夜勤中の「判断」に迷うあなたへ
夜勤中、利用者の様子がいつもと違う。「今すぐ医師に連絡すべきか、朝まで様子を見るべきか」。マニュアルには「急変時は連絡」とあっても、その判断の境界線で受話器を握りしめ迷った経験はないでしょうか。
特養の約3割が救急搬送の判断に困っているというデータがあります。現場が抱える迷いは、あなたの経験不足だけではなく、今の仕組みが生む構造的な課題とも言えます。完璧な正解は出せなくても、現場スタッフを守るための現実的な備えを確認していきましょう。
この記事を読むと分かること
- 特養の3割が直面する「判断の壁」の実態
- 迷いの原因として「医学」以外の要因も挙げられています
- 夜間・休日の医師不在時に身を守る確認事項
- 家族の意向変化に慌てないための準備
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
結論:迷いの正体は「スキル不足」ではなく「仕組みの限界」とも言えます

現場では「何かあったらすぐに連絡して」と言われますが、真夜中に医師や管理者を起こすことへの心理的なハードルは高いものです。
「もし大したことなかったら怒られるかも」「迷いの正体は「スキル不足」ではなく「仕組みの限界」とも言えます」。この板挟みが、現場スタッフを苦しめる要因の一つではないでしょうか。
マニュアル完備でも「3割」が判断に迷っている
「迷うのは自分の勉強不足だ」と責める必要はありません。厚生労働省の調査によると、特別養護老人ホームなどの施設では8割以上で急変時対応マニュアルが整備されています。
しかし、それでも現場職員の約3割が救急要請の判断に困った経験を持っています。訪問看護ステーションに至っては、約4割が判断に苦慮しています。
つまり、マニュアルがあることと、現場で迷わずに判断できることは別問題と言えます。書面にできない「現場の空気」や「個別の事情」が、判断を難しくしていると考えられます。
出典元の要点(要約)
厚生労働省自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf
特別養護老人ホームの86.4%でマニュアルが整備されているが、29.3%が救急要請の判断に困った経験がある。訪問看護ステーションでは41.5%が判断に困っている。
「医学的判断」以外の理由が現場を追い詰める
救急車を呼ぶかどうかは、利用者の病状だけで決まるわけではありません。現場の大きな悩みの一つに、移動手段の欠如があります。
「受診は必要だが、今すぐ救急車を呼ぶほどではない」。そう判断しても、家族が遠方で来られなかったり、早朝・深夜で介護タクシーがつかまらなかったりする場合、現場は手段が限られます。
結果として、移動手段確保のために救急要請をすべきか迷う事例が報告されています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf
判断に困る理由として「緊急性は低いが受診が必要な場合に、家族等による送迎や介護タクシー等の移動手段が確保できないため救急車を要請すべきか迷う」等の事例が報告されている。
医師と「連絡がつかない」夜間の恐怖
マニュアルに「主治医に連絡」とあっても、実際には夜間や休日で連絡がつかないケースが報告されています。
頼れる専門職が不在の中、介護職だけで「待つか、運ぶか」の決断を迫られるプレッシャーは大きいと考えられます。
調査でも、判断に迷う要因として「医師・看護師等への連絡困難」が挙げられています。これは個人の努力だけで解決できる問題ではなく、組織として連絡体制に課題がある可能性があると言えるでしょう。
出典元の要点(要約)
厚生労働省自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf
判断に迷う・困る要因として「連携医・協力医、主治医、看護職員と連絡がつかない」が挙げられている。
解決の鍵は「消防本部」との平時の握り
消防本部との事前の取り決めを行っている施設もあります。しかし、実際に組織的な事前相談を行っている介護保険施設等は1割前後にとどまるのが現状です。
いざという時に「どんな情報を伝えればいいか」「どのようなケースなら迷わず呼んでいいか」を平時から消防と共有しておくこと。このような事前相談・取り決めは、実際に行っている事業所が1割前後にとどまると報告されています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf
入所者等の急変時の搬送について、消防本部(消防署)と組織として事前に相談・取り決めを行っている事業所は1割前後である(特養13.2%、特定施設9.3%等)。
判断の迷いは個人の責任ではなく、連絡体制や移動手段といった構造的な課題とも言えます。完璧な医学的判断を目指るより、医師不在時や搬送手段がない場合の「具体的な動き」を組織で詰めておくことが、自分と利用者を守る有効な備えになると考えられます。
「うちでも起きた」現場が共感する3つの典型事例

現場では「マニュアル通りにいかない」事態が起こることがあります。医学的な正しさだけでは割り切れない、介護現場特有のリアルな葛藤を抱える事例を見てみましょう。
「頭では分かっているけれど、現実にはどうにもできない」。そんな現場の無力感は、あなただけの問題とは限りません。
事例1:「移動手段がない」という理由での救急要請
医師から「入院が必要なため受診を」と指示が出たものの、緊急搬送するほどの状態ではないケースです。
本来なら家族の送迎や介護タクシーを使いたいところですが、家族が遠方だったり、タクシーの手配がつかなかったりして移動手段が確保できない状況に陥ります。
結果として、医学的な緊急性ではなく「病院へ行く足がない」という理由で、救急車を要請すべきか迷う事例が報告されています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf
緊急性は低いが受診が必要な場合に、家族等による送迎や介護タクシー等の移動手段が確保できないため、救急車を要請すべきか迷う事例がある。
事例2:同意書があっても「助けて!」と叫ぶ家族
看取り期にあり、本人や家族と話し合った上で「救急搬送はしない」と事前に取り決めているケースでも、現場は混乱します。
いざ急変が起き、家族が動揺し、「やっぱり救急車を呼んで!」と希望を変更することがあるからです。
事前の取り決めと、目の前の家族の感情との板挟みになり、現場スタッフが対応に苦慮することがあるパターンです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf
本人と家族の意向が一致していない場合や、急変時に家族が動揺してしまい、事前の取り決め通りに対応して良いか迷う事例がある。
事例3:夜間・休日に「誰とも連絡がつかない」恐怖
夜間や休日に利用者の状態が悪化し、指示を仰ぎたい場面です。マニュアルでは「医師へ連絡」となっていても、実際には電話が繋がらないことがあります。
看護師も不在の場合、医学的知識の少ない介護職員だけで「救急車を呼ぶべきか」の最終判断を迫られます。
相談できる専門職が誰もいない孤独な状況下で、責任の重さに押しつぶされそうになる事例もあります。
出典元の要点(要約)
厚生労働省自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf
連携医・協力医、主治医、看護職員と連絡がつかず、救急搬送の判断に困る事例がある。
これらの事例は、個人のスキル不足ではなく、移動手段の欠如や連絡体制の不備といった環境要因で発生することがあります。自分たちだけで抱え込まず、「判断できない状況」そのものを施設全体の問題として共有することが第一歩になると考えられます。
なぜ現場はこれほどまでに迷うのか? 3つの構造的欠陥

現場では「マニュアル通りに対応すれば大丈夫」と指導されます。しかし、実際に急変が起きると「マニュアルに書いていない想定外」が重なることもあるのではないでしょうか。
「書いてあることと、目の前の現実が違う」。このギャップが、介護職を苦しめる迷いの一因です。個人のスキル不足ではなく、現場を取り巻く環境にひそむ3つの原因を解説します。
理由1:マニュアルが「現場のグレーゾーン」をカバーしていない
多くの施設でマニュアルは作られていますが、現場が本当に知りたい「判断に迷う微妙なライン」までは書かれていません。
また、訪問看護ステーションや診療所では、そもそもマニュアル自体が整備されていない事業所が半数を占めています。
「数値化できない違和感」や「社会的な事情」への対応指針がないため、現場スタッフは拠り所がないまま判断を迫られています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf
訪問看護ステーションの52.8%、診療所の44.9%しかマニュアルが整備されていない。またマニュアルがあっても、判断に迷う事例(バイタル異常はないが様子がおかしい等)への対応が難しい実態がある。
理由2:消防本部との「事前の握り」が欠如している
いざ119番通報をしたとき、「どんな情報を伝えればスムーズかを知っていますか?実は、消防本部と組織的に事前の相談や取り決めを行っている施設は、全体の1割程度しかありません。
「平時の握り」がない場合、緊急時に情報の伝え方や役割分担で迷うことがあります。事前相談・取り決めが行われていない事業所が多いと報告されています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf
入所者等の急変時の搬送について、消防本部(消防署)と組織として事前に相談・取り決めを行っている事業所は1割前後である。
理由3:搬送先確保の仕組みが現場任せ
「協力病院があるから安心」と思っていませんか?実際には、協力医療機関であっても「満床」や「専門外」を理由に断られるケースがあります。
搬送先がなかなか決まらない場合、その調整や交渉の負担は現場スタッフにかかります。
この出口の見えない不安が、判断を鈍らせる要因の一つです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf
協力医療機関に搬送受入を要請しても、満床や対応不可等の理由で断られる事例や、搬送先の選定に時間を要する事例が報告されている。
迷いの原因は「書かれていないマニュアル」「消防との連携不足」「搬送先確保の難しさ」にあると言えます。これらは現場スタッフ個人の努力では解決が難しい場合があります。まずは「個人だけの問題ではない」と認識し、組織として仕組みの不備に目を向ける必要があると考えられます。
現場の「迷い」に答えるQ&A
日々、正解のない判断を迫られる中で生じる素朴な疑問や不安。ここでは、厚生労働省の実態調査報告書に基づき、現場が抱える共通の課題として回答を整理します。
- Qどうしても移動手段がない場合、救急車を呼んでもいいですか?
- A非常に悩ましい問題ですが、実態調査では「介護タクシー等の移動手段がない」ことが救急要請を検討する要因の一つになっている現実が報告されています。これは実態として報告されています。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf
緊急性は低いが受診が必要な場合に、家族等による送迎や介護タクシー等の移動手段が確保できないため、救急車を要請すべきか迷う事例が報告されている。
- Q家族の意見が急変時に変わって搬送になった場合、施設側の責任になりますか?
- A責任の所在は個別の状況によりますが、調査では、搬送の判断に迷う要因として家族の希望変更などの経緯が挙げられています。重要なのは、搬送の事実だけでなく、家族の希望変更などの経緯を正確に記録し、救急隊へ伝えることです。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf
本人と家族の意向が一致していない場合や、急変時に家族が動揺してしまい、事前の取り決め通りに対応して良いか迷う事例がある。
- Q救急隊には何を伝えれば一番スムーズですか?
- A「既往歴」「服薬情報」「かかりつけ医」等の情報の共有が重要とされています。ただし、事前に消防本部と情報の伝え方を取り決めている施設は非常に少ないため、一度管理者に確認してみることをお勧めします。
出典元の要点(要約)
厚生労働省
自宅や介護保険施設等における要介護高齢者の急変時対応の負担軽減および円滑化するための調査研究事業 報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/001103268.pdf
円滑な救急活動のためには、利用者情報の共有が重要である。しかし、消防本部(消防署)と組織として事前に相談・取り決めを行っている事業所は1割前後である。
これらの疑問は、多くの現場スタッフが抱えている共通の悩みです。「自分だけが分からない」と不安になる必要はありません。一つひとつの事例を施設内で共有し、少しずつ「迷いの種」を減らしていくことが、心の負担を軽くすることに繋がります。
まとめ:迷いは「個人の責任」だけではない
ここまで、介護現場における急変時対応の「判断の壁」について解説してきました。
もし明日、現場で判断に迷うことがあっても、それはあなたの経験不足だけが原因ではありません。移動手段の確保や夜間の連絡体制といった、個人の力ではどうにもならない構造的な課題が背景にあると考えられるからです。
完璧な対応を目指して一人で抱え込む必要はありません。「夜間, 医師と連絡がつかない時は誰に判断を仰ぐか」。まずは次の出勤時に、この一点だけでもマニュアルや先輩に確認してみてください。
その小さな確認が、いざという時にあなた自身と利用者を守る助けになると考えられます。
最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。
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更新履歴
- 2026年1月20日:新規投稿







