【介護】傷が治らない原因は栄養?ガイドラインが示す亜鉛と治癒の関係(褥瘡ケア)

体位変換や処置を徹底しても赤みが引かず、「自分のケアが悪いのか」と無力感に襲われることはありませんか?
忙しい業務の中で食事介助を粘るのにも限界があり、つい食べやすい物ばかりになってしまうのが現場の現実です。

しかし、傷が治らない原因は「処置が足りない」だけでは説明できないことがあります。
ガイドラインでは、創傷治癒のためには局所の管理(処置)だけでなく、基礎疾患の治療や全身状態の改善を含めた治療が必要である、と整理されています。

また同じガイドラインには、亜鉛欠乏では創傷治癒遅延をきたすため、血清亜鉛値を測定し、欠乏があれば亜鉛を補充する、という記載があります。
「いろいろ試しても治らない」局面では、局所管理を続けつつ、全身状態や亜鉛欠乏の可能性も視野に入れることが重要になります。

この記事を読むと分かること

  • 傷が治らないときに、局所の処置以外で確認すべき視点(基礎疾患・全身状態)
  • 亜鉛欠乏と創傷治癒遅延の関係(ガイドラインの記載)
  • 亜鉛不足が疑われるときの確認方法(血清亜鉛値の測定)と、欠乏時の対応(補充)

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • 処置(局所管理)を続けても、治癒が思うように進まない
  • 基礎疾患や全身状態の影響も含めて見直したい
  • 血清亜鉛値を測定したことがあるか分からない/情報が手元にない

結論:どんなに良い薬も「材料」がなければ傷は塞がらない

男性入居者と女性介護職員

「2時間おきの体位変換も、スキンケアも完璧にやっている」
「なのに、なぜか〇〇さんの褥瘡だけが治らない……」
現場では、こうした行き詰まりを感じることが少なくありません。

食事介助でも「もう食べられない」と拒否されれば、無理強いはできず、
「メイバランス1本飲めたからよしとしよう」と妥協せざるを得ないのが現実です。
しかし、外側からのケア(処置)だけで限界を感じた時こそ、内側からのケア(栄養)に目を向ける必要があります。

「処置」と同じくらい「全身の状態」が重要

傷が治らない時、私たちはつい「軟膏が合っていないのでは?」と薬やドレッシング材に原因を求めがちです。
しかし、ガイドラインでは、傷を治すためには局所の管理だけでなく、全身状態の改善や基礎疾患の治療が不可欠であるとされています。

家を建てるのに例えるなら、軟膏は大工さんですが、肝心の木材(栄養)がなければ家は建ちません。
局所の処置に加えて、利用者の基礎疾患や全身の状態を含めたトータルケアが必要であると再認識することが大切です。

出典元の要点(要約)

日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

本ガイドラインは「傷を治す」ために必要な知識を解説しており、創傷治癒のためには、局所管理のみならず、基礎疾患の治療や全身状態の改善を含めた治療が必要である。

見落とされがちな「亜鉛」不足

「カロリーは足りているはず」と思っていても、盲点になりやすいのが亜鉛などの微量元素です。
亜鉛は、新しい細胞を作ったり、タンパク質を合成したりするために欠かせない栄養素です。

ガイドラインにおいても、亜鉛欠乏の状態では創傷治癒が遅延することが明記されています。
「いろいろ試しても治らない」という場合、単なるエネルギー不足ではなく、この亜鉛が不足している可能性を疑う視点を持つことが、停滞した状況を打破するきっかけになるかもしれません。

出典元の要点(要約)

日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

亜鉛欠乏では創傷治癒遅延をきたすため、血清亜鉛値を測定し、欠乏があれば亜鉛を補充する。

体位変換や清潔保持などの「外からのケア」は重要ですが、それだけでは傷は治りません。傷を埋めるための材料である「栄養」、特に「亜鉛」が足りているかを確認し、内側から体を支えることが、治癒への遠回りのようで一番の近道です。

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よくある事例:「食べているつもり」の落とし穴

現場では「一口でも多く食べてほしい」という一心で、利用者の好む甘い物やお粥を勧めることがあります。
介護記録に「全量摂取」と書かれていると安心しますが、実はその中身が問題かもしれません。

「食べているのに治らない」という現場で起きがちな、栄養ケアのすれ違いを見てみましょう。

事例1:「カロリーは足りている」という安心感

お粥や甘いゼリーなら完食してくれる利用者様。
カロリー計算上は足りていても、傷を治すための構成成分が不足していることがあります。

傷はエネルギー(カロリー)だけで塞がるわけではありません。
皮膚や肉を作るためのタンパク質やミネラルが欠乏していると、いくらカロリーを摂っても「家を建てる材料」が現場に届かない状態です。

出典元の要点(要約)

日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

本ガイドラインは「傷を治す」ために必要な知識を解説しており、創傷治癒のためには、局所管理のみならず、基礎疾患の治療や全身状態の改善を含めた治療が必要である。

事例2:軟膏や体位変換ばかりに目が行く

傷が治らないと、つい「軟膏が合っていないのでは?」「除圧が足りない?」と、外側からのケアばかりを見直しがちです。
しかし、スタッフが必死に体位変換を繰り返しても、利用者自身が脱水や低栄養状態であれば、傷を治す力は湧いてきません。

ガイドラインでは、局所の管理(処置や保護)と同じくらい、全身の状態を整えることが治療には不可欠であるとされています。

出典元の要点(要約)

日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

本ガイドラインは「傷を治す」ために必要な知識を解説しており、創傷治癒のためには、局所管理のみならず、基礎疾患の治療や全身状態の改善を含めた治療が必要である。

事例3:血液データで「亜鉛」を見ていない

貧血やアルブミン値は気にしていても、亜鉛(Zn)の値をチェックしていないケースが現場ではよく見られます。
高齢者は食事量が減ることで、潜在的に亜鉛不足になりやすい傾向があります。

ガイドラインには、亜鉛欠乏が創傷治癒の遅れを招くと明記されています。
「いろいろ試しても治らない」と悩んだ時は、単なる体力不足ではなく、この亜鉛が欠乏している可能性を疑う必要があります。

出典元の要点(要約)

日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

亜鉛欠乏では創傷治癒遅延をきたすため、血清亜鉛値を測定し、欠乏があれば亜鉛を補充する。

食事介助では「量」だけでなく「質」を見直すことが大切です。お粥やゼリーでお腹を満たす前に、少しでもタンパク質や亜鉛を含む食品を取り入れることが、停滞した傷の治りを動かすスイッチになるかもしれません。


医学的根拠:なぜ「外側からのケア」だけでは治らないのか

女性の介護職員の画像

現場では「体位変換よし、軟膏よし、保護よし」と、できる限りの処置を尽くしているはずです。
それでも改善が見られないと、「これ以上どうすればいいの?」と手詰まり感を抱くことも多いでしょう。

しかし、その原因は「やり方」ではなく、体の「内側」にあるかもしれません。
エビデンスに基づき、なぜ栄養が処置と同じくらい重要なのかを解説します。

「局所処置」と「全身管理」は車の両輪

ガイドラインでは、傷を治すために「局所の管理(処置)」だけでなく、「全身状態の改善」が必要不可欠であるとされています。
どれだけ優れた軟膏(大工)がいても、家を建てるための木材(栄養)が現場に届いていなければ、傷という穴を埋めることはできません。

局所の処置と、患者さん自身の体の力(栄養状態)。
この両方が揃って初めて、傷は治癒に向かいます。片方だけでは治療として不十分であることを知っておく必要があります。

出典元の要点(要約)

日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

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本ガイドラインは「傷を治す」ために必要な知識を解説しており、創傷治癒のためには、局所管理のみならず、基礎疾患の治療や全身状態の改善を含めた治療が必要である。

細胞を作るスイッチ「亜鉛」の重要性

数ある栄養素の中で、特に創傷治癒と深い関わりがあるのが亜鉛です。
亜鉛は、新しい細胞を作ったり、タンパク質を合成したりする過程で必須となるミネラルです。

ガイドラインでも、亜鉛欠乏が創傷治癒の遅れを引き起こすことが明記されています。
高齢者は食事量の低下から亜鉛不足になりやすいため、単にカロリーを摂るだけでなく、亜鉛が含まれているかどうかが、治癒のスピードを左右します。

出典元の要点(要約)

日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

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亜鉛欠乏では創傷治癒遅延をきたすため、血清亜鉛値を測定し、欠乏があれば亜鉛を補充する。

処置に一生懸命になるあまり、土台となる「栄養」が見過ごされがちです。特に「亜鉛」は傷を治すエンジンの役割を果たします。処置の効果が出ない時は、ケアの方法を変える前に、まずは体の材料が足りているかを見直すことが、医学的にも正しいアプローチです。

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現場の迷いを解消するFAQ

「食べているのに治らないのはなぜ?」
「栄養剤を頼みたいけど、どう説明すればいい?」
そんな現場の疑問について、ガイドライン(エビデンス)に基づいて回答します。
医学的な根拠を知ることで、医師や多職種への相談もスムーズになります。

Q
食事は残さず食べていますが、お粥やゼリーが中心です。これでは傷は治りませんか?
A
カロリーが足りていても、傷を治すための亜鉛などが不足していると治癒が遅れることがあります。ガイドラインでも、亜鉛欠乏が創傷治癒を遅延させることが示されています。
出典元の要点(要約)
日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

亜鉛欠乏では創傷治癒遅延をきたすため、血清亜鉛値を測定し、欠乏があれば亜鉛を補充する。

Q
亜鉛不足かどうかは、どうすれば分かりますか?
A
血液検査で血清亜鉛値を測定する必要があります。見た目だけでは判断できないため、医師に相談して数値を測り、欠乏している場合に補充を行うことが推奨されています。
出典元の要点(要約)
日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

亜鉛欠乏では創傷治癒遅延をきたすため、血清亜鉛値を測定し、欠乏があれば亜鉛を補充する。

Q
処置は毎日欠かさずしています。それでも栄養管理が必要ですか?
A
はい、不可欠です。ガイドラインでは、傷を治すためには局所の処置(管理)だけでなく、基礎疾患の治療や全身状態の改善を含めた治療が必要であるとされています。
出典元の要点(要約)
日本皮膚科学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―1:創傷一般ガイドライン

https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/wound_guideline.pdf

本ガイドラインは「傷を治す」ために必要な知識を解説しており、創傷治癒のためには、局所管理のみならず、基礎疾患の治療や全身状態の改善を含めた治療が必要である。

「処置」と「栄養」は、傷を治すための両輪です。もし処置に行き詰まりを感じたら、一度立ち止まって「体の材料(栄養・亜鉛)」が足りているかを確認してみてください。その視点が、利用者さんの回復を支える大きな力になります。


まとめ:傷を治すのは「薬」ではなく「体の力」

毎日の処置や体位変換、本当にお疲れ様です。 どんなに丁寧にケアしても傷が治らないと、無力感を感じてしまうことがあるかもしれません。 しかし、それはケアの方法が間違っているのではなく、利用者さんの「治すための材料」が足りていないサインである可能性があります。

ガイドラインが示す通り、傷を治すためには局所の処置と同じくらい、栄養状態の改善が重要です。 特にお粥などのエネルギー源だけでなく、皮膚の材料となるタンパク質や、細胞を作るスイッチとなる「亜鉛」が不足していないかを確認することが、停滞した状況を変える鍵となります。

明日の食事介助では、量だけでなく「何を食べているか」に少しだけ目を向けてみてください。 もし主食ばかりで副食を残しているようなら、一口目におかずを勧めてみるだけでも立派な「治療」になります。 また、治りの悪い方がいれば、多職種と連携して亜鉛不足の可能性を探ってみるのも良いでしょう。

最後までご覧いただきありがとうございます。この記事が、利用者さんの回復と、現場の負担軽減の一助となれば幸いです。



更新履歴

  • 2026年1月2日:新規投稿

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