夜勤のワンオペ中、センサー対応に追われながら利用者の不可解な行動に直面すると、ついイライラしてしまう葛藤を感じることもあるでしょう。
理想のケアをしたくても、人員不足の現実では安全を守るだけで手一杯になりがちです。全部は無理でも、危険なサインだけは見逃さない視点を持ってみませんか。
この記事を読むと分かること
- 夜間の大声や暴れの背景にある原因
- 急な居眠りが起きる薬のリスク
- 転倒事故を防ぐ観察ポイント
- 見落としがちな初期サイン
一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます
結論:見落としがちな「3つの非運動症状」こそがケアの鍵

現場では「食事・排泄・入浴」の業務に追われ、利用者の細かい変化まで記録に残すのは時間的に不可能と感じることも多いでしょう。
理想的なケアが求められる一方で、実際には人手不足で目の前の安全確保だけで精一杯なのが現実です。
しかし、手の震えや歩きにくさといった目に見える運動症状よりも、実は「便秘」「睡眠」「におい」の変化こそが、転倒やQOL(生活の質)低下を防ぐための重要な鍵といえます。
頑固な便秘は「加齢」ではなく「病気のサイン」
単なる高齢者の便秘と片付けられがちですが、パーキンソン病では運動症状が出る20年以上前から便秘が現れることがあります。
これは腸の神経系にも病変が及ぶためであり、将来的な発症リスクとも関連しています。
排便状況の確認は、単なる不快感の解消だけでなく、病気の兆候に気づくための手がかりのひとつとなります。
出典元の要点(要約)
日本神経学会パーキンソン病診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_24.pdf
便秘は運動症状発現の20年以上前から出現することがある.
夜中の大声は「認知症」とは限らない
夜間に大声を出したり暴れたりするのは、認知症の周辺症状(BPSD)やせん妄と混同されやすいですが、レム睡眠行動障害(RBD)という病気の症状かもしれません。
これは夢の中の行動がそのまま出てしまうもので、運動症状より数年~十数年先行して現れることがあります。
「ただ寝ぼけているだけ」と放置せず、パーキンソン病やレヴィ小体型認知症への移行リスクがある専門的な症状として捉え、医師へ伝えるべき重要な変化といえます。
出典元の要点(要約)
日本神経学会パーキンソン病診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_24.pdf
パーキンソニズムを呈する患者にレム睡眠行動障害(RBD)が認められた場合、パーキンソン病の可能性が高い。ただし特異度は高いが、パーキンソン病におけるRBDの頻度は30~50%程度であり、感度は低い。
日本神経学会
パーキンソン病診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_24.pdf
RBDはパーキンソン病やレヴィ小体型認知症の前駆症状としても注目されており、RBD発症から数年~十数年を経てパーキンソン病や認知症を発症することが多い。
「急な居眠り」は薬の副作用かもしれない
日中に突然意識を失うように寝てしまう突発的睡眠や過度な眠気は、本人のやる気の問題ではありません。
治療薬(ドパミンアゴニスト等)の副作用や、夜間の睡眠障害が原因となって引き起こされる場合があります。
転倒事故や誤嚥につながる恐れがあるため、「うとうとしている」で済ませず、薬の影響を疑って観察する視点を持つことが重要です。
出典元の要点(要約)
日本神経学会パーキンソン病診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_28.pdf
パーキンソン病患者の覚醒障害に対する治療方針として、夜間睡眠障害の改善と並行し、ドパミンアゴニストの減量を試みることが提示されている。日中過眠の背景因子には、加齢、パーキンソン病による睡眠-覚醒機構の障害、夜間の睡眠障害、うつ、向精神薬、レム睡眠行動障害(RBD)、睡眠時無呼吸などが挙げられる。これらは抗パーキンソン病薬の使用開始や増量、病気の進行に伴い頻度が増すため、日常診療では薬剤誘発性の眠気の有無を問診で確認する必要がある。
日本神経学会
パーキンソン病診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_28.pdf
突発的睡眠はドパミンアゴニストで発現率が高く、予兆なく入眠し交通事故などを起こす危険があるため、患者への教育と自動車運転の制限が必要である。
全てを完璧に観察する必要はありません。しかし、これら3つの非運動症状に気づくことは、薬の調整や環境整備につながり、結果として現場の介護負担を減らすことにもつながる可能性があります。
現場でよく見る「誤解されがちな3つのケース」

現場では、暴力や暴言への対応に疲れ、「介護職だから我慢しなければ」と感情を押し殺す場面が多いのではないでしょうか。
しかし、その「困った行動」は、性格や認知症によるものではなく、パーキンソン病特有の症状かもしれません。
よくある誤解を知ることで、「なぜこんなことをするのか」という疑問が解消され、冷静に対応できるヒントになります。
事例1:「夜中に人が変わったように暴れる」
- 状況
- 昼間は穏やかな方が、夜になると大声で叫んだり、壁を殴ったりして手がつけられない。
- 困りごと
- 他の利用者が起きてしまい、ワンオペ夜勤での対応が限界に達する。
- 誤解
- 「暴力的な性格が出ている」「夜間せん妄でパニックになっている」と思われがち。
【押さえるべき視点】
これは「寝ぼけ」ではなく、レム睡眠行動障害(RBD)の可能性があります。
夢の中での行動(敵と戦うなど)が、筋肉の脱力がうまくいかずに、そのまま身体の動きとして出てしまっている状態です。
本人に悪気はなく、パーキンソン病の前駆症状として重要視される医学的な現象です。
出典元の要点(要約)
日本神経学会パーキンソン病診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_24.pdf
パーキンソニズムを呈する患者にレム睡眠行動障害(RBD)が認められた場合、パーキンソン病の可能性が高い。
日本神経学会
パーキンソン病診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_24.pdf
RBDはパーキンソン病やレヴィ小体型認知症の前駆症状としても注目されており、RBD発症から数年~十数年を経てパーキンソン病や認知症を発症することが多い。
事例2:「食事の味がしないと文句を言う」
- 状況
- 「今日の食事は変な味がする」「まずい」と頻繁に残すようになる。
- 困りごと
- 栄養状態の悪化が心配だが、調理スタッフへの不満と受け取られ、対応に苦慮する。
- 誤解
- 「好き嫌いが激しくなった」「認知症で嗜好が変わった」「わがまま」と思われがち。
【押さえるべき視点】
単なる食欲不振ではなく、嗅覚低下が原因かもしれません。
パーキンソン病患者の約90%に認められる症状であり、運動症状が出る前から生じることが多いのが特徴です。
味付けの問題ではなく「においが分からない」という感覚の障害である可能性を考慮する必要があります。
出典元の要点(要約)
日本神経学会パーキンソン病診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_24.pdf
嗅覚低下はパーキンソン病患者の90%程度に認められ、他のパーキンソニズム(多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症など)との鑑別に有用である。
事例3:「日中、急にカクンと寝てしまう」
- 状況
- レクリエーション中や食事後、会話の途中でも突然スイッチが切れたように眠り込む。
- 困りごと
- 椅子からずり落ちそうになり、転倒リスクが高く目が離せない。ヒヤリハット報告が増える。
- 誤解
- 「夜更かししているからだ」「やる気がない」「ただの居眠り」と思われがち。
【押さえるべき視点】
これは突発的睡眠と呼ばれ、予兆なく急に眠りに落ちる現象です。
特にドパミンアゴニストなどの治療薬の副作用として現れることが多く、本人の意志でのコントロールは困難です。
自動車運転などが制限されるほどのリスクがあるため、ただの居眠りとは区別して安全確保を優先すべき状態といえます。
出典元の要点(要約)
日本神経学会パーキンソン病診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_28.pdf
突発的睡眠はドパミンアゴニストで発現率が高く、予兆なく入眠し交通事故などを起こす危険があるため、患者への教育と自動車運転の制限が必要である。
日本神経学会
パーキンソン病診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_28.pdf
日中過眠の背景因子には、加齢、パーキンソン病による睡眠-覚醒機構の障害、夜間の睡眠障害、うつ、向精神薬、レム睡眠行動障害(RBD)、睡眠時無呼吸などが挙げられる。これらは抗パーキンソン病薬の使用開始や増量、病気の進行に伴い頻度が増すため、日常診療では薬剤誘発性の眠気の有無を問診で確認する必要がある。
これらの行動を「認知症」や「性格」で片付けず、病気や薬の影響かもしれないと疑うことが大切です。その視点があれば、無用なイライラを減らし、適切な医療連携へとつなげることができます。
なぜ、これらのサインは「老化」と見過ごされてしまうのか

現場では、往診医の診察時間は限られており、どうしても「歩行状態」や「転倒の有無」の確認が優先されがちです。
ため、介護士が「便秘」や「好みの変化」に気づいても、「年だからよくあること」として報告の優先順位を下げてしまうことがあります。
しかし、これらが見過ごされてしまうのには、パーキンソン病特有の医学的な理由が存在します。
運動症状が出る「20年前」から病気は始まっている
私たちは「手が震えてからが病気の始まり」と思いがちですが、実は運動症状が出るはるか以前から体内の変化は起きています。
便秘は運動症状発現の20年以上前から出現することや、嗅覚低下が高頻度で見られることがガイドラインでも示されています。
あまりに昔から症状があるため、診断される頃には「この人の元々の体質」として定着し、病気のサインとして認識されにくくなっていることがあります。
出典元の要点(要約)
日本神経学会パーキンソン病診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_24.pdf
便秘は運動症状発現の20年以上前から出現することがある.
日本神経学会
パーキンソン病診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_24.pdf
嗅覚低下はパーキンソン病患者の90%程度に認められ、他のパーキンソニズム(多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症など)との鑑別に有用である。
脳だけでなく「全身の神経」が侵される病気だから
パーキンソン病は脳のドパミン不足だけでなく、心臓や腸などを動かす自律神経も障害される全身病です。
実際に「MIBG心筋シンチグラフィ」という検査では、心臓の交感神経が脱落している所見が診断の重要な判断材料となるほどです。
つまり、震えなどの運動症状が出る前から、体の中では自律神経の不調がすでに進行している場合があります。
出典元の要点(要約)
日本神経学会パーキンソン病診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_24.pdf
123I-MIBG心筋シンチグラフィは、パーキンソン病と多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症との鑑別において、感度および特異度が高く有用である。
医師は短時間の診察で、これら過去の経過や日々の細かい変化全てを見抜くことはできません。だからこそ、利用者の生活を一番近くで見ている介護士の情報が、診断や治療を助ける重要な手がかりになるのです。
現場の「これって病気?」に答えるQ&A
日々のケアの中で判断に迷う場面について、医学的な視点からヒントを整理しました。現場の「?」を解消し、自信を持って観察するための参考にしてください。
- Q夜中に叫んでいる時、認知症だと思って対応していましたが、間違いでしょうか?
- A認知症とは限らず、「レム睡眠行動障害(RBD)」というパーキンソン病に関連した病気の可能性があります。この場合、薬の調整などで改善する可能性があるため、「寝言がひどい」と片付けず、具体的な様子を記録して医師に伝えることが大切です。
出典元の要点(要約)
日本神経学会
パーキンソン病診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_24.pdf
パーキンソニズムを呈する患者にレム睡眠行動障害(RBD)が認められた場合、パーキンソン病の可能性が高い。
Q日中の眠気がひどいのですが、リハビリは休ませたほうがいいですか?A薬(ドパミンアゴニスト等)の副作用による「突発的睡眠」の可能性があります。予兆なく急に眠ってしまい、転倒や事故につながるリスクがあるため、無理は禁物です。安全を最優先し、薬の影響について医師へ相談することをお勧めします。出典元の要点(要約)
日本神経学会
パーキンソン病診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_28.pdf
突発的睡眠はドパミンアゴニストで発現率が高く、予兆なく入眠し交通事故などを起こす危険があるため、患者への教育と自動車運転の制限が必要である。
Q頑固な便秘が続いていますが、下剤を増やして対応してもいいですか?A自己判断での増量は避けましょう。パーキンソン病の便秘は、腸の神経そのものの障害が関わっており、運動症状が出る20年以上前から続くこともあります。病気の進行や他の薬との兼ね合いもあるため、排便状況を医師に報告し、指示を仰ぐことをお勧めします。出典元の要点(要約)
日本神経学会
パーキンソン病診療ガイドライン2018
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_24.pdf
便秘は運動症状発現の20年以上前から出現することがある.
対応に迷ったときは、「これも病気のせいかもしれない」と立ち止まってみてください。その「疑う視点」があるだけで、利用者への接し方が変わり、あなたの精神的な負担も少し軽くなるはずです。
まとめ:小さな「観察」が、利用者を守る大きな力になります
日々の業務に追われる中で、全ての変化に完璧に対応することは現実的ではありません。
しかし、まずは今回ご紹介した「便秘」「睡眠」「におい」の3点に注目して、記録に残すことから始めてみてはいかがでしょうか。
「高齢だから」と見過ごさず、「病気のサインかもしれない」と疑う視点を持つことが、適切な医療介入への第一歩となり、結果として現場でのトラブル防止や負担軽減にもつながる可能性があります。
あなたの日々の気づきこそが、医師の診断を助け、利用者の生活を支える最も重要な手がかりです。
最後までご覧いただきありがとうございます。この記事がお役に立てれば幸いです。
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更新履歴
- 2026年2月14日:新規投稿






