパニックになりがちです。
ここでは、現場でよく遭遇する3つの場面を取り上げ、どのような背景があるのかを構造的に整理します。
突然席を立ち、フロアを歩き回る(徘徊)
| 状況 | レクの途中で急にそわそわし始め、席を立って歩き回る。 |
| 困りごと | 転倒の危険があり、進行と見守りの間で焦る。 |
| 誤解 | 「落ち着きがない」「わがままな性格だ」と捉える。 |
| 視点 | 性格ではなく、病気に伴う陽性症状としての徘徊。 |
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
周辺症状は陰性症状(無気力、無関心、無言、うつ状態)と陽性症状(暴力、暴言、徘徊、独語、妄想、幻覚、過食、不眠)に分けられ、その割合は陰性症状が10%、陽性症状が90%とされる。
声かけに対して急に怒り出し、大声をあげる(易怒性)
| 状況 | 参加を促したり説明をしたりすると、急に怒鳴り出す。 |
| 困りごと | 場の空気が凍り、スタッフも恐怖や徒労感を感じる。 |
| 誤解 | 「感情のコントロールが効かない人だ」と諦める。 |
| 視点 | 些細な注意が引き金になる易怒性という症状。 |
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
「怒りっぽい(易怒性)」では、些細なことですすぐに怒る、以前はおとなしい性格だったがこのごろ怒りっぽい、ちょっと注意するとものすごい剣幕で怒るといった状態が見られる。
誘っても全く参加しようとせず、うとうとしている(意欲の減退)
| 状況 | 無反応でうとうとしたり、ぼーっとしたりしている。 |
| 困りごと | 「楽しんでくれていない」と盛り上げ役に疲弊する。 |
| 誤解 | 「自分の企画がつまらないせいだ」と思い込む。 |
| 視点 | 自発性の低下や意欲の減退という病気の変化。 |
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
「自発性の低下、意欲の減退」では、長年慣れ親しんだ趣味やお稽古事に関心がなくなる、一日中テレビを眺めている、新聞やテレビを見なくなる、家でうとうとしていることが多い、外出しなくなる、親しい友人との付き合いをしなくなるなどの変化が現れる。
レク中に起こる「困った」行動を、個人のわがままや性格と捉えると、私たちの心は疲弊してしまいます。徘徊や怒りは病気がもたらす周辺症状であり、ご本人からの切実なメッセージ(SOS)です。行動そのものを力ずくで変えようとするのではなく、背景にある「病気」を冷静に見つめることで、あなた自身の焦りも少しずつ和らいでいくはずです。
なぜレク中に落ち着かなくなるのか?「性格」では片付かない3つの構造的原因

現場では「レクの時間はに皆で穏やかに過ごしてほしい」という建前がありますが、実際にはスタッフの数が足りず、一人ひとりにゆっくり寄り添う余裕はありません。
「危ないから座ってて!」と、ついイライラしてしまうことも多いはずです。しかし、利用者様が落ち着かなくなるのには、単なる性格や気まぐれではなく、病気や環境が関係している可能性があります。
記憶や見当識の障害による「今ここがどこか分からない」恐怖
レクの時間はみんなで楽しむのが建前ですが、現実はルールや状況を理解できず、ただ苦痛な時間に耐えている方もいます。これは、病気による中核症状が原因と考えられます。
| 障害の種類 | 現場で起きていること |
|---|---|
| 記憶障害 | さっきの説明を忘れ、何をしていいか分からなくなる |
| 見当識障害 | なぜ今ここに座らされているのか状況が把握できない |
取り残された不安から、席を立つことがあります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
中核症状には記憶障害、失語・失行・失認、実行機能障害、見当識障害が含まれる。
現場の騒がしさやスタッフの焦りが引き出す「不安とイライラ」
「穏やかに接する」のが理想であっても、現実は業務に追われ、スタッフの余裕のない声や足音が響いています。実は、こうした周囲の環境が症状を誘発することがあります。
| 不安の引き金 | 具体的な環境刺激 |
|---|---|
| スタッフの声 | 「座って!」という焦った声かけ、命令口調 |
| フロアの音 | 他の人の大きな声、テレビの音、忙しない足音 |
私たちの余裕のなさも影響している可能性があります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
本人を取り巻く環境や性格、家族のかかわり方に対する反応として現れる症状には「疑い深くなる」「不安・うつ状態」「徘徊」「イライラ怒りっぽく、攻撃的になる」「昼夜が逆転する(夜間に動き回る)」「自分から何かをしようとしなくなる」などがある。
言葉にできない「やりたくない」「休みたい」という意思表明
現実はレクの進行を優先し、「席を立つ=問題行動」としてしまいがちですが、その行動の裏にはご本人の意思があると考えられます。
| 行動の真意 | 背景にある意思 |
|---|---|
| 席を立つ | 「今はやりたくない」「疲れたから休みたい」 |
| 拒否する | 「みんなと同じことを強制されたくない」 |
立ち上がる行動を単なる徘徊と決めつけず、ご本人の意思を汲み取る姿勢が求められます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
本ガイドラインは、認知症の人が自らの意思に基づいた日常生活・社会生活を送れることを目指し、意思決定に関わる人が本人の意思を丁寧に汲み取るための標準的なプロセスや留意点、基本的考え方(理念)、姿勢、方法、配慮すべき事柄を整理して示したものである。
レク中の迷いや戸惑いは、決して介護技術の優劣や企画の良し悪しの問題ではありません。背景にある病気の症状や不快な環境を見通す視点を持つことで、現場の焦りは冷静な「見立て」へと変わります。自分を責める前に、まずは「今、この方はどのようなSOSを出しているのか」を客観的に捉えることが、あなた自身の心を守り、現場の負担を減らすための確実な一歩となります。
「無理に座らせてもいいの?」レク中の迷いに答えるQ&A
現場で瞬時に判断を求められるとき、正解が分からず不安になるのは当然です。エビデンスに基づいた回答を整理しました。
- Qレク中に立ち上がる方を、転倒防止のために「座ってください」と強く制止しても良いのでしょうか?
- A無理に制止するのではなく、まずは環境調整を図ることが重要とされています。まずは転倒リスクを把握した上で、症状緩和のための環境調整を優先してみましょう。
出典元の要点(要約)
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症・せん妄ケアマニュアル 第 2 版
https://www.ncgg.go.jp/病院/iryokankei/documents/nintishomanual2025.pdf
神経心理学的検査から心理学的症候を捉え,身体機能評価からは転倒リスクを把握し,BPSD の評価からは症状緩和のための環境調整を行う。
- Qレクへの参加を促しただけで激怒されてしまい、対応が怖いです。どう接するべきですか?
- A些細なことで怒るのは、病気による易怒性(怒りっぽい)の可能性があります。「自分の対応が悪かった」とご自身を責めるのではなく、「病気の症状が出ている」と捉える視点があります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
「怒りっぽい(易怒性)」では、些細なことですすぐに怒る、以前はおとなしい性格だったがこのごろ怒りっぽい、ちょっと注意するとものすごい剣幕で怒るといった状態が見られる。
- Q昔は社交的だったのに、レクに誘っても無関心です。私たちの企画がつまらないのでしょうか?
- A必ずしも企画のせいとは限りません。意欲の減退や無関心は、病気による自発性の低下や意欲の減退という症状として現れる変化です。まずはご本人の状態を捉えることが大切です。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
認知症ケア法ー認知症の理解
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
「自発性の低下、意欲の減退」では、長年慣れ親しんだ趣味やお稽古事に関心がなくなる、一日中テレビを眺めている、新聞やテレビを見なくなる、家でうとうとしていることが多い、外出しなくなる、親しい友人との付き合いをしなくなるなどの変化が現れる。
日々のレクで生じる「どうして?」という迷いは、病気の症状や環境への反応を知ることで、理解につながる部分があります。自分や企画を責める前に、まずは客観的な視点を持ってみましょう。それが、現場の負担を減らす第一歩になります。
まとめ:完璧なレクより、あなたの「一瞬の余裕」が利用者様の安心に繋がる
レク中に立ち上がる利用者様を前に、「転ばせたらどうしよう」「進行を止めちゃいけない」と焦る気持ちは、現場を守るプロとして当然の反応です。ですが、その焦りこそが、ご本人の不安を映し出す鏡になっているかもしれません。建前通りの完璧なケアは、人員が限られた今の現場では難しいのが現実です。
まずは「座らせなきゃ」という手を、ほんの数秒だけ止めてみませんか。その「間」に、ご本人の周囲にある騒がしい音や、スタッフの足音に意識を向けてみる。あるいは「最後のお通じはいつだったかな」と、言葉にならない身体のSOSを疑ってみる。その小さな視点の変化こそが、エビデンスに基づく見立ての始まりです。
全部を解決しようとせず、まずは「なぜ?」と立ち止まる自分を認めてあげてください。その積み重ねが、利用者様の尊厳を守り、あなた自身の負担の軽減につながっていきます。
最後までご覧いただき、本当にありがとうございます。この記事が、日々奮闘するあなたの現場で、少しでもお役に立てれば幸いです。
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更新履歴
- 2025年12月3日:新規投稿
- 2026年3月10日:より詳細なエビデンス(根拠)に基づき解説を充実させるとともに、最新のサイト基準に合わせて構成・レイアウトを見やすく刷新。







