リーダーに「またスルーされた…」と感じる介護士へ。部下から始める“聞き上手”アプローチ

リーダーに「またスルーされた…」と感じる介護士へ。部下から始める“聞き上手”アプローチ 人間関係

「利用者の変化を報告したのに、『わかった』の一言で流された…」 「ミーティングで勇気を出して提案しても、真剣に聞いてもらえない…」

介護現場でリーダー(上司)に話を聞いてもらえないと感じることは、単なる不満を超え、利用者の安全と自分自身の心の健康を脅かす重大な問題です。

一つでも当てはまったら、この記事がきっと役に立ちます

  • リーダーに報告しても「忙しいから後で」と流されることが多い
  • 自分の意見が「どうせ聞いてもらえない」と諦めている
  • 職場のミーティングで「沈黙」が増え、発言しにくい空気を感じる
  • 報告が通じないことで、利用者の安全に不安を覚える
  • 「この職場、もう無理かも」と精神的なストレスで転職が頭をよぎる

この記事でわかること この記事を読むことで、なぜ「話を聞いてもらえない」状況が危険なのか、そのエビデンス(根拠)を理解できます。そして、上司を無理に変えようとするのではなく、部下である自分から職場の空気を変えるための具体的な「聞き上手」アプローチを学べます。


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話を聞いてもらえない」から脱却する、部下からのアプローチ

「どうせ言っても無駄だ」と諦めてしまう前に、できることがあります。上司を無理やり変えることはできませんが、部下である自分からのアプローチを変えることで、関係性や職場の空気に影響を与えることは可能です。ここでは、その具体的な方法を提案します。

女性の介護職員の画像

なぜリーダーは話を聞けなくなるのか?

まず理解すべきは、リーダーもまたプレッシャーの中で働いているという視点です。世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、変化の加速による既存の仕事のストレス悪化や、労働者のメンタルヘルス低下の可能性が示されています。また、同ガイドラインは「管理監督者のトレーニング」の重要性も推奨しており、リーダー自身が傾聴やメンタルヘルス対応のトレーニングを受けていない可能性も考えられます。相手の背景を理解することは、冷静なアプローチの第一歩です。

出典元の要点(要約)

世界保健機関(WHO)日本語版(厚生労働省掲載)
職場のメンタルヘルス対策ガイドライン 日本語版(原著2022)
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001258077.pdf

序文は、COVID-19等の影響で「労働市場が混乱し、変化のペースが加速」し、「既存の仕事のストレスを悪化」させ、「労働者のメンタルヘルスの低下に繋がる可能性」を指摘。職場介入の必要性を背景から示す。

世界保健機関(WHO)日本語版(厚生労働省掲載)
職場のメンタルヘルス対策ガイドライン 日本語版(原著2022)
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001258077.pdf

目次に「管理監督者のトレーニングに関する推奨事項」「労働者のトレーニングに関する推奨事項」「組織介入に関する推奨事項」が並び、管理監督者の関与が制度的に位置づけられている。上司が聞かない環境は、これら推奨の実施を妨げ、メンタルヘルス上の不利益を招く可能性がある。

アプローチ① まず自分がリーダーの「聞き役」になる

逆説的ですが、相手に聞いてもらうためには、まず自分が相手の話を聞くことが有効な場合があります。日本産業衛生学会の雑誌に掲載されたある研究では、管理監督者に対し「積極的傾聴法」を取り入れた研修を行った結果、従業員側が感じる「上司の支援」が研修後に有意に上昇しました。これは、上司が「聞く姿勢」を持つことの重要性を示すものですが、同時に、部下側が上司の多忙さや悩みに耳を傾ける姿勢を見せることで、上司も「この人には話しやすい」と感じる「知覚された上司の支援(PSS)」の関係性を築きやすくなります。

出典元の要点(要約)

日本産業衛生学会(産業衛生学雑誌)
積極的傾聴法を取り入れた管理監督者研修による効果(2008)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/50/4/50_E7008/_article/-char/ja

電子機器製造業事業場の管理職を対象に「積極的傾聴法」を含む研修を実施し、従業員側の評価で「上司の支援」が研修後に有意上昇。本文は、管理職の相談対応充実を通じて「上司の支援」が強化された可能性を示す。上司の傾聴が客観指標(BJSQの上司支援因子)を改善しうることを示す一次データであり、「聞かない上司」の不利益(支援不足・相談停滞)と表裏の関係で説明可能。

アプローチ② 報告の「質」を変える(事実と意見の分離)

リーダーが「スルー」する背景には、部下の報告が「何を求めているのか分かりにくい」場合があります。特に多忙な上司には、「事実」と「自分の意見・感情」を明確に分けて伝える工夫が有効です。

  • 事実: 「本日14時、A様がポータブルトイレへ移乗中、膝折れがありました。転倒や外傷はありません。」
  • 意見/相談: 「最近A様の膝折れが増えており危険です。一度、移乗方法の再検討をチームで相談したいのですが、よろしいでしょうか。」 このように「事実」と「相談(要求)」を分離することで、リーダーは何を判断すべきかが明確になり、具体的な指示や対応につながりやすくなります。

アプローチ③「聞いてもらう」ための戦略的な相談の仕方

「忙しいから後で」を避けるため、相談の「入り方」を工夫します。これは、相手の時間を尊重し、聞く態勢を整えてもらうための技術です。

  • 「お忙しいところ恐れ入ります。〇〇の件で3分だけお時間いただけますか?」
  • 「今、少しよろしいですか? もし難しければ、何時頃ならご都合がよろしいでしょうか?」
  • 「緊急ではないのですが、ご相談したいことがあります。お手すきの際にお声がけください。」 相手の状況を尊重する姿勢を見せることで、一方的な「報告」ではなく「相談」の土台を作ることができます。

このセクションで提案したアプローチは、上司を責めるためではなく、自分自身が専門職として働きやすい環境を主体的に作るためのものです。小さな工夫が、上司との信頼関係を築き、結果として「話を聞いてもらえる」職場への第一歩となります。


「どうせ聞いてもらえない」が招く、3つの重大なリスク

リーダーに話を聞いてもらえない状況は、単なる個人のストレスでは終わりません。公的なデータや研究は、その状態が職場の「安全」と「人材定着」を直接脅かす、重大なリスクであると示しています。なぜ放置してはいけないのか、その理由を解説します。

女性の介護職員の画像

心理的安全性の低下が「沈黙」を生む

リーダーに意見や報告をスルーされる経験が続くと、職員は「これを言うと自分の立場が悪くなるかもしれない」と感じるようになります。産業医学振興財団が発行する「産業医学レビュー」に掲載された総説では、「心理的安全性」を「職場で自分の立場に悪影響が及ぶおそれなく対人リスク行動に出られる心の状態」と定義しています。この心理的安全性が低い職場では、「組織としての学習行動が減少し」、結果として「ミスの報告を含めた労働者の発言が減り、沈黙が増える。」と説明されています。介護現場において、職員が「沈黙」することは、改善の機会損失にほかなりません。

出典元の要点(要約)

産業医学振興財団(産業医学レビュー)
心理的安全性と産業保健における意義(Vol.38 No.1, 2025)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/1/38_53/_pdf/-char/en

本総説は、心理的安全性が低い職場では「組織としての学習行動が減少し」「ミスの報告を含めた労働者の発言が減り、沈黙が増える。」と説明し、産業保健の観点から「心理的安全性の高い職場風土づくり」を支える重要性を述べる。上司が話を聞かず発言を抑える状況は、学習と報告を阻害し、沈黙を増やす不利益につながる。

産業医学振興財団(産業医学レビュー)
心理的安全性と産業保健における意義(Vol.38 No.1, 2025)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/1/38_53/_pdf/-char/en

定義として「心理的安全性は『職場で自分の立場に悪影響が及ぶおそれなく対人リスク行動に出られる心の状態』」とされ、「仕事に関する自分の意見を表明することができる」ためには「個人間の信頼を背景とした質の高い人間関係」が前提と記される。上司が傾聴せず、意見表明を阻むと、この状態が崩れ、発言しづらさという不利益が生じる。

コミュニケーション不全が「介護事故」に直結する

介護現場は、利用者の生命と安全を預かる場所です。「産業医学レビュー」の同総説では、医療現場における介入研究を整理し、「コミュニケ―ション不全はエラーの主な原因となる」と指摘しています。また、同総説が引用する別の尺度項目では、ミスの報告を上司にできることが「患者の安全を守ることが可能」と説明されています。厚生労働省の通知(介護保険最新情報 Vol.1332)でも、介護事故発生時は「速やかに市町村、入所者の家族等に連絡」し、「遅くとも5日以内」に報告することが求められています。リーダーが話を聞かず、現場からの報告が滞ることは、制度上の報告義務の遅延と、何よりも利用者の安全を脅かすエラーの温床に直結します。

出典元の要点(要約)

産業医学振興財団(産業医学レビュー)
心理的安全性と産業保健における意義(Vol.38 No.1, 2025)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/1/38_53/_pdf/-char/en

介入研究の整理では「コミュニケ―ション不全はエラーの主な原因」とされ、懸念を「上司と共有することにより、…学びにつなげる」。またアウトカムに「心理的安全性や発言行動(voice/speaking up behavior)」が用いられる。上司が聞かず共有が滞ると、エラー原因が温存され、安全と学びに不利益が生じる。

産業医学振興財団(産業医学レビュー)
心理的安全性と産業保健における意義(Vol.38 No.1, 2025)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/1/38_53/_pdf/-char/en

尺度項目として「If I saw a colleague making a mistake, I would feel safe speaking up to my team leader.」が示され、「上司に報告する」ことが「患者の安全を守ることが可能」と説明される。上司が聞かない状態は、報告の安全感を損ない、患者安全の不利益につながる。

厚生労働省 老健局
介護保険最新情報 Vol.1332「介護保険施設等における事故の報告様式等について(通知)」
https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2024/1202092706494/ksvol.1332.pdf?from=rss

通知は事故時の連絡義務「速やかに市町村、入所者の家族等に連絡」、事故情報の「収集・分析・公表」、第1報の「事故発生後速やかに、遅くとも5日以内」を定める。上司が現場の声を聞かず共有が遅れると、報告と分析の枠組みに適合せず、安全対策に不利益が生じる。

「上司の支援不足」が「離職」につながる

「この職場では、自分の意見は尊重されない」と感じながら働き続けることは困難です。「産業医学レビュー」の総説では、「職場での信頼を基盤とした高い心理的安全性は労働者の組織に対する自己同一性を促進し、離職率を低下させるとの指摘がある」と整理されています。また、労働政策研究・研修機構(JILPT)の雑誌に掲載された論文では、若年労働者の早期離職率が必ずしも低下傾向にない背景として、「職場が有する心理的安全性」への注目を提示しています。上司が話を聞かないことは、職員が感じる「支援の欠如」そのものであり、心理的安全性を損ない、貴重な人材の離職を招く要因となります。

出典元の要点(要約)

産業医学振興財団(産業医学レビュー)
心理的安全性と産業保健における意義(Vol.38 No.1, 2025)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/1/38_53/_pdf/-char/en

社会的アイデンティティ理論の視点から「高い心理的安全性は…離職率を低下させるとの指摘がある」。また「職場のインクルーシブネス」が「心理的安全性を促進」する。上司が話を聞かず包摂性が損なわれると、心理的安全性が下がり、離職抑制の効果が得られないという組織の不利益が生じうる。

日本労働政策研究・研修機構(JILPT)
若年労働者の離職と定着,その現代的論点(日本労働研究雑誌 No.767)
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2024/06/pdf/019-032.pdf

本文は「早期離職率は必ずしも低下傾向にはない。」ことを示し、「若年者ほど離職率が高い傾向がある。」と述べる。背景として「職場が有する心理的安全性に加え『キャリア安全性』」への注目を提示。上司が聞かず心理的安全性が低い職場は、離職傾向の改善に不利となる。

このように、「リーダーが話を聞かない」ことは、単なる人間関係の問題ではなく、事故防止、学習機会、人材定着という、組織の根幹に関わる重大なリスクです。この事実を認識することが、現状を変える第一歩となります。


現場の「あるある」:こんな場面で「スルーされた」と感じていませんか?

報告や相談が「スルー」される場面には、いくつかの典型的なパターンがあります。これらは単なる「忙しいから」では済まされない、職場のコミュニケーション不全を示すサインです。

女性の介護職員の画像

事例① 利用者の変化を報告したが、優先度を低くされた

「Aさん、いつもより食事量が少ないです」「ふらつきが増えた気がします」と利用者の小さな変化を報告しても、「そう、わかった。じゃあ様子見で」と軽く流されるケースです。報告した側は「重要ではない」と判断されたと感じ、利用者の安全への懸念を共有できなかったことに不安を覚えます。産業医学振興財団が発行する「産業医学レビュー」に掲載された総説では、心理的安全性が低いと「ミスの報告を含めた労働者の発言が減り、沈黙が増える。」と説明されています。

出典元の要点(要約)

産業医学振興財団(産業医学レビュー)
心理的安全性と産業保健における意義(Vol.38 No.1, 2025)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/1/38_53/_pdf/-char/en

本総説は、心理的安全性が低い職場では「組織としての学習行動が減少し」「ミスの報告を含めた労働者の発言が減り、沈黙が増える。」と説明し、産業保健の観点から「心理的安全性の高い職場風土づくり」を支える重要性を述べる。上司が話を聞かず発言を抑える状況は、学習と報告を阻害し、沈黙を増やす不利益につながる。

事例② ヒヤリハットを報告したら、話の途中で指導が始まった

勇気を出してヒヤリハットや小さなミスを報告した際、最後まで聞いてもらえず「なんでそうなったの?」「普通はこうするでしょ」と指導や叱責が始まってしまうケースです。これでは「報告=怒られる」という構図が生まれ、「ミスの報告」そのものが隠蔽されかねません。同総説では、ミスを上司に報告できることが「患者の安全を守ることが可能」と説明されており、報告ができない状態は安全管理上、極めて危険です。

出典元の要点(要約)

産業医学振興財団(産業医学レビュー)
心理的安全性と産業保健における意義(Vol.38 No.1, 2025)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/1/38_53/_pdf/-char/en

尺度項目として「If I saw a colleague making a mistake, I would feel safe speaking up to my team leader.」が示され、「上司に報告する」ことが「患者の安全を守ることが可能」と説明される。上司が聞かない状態は、報告の安全感を損ない、患者安全の不利益につながる。

事例③ 業務改善を提案したが、「前例がない」とスルーされた

「こうした方が効率的では」「この手順は危険かもしれない」と現場目線で改善策を提案しても、「うちはずっとこのやり方だから」「忙しいから無理」と、議論さえされずに却下されるケースです。これは職員の「組織としての学習行動」を阻害し、モチベーション低下に直結します。「産業医学レビュー」の同総説では、安心感のある場では「情報共有や議論が活発になり」「職場全体の学習が促進され」ると整理されています。

出典元の要点(要約)

産業医学振興財団(産業医学レビュー)
心理的安全性と産業保健における意義(Vol.38 No.1, 2025)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/1/38_53/_pdf/-char/en

理論背景として、安心感のある場では「情報共有や議論が活発になり」「職場全体の学習が促進され」るとされる。さらに「社会的交換が職場で行われることで、…成果につながる」。上司が聞かず情報共有が抑制される状況は、学習促進と成果への経路を損ない、チームに不利益を及ぼす。

これらの「スルー」される経験は、職員の心に「どうせ言っても無駄だ」という諦めを植え付けます。しかし、その諦めが職場全体の安全と未来を危険にさらすことを、私たちは認識する必要があります。


よくあるご質問(FAQ)

ここまで読んできて、「言うは易し、行うは難し」と感じるかもしれません。部下からアプローチすることへの現実的な疑問や不安について、データやガイドラインに基づきお答えします。

女性の介護職員の画像
Q
自分が「聞き上手」になっても、上司が変わるとは思えません。
A

目的は相手を無理に「変える」ことではなく、上司との「関係性」にアプローチすることです。日本産業衛生学会の雑誌に掲載されたある研究では、管理監督者に対して「積極的傾聴法」を取り入れたメンタルヘルス研修を実施したところ、従業員側が評価する「上司の支援」が研修実施後に有意に上昇しました。これは、上司側の「聞くスキル」が関係性を改善する証拠ですが、同時に、部下側が傾聴の姿勢を持つことが、上司の態度や支援の質に良い影響を与える可能性を示唆しています。

出典元の要点(要約)

日本産業衛生学会(産業衛生学雑誌)

積極的傾聴法を取り入れた管理監督者研修による効果(2008)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/50/4/50_E7008/_article/-char/ja

電子機器製造業事業場の管理職を対象に「積極的傾聴法」を含む研修を実施し、従業員側の評価で「上司の支援」が研修後に有意上昇。本文は、管理職の相談対応充実を通じて「上司の支援」が強化された可能性を示す。上司の傾聴が客観指標(BJSQの上司支援因子)を改善しうることを示す一次データであり、「聞かない上司」の不利益(支援不足・相談停滞)と表裏の関係で説明可能。

Q
忙しすぎて、そんな余裕はありません。
A

日々の業務が多忙なことは事実です。しかし、コミュニケーション不全を放置するコストは、さらに大きい可能性があります。世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、「安全で健全かつ包摂的な職場環境」が、結果として「アブセンティイーズムを減らし、仕事のパフォーマンス・生産性を向上させ」、「同僚間の対立を最小限に抑える」と説明されています。また、公益財団法人 日本医療機能評価機構の年報では、医療安全文化の醸成が「コミュニケーションエラーが減り、医療の質が高まる」と明記されています。目先の「聞く」時間は、長期的に見て事故対応や非効率な業務、離職対応といった「より大きな時間的コスト」を防ぐための投資となります。

出典元の要点(要約)

世界保健機関(WHO)日本語版(厚生労働省掲載)
職場のメンタルヘルス対策ガイドライン 日本語版(原著2022)
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001258077.pdf

序文は「安全で健全かつ包摂的な職場環境は」「アブセンティイーズムを減らし、仕事のパフォーマンス・生産性を向上」させ、「同僚間の対立を最小限に抑える」と記載する。上司の傾聴欠如で包摂性が欠けると、これらの利点が得られず、欠勤・生産性・対立面で不利益が生じうる。

公益財団法人 日本医療機能評価機構
医療安全文化調査 2022年度 年報(抜粋版)
https://www.jq-hyouka.jcqhc.or.jp/wp-content/uploads/2023/08/anzenbunka_2022_-anualreport_excerpt.pdf

本年報は「医療安全文化」を「…患者さんの安全を最優先に考え…それを可能にする組織のあり方」と定義し、醸成により「医療チームの能力が高まり、コミュニケーションエラーが減り、医療の質が高まる」と明記する。調査は「医療安全文化調査票 (HSOPS)」を用い、日本語化し定量測定する枠組みを提示。上司が現場の声を受け止めない状況は、コミュニケーションエラーの増大や安全文化の低下という具体的不利益に直結するエビデンスを示す。

Q
精神的に限界で、もう上司と話したくありません。
A

もし、あなたがすでに精神的に限界を感じているのであれば、無理にアプローチする必要は絶対にありません。世界保健機関(WHO)のガイドラインは、労働者の権利として「職場で達成可能な最高水準のメンタルヘルス」を享受することを掲げ、政府や雇用主には「過度のストレスや心の健康問題のリスクにさらされないようにする」責務があることを示しています。まずはご自身の心の健康を守ることを最優先に行動してください。

出典元の要点(要約)

世界保健機関(WHO)日本語版(厚生労働省掲載)
職場のメンタルヘルス対策ガイドライン 日本語版(原著2022)
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001258077.pdf

序文は、労働者の権利として「職場で達成可能な最高水準のメンタルヘルス」を掲げ、政府と雇用主に「過度のストレスや心の健康問題のリスクにさらされないようにする」責務を示す。上司の傾聴欠如がストレスやリスクを増す場合、権利と責務に反し不利益が生じる。

これらの疑問が解消されることで、小さな一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。大切なのは、ご自身の悩みが正当なものであると認識し、一人で抱え込まないことです。


まとめ:「スルーされる」を「変える」ための第一歩

リーダーに話を聞いてもらえないという悩みは、決して個人の我慢で解決すべき問題ではありません。それは職場の安全と未来に関わる重大なサインです。この記事でお伝えした要点を振り返ります。

「話を聞いてもらえない」は、我慢してはいけない“危険信号”

リーダーの傾聴不足は、職員の「沈黙」を生みます。産業医学振興財団が発行する「産業医学レビュー」に掲載された総説では、心理的安全性が低い職場では「ミスの報告を含めた労働者の発言が減る」と説明されています。また、同総説では、医療現場において「コミュニケ―ション不全はエラーの主な原因となる」とも整理されており、利用者の安全に直結する問題です。

出典元の要点(要約)

産業医学振興財団(産業医学レビュー)
心理的安全性と産業保健における意義(Vol.38 No.1, 2025)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/1/38_53/_pdf/-char/en

本総説は、心理的安全性が低い職場では「組織としての学習行動が減少し」「ミスの報告を含めた労働者の発言が減り、沈黙が増える。」と説明し、産業保健の観点から「心理的安全性の高い職場風土づくり」を支える重要性を述べる。上司が話を聞かず発言を抑える状況は、学習と報告を阻害し、沈黙を増やす不利益につながる。

産業医学振興財団(産業医学レビュー)
心理的安全性と産業保健における意義(Vol.38 No.1, 2025)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/38/1/38_53/_pdf/-char/en

介入研究の整理では「コミュニケ―ション不全はエラーの主な原因」とされ、懸念を「上司と共有することにより、…学びにつなげる」。またアウトカムに「心理的安全性や発言行動(voice/speaking up behavior)」が用いられる。上司が聞かず共有が滞ると、エラー原因が温存され、安全と学びに不利益が生じる。

あなたの「聞く姿勢」が、チームと利用者の安全を守る

状況を打開する鍵は、「部下である自分」が先に聞く姿勢を持つことです。日本産業衛生学会の雑誌に掲載されたある研究では、管理監督者への「積極的傾聴法」の研修が、部下の感じる「上司の支援」を有意に上昇させました。これは、「聞く」という行動が関係性を改善する力を持つことを示しています。あなたの傾聴が、リーダーとの関係性を変えるきっかけになります。

出典元の要点(要約)

日本産業衛生学会(産業衛生学雑誌)
積極的傾聴法を取り入れた管理監督者研修による効果(2008)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/50/4/50_E7008/_article/-char/ja

電子機器製造業事業場の管理職を対象に「積極的傾聴法」を含む研修を実施し、従業員側の評価で「上司の支援」が研修後に有意上昇。本文は、管理職の相談対応充実を通じて「上司の支援」が強化された可能性を示す。上司の傾聴が客観指標(BJSQの上司支援因子)を改善しうることを示す一次データであり、「聞かない上司」の不利益(支援不足・相談停滞)と表裏の関係で説明可能。

職場の空気は、部下であるあなたから変えられる

リーダーに「スルー」されたと感じても、「どうせ無駄だ」と諦める必要はありません。報告の「事実」と「意見」を分ける、相手の状況を尊重して相談するなど、部下からできるアプローチは存在します。世界保健機関(WHO)のガイドラインでも、「安全で健全かつ包摂的な職場環境」や「管理監督者のトレーニング」の重要性が示されています。あなたの行動は、そうした本来あるべき職場環境への第一歩です。

出典元の要点(要約)

世界保健機関(WHO)日本語版(厚生労働省掲載)
職場のメンタルヘルス対策ガイドライン 日本語版(原著2022)
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001258077.pdf

序文は「安全で健全かつ包摂的な職場環境は」「アブセンティイーズムを減らし、仕事のパフォーマンス・生産性を向上」させ、「同僚間の対立を最小限に抑える」と記載する。上司の傾聴欠如で包摂性が欠けると、これらの利点が得られず、欠勤・生産性・対立面で不利益が生じうる。

世界保健機関(WHO)日本語版(厚生労働省掲載)
職場のメンタルヘルス対策ガイドライン 日本語版(原著2022)
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001258077.pdf

目次に「管理監督者のトレーニングに関する推奨事項」「労働者のトレーニングに関する推奨事項」「組織介入に関する推奨事項」が並び、管理監督者の関与が制度的に位置づけられている。上司が聞かない環境は、これら推奨の実施を妨げ、メンタルヘルス上の不利益を招く可能性がある。

上司を変えようとするのではなく、自分からの関わり方を変える。それが、あなたが専門職として安心して働き続け、利用者の安全を守るための、最も現実的で力強いアプローチです。


更新履歴

  • 2025年10月19日:新規投稿

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