「昼食後や夜勤帯は“バタバタして当たり前”だって思っている人、多いですよね? 本当は“バタバタ”をSOSサインとして扱い、曖昧な言葉を可視化→標準化→短期レビューに置き換えれば、同じ人員でも混乱が減り、運用が楽になる可能性が高まります。『頑張ってカバー』より、先に“仕組みで整える”が近道です。
本記事では、厚生労働省の生産性向上ガイドラインやICT導入手引き、東京都福祉局の事故防止資料、国立長寿医療研究センターの報告などのエビデンスを基に、
- KPIとICTで効果を見える化する
- 時間帯別の役割表×優先順位で判断負荷を減らす
- SBARで申し送りを定型化する
という具体策を、明日から現場で回せる手順として解説していきます。

この記事を読んで分かる事
「曖昧語=課題サイン」を可視化→標準化→短期レビューに変える手順、SBARや役割表×優先順位、KPIとICTの使いどころまで――明日から現場で使える具体策が分かります。
結論:「『バタバタする』はSOS—可視化→標準化→短期レビューで整える」
昼食後や夜勤帯に「バタバタするからカバーして」が合言葉になると、判断と伝達がばらつきます。ここでは公的エビデンスに沿って、現場が落ち着く実装手順を示します。
曖昧語は課題サイン
「バタバタ」「頑張って」といった曖昧語は、業務の詰まりを知らせる信号です。まずは時間・場所・業務・対象の4軸で短くメモ化し、見える化の土台にします。
やることは3つ(可視化→標準化→短期レビュー)
- 曖昧語をタグ化して共有、2) 申し送りは定型順序で短く(例:状況→背景→評価→依頼)、3) 指標を2週間などの短いサイクルで確認。小さく試し、短く振り返ることが定着のカギです
実装ツールの核(役割表×優先順位/KPI×ICT)
時間帯別の役割表に「必須・重要・余裕」を明示して判断負荷を減らし、KPIとICTで効果を可視化します。
- KPI例:転倒・ヒヤリ件数、呼び出し→対応時間、時間外
- ICT活用:転記削減と情報共有の迅速化を狙う(記録様式の統一も併せて)
同じ人員でも、言葉を整え手順をそろえれば混乱は減らせます。次のシフトから一つだけ決めごとを試し、2週間で成果を確かめましょう。
※出典
厚生労働省
介護分野の生産性向上
介護の質と働きやすさを同時に高めるため、業務の見える化、役割分担、手順の標準化、PDCAの実践を体系化。小さな改善を積み上げる設計で、現場が自律的に改善を回す枠組みを示す。多様な事例と支援ツールも公開。
https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-seisansei-information.html
厚生労働省
介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き
ICT導入の目的・効果(電子保存、転記削減、標準仕様活用、情報共有促進)と、計画→業務フロー見直し→体制整備→研修→効果検証までの手順を整理。個人情報保護や移行時の留意点も明確化し、現場での円滑な定着を支援。
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001276275.pdf
東京都福祉局
令和5年度 有料老人ホーム集団指導(運営管理・事故防止等)
事故防止指針の整備、委員会の定期開催、職員研修、事故・ヒヤリハットの把握と再発防止、記録・報告の徹底を求める。継続的な測定と共有を通じ、組織的に安全文化を根付かせる枠組みを提示し、具体的な運用の方向性を示す。
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/r5_yuryo_unei
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症の診断および介護に対するAIおよびIoTの活用に関する探索的調査研究
認知症ケアにおける見守りや夜間リスクの把握にAI・IoTが有用である可能性を示す。夜間の排泄行動などに関連する転倒リスクの示唆や、センサー活用の方向性が述べられ、重点化・定型化の設計に示唆を与える。
https://www.ncgg.go.jp/ncgg-kenkyu/documents/H29rouken-2houkoku.pdf
国立保健医療科学院
より良い職場・サービスのために今日からできること—生産性向上ガイドライン(施設サービス分)
申し送りの標準化、役割分担、チェックリスト等の「見える化」ツールの活用を提示。小規模でも回る最小構成で始め、短いサイクルで振り返る実践を推奨。属人化の抑制と品質の底上げを両立する現場志向の要点をまとめる。
https://h-crisis.niph.go.jp/wp-content/uploads/2019/03/20190313113058_content_12301000_000487644.pdf
事例:「よくあるケースで学ぶ――曖昧語を具体行動へ翻訳」
「忙しいからカバーして」と一言で済ませてしまう場面は、介護現場で少なくありません。その言葉を要素に分け、行動に変えることで混乱を抑える方法を見ていきましょう。
代表的な現場運用例です。各事業所では自施設データで検証・調整してください。

昼食後の同時多発を鎮める
12:30〜14:00の間は、トイレ誘導・内服・口腔ケア・記録が同時に発生しやすく「バタバタ」と言われがちです。ここでは役割表を明示し、優先順位を「トイレ誘導最優先」「入浴準備は15分後ろ倒し」と整理します。
- A職員:トイレ誘導
- B職員:内服補助
- C職員:口腔ケア
- D職員:記録補助(休憩回しも明記)
申し送りはSBARを用い、状況→背景→評価→依頼の順に簡潔に伝達。掲示板に役割表を貼り出すことで動きが揃いやすくなります。
夜勤帯の呼び出し集中に対応する
21:00〜6:00は排泄コールが集中し、夜勤者の負担が大きくなります。ここでは「奇数時はAが北棟、偶数時はBが南棟を巡回」と定型化。要見守りの利用者を申し送り冒頭に一覧化し、見守りポイントを一行で添えることで、伝達漏れを防ぎます。さらに対応遅延の平均や中央値などの代表値を掲示板で共有し、2週間ごとに改善度を確認。夜間の不安定さをデータで整えます。
入浴日の多工程を分解して抜けを防ぐ
入浴日には「更衣・移動・洗身・乾燥整容・記録」が重なり「みんなで頑張って」となりがちです🛁。工程を5つに分け、前半はAが更衣、Bが移動、Cが浴室担当。後半は交代制にすることで偏りを防ぎます。声かけ文例や安全確認の要点を標準手順に追記し、各工程に5分の余裕を設定。遅延時の代替手順を明文化することで、混乱を最小限に抑えます。
小さな「決めごと」を全員で共有すれば、同じ忙しさでも落ち着いて動けます。曖昧な一言を行動に翻訳することが、現場を守る第一歩です。
※出典
厚生労働省
介護分野の生産性向上
業務を可視化し、役割分担や標準手順を明確にすることで、同時多発的な負担を軽減する枠組みを提示。昼食後や夜勤帯など時間帯に応じた改善事例も紹介し、現場実装の実際に役立つ。
https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-seisansei-information.html
東京都福祉局
令和5年度 有料老人ホーム集団指導(運営管理・事故防止等)
事故やヒヤリハットの記録・分析・共有を求め、短いサイクルでの改善を推奨。夜勤帯や入浴介助などの多工程業務でも標準化と見直しを組み合わせることの重要性を強調。
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/r5_yuryo_unei
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症の診断および介護に対するAIおよびIoTの活用に関する探索的調査研究
夜間の排泄行動に伴う転倒リスクの上昇を報告。重点化や定型巡回といった工夫が事故防止に有効であることを示す知見を提供。
https://www.ncgg.go.jp/ncgg-kenkyu/documents/H29rouken-2houkoku.pdf
理由:「なぜ“具体化→標準化→短期レビュー”が効くのか」
「忙しいからカバーして」は受け手ごとに解釈が揺れ、判断が分散します。公的ガイドラインや研究で示される“仕組み”に沿って、なぜ効くのかを具体に落として説明します。

時間帯に負荷が集中するから
厚生労働省の生産性向上関連資料では、業務の見える化と段取り設計を起点に、ピーク時間帯の先手管理を推奨。昼食後や夜間など“同時多発”が起きやすい時程に優先タスクを事前定義すると衝突が減ります。
口頭伝達だけでは抜けやすいから
同資料およびH-CRISIS掲載のガイドライン概要は、申し送りの標準化とチェックリスト活用を提示。伝達を「状況→背景→評価→依頼」の一定順序で行うと、解釈差と漏れが抑制されます(現場ではSBAR等の定型が有効)。
役割と優先順位が意思決定を軽くするから
生産性向上の枠組みでは、役割分担の明文化と優先度区分(必須/重要/余裕)を推奨。時間帯別の役割表により「誰が・いつ・何を」が明確になり、瞬発的な判断回数が減って認知負荷が低下します🧭。
標準手順と点検表が品質を底上げするから
H-CRISISの概要資料は、標準手順+点検表で属人化を抑える方針を示します。やり方をそろえることで、新人・応援者でも同一水準で安全に動け、工程抜けをチェックで封じ込められます📋。
KPIと短期レビューで改善が定着するから
東京都福祉局の集団指導資料は、事故・ヒヤリハットの継続把握と分析、再発防止を組織で実施する枠組みを求めます。2週間など短いサイクルでKPIの可視化→振り返りを回すと、小さな改善が職場に定着します。
ICTが転記削減と共有を後押しするから
厚労省のICT手引きは、電子保存・転記削減・標準仕様・情報共有という効果を整理。入力の二重化を減らし、様式統一でデータを流通させると、環境により効果は異なるものの、記録時間の短縮や共有の迅速化が期待できます。
夜間の重点化に根拠があるから
国立長寿医療研究センターの報告は、夜間の排泄行動に伴う転倒リスクを示唆。夜勤帯の重点化・定型巡回・要見守り者の先出しは、リスクプロファイルに合った合理的設計といえます🌙。

言葉を分解して行動に置き換え、短い周期で測り、また整える——この循環が“忙しさの波”を整流化し、現場に静かな余裕をもたらします。
※出典
厚生労働省
介護分野の生産性向上
業務の見える化、役割分担、標準手順、PDCAを中核に、現場が小さく始めて短期に振り返る改善手順を提示。ピーク時間帯の先手設計や段取りの明確化など、実装に使える事例・ツールも公開。
https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-seisansei-information.html
国立保健医療科学院(H-CRISIS/厚生労働省資料)
より良い職場・サービスのために今日からできること—生産性向上ガイドライン(施設サービス分)概要
申し送りの標準化、チェックリスト、役割分担による見える化を提案。小規模・短サイクルでの改善定着を重視し、属人化の抑制と品質向上の両立を目指す枠組みを整理。
https://h-crisis.niph.go.jp/wp-content/uploads/2019/03/20190313113058_content_12301000_000487644.pdf
東京都福祉局
令和5年度 有料老人ホーム集団指導(運営管理・事故防止等)
事故・ヒヤリハットの収集、原因分析、再発防止を組織横断で求める。定期的な検証・共有の仕組みが安全文化を支え、短期レビューとKPIの可視化の妥当性を裏づける。
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/r5_yuryo_unei
厚生労働省
介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き
ICT導入の効果(電子保存、転記削減、標準仕様、情報共有)と導入プロセスを体系化。入力様式の統一や二重入力の解消により、生産性と情報伝達の質を同時に高める道筋を示す。
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001276275.pdf
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症の診断および介護に対するAIおよびIoTの活用に関する探索的調査研究
夜間の排泄行動などに関連する転倒リスクの示唆や、センサー等の活用可能性を記述。夜勤帯の重点化、定型巡回、要見守り者の事前共有といった運用設計の合理性を支える知見を提供。
https://www.ncgg.go.jp/ncgg-kenkyu/documents/H29rouken-2houkoku.pdf
よくある質問:「導入前の不安を一つずつ解消」
新しい方法を取り入れるとき、「うちでは無理かも」と不安になりますよね。ここでは現場でよく挙がる疑問と、その解消のポイントを整理しました。

- Q申し送りの定型(SBAR)は本当に続けられる?
- A
50〜80字のテンプレを配布し、朝礼で1分の音読練習を実施。日勤・夜勤とも同一順(状況→背景→評価→依頼)で運用し、初期2週間は掲示板の例文と指差し確認で定着を支援します。
- Q人手が足りないのに役割固定をすると逆に回らなくならない?
- A
固定はピーク時間帯のみに限定。タスクを必須/重要/余裕で区分し、代替担当と休憩の回し方を事前明記。非ピークは柔軟運用に戻し、2週間ごとの見直しで過不足を調整します。
- Q紙とシステムが混在して非効率だが、どこから着手すればよい?
- A
先に「手順書と役割表」を一本化し、その後に入力様式を統一。重複項目を削減し、並行運用の終了日をあらかじめ設定。個人情報保護の手順も同時に整備します。
- Qどんな指標を測れば効果がはっきり見える?
- A
①転倒・ヒヤリ件数、②呼び出しから対応までの時間(平均と中央値)、③時間外労働の3点から開始。定義・集計方法・掲示場所を全員で統一し、2週間ごとに振り返ります。
- Q現場の反発が心配。合意形成はどう進める?
- A
目的・試行期間・対象範囲・期待効果をA4一枚で共有。小規模パイロットで早い成果を可視化し、匿名アンケートと意見箱でフィードバックを収集。休憩確保など具体的なメリットも同時に提示します。
※出典
厚生労働省
介護分野の生産性向上
業務の可視化、役割分担、標準化、短期的な見直しを通じて改善を繰り返す仕組みを提案。導入時の現場の不安を抑える工夫や実践事例を収録。
https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-seisansei-information.html
厚生労働省
介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き
紙とシステムの混在解消、入力削減、情報共有促進のための導入ステップを提示。並行運用から統一までの移行の工夫を解説。
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001276275.pdf
東京都福祉局
令和5年度 有料老人ホーム集団指導(運営管理・事故防止等)
事故防止やヒヤリハット収集を組織で取り組むことを求め、数値管理や継続的な見直しを行う枠組みを提示。現場合意形成にも資する。
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/r5_yuryo_unei
国立保健医療科学院
より良い職場・サービスのために今日からできること—生産性向上ガイドライン(施設サービス分)概要
短い改善サイクルで振り返りを行い、現場に根づかせる実践方法を推奨。合意形成を促す「見える化」の重要性を解説。
https://h-crisis.niph.go.jp/wp-content/uploads/2019/03/20190313113058_content_12301000_000487644.pdf
まとめ:「今日から『具体的には』を合言葉に――2週間で確かめる」
抽象的な「バタバタ」を合図に、可視化・標準化・短期レビューを回せば、同じ人員でも混乱は減らせます。ここで要点を整理し、明日からの一歩をそろえます。
要点の再確認
曖昧語は課題サイン。可視化→標準化→短期レビューが土台です。SBARで伝達をそろえ、役割表×優先順位で判断負荷を減らし、KPI×ICTで効果を見える化します。
今日の一歩(小さく試す)
まずは負担の小さい範囲で試行し、2週間で振り返ります🛠️。
- 「曖昧ワード台帳」を作成(時間・場所・業務・対象でタグ化)
- 昼食後1コマだけ役割表を運用(例:誘導最優先)
- 申し送りテンプレ(SBAR)を掲示して朝礼で1分音読
- KPIは〈転倒・ヒヤリ/対応時間(平均・中央値)/時間外〉の3点から
- ICTで二重入力を削減(様式の統一・共有の迅速化)
運用の注意と呼びかけ
試行の目的・範囲・期間をA4一枚で明示し、個人情報保護を徹底。2週間後に成果と課題を掲示で共有し、匿名アンケートで調整します。小さく始めて確実に続けましょう。
同じ忙しさでも、言葉を整え手順をそろえれば現場は落ち着きます。次のシフトから一つだけ決めごとを導入し、2週間で効果を一緒に確かめましょう。
出典
- 厚生労働省
介護分野の生産性向上
介護の質向上と働きやすさの両立をめざし、見える化、役割分担、手順の標準化、PDCAを体系化。小さく始め短期で見直す実装法とツールを提示し、現場自律の改善を支援する枠組みを示す。
https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-seisansei-information.html - 厚生労働省
介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き
電子保存、転記削減、標準仕様、情報共有の効果を整理し、計画→業務フロー見直し→体制→研修→効果検証の手順を解説。移行期の留意点や個人情報保護も含め、現場での定着を後押しする。
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001276275.pdf - 東京都福祉局
令和5年度 有料老人ホーム集団指導(運営管理・事故防止等)
事故防止指針、委員会、職員研修、事故・ヒヤリハットの把握と分析、再発防止の仕組みを求める。継続的な測定と共有を前提に、安全文化の定着と運用改善の方向性を示す。
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/r5_yuryo_unei - 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
認知症の診断および介護に対するAIおよびIoTの活用に関する探索的調査研究
夜間の排泄行動に伴う転倒リスクの示唆や、見守り・通知などIoT活用の有用性を報告。夜勤帯の重点化や定型巡回、KPIによる確認の妥当性を裏づける知見を提供する。
https://www.ncgg.go.jp/ncgg-kenkyu/documents/H29rouken-2houkoku.pdf - 国立保健医療科学院
より良い職場・サービスのために今日からできること—生産性向上ガイドライン(施設サービス分)概要
申し送りの定型化、役割分担、チェックリスト等の見える化ツールを提示。小規模でも回る最小構成で開始し、短いサイクルでの振り返りを通じて定着を促す実践的な要点をまとめる。
https://h-crisis.niph.go.jp/wp-content/uploads/2019/03/20190313113058_content_12301000_000487644.pdf
更新履歴
- 2025年9月9日:新規公開
- 2025年10月21日:一部レイアウト修正



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