介護現場での水分補給、特にむせ込みが気になる利用者さんへの対応は、本当に難しいですよね。良かれと思って提供した手作りのお茶ゼリーが、実は誤嚥のリスクを高めているとしたら…。
この記事は、そんな日々の不安や疑問を、専門機関が示す科学的根拠に基づいて解消し、あなたのケアを「自信」に変えるためのお手伝いをします。
まずは、ご自身のケアを振り返ってみてください。
一つでも当てはまったら、この記事がきっとお役に立ちます。
この記事を読むと、あなたが得られること
【結論】「手作りだから安心」は危険な誤解。安全な水分補給の鍵は“物性の安定”です
良かれと思って提供した手作りのお茶ゼリー。でも、その一口が利用者さんを危険に晒すとしたら…。介護現場で本当に安全な水分補給を目指すには、経験や勘だけでなく、揺るぎない根拠に基づいた知識が不可欠です。

手作りゼリーが危険とされる科学的な理由
日本摂食嚥下リハビリテーション学会の資料では、一般的に手作りゼリーで使われるゼラチンの注意点を明確に示しています。ゼラチンは、体温で溶けて液状となる性質を持っています。そのため、口の中に入れた瞬間にサラサラの液体に戻ってしまい、意図せず気管に流れ込む「誤嚥」を誘発するリスクがあります。安全に見えても、物性が変化してしまう点が大きな問題です。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類 2021(マニュアル)
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf「ゼラチンを使用したゼリー」は「体温で溶けて液状となる」ため注意が必要だが「喀出や吸引が可能」という逆の利点もある。
市販のデザートゼリーも「嚥下調整食」ではありません
「手作りがダメなら、市販のデザートゼリーは?」と思うかもしれませんが、これも注意が必要です。日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食分類では、「ゼリー」という言葉は、あくまでも「ゼリー状の形態」を指すものであり、菓子のゼリーを指すものではないと明記しています。市販のデザートゼリーは弾力が強すぎたり、甘すぎたり、あるいは容器の中で水分が分離(離水)していたりするため、嚥下機能が低下した方には適さない場合があります。大切なのは名称ではなく、物性・性状で判断することです。
出典元の要点(要約)
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021(マニュアル)
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf「『ゼリー』という際には,ゼリー状の形態」を指し「菓子のゼリーを指すものではない」。分類は「形態を主体に段階分け」で,「疾患・病態と嗜好に合わせた対応」を求める。
介護のプロが知るべき「嚥下調整食」という共通言語
では、何を基準にすれば良いのでしょうか。その答えが「嚥下調整食」です。かつての介護や医療の現場では、統一された嚥下調整食の段階が存在せず、施設や病院によって食事形態の基準がバラバラで、利用者さんの不利益につながることがありました。この問題を解決するために専門学会が作成したのが、多職種で利用者さんの状態を共有するための「共通言語」としての嚥下調整食分類なのです。
出典元の要点(要約)
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021(マニュアル)
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf「統一された嚥下調整食の段階が存在せず」ため「統一基準や統一名称がないことは…不利益」で「共通して使用できることを目的」とする。
このように、安全な水分補給とは、単に水分をゼリー状にすることではありません。誰が、いつ作っても物性が変わらないという科学的根拠に基づいた「嚥下調整食」の考え方を理解することが、利用者さんを誤嚥のリスクから守る第一歩となるのです。
あなたの現場は大丈夫?誤嚥につながる、よくある危険な水分補給シーン
前のセクションで解説した理論が、実際の介護現場でどのような危険につながるのか。ここでは、善意から生まれがちな、よくある危険な水分補給シーンを4つ紹介します。ご自身のケアと照らし合わせ、ヒヤリハットの防止にお役立てください。
事例① 善意で提供される「ゼラチンで固めただけ」のお茶ゼリー
「利用者さんに少しでもお茶を飲んでほしい」という思いから、厨房でゼラチンを使い、手軽なお茶ゼリーを作って提供するケースです。しかし、前のセクションで解説した通り、ゼラチンは口腔内の温度で溶けてサラサラの液体に戻ってしまいます。見た目の形状と、口腔内での形状は全く異なることを認識するのが重要です。この物性の変化が、予期せぬ誤嚥を引き起こす原因となります。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類 2021(マニュアル)
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf「ゼラチンを使用したゼリー」は「体温で溶けて液状となる」ため注意が必要だが「喀出や吸引が可能」という逆の利点もある。
事例② 「とりあえず濃いとろみ」が生む、かえって危険な状況
むせ込みを恐れるあまり、「とろみは濃ければ濃いほど安全だろう」と考えて、通常よりも濃いとろみをつけてしまう事例です。しかし、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の資料では、濃いとろみは付着性などが増強して、かえって嚥下しにくくなることがあると注意喚起がなされています。喉に張り付いてしまい、うまく飲み込めないという逆のリスクを生むのです。粘度だけでなく、利用者さんの状態で判断し、試飲して確認したうえでとろみ調整食品を選ぶ必要があります。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類 2021(マニュアル)
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf濃いとろみは「付着性などが増強して,かえって嚥下しにくくなることがある」ため「試飲して確認…とろみ調整食品を選択」する。
事例③ 離水が多い市販のドリンクゼリーを安易に提供
市販されているゼリー飲料(ドリンクゼリー)は、サラサラの液体よりも誤嚥しにくい場合が多いとされています。しかし、製品によっては、ゼリーから水分が分離する「離水」が多いものがあります。このような製品を嚥下機能が低下した方に提供すると、分離したサラサラの水分だけが先に喉に流れ込み、むせの原因となります。ガイドラインでは離水量が多いもの…薄いとろみに近いものとして扱うこととされ、安易な選択は禁物です。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類 2021(マニュアル)
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf「ゼリー飲料は…誤嚥しにくい場合が多い」が,「離水量が多いもの…薄いとろみに近いものとして扱う」ため個別の検討が必要。
事例④ ゼリー状しか飲めない方に「とろみ水」を提供してしまう
これは、生命の危険に直結しかねない、最も注意すべき事例です。専門職の評価により、食事形態が「コード0j」や「コード1j」(ゼリー状の形態)に限定されている利用者さんに対して、「とろみ付きなら大丈夫だろう」と判断し、とろみの付いた水分を提供してしまうケースです。嚥下調整食分類では、コード0j、コード1jのみしか嚥下できない場合は、とろみ付きであっても液体の摂取は誤嚥の危険があると明確に示されています。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類 2021(マニュアル)
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf「液体にはとろみを付けることとしている」が,「コード0j,コード1jのみしか嚥下できない場合は…誤嚥の危険」と明確に記す。
これらの事例に共通するのは、見た目や「~だろう」という推測で判断している点です。利用者さん一人ひとりの嚥下機能に合わせた、根拠に基づく食事形態の選択がいかに重要か、お分かりいただけたかと思います。次のセクションでは、その根拠となる理論をさらに深く掘り下げます。
なぜ危険なの?学会のガイドラインから読み解く科学的根拠
前のセクションで挙げた危険な事例。では、なぜそれらが「危険」だと断言できるのでしょうか。それは、専門家たちが長年の研究と臨床経験を基に作成した、明確なガイドラインが存在するからです。ここでは、その科学的根拠を一つずつ見ていきましょう。

すべての基本、「嚥下調整食分類2021」という“ものさし”
安全な水分補給を考える上での大前提となるのが、日本摂食嚥下リハビリテーション学会が作成した「嚥下調整食分類2021」です。これは、かつて施設や病院ごとにバラバラだった食事形態の基準を統一し、共通して使用できることを目的として作られました。この分類は、食べ物の形態を示す「食事」の分類と、液体の粘度を示す「とろみ」の分類で構成されており、介護のプロが知るべき安全の“ものさし”となります。
出典元の要点(要約)
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021(マニュアル)
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf「学会分類 2013 を改訂し,「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食 2021」を作成」し「食事」「とろみ」を示す。
水分補給で最も重要なコード「0j」と「0t」の違い
嚥下機能が著しく低下している方の水分補給を考える際、特に重要なのが「コード0」です。このコードには、ゼリー状を意味する「0j」と、とろみ状を意味する「0t」の2種類が設定されています。これは、ゼリー状食品が適した症例と,とろみ状食品が適した症例に対応するためです。例えば、ゼリーを丸呑みして誤嚥してしまう場合や、口腔内でゼリーが溶けてしまう場合には、「0j」よりも「0t」が適している、といった専門的な判断が必要になります。
嚥下調整食分類のコードとは?
「嚥下調整食分類2021」は、飲み込む力が低下した方が安全に食事をするための、食べ物や飲み物の形態(まとまりやすさ、硬さなど)の基準を定めたものです。
現場で「この利用者さんの食事はコード3で」といったように、誰が見ても同じ食事を提供できるよう、職種を超えた「共通言語」として使われます。
大きく分けて「食事」のコードと「とろみ」の段階があります。
食事のコード(コード0~4)
数字が小さいほど、飲み込みが難しい方向けの形態です。
コード | 特徴 | どんな方向けか | 食事の例 |
0j / 0t | 嚥下訓練食品 | 飲み込む力が著しく低下した方 | 均質なゼリーや濃いとろみ水 |
1j | ゼリー・プリン・ムース状 | 咀嚼(噛むこと)が不要な方 | 卵豆腐、プリン、ムース |
2-1 / 2-2 | ペースト・ミキサー状 | 舌でつぶせるが、粒があると難しい方 | ミキサー粥、ポタージュ |
3 | 舌でつぶせる | 歯がなくても歯茎でつぶせる方 | やわらかい煮魚、だし巻き卵 |
4 | 歯茎でつぶせる | 形はあるが、簡単につぶせる硬さ | やわらかいご飯、肉団子 |
※学会では、食べ物を細かくきざんだだけの「きざみ食」は、かえって口の中でばらけて誤嚥しやすいため推奨されていません。
とろみの段階(3段階)
水分(お茶や汁物など)の誤嚥を防ぐために、とろみ調整食品を使って粘度を調整します。
段階 | 名称 | 特徴 |
段階1 | 薄いとろみ | 口に含むとスッと広がる。ストローでも吸える。 |
段階2 | 中間のとろみ | スプーンを傾けると、ゆっくり流れる。 |
段階3 | 濃いとろみ | スプーンを傾けても、形が保たれてすぐには落ちない。 |
大切なポイント どのコードや段階が適切かは、利用者さんの状態によって全く異なります。「数字が大きい方が良い」「とろみが濃い方が安全」というわけではなく、専門家による評価(アセスメント)に基づいて、一人ひとりに合った形態を選ぶことが最も重要です。
出典元の要点(要約)
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021(マニュアル)
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf「コード 0 と 1」には「j と t」を設定し,「j はゼリー状,t はとろみ状」。これは「ゼリー状食品が適した症例」と「とろみ状食品が適した症例」に対応するためである。
とろみの濃さにも「薄い・中間・濃い」の3段階がある
「とろみをつける」と一言で言っても、その濃さには明確な基準が存在します。嚥下調整食分類では、「段階1 薄いとろみ」「段階2 中間のとろみ」「段階3 濃いとろみ」の3段階が示されています。ここで重要なのは、薄すぎるとろみや,濃すぎるとろみは推奨できないという点です。前のセクションの事例にもあったように、濃すぎるとろみはかえって喉に張り付くリスクがあります。利用者さんの状態に合わせた適切な段階を選ぶことが求められます。
出典元の要点(要約)
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類 2021(マニュアル)
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf学会分類 2021(とろみ)は「段階 1 薄いとろみ」「段階 2 中間のとろみ」「段階 3 濃いとろみ」で構成され,性状の観察所見と物性測定値を併記して示す。
改めて考える、手作りゼラチンゼリーが推奨されない理由
これらの科学的根拠を踏まえて、最初のテーマである手作りゼリーについて改めて考えてみましょう。嚥下調整食で最も重要なのは「物性の安定」です。しかし、ゼラチンで作ったゼリーは体温で溶けて液状となるため、この大原則である「物性の安定」が保てません。これが、専門的な観点から手作りのゼラチンゼリーが推奨されない最大の理由です。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類 2021(マニュアル)
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf「ゼラチンを使用したゼリー」は「体温で溶けて液状となる」ため注意が必要だが「喀出や吸引が可能」という逆の利点もある。
このように、安全な水分補給の背景には、食品の物性を科学的に分類した明確な基準が存在します。私たちのケアは、この“ものさし”を正しく使うことで、初めて経験や勘を超えた専門的なケアとなるのです。次のセクションでは、現場で抱きがちなさらに細かい疑問にお答えしていきます。
現場の疑問を解決!水分補給と嚥下調整食 Q&A
ここまでの内容で、安全な水分補給の理論はご理解いただけたかと思います。しかし、実際の介護現場では「じゃあ、具体的にどうすれば?」という新たな疑問も生まれますよね。ここでは、そうした現場の疑問にQ&A形式でお答えします。

- Q食事形態は誰が決めるの?介護士にできることは?
- A
最終的な食事形態の決定は、医師、歯科医師、言語聴覚士(ST)などの専門職が評価を行った上で判断します。しかし、ガイドラインでは、介護現場では歯科医療従事者による口腔診査の機会も限られているため、日々のケアを行うスタッフによる簡易的な評価が望まれるとされています。例えば「OHAT-J」のような、歯科以外のスタッフでも活用できる信頼性の高い口腔アセスメントツールも提示されています。私たち介護士の役割は、日々の観察と簡易評価、そして専門職への正確な情報共有です。
出典元の要点(要約)
「介護保険施設における利用者の口腔・栄養管理の充実に関する調査研究」研究班(協力学会:一般社団法人日本老年歯科医学会/一般社団法人日本在宅栄養管理学会)
要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン(2017/暫定版)
https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf「OHAT…8 項目からなる簡便な口腔スクリーニング」は「一致率が高く」「OHAT-J」「信頼性と妥当性」を示している。
- Qゼラチンの「喀出しやすい」という利点はどう考えれば?
- A
ガイドラインには、ゼラチンゼリーが体温で溶けて液状になることで「誤嚥時の喀出や吸引が可能という逆の利点もある」という一文があります。しかし、これは嚥下造影検査などの専門的な評価の場面で、専門家がリスクと利点を考慮して用いる場合の視点です。決して日常的な水分補給にゼラチンを推奨するものではありません。日常のケアにおいては、あくまで「体温で溶けて誤嚥につながるリスク」を最優先に考えるべきです。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類 2021(マニュアル)
https://www.jsdr.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf「ゼラチンを使用したゼリー」は「体温で溶けて液状となる」ため注意が必要だが「喀出や吸引が可能」という逆の利点もある。
- Q栄養補給用のドリンクゼリーは使ってもいい?
- A
エネルギーやたんぱく質を補給する市販のドリンクゼリーの中には、物性が嚥下調整食のコード2や3に近いものもあり、選択肢として積極的に導入を検討してよいとされています。ただし、一般のゼリー飲料と同様に、製品によっては「離水」が多いものも含まれます。そのため、製品名だけで判断せず、その物性をよく確認し、利用者さんに合っているか個別の検討が必要です。
出典元の要点(要約)
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類 2021(マニュアル)
https://www.jsdr.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdfドリンクゼリーには「物性がコード 2 や 3 に近いものもある」。ただし「離水量が多いもの」があるため選択と評価が必要。
- Q忙しい現場で衛生的に提供する注意点は?
- A
嚥下訓練で用いられる「コード0」の対象者は、誤嚥のリスクが特に高い方々です。万が一誤嚥した場合に、気管や肺に細菌が入り込み、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクを最小限にする必要があります。そのためガイドラインでは、バクテリア繁殖などが起こらないように、食事の作成や保存時には特に注意するよう促されています。衛生管理は、安全な食支援の基本です。
出典元の要点(要約)
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021(マニュアル)
https://www.jsdr.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdfコード0運用では「誤嚥のリスクが高く」,衛生面で「バクテリア繁殖などが起こらないように」,「作成や保存時には注意してください」と具体的配慮が示されている。
一つひとつの疑問を解決していくことが、ケアの質を向上させ、利用者さんの安全を守ることに直結します。常に「なぜ?」と考え、根拠を持ってケアを選択する姿勢が、私たち介護の専門職には求められています。最後に、この記事全体のまとめと、明日から実践できることを確認しましょう。
明日からのケアを変えるために
ここまで、手作りお茶ゼリーの危険性から始まり、安全な水分補給の科学的根拠までを一緒に確認してきました。最後に、これらの知識を明日からのあなたのケアに活かすための、具体的なステップを考えていきましょう。

「なんとなく」のケアから「根拠のある」ケアへ
この記事を通じてお伝えしたかったのは、安全な水分補給は経験や勘だけに頼るのではなく、科学的根拠に基づいて判断する必要があるということです。手作りゼリーがなぜ危険なのか、なぜ市販のゼリーを安易に選んではいけないのか、その背景には「物性」という明確な理由があります。「嚥下調整食分類2021」は、そうした日々のケアの疑問に対して、一般的に適切と思われる対応方法を示してくれる、私たち専門職にとっての心強い道しるべです。
出典元の要点(要約)
「介護保険施設における利用者の口腔・栄養管理の充実に関する調査研究」研究班(協力学会:一般社団法人日本老年歯科医学会/一般社団法人日本在宅栄養管理学会)
要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン(2017/暫定版)
https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf「日常の臨床および介護の場での疑問」に対し「一般的に適切と思われる対応方法」を用い「推奨とすることにいたしました」と記す。
安全な水分補給を実現する3つのアクションプラン
明日から具体的に何をすればよいか、3つのステップにまとめました。
- まず観察・評価(アセスメント)から始める:まずは利用者さんの状態を注意深く見守ることから始まります。「お茶や汁物等でむせることがありますか」といった簡単な質問で状態を大まかに把握する方法として有用であると、ガイドラインでも示されています。
- 次にチームで連携・相談する:介護はチームで行うものです。観察して気づいたことや感じた不安を、看護師や栄養士、言語聴覚士(ST)などの専門職に相談しましょう。口腔と栄養の管理が連携して行われることが肝要です。
- そして「共通言語」で基準を共有する:チームで相談する際は、「嚥下調整食分類」を使いましょう。これは、職種間で安全な食形態を正確に伝えるための連携の共通言語です。
出典元の要点(要約)
「介護保険施設における利用者の口腔・栄養管理の充実に関する調査研究」研究班(協力学会:一般社団法人日本老年歯科医学会/一般社団法人日本在宅栄養管理学会)
要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン(2017/暫定版)
https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20181130.pdf「口腔と栄養の管理が連携して行われることが肝要」であり、「歯科と栄養の連携による食支援」を示す「ガイドライン(暫定版)」を提示する。
利用者さんの「食べる喜び」を守り続けるために
嚥下調整食の知識は、単に誤嚥を防ぐためだけのものではありません。利用者さん一人ひとりの状態に合わせて、最も安全な方法を見つけ出し、食の楽しみを支えるための専門技術です。ガイドラインが示すように、疾患・病態と嗜好に合わせた対応を考え、安全とおいしさの両立を目指すことこそ、私たちの専門性が活かされる場面です。
出典元の要点(要約)
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食委員会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021(マニュアル)
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf「『ゼリー』という際には,ゼリー状の形態」を指し「菓子のゼリーを指すものではない」。分類は「形態を主体に段階分け」で,「疾患・病態と嗜好に合わせた対応」を求める。
この記事が、あなたの専門性をさらに高め、日々のケアに自信と安心をもたらす一助となれば幸いです。安全な食支援を通じて、利用者さん一人ひとりの「食べる喜び」を支えていきましょう。
更新履歴
- 2025年10月13日:新規公開