【介護】「さっきまで歩けたのに」と悩む介護職へ。パーキンソン病の日内変動を理解する

「さっきまでご機嫌に歩いていたのに、トイレ介助の時には一歩も動かない」。
パーキンソン病の利用者様のケアで、そんな「気分のムラ」に振り回され、「自分の介助が悪かったのか」と不安になることはありませんか?

忙しい業務の中で、分単位の「完璧な服薬管理」を求められるのは、現場にとって大きなプレッシャーです。
すべてを完璧にするのは難しくても、「なぜ急に変わるのか」を知るだけで、明日からのケアのヒントが見つかるはずです。

この記事を読むと分かること

  • 「急に動けなくなる」現象の医学的な正体
  • 勝手に体が動く(ジスキネジア)時の症状の捉え方
  • 医師に「伝わる」記録の書き方のコツ

一つでも当てはまったら、この記事が役に立ちます

  • 薬の時間が少し遅れて家族や看護師に指摘された
  • 食事中に手足が動くのを「危ない」と止めたことがある
  • さっきまでできた事ができなくなり「甘え」だと感じた
  • レクの最中に突然スイッチが切れたように眠る利用者様がいる

結論:「動けない」と「動きすぎ」は薬のサイン。介護職ができる最善のケア

男性入居者の画像

「ご利用者のペースに合わせて待ちましょう」。
教科書にはそう書いてあっても、実際の現場ではどうでしょうか。
3人同時にナースコールが鳴り、入浴介助も押している中で、トイレに座ったまま動けなくなった利用者様を前にして、焦らずにいられるでしょうか。

「本当はもっとゆっくり関わりたいけれど、業務を回すためには急かすしかない」。
そんな現場の葛藤を抱えながら、自分を責める必要はありません。
なぜなら、その症状はご本人の性格やあなたの介助不足というよりも、「薬の効き方の波」が影響している可能性が高いからです。

「性格」ではなく「薬の濃度」が原因です

「さっきまで動けたのに急に動けなくなる」。
これは「ウェアリングオフ現象」と呼ばれる症状の可能性があります。

進行すると薬(L-ドパ)の効いている時間が短くなり、服用して数時間経つと薬効が切れてしまうことがあります。
ご本人の「やる気」の問題というよりは、体内の薬の濃度が下がったことによる身体的な現象である可能性が高いです。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

パーキンソン病診療ガイドライン2018

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_24.pdf

ウェアリングオフ現象は、レボドパの作用時間が短縮し、服用後数時間で薬効が消失して症状が悪化(off状態)する現象であり、進行期パーキンソン病の約半数以上に出現する。

日本神経学会

パーキンソン病診療ガイドライン2018

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_24.pdf

進行期では線条体でのドパミン保持能が低下するため、ドパミン受容体への刺激が血中L-ドパ濃度に依存するようになり、薬効の持続時間が短縮する。

勝手な動き(ジスキネジア)は「効きすぎ」のサイン

「じっとしていてほしい時に、手足がクネクネと動いてしまう」。
これは「ジスキネジア」と呼ばれる不随意運動です。

薬の濃度が高くなり、効きすぎている時間帯に現れやすい特徴があります。
ご本人がふざけているわけでも、落ち着きがないわけでもありません。
脳内のドパミン受容体が過敏になることなどが関係していると考えられている、薬の副作用の一種です。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

パーキンソン病診療ガイドライン2018

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_26.pdf

ジスキネジアの発現機序として、ドパミン受敏性や可塑的変化、L-ドパ半減期短縮によるドパミンの拍動的刺激などが推定されており、血中濃度が高い時期(ピーク)に出現することが多い(peak-dose dyskinesia)。

「時間」の記録が、医師への重要な情報になります

こうした「薬の波」による困りごとは、治療方法を見直すことで改善できる場合があります。
医師は、薬を飲む回数を増やしたり、種類を変えたりして調整を行いますが、そのためには「いつ」症状が出ているかの情報が不可欠です。

「いつも手が動いている」ではなく、「薬を飲んで1時間後に動き出した」という記録こそが、医師にとって非常に重要な判断材料になります。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

パーキンソン病診療ガイドライン2018

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_26.pdf

日常生活に支障があるジスキネジアに対しては、L-ドパの1回量を減らし回数を増やす(分割投与)、ドパミンアゴニストへの変更・増量、アマンタジンの追加などが有効である。

利用者の「動けない」「動きすぎる」は、性格ではなく薬の効果に関連した症状です。現場で無理に対応しようとせず、「いつ起きたか」を記録に残すことが、適切な治療調整への近道になります。

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現場で起きている「すれ違い」の正体

女性の介護職員の画像

「さっきまで自分で歩いていたのに、今は介助拒否?」。
現場では、こうした利用者の変化に「振り回されている」と感じる瞬間があるかもしれません。
しかし、これらは「わがまま」ではなく、医学的に説明がつく典型的なパターンであることが多いです。

事例1:トイレ介助のタイミングで動かなくなる

  • 状況
    • 食後はスムーズに歩いていたのに、2時間後のトイレ誘導時には足が一歩も出ず、全介助が必要になるケースです。
      忙しい時間帯に重なると、スタッフの腰への負担も精神的な焦りも大きくなります。
  • よくある誤解
    • 「さっきはできたのだから、やる気がないだけでは?」「甘えているのでは?」と捉えられがちです。
      しかし、これは「ウェアリングオフ現象(薬切れ)」の可能性が高い状態です。
  • 押さえるべき視点
    • 進行したパーキンソン病では、薬(L-ドパ)の効果が数時間しか持続しません。
      「性格」ではなく「薬の血中濃度」が下がったための身体症状であり、無理強いは禁物です。
出典元の要点(要約)

日本神経学会

パーキンソン病診療ガイドライン2018

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_24.pdf

ウェアリングオフ現象は、レボドパの作用時間が短縮し、服用後数時間で薬効が消失して症状が悪化(off状態)する現象であり、進行期パーキンソン病の約半数以上に出現する。

日本神経学会

パーキンソン病診療ガイドライン2018

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_24.pdf

進行期では線条体でのドパミン保持能が低下するため、ドパミン受容体への刺激が血中L-ドパ濃度に依存するようなり、薬効の持続時間が短縮する。

事例2:食事中に体が勝手に動いてこぼしてしまう

  • 状況
    • 食事中に手足や体がクネクネと動き続け、スプーンをうまく口に運べず、食べこぼしが増えてしまうケースです。
      食器をひっくり返す危険もあり、介助者はつい体を抑えたくなります。
  • よくある誤解
    • 「ふざけている」「落ち着きがない」と誤解され、動きを無理に止めようとしてしまいます。
      これは「ジスキネジア(不随意運動)」の可能性があり、薬が効いている現れでもあります。
  • 押さえるべき視点
    • 薬の濃度が高い時間帯に出やすく、ご本人の意思では止められません。
      ご本人の意思では止められないため、生活に支障がある場合は、医師による治療調整の対象となることがあります。
出典元の要点(要約)

日本神経学会

パーキンソン病診療ガイドライン2018

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_26.pdf

ジスキネジアの発現機序として、ドパミン受容体の過敏性や可塑的変化、L-ドパ半減期短縮によるドパミンの拍動的刺激などが推定されており、血中濃度が高い時期(ピーク)に出現することが多い(peak-dose dyskinesia)。

日本神経学会

パーキンソン病診療ガイドライン2018

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_26.pdf

日常生活に支障があるジスキネジアに対しては、L-ドパの1回量を減らし回数を増やす(分割投与)、ドパミンアゴニストへの変更・増量、アマンタジンの追加などが有効である。

事例3:レクの最中に突然寝てしまう

  • 状況
    • レクリエーションで楽しく会話をしていたのに、突然スイッチが切れたように眠り込んでしまうケースです。
      椅子から転落するリスクもあり、ヒヤリとする場面です。
  • よくある誤解
    • 「夜更かしをしたから」「参加意欲がない」と思われがちですが、声をかけても起きないことがあります。
      これは「突発的睡眠」という、薬の副作用で起こる現象の可能性があります。
  • 押さえるべき視点
    • ドパミンアゴニストなどの薬剤により、前触れなく睡眠に陥ることがあります。
      「居眠り」と責めず、転倒しないよう安全を確保し、「いつ寝てしまったか」を記録してください。
出典元の要点(要約)

日本神経学会

パーキンソン病診療ガイドライン2018

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_28.pdf

日中過眠の背景因子には、加齢、パーキンソン病による睡眠-覚醒機構の障害、夜間の睡眠障害、うつ、向精神薬、レム睡眠行動障害(RBD)、睡眠時無呼吸などが挙げられる。これらは抗パーキンソン病薬の使用開始や増量、病気の進行に伴い頻度が増すため、日常診療では薬剤誘発性の眠気の有無を問診で確認する必要がある。

これらの事例は、いずれも「困った行動」ではなく、治療の過程で起こりうる「症状や副作用」です。「わざとではない」と知るだけで、現場のイライラは減り、冷静な観察が可能になります。


なぜ薬を飲んでも「いい状態」をキープできないのか?

女性の介護職員の画像

「薬さえ飲めば、ずっと普通に動けるはず」。
そう思いたいところですが、現場の感覚はもっとシビアです。

「今の量では効かない、でも増やすと動きすぎる」。
まるで「あちらを立てればこちらが立たず」のような状況に、多くの介護職が頭を抱えています。
なぜ、これほどコントロールが難しいのでしょうか。
そこには、病気の進行に伴う避けられない体の変化が関係しています。

原因1:薬を貯めておく「タンク」が小さくなるから

初期のうちは、脳内にドパミンを貯蔵する機能(タンク)が残っているため、少しくらい薬の時間がズレても安定して動けます。
しかし、病気が進行すると神経細胞が減り、この貯蔵タンクが小さくなります。

その結果、飲んだ薬が直接的に効くようになり、逆に言えば「薬が切れたらすぐに動けなくなる」状態へと変化しやすいと言われています。
これが、時間ギリギリの対応が難しくなると考えられる医学的な背景です。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

パーキンソン病診療ガイドライン2018

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_24.pdf

進行期では線条体でのドパミン保持能が低下するため、ドパミン受容体への刺激が血中L-ドパ濃度に依存するようになり、薬効の持続時間が短縮する。

原因2:効かせたい範囲(治療域)が狭くなるから

進行期になると、脳の受容体が過敏になり、少しの薬で「過剰反応(ジスキネジア)」を起こしやすくなります。
一方で、薬が減るとすぐに「ガス欠(オフ)」になります。

医師は、「動けなくなるのは困るが、暴れるのも困る」という非常に狭い範囲(治療域)を狙って薬を調整しなければなりません。
現場で「微調整」が求められるのは、このストライクゾーンが極端に狭くなっているためです。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

パーキンソン病診療ガイドライン2018

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_26.pdf

ジスキネジアの発現機序として、ドパミン受容体の過敏性や可塑的変化、L-ドパ半減期短縮によるドパミンの拍動的刺激などが推定されており、血中濃度が高い時期(ピーク)に出現することが多い(peak-dose dyskinesia)。

原因3:食事のタンパク質が「邪魔」をすることがあるから

薬(L-ドパ)は、食事に含まれるタンパク質と同じ経路で吸収されます。
そのため、食事と一緒に摂ると吸収が競合し、薬の効きが悪くなることがあります。

「今日は効きが悪いな」と感じる日は、もしかしたら食事の内容やタイミングが影響している可能性もあります。
ただし、自己判断での極端な食事制限は推奨されません。

出典元の要点(要約)

日本神経学会

パーキンソン病診療ガイドライン2018

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_27.pdf

朝昼の蛋白摂取を減らし夕食時に摂取する蛋白再配分療法(protein redistribution diet: PRD)は運動合併症を解消する可能性がありますが、ジスキネジア増悪や体重減少などのリスクがあるため、医師・栄養士と相談しながら行う必要があります。

不安定なのは「対応のせい」ではなく、病気の進行による「体の仕組みの変化」が原因です。タンクが小さくなり、調整が難しくなっていることを理解すれば、完璧を目指すプレッシャーから少し解放されるはずです。

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FAQ:現場で迷いやすい疑問にお答えします

「こういう時はどうすればいいの?」。
判断に迷う場面でも、医学的な裏付けがあれば、自信を持って対応できるようになります。
ガイドラインに基づく見解を整理しました。

Q
Q1. ジスキネジアで激しく動いている時、体を抑えて止めたほうがいいですか?
A
ご本人の意思とは無関係な動き(不随意運動)です。

生活に支障がある場合は、医師による薬の調整(回数を分ける、薬の種類を変えるなど)で改善できる可能性があります。

出典元の要点(要約)
日本神経学会

パーキンソン病診療ガイドライン2018

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_26.pdf

L-ドパ持続経腸療法(LCIG)は、進行期パーキンソン病患者の運動症状の日内変動を短縮し、運動症状および非運動症状、ADL、QOLを改善する。

現場判断だけで悩まず、「薬の調整」や「食事の工夫」など、医学的な解決策があることを知っておくだけで、心の余裕が生まれます。

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まとめ:完璧なケアより、確実な「記録」を

パーキンソン病の利用者様のケアで最も大切なのは、全ての症状を現場だけで解決しようとしないことです。
「動けない」「動きすぎる」といった症状は、進行に伴う身体の変化によるものが多く、精神論での解決は困難です。

しかし、諦める必要もありません。
現場の皆様ができる有効な貢献の一つは、「いつ薬を飲み、いつ症状が出たか」という事実を記録することです。
「なんとなく調子が悪い」ではなく、「10時に飲んで11時半に動けなくなった」という具体的なメモがあれば、医師は次の治療を検討しやすくなります。

その記録が、利用者様の生活を楽にし、結果として現場の負担を減らすことにつながると考えられます。
明日からは、完璧な介助を目指すプレッシャーを少し手放し、プロとしての「観察」に力を注いでみてください。

最後までご覧いただきありがとうございます。
この記事が、日々の多忙な業務の中で、少しでもお役に立てれば幸いです。


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更新履歴

  • 2026年2月12日:新規投稿

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